[概説] [前のページ] [インフレ期の料金表] [ワンポイント] [次のページ] 8.[郵便配達夫図案 1921-1922]1)1921年発行 第1次シリーズ市内用30ペニヒ葉書 市内用30ペニヒ往復葉書往信部 市内用30ペニヒ往復葉書返信部 市外用40ペニヒ葉書 市外用40ペニヒ往復葉書往信部 市外用40ペニヒ往復葉書返信部 外信用80ペニヒ葉書 外信用80ペニヒ往復葉書往信部 外信用80ペニヒ往復葉書返信部 1921年に入ると、切手も葉書も帝国の象徴であったゲルマニア図案から平和的な図案に変更されました。このとき初めて、1875年以来伝統的に続いていた「葉書の印面は当時の切手の図案を採用する」という原則が崩れ、切手には存在しない新しい図案が採用されました。これはこのインフレ期だけで、インフレ収束後発行されたシリーズからは再び元のやり方に戻ります。 最初のシリーズは、市内用葉書料金が30ペニヒ、市外用葉書料金が40ペニヒ、外信用葉書料金が80ペニヒのシリーズです。なお、インフレ期に発行された外信葉書は、このシリーズの80ペニヒ葉書しかありません。 このシリーズ以降のインフレ時期の葉書には、用紙代の料金が記載されています。窓口で買うときは、額面+用紙代が必要でした。往復葉書は2倍になります。 このシリーズの登場時期がはっきりしません。手元の使用例では8月なので、もう少しさかのぼって7月頃ではないかと推測しています。
2)1922年発行 第2次シリーズ市内用75(=35+40)ペニヒ加刷葉書 市外用125(=85+40)ペニヒ加刷葉書 市内用葉書料金が75ペニヒ、市外用葉書料金が125ペニヒのシリーズです。新料金が急に決まったため、臨時の額面を数字と文様の図案にして、印面の左側に追加印刷する措置が取られました。ところが、UPUの規定では、額面に国名表示を入れることになっていて、追加された額面にはドイツを表す国名表示がないことから、この葉書を外国宛に使うことはできませんでした。万一使われた場合は、追加した額面が無効のため、未納扱いになりますが、このような誤例は少ないながらも残されています。なお、無効の使用例の模倣や偽造をさけるため、ここでは実例を紹介しません。 3)1922年発行 第3次シリーズ市内用75ペニヒ葉書 市内用75ペニヒ往復葉書往信部 市内用75ペニヒ往復葉書返信部 市外用1.5マルク葉書 市外用1.5マルク往復葉書往信部 市外用1.5マルク往復葉書返信部 市内用葉書料金が75ペニヒ、市外用葉書料金が1.5マルク(=150ペニヒ)のシリーズです。このあたりからインフレも激しさを増し、度重なる料金改定のため、旧料金の葉書に切手を貼って窓口で売られる措置までとられました。これは、利用者にいちいち貼り足す切手を買わせていては非常に煩雑であり、計算間違いが起こるので、郵便局側としては(面倒ではありますが)安全な対策です。従って、新しいシリーズの葉書も、印刷されても発売が遅れ、そうこうしているうちにまた料金が値上げされて、旧料金の葉書と同じく、切手を貼り足されてから売られる運命をたどることになりました。 75ペニヒ葉書の用紙代は10ペニヒで、第1次シリーズの80ペニヒ葉書と同じく、一番下の枠の中央に書かれています。1.5マルク葉書は、用紙代を付加する旨の表示はありますが、金額が明記されていません。 このシリーズの登場時期がはっきりしません。75ペニヒ葉書については、手元の使用例では8月であり、料金改定が7月1日であることを考えると、7月頃ではないかと推測しています。1.5マルク葉書については、9月の使用例が知られています。手元では、上の写真の11月14日で、これは市内用葉書料金が1.5マルクの最終日です。 4)1922年発行 第4次シリーズ市外用3マルク葉書 市外用3マルク往復葉書往信部 市外用3マルク往復葉書返信部 市内用葉書料金が1.5(=150ペニヒ)マルク、市外用葉書料金が3マルク(=300ペニヒ)のシリーズです。1.5マルクの料金は旧シリーズの葉書で代用できたので、実際は3マルク葉書だけと考えてよいでしょう。代用できたとはいうものの、市内用1.5マルク葉書で切手を貼っていない使用例は、あまり残されていません。3マルク葉書で切手を貼っていない方は極端に少なく、3マルク往復葉書の切手を貼っていない使用例は、ドイツの全時期を通じた葉書の中で最難関の一つです。ただし、いくら切手が貼っていなくても、収納印が押された(切手の代わりに現金で納めた)ものは、切手を貼っているのと同じくらい評価が下がります。 3マルク葉書は、用紙代を付加する旨の表示はありますが、金額が明記されていません。 このシリーズの登場時期がはっきりしません。手元の使用例では2月です。 上の写真は、この時代の典型的な多数貼りの例です。この例は397マルク分の切手を貼って400マルク葉書にしたものです。右から左にかけて切手が25+6+6+40+20マルク、下段に100+100+100マルクが貼られていて、合わせて397マルク分となります。 この切手の貼り方をよく見てみると、最初は40マルク葉書になるように切手を貼っているのがわかります。葉書の印面の左にある切手3枚が25+6+6=37マルク分で、合計で40マルクだからです。この料金は6月30日までの市外用葉書の料金でした。おそらく、切手を貼って40マルク葉書として窓口においていたのですが、売れ残っているうちに7月1日に40マルクから120マルクに、さらに8月1日には120マルクから400マルクに葉書料金が値上げされたので、売れ残った40マルク葉書に郵便局側で360マルク分の切手を貼って売ったのがこの葉書でしょう。 ちょっと専門的な話をしましょう。実は、この葉書、消印の日付をみると「1923年8月23日午後11−12時」とあります。8月24日の直前です。インフレ切手の専門家のみなさんは、日付をご覧になっただけで、ああなるほどとお気づきになられると思いますが、400マルク料金の最後の日の、しかも「最後の時刻」の消印です。後で、下の料金表を確認してみてください。8月24日から市外用葉書の料金は、一気に20倍の8000マルクになりました。さて、この葉書、まだ売れ残っていたら、いったいどんな切手が貼られたことでしょう・・・。(もっと専門的な話をしますと、翌朝最初のポストを開函する前に投函された葉書は、旧料金のままで通用しましたので、400マルク葉書の8月24日朝の消印が存在します。インフレ時期の使用例を集める専門家は、料金の最終日と初日に注目して集めていて、ほとんど揃えたコレクションが競売にかけられることがあります。しかし、こういう2種類の最終使用例まで完璧に揃えたコレクションについては、未だに聞いたことがなく、個人の力ではほとんど不可能と思われます。) 参考) 不発行葉書(労働者図案) 市内用25マルク葉書(不発行) 1923年1月15日から市内用葉書料金が25マルク(2500ペニヒ)に値上げされたのに伴って、25マルク葉書が用意されました。この時の図案は、従来の郵便配達夫図案ではなく、当時の切手と同じ労働者図案が使用されました。しかし、売れ残っている葉書に切手を貼り足して売っているうちに、3月1日から40マルクに値上げされたため、この25マルク葉書は発行されませんでした。 インフレ終結後の1924年になって、この不発行葉書の一部が市場に出回りましたが、印面が無効のため、葉書は単なる台紙でしかなく、切手を貼って使用されました。上の写真は、1924年にレンテンマルクの数字図案の5ペニヒ切手を貼って市外用葉書として使用した例です。印面は無効ですが、習慣的に消印が押されています。この他に、通信事務用の葉書として、切手を貼り足さないで使用した例があります。 参考) インフレ期の料金表(1921年シリーズ以降の葉書料金一覧) 上記の郵便配達夫図案シリーズの葉書が発行されてから後の葉書料金です。比較のため、ペニヒ単位をマルク単位(1マルク=100ペニヒ)に換算して表示しています。なお、市内用とは配達区域内宛の葉書、市外用とは配達区域外宛の葉書です。※
最後から2段目の1923年11月26日は、市内用160億マルク、市外用400億マルク、外信用1920億マルクです。 1923年12月1日から1兆マルク=1レンテンマルクに換算した、いわゆるレンテンマルク切手が発行されました。しかし、レンテンマルク切手の図案の葉書は発行されませんでした。 ※市内用と市外用の実際の定義はもう少し複雑です。周辺国でも地域によって外信用にならない例がありますが、ここでは省略します。 [ワンポイント] 料金の変遷では、切手が貼られていない状態での適正使用例が重要です。75ペニヒまでは揃うのですが、それ以降は、ほとんど切手が貼られたものばかりで、適正使用例の入手が難しくなります。葉書の未使用が駄物なだけに、入手に当たっては充分注意が必要で、信頼できる鑑定印がないものはまず偽物と言っても過言ではありません。 全シリーズの葉書は1923年9月30日まで通用しましたので、市内用50000マルク料金、市外用100000マルク料金までの使用例があります。(実例も見たことがありますが、切手を貼りきれないので重ねていました。いわゆる瓦貼りと呼ばれる貼り方です。)それ以降は、葉書ではなく単なる台紙になります。この場合は、切手を貼っていても加貼とはいいませんので、注意してください。 |
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