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1869年に発行された世界最初の官製葉書

 世界最初の官製葉書は、1840年に世界最初の切手「ブラック・ペニー」を生んだイギリスではなく、海を渡った中部ヨーロッパで生まれました。
 1865年にカールスルーエで開催された第5回郵便会議で、ハインリヒ・フォン・シュテファンが新しい通信手段である「ポストブラット」(Postblatt、印面のない葉書)を提唱しました。しかしこれは、通信文を他人に読まれないよう封書に封蝋をするのが当たり前であった当時の人々にとって、理解しがたい提案でした。この提案は結局、通信文が見える形で配達されること自体「不道徳である」「相手に無礼である」との理由をこじつけられ、提案は拒絶されてしまいました。しかし、この提案は一部の人たちの記憶にとどまることとなりました。
 その後、オーストリーの帝国陸軍学校に勤めていた経済学者で百科全書編纂者のエマヌエル・ヘルマン博士(1839-1902)は、1869年1月26日(木)発行の新聞「ノイエ・フライエ・プレッセ」に投稿した「郵便による新しい通信手段について」という論文で、20文字以内に制限された通信文が書かれたカードを低料金で配達するポスト・テレグラムを提唱します。この提案が当時の商務大臣の目に留まり、すぐに実現に向けて制度化が進められ、ついに1869年10月1日(日)オーストリー=ハンガリー帝国の郵便局から新しいカードが一斉に発売されました。これが、世界最初の官製葉書です。
 この葉書は今の葉書と同じように、額面が印刷されている方が表面でここに宛先を書き、裏面に通信文を書くものでした。当初想定していた20文字という通信文の制限は外され、差出人は、裏面の全面を使って自由に書くことができました。ただし、裏面の下には「Die Postanstalt übernimmt keine Verantwortlichkeit für den Inhalt der Mittheilungen.」(郵便局は通信文の内容に責任を負わない)という一文が印刷されていて、利用者に注意を促しています。つまり、通信文が見える形で配達されるので、途中で通信文に何が起きても(改竄されても、誰かに読まれて何かが起きても)配達する郵便局側は一切責任を負わない、ということを明記しているのです。

プライバシー保護のため書き込みを抹消しています。

 上の写真は、世界最初の官製葉書の使用例です。消印は日付しかありませんが、書き込みから1870年1月17日であることが分かります。つまり、発行から3ヶ月半後の使用例です。なお、1869年10月1日の日付の いわゆる初日使用例が数点残されています。

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