2日目は、いきなりチャールストンを離れて、日帰りで出かけることになっている。
行き先はアラバマ州のモービルというところなのだが、これが遠かったりする。
目的はここにある戦艦アラバマを見るためなのだが、行くには飛行機を乗り継がなくてはならない。
チャールストンから北に200キロほどいったところにあるウィルミントンという町にも戦艦ノースカロライナが保存されているので、最初はそちらに行くつもりだったのだが、なんとバスを使っても日帰りできない(1日1往復しかない)ので諦めることに。
戦艦自体を諦めようとしていたところ、モービルなら何とか日帰りで行けると分かったのでこちらに行くことにしたのだった。
朝早いのでホテルでタクシーを呼んでもらい、昨日着いたばかりの空港へ。
ここからアトランタ経由でモービルまで行く。
アトランタは世界一の過密空港らしく、次から次へと飛行機が離着陸する。乗り継いだモービル行きも、10機以上は順番待ちしただろうか。何でも一日2600便が離着陸するというから、分単位などという生やさしいものではないようだ。隣に同じく着陸する飛行機を見ながら自分も着陸などいうのは初めて経験したような気がする。
そしてモービルに到着。
こちらもチャールストンと同じような感じの地方空港だった。
早速、タクシーを拾って戦艦アラバマの記念公園に向かう。
思ったよりも料金がかかり、50ドルほどになってしまった。
この記念公園にアラバマが係留されており、敷地には他に潜水艦や飛行機、戦車などが展示されている。
B-52はなかなか威圧感がある。
入り口でチケットを買って中に入る。
展示されているB-17を見てから、艀伝いに戦艦へ。やはりかなりの存在感である。
戦艦はセルフサービスのツーリストのようになっていて、順路通りに見て回ることが出来る。艦内には2300人が乗り組んでいたというだけあって広く(船の中で、感覚的には狭いのだが、区画が多く、床面積でいったら相当あるのではないか)、そうでないと迷いそうだ。
2年前にイギリスで巡洋艦のベルファストを見学したが、艦内の構造は基本的にそれに似た感じである。であるので、意外に艦内は新鮮さがなかった。船の中で生活を完結させなくてはならないので、食堂や寝所は勿論、医務室、手術室、歯医者に床屋まである。
エンジンルームと主砲はやはり巡洋艦よりも大きく迫力があった。
それと、船の戦歴についての展示もあるのだが、この艦は日本と戦い、沖縄戦にも参加したそうだから、対日本関連のものもいくつかある。当然、特攻についても触れられており、特攻の被害の様子の写真などは、日本では逆に見られないものかもしれない。破壊された特攻機から見つかったという明治神宮のお守りなどは、見ていて複雑な気持ちになる。
ついでに言うと、9月2日に日本が降伏調印したときに戦艦ミズーリと共にやってきたので、東京まで来たことがある和kだ。調印文書のコピーも展示されていた。
外の方はというと、まず艦橋を見上げるとやはり迫力がある。レーダーなどの装備も充実している。
そして三連装の主砲が3塔あり、側面には副砲や対空砲が至る所に設けられている。艦首近くにまである徹底ぶりだ。それでも死角はあったらしく、ガイドブックによると神風攻撃に対応するため、水面すれすれを目標にする機銃も後から取り付けられたとか。
戦艦を見終えた後は隣のハンガーにある飛行機を見ることにする。
カタリナ飛行艇からF-15イーグルに至るまでいろいろな戦闘機が並んでいる。が、今ひとつ物足りない気がするのは、第二次大戦中のものが少ないのと、どうしてもイギリスのコスフォード空軍博物館と比べてしまうからだろうか。
売店で戦艦アラバマのパンフレットを買い、外に展示しているB-52や戦車などを見る。売店では「バターン死の行軍」を書いた戦記の著者が来ているようでサインをしていたが、少しここでも複雑な気持ちになる。
戦艦の中が暑くて汗びっしょりになっていたので、コーラを買って一気飲み。
タクシーを呼んでもらって空港へ戻る。かなりあわただしいがやむを得ないところである。
アメリカでは9.11以降、荷物のチェックが厳重になって搭乗に時間がかかるため、国内線でも2時間前に空港に着くべしとあったが、地方は例外のようで、2時間と少し前に戻ったら他に誰もいなかった。
帰りのタクシーの運ちゃんは明るい人で、ラジオから流れる音楽にあわせて鼻歌を歌っていたりしたが、ちょっとした会話で「モービルはいいところだよ」と言うので「また来たいですね」と答えると嬉しそうにしていた。
ここまでまた来る機会があるかどうかは分からないが、ダウンタウンの歴史地区には古い建物が残っていたりするそうだから、再訪してじっくり見てみたい気もする。近くの海岸も美しいらしいし。
ところで、大西洋を見るのは初めてだったような気がする。
空港のセキュリティチェックでは、ここでは日本人は珍しいらしく、パスポートを見た係員(ヒマそうにしていた)が盛んに、Good!と言っていた。空港の売店でハンバーガーを食べて、モービルからはメンフィス経由でチャールストンに戻ってきた。飛行機の遅れもあって、着いたのは夜の10時半過ぎ。それでもタクシーを無事に確保できてホテルに戻ってきた。
とりあえず今回の旅で一番、難しいところがクリアできた。
考えてみると、戦艦を見るためだけにずいぶんコストがかかった気がするが、まあいいだろう。