高津本陣 高津本陣 Web Page 〜創作中心個人サークルの総合案内〜

イギリス旅行記・3日目

旅も3日目と中盤に突入。

今日は、バーミンガムの郊外にあるウォーリックという町にある城を見に行くことにしている。

旅行計画を立てているときにイギリスのいろいろな城を探している中で見つけたのであるが、ここの売りは中世の城の建造物がよく残っていることに加え、城の施設をエンターテイメントの形で公開して当時の暮らしぶりなどを追体験出来るようになっていることである。

他のイギリスの城が「現状の保存」を第一に考えられて、風化して廃墟のようになっているのと比べ、それはそれで趣があると思っていたところなので、この城を訪問先に選んだのが果たして吉と出るか凶と出るか……。

昨日、バースから到着した駅は「New Street」という中央駅なのだが、今日利用するのは「Moor Street」という駅であり、近くながら別である。こちらは主に近郊列車が発着する駅かと思いきや、ロンドン行きなども出ているのでそうとも限らないようだ。

こちらの駅は行き止まり式のホーム2つと、直通の対向式ホームのある作りである。

ウォーリック駅Moor Streetから30分ちょっとでウォーリック駅へ到着。乗ってきたのは快速っぽい列車であるが、駅は無人の小さなものである。

事前にネットで入手していた地図を頼りに城まで向かう。

途中で城門を見ながら徒歩で15分ほどで到着。列車で来る人はほとんどいないようだが、町の中心近くにあり、観光客も多いところなのですぐに分かった。

入場券を買って中に入る、入場料は約18ポンド(4,000円くらい)と高めである。

中に入ると城の中心部、堀の外側に出て、すぐに城の外観を眺められるようになっている。

城の外観よく整備された歩道を歩いて城門をくぐり、中に入る。中ではいろいろなアトラクションをやっているようだが、城の建物そのものはオリジナルにほとんど手を加えていないようでよい。

城の中は左手にメインとなる城館があり、周囲は城壁で囲まれている。城壁には3つほどの塔があり、城館を守るように設置されているのが分かる。

中の空間は、かつては練兵場や従者の居住区などがあったのかもしれないが、今は綺麗な芝生になっている。

最初に見てみたのが、すぐ近くにある地下牢。吊された鉄製の籠(囚人がこの中に入っていたということだろう)などがあって生々しい。

その次に行ったのは、「キングメーカー」というアトラクションである。

出陣の準備城の一角を、バラ戦争で活躍して王の擁立に大きな働きをした(なので、キングメーカーというのだ)ここウォーリックの領主の出陣の様子をテーマに、当時の戦いに関係する人たちとその働きを人形を使って展示している。

入ると最初に従者に武装を手伝わせている伯爵、重装備を着けた馬(の人形(?))があり、それを始めとして、武器を整える下層の兵士、革製品や馬の蹄鉄などを用意する職人、洗濯をしたり、衣装や旗印を繕う女性などの姿も見受けられる。

この時代であっても、こうした実際に剣は取らない人たちの支えで戦いが成り立っているということが分かる。

次に行ってみたのは、warwick ghost aliveというアトラクションで、城の一角を使った遊びである。暗い中を案内役について歩いていくと、いろいろ脅かされるというもので、思ったよりもスタッフが多いので、意外なところから意外な「脅し」が出てきて、楽しいやらびっくりするやら。

幸か不幸か、言葉が全部分かるわけではないので、そっちでの脅しは私には効果がなかったりもする。

その時に集まったグループごとに入場するが、私の入った回は何故か年配の夫婦ばかりであった。ある程度盛り上げるつもりもあったのかもしれないが、驚かされた婦人が何度も大声を上げていたのは実は楽しかったりもする。

次に見たのは、グレートホールという、要するに大広間である。

武器の数々先の戦いから少し時代が下って、ウォーリックの領主が栄えていた頃のものであろうか。

威信を示すかのような立派な造りの建物の中で最初に出迎えてくれたのがこの大広間。中世の武器や鎧、完全武装した騎兵などが展示され、存在感はものすごい。

隣の部屋に行くと、今度は大規模な晩餐が開かれるような様子の食堂である。綺麗な食器と何本もろうそくを立てた燭台、壁の大きな肖像画が印象的である。

赤の間その他、執務室や身支度を調える部屋と思われる、壁が一面赤や緑の間などがある。

この次に見るのは、時代が下ったヴィクトリア期のものである。この時代、ウォーリックの領主は様々な客を呼んで盛大にもてなしをしていたそうで、その「もてなしの準備をする城の中の人々」をテーマに、やはり人形をふんだんに使って展示が行われている。

歌姫とピアニストがいる広間から始まり、寝室でドレスを着ている婦人、正装の準備を整えている貴族、髪をメイドに整えさせている未亡人の部屋などがある。

ヴィクトリア期といえばこれまた裏方としては、衣装部屋の掃除をしているメイド、浴室に湯を張っている執事、赤ん坊をあやしているナースメイド(乳母のようなものか)の姿などもあった。

これらの人形やその衣装もそうなのだが、部屋の調度もことごとく立派で、それぞれの部屋でどれに一番注目してよいのか分からないくらいである。

こうして一通り城の中を見た後は、外の方も見学することにする。

まずは、ベアという門の隣から上ることの出来る城壁。ここから塔に至ってその頂上まで登り、向かいのもう一つの塔まで歩くことが出来るのがコースになっている。入り口に「500段以上の石段があるから、お年寄りなどは注意するかやめておいた方がいい」といった意味の注意書きを見て、覚悟を決めて中に入る。

城壁はさほどではないのだが、塔の階段はさすがにすごい。狭い螺旋階段なので慎重に上らないと危ない。カメラなどを持っていたりするので尚更だ。

城壁からそうして登った塔は眺めがいいが、同時にそれは城を守る場合には大きく役に立つことが分かる。

塔は頂上の部分が張り出すような形になっていて、ここにいる兵士は足元から石や油などを落として攻撃(防衛)出来るようになっている。

次は一度城壁の外へ出て水車小屋へ。

中世には粉を挽くための動力として使われていたのだが、時代が下ると発電に使われるようになったそうで、単に城内に給電するだけではなく、バッテリーに蓄電することもやっていたらしく、驚いた。

その次に、一段高くなったところにある城壁を見に行く。ここは「丘」と呼ばれており、城の敷地の中でも最も古い場所の一つだという。

登ってみると展望がよく、すぐ下を流れる川や向こうに広がる牧場が見える。

だが、ここで一番の注目となったのは、外の広場でやっている投石機の実演だった。

投石機言葉で書くとあまり大したこと無いように思えるが、中世の攻城戦で使われた投石機を再現し、実際にそれを使って石を飛ばすというアトラクションである。

本体に設置された動輪のようなもの(よくハムスターを飼う籠の中にあるあれをイメージするといいかも)に人が入ってくるくる回すとその力で「腕」が直角の位置から引き寄せられる。

それから石を載せていろいろ準備を整え、一気に石を放つ。想像していたよりもかなり勢いよく石が発射されて驚いた。

後に近くまで行ってみると、この投石機自体、高さ10メートルはあるかなりの大物である。

その後は食事。

城内にあるレストランでローストビーフとヨークシャープディングの皿を頼んだのだが、これがまたかなりの量である。付け合わせの豆や芋もワイルドで、ジャガイモは小振りのものとはいえ3つも着いている。

何とか野菜と肉は食べきったが、プディング(パイみたいなもので、器代わりになっていて味が染みている)は美味しかったのだが全部食べることは出来なかった。

食後は散歩がてらに少し歩き、この城の見学はだいたい満足して終了した。

比較していないので何ともいえないが、最初に思った(他の城とどっちがよかったか)心配はあまりしないですんだようだ。

こんな建物城を出て次にやってきたのは、ロード・レイチェスター・ホスピタルというところである。

中世の木組みの建物が残っているところで、礼拝堂や大広間などがあるという。その他、この建物の中には「The Queen's Own Hussars Museum」というのがあって、(たぶん)ウォーリックの由緒ある連隊についての展示があり、実はここに来た主目的はそれであったりする。

ガイドブックにも出ていないようなところなので、たまたま出発前にネットで見つけていなければ、存在すら知らなかったところであろう。

入り口で恰幅のいい係員から入場券を買い、指示に従ってまずはチャペルを見る。城門も兼ねていたようにも思われる道の上の空間に、小振りながらも荘厳さを備えた礼拝堂があった。

その次に大広間を見て、最後にミュージアムに向かう。

これまた事前の下調べが不十分なので詳しいことは分からないのだが、ウォーリックの連隊は16世紀の騎兵の時代から現代の戦車戦まで大いに活躍したらしく、展示は「騎兵の時代」と「戦車の時代」に分けられている。

前者については、フランスとの戦いに関する地形図や軍装、勲章などが展示されており、後者については戦車についての知識やCGを使って北アフリカでの対ドイツ戦の再現がなされている。とはいっても、英語なので読んで全部理解出来るというわけでもないのだが……。

戦車の知識の中で一番分かりやすかったのは「1リットルの燃料でどれだけ走るか」という比較。

乗用車が10km、トラックが5kmであるのに対して、戦車は僅か200mだそうで、いろいろな意味で大した兵器であるということがよく分かるのであった。

市街地に戻り、案内所の助けを借りて絵はがきを出したりしてから(郵便局の場所を教えてもらった)、駅に戻ることにする。

戻る途中で、行きに見かけた「St John's Museum」というところに立ち寄ることにした。

外観はなかなかいい感じの洋館という趣であったのだが、展示物がよく分からなかったので見ないですまそうとも思っていた。だが、時間に少し余裕があるので立ち寄ってみることにした。

結果からいうと、この判断はよかったようだ。

改装中であるためもあってか、入場料は無しで入れた上、先ほどのウォーリックの連隊を補足するような詳しい展示や、ヴィクトリア時代の台所というのも見ることが出来た。

本来のこの博物館のメインである「ヴィクトリア時代の子供が使っていたおもちゃ」はあまり見ることが出来なかったが、まあそれはそれでよいということで。

連隊についての展示は、勲章やメダルを中心になされており、それらを説明するような形で、イギリスが19世紀から現在までにどのような戦いを経験したのかが分かるようになっている。我々日本人の感覚だと、「最後の戦争」は第二次大戦になるのだろうが、イギリスはその前のアフリカやビルマ、中国などでの戦争もあり、その後も朝鮮戦争やフォークランド紛争、近いところでは湾岸戦争やイラク戦なども経験していて、「戦争のない時期」というのが世界的には極めて限られたものであることを実感させられる。

ここの見学が終了して駅に戻り、5分ほど遅れていたので本来ならギリギリ乗れなかった列車を捕まえてバーミンガムまで戻った。

さりげなくムーア・ストリート駅に戻ると、行き止まりになっている側線になんとSLの姿が。「機関車トーマス」の世界そのものの格好である(緑色だからヘンリーかな)。

ホテルに戻って一休みしつつ旅行記や写真の整理をして、昼に食べ過ぎたのであまり空腹を感じていないので、夜は昨日と同じ「シェイクスピア」に行って、ビールを飲んですませることにした。

せっかくイギリスに来たのだからと、今日はギネスを飲むことにした。

上に戻る |  目次に戻る |  4日目へ


(c) 高津本陣・徐 直諒 since 1999.12