この日は午前中がドレスデン観光、午後からプラハへ移動という行程です。ドレスデンには以前に来たことがあるので、観光は限定的になりました。交通博物館、動物園近くの庭園、「東ドイツの世界」など候補をピックアップしてどこへ行くか直前まで悩みましたが、結局、城の博物館で前回行かなかったところがあるのでそこを見に行くことにしました。まあ、前回といってもだいぶ前なので、展示そのものがすっかり変わっている可能性もありますが。
宿を八時半にチェックアウトし、今回はトラムを使わずに徒歩十五分くらいのSバーンの駅から中央駅へ向かいます。
十五分ほどで到着し、コインロッカーに大きな荷物を預けてから歩いて旧市街へ向かいます。日曜ということで、両側の店はほとんどがお休みのため、昨日と比べると閑散としています。
城へは十時少し前に到着。展示は十時から始まりますが既にチケット売り場に人が並んでいるのでその後ろに付きます。
アウグスト王のコレクションと、その他文物に別れており、それぞれ入場料が必要ですが今回は後者のチケット2を購入します。列車の時間の都合があり、2時間程度の見学時間と、限られています。コレクションの方は前回見ているはずですし。
中に入るとまずは選帝侯の家具や装飾品がいろいろ。金や銀を使い、彫刻がふんだんに施された名品が揃っています。フラッシュを使わなければ写真撮影も大丈夫というので、夢中になりすぎて実物を見る方がおろそかにならない程度に撮っていきます。キリスト教やギリシャ神話に題材をとってものも多く、英語の解説もあるので「なるほど」と一つ一つ見ていきます。東洋の宮殿を再現したようなジオラマのようなもの、黄金のコーヒーセットが特に圧巻でした。
次は二階へ移り、武具のコーナーです。とはいえこちらはオスマン帝国絡みのもので、そちらで使われていたものがメインです。十字軍の時代以降、ヨーロッパのキリスト教文化圏はイスラム圏とは完全な敵対関係にあったかというとそうでもなく、例えばハプスブルク家と敵対関係にあったフランスやハンガリーなどの東欧諸国がオスマン帝国と外交をしていたという話もあり、ある程度の交流も行われていたようです。
また、アウグスト3世がその更に東、タタールから受け取った進物というものも展示されていました。
その他、オスマン軍の軍旗やテント、分館の服など、なかなか珍しいものを見ることが出来ました。
三階へ移ると、中世のから近世の騎士などに関わる、武具のコーナーとなります。選帝侯本人の着用した鎧や馬を含めた軍装をはじめ、剣や槍、時代が下ると銃など、古プレートを中心にした鎧などが所狭しと展示されています。馬上槍試合のシーンを再現したものなど、臨場感があります。
その奥はコインのコレクションになっており、おそらくドレスデン地域で発掘された様々な貨幣を展示しています。古いものではローマ時代のものからありますが、さすがに数が多いので全てをしっかり見ることは出来ません。
最終的には現在流通しているユーロのコインまで展示されていますが、インフレ時代のドイツ帝国の1万マルク貨や10億マルク貨などというのが印象に残りました。日本の小判もありました。
さて、これで見学もほぼ終わりかと思いきや、奥から二階へ降りてくると再び武具の展示がありました。概ね先の武具と同じような展示でしたが、少し時代が下って近世のものがメインの感じです。その奥には選帝侯時代(16から17世紀くらいです)の衣装や、后が着ていたドレスなどが展示されており、その奥は武器から離れてこの時代の農具や工具といった生活に身近なものが現れます。
最後に胸像や肖像画の並ぶギャラリーを抜けると見学も終了。後半はやや駆け足になりましたが予定の二時間ほどで見終えることが出来ました。
城からは歩いて駅へ戻りますが、やや時間に余裕があるので、途中でドイツビールの飲み修め。中央駅から予定通り13:10発の列車でプラハへ向かいます。
到着した列車に乗り込み、席を確保する前に食堂車へ直行。この日も車窓を見ながらの食事をすることにします。ドレスデンから先はエルベ川に沿った景色がよく、これを見ながらというのを目指したのです。
今日の食事はチェコの白ワインをお供に、豚肉のソテーです。付け合わせの野菜にもベーコンが入り、昨日と同じじゃがいもも付いているというなかなか食べ応えのある品です。川沿いの景色を堪能しながら食事を終えて席を確保する頃には列車は国境を越えてチェコに入っていました。車窓はあまり変わりませんが、駅名標の様式などが変わっているのでそれと分かります。
川が沿ったり離れたり、牧草地や廃工場などが現れる車窓を楽しみつつ、二時間強でプラハ本駅に到着しました。
今日の宿は駅の近くのFalkensteinerというところ。チェックインを済ませ、少し休憩した後にわずかな時間での市内観光をします。
プラハは一度訪れており、主立った観光スポットや、空軍博物館などは見学したことがあるので、今回は気になっている二カ所の博物館が目的です。チェコの通過はユーロでなくコルナですが、1コルナ=約5円と見ていただければよいかと思います。
宿を出てビール博物館へ向かってヴァーツラフ広場の大通りを歩いていると、トラムの横切る広場でちょっとした展示をしていました。写真を見るとソ連兵や戦車の姿があります。
今年は「プラハの春」とそれに伴うソ連の軍事侵攻からちょうど50年ということがあるのでしょう。今見ている町並みに戦車が走っている、また逃げ惑う人々の姿などという、なかなかショッキングな画像です。
そこから更に少し歩き、一つ目のビール博物館へ。ビールの醸造やその歴史について学べる博物館です。入場料は280コロナと一見高めですが、ビール4種類の飲み比べがついての価格です。
おそらく多くの人がこちらを目的にしているように思えますが、展示の方も思いの外しっかりしており、古代メソポタミアに始まったビールがギリシャを経由してヨーロッパに入り、中世になって多くの醸造所で作られるようになったこと、近代の産業革命以降の技術発達で、大量生産できるようになり、現在はヨーロッパに限らず世界各地で作られていることが丁寧に展示されています。昔の醸造所を使っているためか、構内はやや窮屈であることは否めませんが、他にもチェコ国内のビールのラベルを集めたコレクション、地下にある醸造の様子の再現など割と手が込んでいます。現在のビール造りの工程を流す映像もあり、スメタナのモルダウをBGMにしているところがチェコらしいところです。
最後にお待たせのビール飲み比べ。軽いピルスから始まり、苦みの強い黒ビールまで4種類を味わえます。ちょうど、行きの飛行機でもらっていたあられがあったのでそれをおつまみに飲んでみました。
ビール博物館の後は、有名なカレル橋を軽く見に行きましたが、相変わらずの混雑ぶり。そこからこれまた有名な天文時計の方へ移動しましたが、こちらは残念なことに修復中で足場が組まれていて見られませんでした。残念といえば、その隣にあるインフォメーションでソ連侵攻50周年のミニ展示をやっているそうなのですが、ちょうど終了の時間になっておりこれも見ること叶わずです。まあ、このあたりはいわばおまけなのでよいのですが。
この旧市街広場のすぐ近くにある、Sex Machine Museumというのが今回のもう一つの目的です。
その名前から展示内容はお察しでしょうが、その通りです。セックスを含め性的な行為をするときに使う器具を紹介したものです。
入口を入ってすぐのところでいきなり日本の祭り(かなまら祭り)が紹介されているのが苦笑でした。
展示物はまあ、その目的のものがあれこれたくさんあり、主に女性が快楽を得るために様々な工夫がされていたことが分かります。
電動バイブが出来る前の時代、既に「蒸気バイブ」なるものがあったとか。
また、ことに及ぶときの助けになる大がかりな器具(家具に近いものがあります)や、変わったところでは、それまでのコンセプトとは逆の貞操帯や「マスターべーションをさせないための器具」というものがありました。孫悟空の頭の輪の局部版のようなもの、手の込んだところではそこが大きくなるとスイッチが入って、別室の家族にベルを鳴らして知らせるようなものまでありました。
その他にもいわゆるダッチワイフや、可動部のある(どういう動きをするのかはお察し)仕掛け人形などもあります。
これはこれで意外にしっかりした展示で苦笑しながらも興味深く見学できました。
最後はビール博物館の近くにあった店で食事をし、宿に戻ってきました。この日も結構歩きましたが、歩数計が日本時刻になっているため、こちらでは午後5時に日付が変わってしまい、実際一日どのくらい歩いたのかははっきりしなかったりします。