5年ぶりのドイツ旅行です。
今回も割と早めに日程を決めたつもりなのですが、それでも行きは直行便が取れずにミュンヘン経由となりました。
初めて乗ることになったスカイアクセスですんなりと成田に着き、成田からミュンヘンまで約12時間です。運良くプレミアムエコノミーの席が割り当てられたのですが通路中の席になったので景色は全く楽しめないことになりました。
食事とワインの他に、映画2本と持ってきたPSPのゲームで時間をつぶしてなんとかもたせました。
ミュンヘンでの乗り継ぎも割とスムーズにいき、18時くらいにフランクフルト着。
ミュンヘンからの飛行機、東洋人がやたら多いと思ったらどうも中国人のようでした。彼らはミュンヘンから出てフランクフルトで乗り換えて帰るようです。
駅を出て鉄道パスの使用手続き。そして市内電車で中央駅に着き、近くのホテルにチェックイン。
この日は時差の県警で一日が31時間あったので、疲れて特に他の行動はせず就寝しました。
そして翌日。
この日を1日目と数えることにしましょう。
昨日は早めに寝たので起きるのも早めにして、まず朝食を取りました。
バイキング形式の普通の食事ですが、チーズとハムが充実していたのでこれをメインに。
今回の旅では、まずはフランクフルトに連泊なので、手荷物だけ持って出発します。
今日の行き先はフランス国境に近いフェルクリンゲンというところにある製鉄工場跡です。
中央駅からローカル線の快速に乗ってまずはザールブリュッケンというところまで行きます。
ホームに止まっている列車の表示が「回送」になっていたので待たなくてはいけないかと思ったのですが、先の方に進むと切り離された2両編成の列車が止まっていて、これがザールブリュッケン行きでした。前回ドイツに来たときにコブレンツから乗ったローカル線の車両と同じ模様。
非電化区間を走るので気動車で、2両編成ながらもちゃんと一等車が付いています。旅行中もいろいろな地方で見かけることになる、最近の標準的な高性能車両のようです。
そうそう、今回の鉄道パスは張り込んで一等車用を買ったのでここに乗り込みます。
列車は定刻に発車し、「昨日今日に限り空港駅に止まらない」と書いてあったのでどういうことかと思っていたら別ルートを通ったようです。たぶん短絡線を通ってマイン側の北(右線と呼ばれている方)から回り込む形でマインツに。googleあたりの地図で見てみると分かるのですが、ドイツの鉄道では、ある程度の都市になるとかなり複雑に線路が敷いてあり、メインの路線と支線は数本しかないはずなのに直行の立体交差やその短絡線などがあちこちに張り巡らされています。パスを買った時にもらった路線図を見ると、確かに都市部にはよくわからない線路網がたくさん描かれていますがこれでも簡略化されている方なのでしょう。
列車は向きを変えてライン川沿いのメイン路線を少し走った後、ガウ・アルゲスハイムという小さな駅の先で分岐し、非電化区間に入ります。
といっても、線路は複線で具合もよく、車両の性能もよいので快適に走ります。
車窓はブドウ畑で、ワインの産地であることを彷彿とさせます。もう少し奥の地域を中心にナーエと呼ばれている土地で、ここのワインは家でもよく飲んでいますね。
基本的にそうしたのんびりした車窓の中を走り、時折支線(廃線もある?)が分岐したりしています。
ビンゲンからの路線が合流するバード・クロイツナッハという駅は「く」の字型の珍しいホーム構成になっていました。
しばらく進むと景色は山がちになってきます。川沿いをよく曲がりながら走り、トンネルなんかもあります。建物を除けば北海道に似たような景色です。途中で軍事施設への引き込み線がある駅などもありましたが。
山がちとはいっても峠越えをするわけでなく、一時間ほどするとまた草原の景色に戻ります。複線の線路の片方だけが電化されているという妙な線路を進んでいきます。
そしてフランクフルトから3時間弱でザールブリュッケンに到着しました。定刻通り。
割と大きな駅で、西に少し進めばもうフランスです。
20分ほどの乗り継ぎで再び普通列車に乗り、10分でフェルクリンゲンです。
駅のすぐそばに大きな敷地の製鉄所があり、今は稼働していませんが跡地が世界遺産に登録されて公開されています。産業遺跡としては世界初なのだとか、100年弱、稼働していたそうです。時期的に大戦期のドイツを支えたのかもしれません。
1873年に建設された製鋼所がはじまりで、鉄を作るために必要な高温を確保するために石炭を持ち込むだけでなくコークスの精製も行われていたため大規模な工場になっているようです。理由は不明ですが戦災を免れ、戦後の復興にも大きな役割を果たします。日本の石炭産業と同じく、1970年代あたりから産業構造の変化のあおりをうけ、1986年に操業停止、以後は博物館になりましたが、1994年に世界遺産に登録された、そんな沿革のようです。
さて、製鉄所の位置は駅の正面からは裏側になるのですが、線路をくぐる道があるためすぐにたどり着けます。
受付で入場券を買おうとしたら、何かの記念日なのか無料でチケットがもらえました。敷地の案内図ももらって早速、見学開始です。
世界遺産になっているだけあって、中は「変ないじられ方」はしていません。
まずは製鉄の工程などの案内展示があり、軽く社会科見学気分を味わっていきます。
駅からたくさんの引き込み線が入っており、それをうまく通路に活用していろいろなところが、見られる(行ける)ように工夫されています。通路として整備されているのでさすがに軌道そのものの上を歩けるわけではないのですが、レールはちゃんと残っていますし、まあ仕方ないところではないでしょうか。
入口から見て一番手前の建物群は、下に入ると機械類は撤去されているようです。そしてそのスペースを利用して近代芸術などが展示された美術館ゾーンになっていますが、これはちょっと残念なところです。廃墟の活用法としては今ひとつと思わざるを得なかったので、少しがっかりしましたが……。
ですが、そこから先は評価が全く逆になります。
近代芸術ゾーンを過ぎた後の順路は、2つ目の建物群になります。入る前にヘルメットをかぶることになっており、鉄の階段(これは見学用に後から設置されたものでもともとの工場のものではないようです)を上っていきます。
こちらは大小の機械類や敷地(通路など)がしっかり残っており、敷地の中を奥まで見ることが出来ます。言葉ではうまく表現できないのですが、いろいろな装置や鉄骨はさすが本物で圧巻です。
上の階(?)にも行くことが出来るので、これまでの見た建物や奥の建物などを様々な角度から見ることが出来るのも大きいです。
極めつけは高さ30メートルという炉口です。足場を通じてここに上ることが出来るので、最も高いところから敷地が一望できます。
天気が少し心配だったのですが、しばらくは何とかなりそうです。天気がよければ周囲の景色そのものもすばらしいのでしょうけど。
この建物群は、機械や設備がしっかり残った一角として価値があると思いますが、その先はまた趣が異なっています。
草や木が建物に絡みつくように生えているこちらの一角は、コークスの搬入設備や倉庫などがあった場所のようです。
さっきの建物は設備が残っているのに対し、こちらはかなり「廃墟」になっています。何か経緯があったのかもしれませんが残念ながら分からず……。
さすがにこれらの建物の中に入ることは出来ませんが、周囲が遊歩道になっており、外観は好きなだけ見ることが出来ます。
そういえば、ドイツにも廃墟好きという人は結構いるようで、このフェルクリンゲンではそういう廃墟ファンを多く見かけました。普通に家族連れなんかもいましたが。写真好きもかなりいるようで、単なる建物の全体像だけでなく、ちぎれたコードとか廃墟に重なる草花などの写真を撮っている人を少なからず見かけました。
この一角は「パラダイス」と名付けられており、よく分かっているなという感じです。
一番奥には(もちろん入れませんが)貨物ヤードと窓ガラスの割れた大きな建物(事務所?)もありました。
工場跡と廃墟という、二つの楽しみ方を堪能して、結局2時間半ほどで見学が終了しました。
別棟の奥では「ケルト展」という特別展をやっていたらしく、これはこれで見てみたかったのですが、公開終了してしまったのか、今日がたまたまやっていない(無料だったのはそのため?)かで見ることが出来ずに残念でした。
フェルクリンゲン製鉄所については、こちらにオフィシャルサイトがあります。
最長16時過ぎまで見学できるスケジュールでしたがこの時点で13時半だったのでザールブリュッケンへ戻ることに。調べたところ、ザールブリュッケンでは1時間弱の接続でフランクフルト行きのICEに乗れるのでこれで帰ることにしました。
ちなみに、ICE(Inter City Express)というのが最速の特急列車で日本でいう新幹線(専用線を走ることもありますが、一般路線を走ることも多いので、山形新幹線や秋田新幹線のようなイメージでしょうか)、IC(Inter City)というのが特急列車です。これが国境をまたぐときはEC(Euro City)と名乗ったりします。
余った時間で市内の市庁舎を見に行きましたが、途中でついに雨が降り出したので何となく消化不良に……。せっかくなのでザール川の風景も眺めようと思ったのですが、護岸工事中でいまひとつでした。日曜日なのでメイン通りも休みの店ばかり。ここは日本の感覚からするとかなりの違和感がありますね。
駅に戻ってホームで列車を待っていると、なんと目指すICEは30分遅れとのこと。
仕方ないのでそのまま待っていましたが……。
この列車、フランスのパリから/への直通で、列車によってはICEではなくフランスのTGVが使われています。ホームの人の数を見ると予想より混雑しているかもという危惧が。先に来たパリ行きの方の列車も、一等車も含めて結構混雑していたので、乗ってすぐに食堂車に行く予定を変更することにしました。ちなみに、工場見学に夢中になっていて食事はしていません。
入ってきた列車の空席を何とか確保し、のんびり景色を見ながら道中を過ごします。
みんなフランクフルトまで行くと思っていたら、案に相違して途中のマンハイムでかなり降りてしまいました。マンハイムは各地への乗り換えが出来る拠点駅のようです。
トイレに行きがてら別の空席を探したら、先頭車両の最前部が空いていました。それほど視界はよくないのですが、ここからは一応、運転台越しの先頭の景色を見ることが出来たので、ICEの高速っぷりを味わいながらフランクフルト中央駅まで戻りました。
列車の中で食事を済ませることが出来なかったので、夕食の店探しに。
結局、「地球の歩き方」に出ている店で済ますことにして向かいましたが、ハウプトヴァッヘ駅を出て半分ほどいったところで急に雨が降り始めて雨ホテルりをする羽目に……。こちらの雨は通り雨が多いと聞いていましたし、雷も鳴っていて確かにそのような感じだったのですが、それでも30分ほど足止めされました。
着いた店は幸い混んでいませんでしたが、日本人の団体客がいました。年寄りばかりでしたけどね。
店のおすすめというのを頼んだら、牛肉の野菜包み・デミグラスソースのようなものが出てきました。ハヤシライスのように米の上にのっているように見えたので「おっ、珍しい」と思ったのですが、米ではなくマッシュポテトでした。さすがドイツ。
付け合わせも色が紫なのでちょっと変わっているかと思いましたが、ザワークラウトでした。紫キャベツで作ったのでしょうか。
アプフェルワインと一緒にいただきましたが、味はなかなかでした。ドイツっぽくていいですしね。
食事を済ませた後は近くの停留所からトラムで駅まで出てホテルに戻りました。
これで1日目が終了です。