5年ぶりのドイツである。
特にそう意識していたわけではないのだが、今回で3回目になるドイツ、前回はちょうど5年前、その前の初回はちょうど10年前のことであった。
仕事の都合と、8月を過ぎた方が航空券も安いだろうという理由で、今回は9月の旅立ちになった。
成田から飛行機で12時間、昼行便だと疲れて飽きてくるほどの時間であったが、腰の痛みを恨みつつ、飛行機は無事にフランクフルト空港に到着した。
ロンドンでテロ未遂があった後ではあったが、入国審査もさほど厳しくなく、預けた荷物もないのであっさりと手続きは完了し、ドイツ国内の人となった。
あちこちの広告のドイツ語が懐かしいような気もするが、かなりのブランクがあったため、見て理解できるものでもなかったりする。
さて、ドイツに来てまず始めにしなくてはならないことは鉄道パスの使用開始手続き(ヴァリデーション)である。7日用のこのパスは、使用開始を指定した日から1ヶ月の間、好きな日を7日選んで鉄道に自由に乗ることが出来る仕組みになっている。
その日付は、乗りたい日に、事前に自分で記入することになるのだが、その前にパス自体を「使用開始」する手続きをDB(ドイツ鉄道)の係員にやってもらわねばならない。
といっても、過去にも経験はあるし、空港駅にはわかりやすい場所にチケットカウンターがあるので、そこへ行ってあっさりと終了。早速、今日の02/09の日付を書き込み、駅のホームへと向かう。
今日の宿泊はシュトゥットガルトの郊外にあるホテルなので、そこへ移動することになる。日本とドイツの距離を考えると、最初と最後の日は完全に移動日になってしまうがやむを得ない。
出発前に立てていた予定では、飛行機の到着後50分くらいのICE(日本で言えば新幹線に相当する特急列車)があり、「入国がスムーズにいけば乗れるかも」というくらいのつもりで組んでいたのだが、ちょうどそれに間に合いそうな時間であった。
ホームに降りて5分ほどで、ハンブルクからやってきた列車が到着する。
ドイツの列車には1等車と2等車があるが、今回のパスは2等用なので1等の方には乗れない。また、ドイツの特急列車に乗るときには予約(座席指定)は出来るのだが、日本のように自由席車、指定席車というようには分かれておらず、座席番号の表示の隣に小さな札を入れる場所があり、その席が予約されている場合には区間を書いた紙が差し込まれている。逆に言うと、その札のない席(区間)は空いていれば座ってよい自由席になるわけである。
さて、到着した列車に乗り込んだが、これが意外と混雑していて空席が見つからない。
仕方ないので後ろの方へ向かって歩いていき、ほぼ最後尾まで着たところでコンパートメントにようやく空席を見つけた。
太った女性一人と、中年の母親に中学生くらいの子供という3人の先客があった。この3人は世間話をしているようだが、私には残念ながら分からない。
列車はそれなりに快調に空港駅から南下し、30分ほどでマンハイムに到着した。ここでは多くの客が降り、コンパートメントの3人も皆降りてしまった。
マンハイムの次はもう終着のシュトゥットガルトで、この間はコンパートメント占有ということになった。
マンハイムを出ると列車はICEの専用線に入る。専用線というのは日本の新幹線のようなもので、先にICEを「日本の新幹線に相当する」と書いたが、大きな違いは線路の幅が在来線と同じために直通運転出来るというものである。
近年、ドイツではこの専用線が整備され、主要都市間の所要時間が短くなったようである。
時折、丘の上に町が見えるような牧歌的な景色の中を、トンネルと高架で突っ切るように走る。速度もかなり出ているようである。
緯度が高いため、19時を過ぎているのにまだ明るい中を、ぼんやり景色を眺めているうちにシュトゥットガルト中央駅に到着した。
昔の上野駅のような行き止まりのホームであるため、最後尾の車両からは駅の中心まで結構遠い。この列車も機関車を除いて14両編成であるし……。
駅に着いたら小腹が空いていたので、スタンドでパンとジュースを買って軽食にした。
時差と機内食の関係で空腹の具合がかなり微妙だったりする。
そして、ここシュトゥットガルトでは今日は何か祭りかスポーツの試合が行われるのか、国旗を持ったり、国旗柄の服を着たりした人を多く見つけ、歌を歌いながら陽気に歩いているのも見かけた。
出発前にシュトゥットガルトのホテルの空き室がなかなか見つからずに困ったのだが、ひょっとするとこれが原因かもしれない。
今日のホテルは、ベスト・ウェスティンというところで、市内と空港の間にある。
距離的には空港からの方が近く、特に使える交通機関もないということなので、Sバーン(市内列車)で空港駅まで行き、そこからタクシーに乗ることにした。
しかしながら、これが選択ミスだったようである。
不運としか言いようがないのだが、乗ったSバーンの列車が、1駅進んだ後の駅間で何かのトラブルで止まってしまったのだった。一応、車内放送が入って何か説明しているようだったが、理解できるわけもなく、そのままじっと待つことに。結局、20分ほど止まった後にようやく動き始めた。
まあ、実害はほとんどなかったのでよかったが……。
シュトゥットガルト空港駅に着く頃にはようやく「夜」になっていた。
電車で空港駅に乗り付けながら搭乗口へは行かずにそのままタクシー乗り場へ。
タクシーに乗って約10分ほどで無事にホテルに到着した。途中アウトバーンを経由したので早かったのだが、この距離で16ユーロ(1ユーロ=約150円なので、2,500円弱)はやはり高い気がする。
今日の宿は予め確保してあったので、バウチャーを渡してチェックインもすぐに完了。ようやく部屋で落ち着くことが出来た。飛行機の12時間がやはり疲れる。
シャワーを浴びてこの原稿を書き終えたら、時差の関係で31時間ある今日は「少し早めに」寝ることにしよう。