この日はほぼ移動日です。
宿をチェックアウトして中央駅へ行き、ICEの直通列車でそのままミュンヘンへ。車内はほぼ満席で、ハンブルグに着いた日にパスのバリデートと一緒に座席指定を取っておいたのだが、これが正解でした。座席指定を取ると行動の自由度が狭まってしまうので一長一短なのですが、今回は吉と出たといえるでしょう。乗車中に食堂車に行く予定なので、その間に席を取られても困りますし。
幸い、隣の席のおばさんが親切な人だったので、食堂車に行く時も荷物を見てもらうことが出来ました。列車はドイツの中央部を縦断するような経路でハンブルグからミュンヘンまで南下します。席が通路側でしかも後ろ向きなので景色を楽しむことも難しく、食堂車も相席で長居できなかったので道中は少し持て余し気味になりました。かなりの長旅になるにも関わらず、ハンブルグから乗った近くの席の客の半分以上がミュンヘンまで乗り通していました。隣のおばさんいわく、「みんなオクトーバーフェストにいくのかな」とのことです。
食堂車では白ワインと肉料理をいただきました。この間は景色を楽しみながら過ごすことが出来ました。日本ではもうこういう楽しみは出来なくなってしまったので貴重ですね。
ハンブルグから5時間半ほどでミュンヘンに到着します。天気は小雨模様で、気温は13度前後ということなので薄手のカーディガンを着ていても少し肌寒く感じます。
既にオクトーバーフェストが始まっていることもあり、駅の中を行く女の人がほとんどディアンドルを着ているのがすばらしいです。とはいえ、この気温であるから皆何か上に羽織っているのが少し残念ですが……。
まずは地下鉄を乗り継いで中央駅から宿の最寄り駅Machtlfinger Straseまで向かいます。地下鉄は片道3.4ユーロ、(ただし一日券だと6.4ユーロ)と日本と比べるとやや高めに感じられます。余談ですが、交通機関の運賃、各施設の入場料など、家にある少し前のガイドブックと比べるとたいてい値上がりしていました。5年で2〜3割くらいのイメージでしょうか。この間、日本ではものの値段がほとんど変わっていないことを考えると、為替の変動を除いても日本円の価値は相対的にどんどん下がってきているのかもしれません。
あまりホテルなどなさそうな地域でしたが、ホテルは割と立派な建物でした。
ベッドは少し幅が狭いものの、部屋は広く、無料Wifiもあるため、今回の3カ所の宿の中では一番よかったかもしれません。駅自体は市内中心部から少し外れますが、駅から歩いてすぐで便利です。
これから改めて中心部へ出てオクトーバーフェストの会場へ向かうのですが、直前に確認した情報によるとテロ警戒のためか、大きな荷物を持ち込むことが禁止されており、旅で使っているデイバッグもその制限に引っかかりそうです(容量3リットル以上のバッグらしい)。仕方がないので荷物を厳選し、エコバッグに移し替えて出かけることにします。
オクトーバーフェスト会場はU3線のGoetheplatz駅が最寄りで(より近いのはTheresienwiese駅で、中央駅からも歩ける範囲だが別路線なので)ここから人の流れに従うように会場入りしました。確かに警官が並んでおりなかなか厳重な警戒でしたが、特に荷物を改められたりはしませんでした。
今回の旅でドイツの主目的地が北部であるのにかかわらずミュンヘンまできたのは、帰りの飛行機で直行便が取れたのがミュンヘン便だけだったのと、ちょうどこのオクトーバーフェストの開催期間と重なることがあったためです。
日本でも日比谷公園や横浜赤レンガ倉庫などで「オクトーバーフェスト」が開かれているが、やはり本物を一度は見ておきたいと思ったのです。
内部は有名ビールメーカーのテント(これひとつが日本のオクトーバーフェスト会場並み)が並ぶのを中心に、食べ物や飲み物、お菓子を売る店が並び、射的のような縁日じみたものもあります。フリーフォールなど遊園地の遊具のようなものまであり、巨大なビアホールと遊園地を混ぜた感じの会場です。実際、家族連れで着ている人も結構見かけ、全員民族衣装(お父さんも)という姿もたくさんありました。年輩の夫婦などでも同様で、ディアンドルは若い女の子だけが着るものではないようです。
さて、テントに入ってみてあの独特のノリを楽しもうとしたものの、中はほぼ満席で陣取れるところがありません。そもそも着席しないと注文できないシステムなので困ってしまいました。こういうときは一人だと他の見知らぬグループの輪にはいることも出来ず、こちらから話しかけることも難しいので(そこまで言葉が堪能ではないので)、やむを得ず熱気だけ味わって離脱することにしました(ただし、せっかくなので何カ所かのテントに入ってみました)。有名な「プロージット」も見てきたし、とりあえずこれで満足しておきます。
代わりに外のビールが飲めるミニレストランでビールを飲んでいくことにしました。雨が降っていて肌寒いので人も少なかったのですが、屋根のない場所にはいられないのでほどなく相席となりました。私と同じくらいの歳の男女二人連れで、ドイツの人とちょっとだけだがふれあえると思ったのですが、向こうもニュージーランドとオーストラリアから来た旅行者といいます。ドイツの他、オランダ、イギリス、カナダなどにも行くと行っていたからなかなかの大旅行です。日本のことも気に入っているらしく何度か来たことがあると言っていました。
そんな世間話をしながら一緒にビールを飲み、祭りの雰囲気は味わったので宿に戻ることにしました。
そして旅の最終日、この日は夜の便で帰国なので昼間はミュンヘン市内の観光と買い物ということにしました。
一日乗車券を買い、まずは中央駅に出て大きい荷物をコインロッカーに預けて朝食を取ってから行動開始します。まずはトラムでニンフェンブルグ宮殿へ向かいます。バイエルン選帝候の宮殿です。
あまりにも敷地が広いので、トラム駅からメインとなる宮殿の建物まで歩くのも結構な距離があります。この日はあいにく雨模様で、時々やむものの傘を出したりしまったり忙しい天気になってしまいました。
まず最初に宮殿を見学、最初に入ります。宗教画が一面に描かれた大ホールから始まり、左右に並ぶ様々な部屋を見ていきます。用途としてはイギリスのチャッツワースのカントリーハウスと同じように、主や客の居室などがメインです。特徴的なのは肖像画が多いことで、ルードヴィヒ1世の集めた美人画ギャラリーなどというものもあります。
ここの後は庭を散策しつつ、各所に点在する他の建物を見に行くことになりまる。庭園も広々として気持ちよいのだが、傘を手放せない天気なのが残念です。その代わり暑くて汗をかくことにならずに済むのですが。
この庭園はかなりの広さで、上記の「敷地内に点在する建物」を全部見るのに3キロ近くは歩いたことになるでしょう。別館的なホール、中国風の内装の建物、古めかしい教会などです。こちらまで見に来る人はほとんどいないせいか(他に誰にも会わなかった)どの施設も貸し切り状態でした。
最後に馬車ギャラリーを見学します。ここは各時代に王侯たちが使っていた馬車が並んでいるのですが、さすがにどれも豪勢です。また冬には雪が降る地域というためか、車でなくそりの形になったものも展示されています。古い時代の彫刻による装飾がふんだんに施された金色の馬車は馬6頭、場合によっては8頭で引くものだったようです。模型で見てもなかなかの迫力なのが分かります。時代が下ったものの方が派手さは抑えられている印象で、青などの地味な色をベースに側面の扉部に紋章が描かれているものが多い印象です。
二階は各時代の陶磁器が飾られているギャラリーになっています。陶磁器と一口にいっても、食器だけでなく、彫像やその他道具などいろいろあり、花や動物、風景が描かれたものもあります。
一連の見学が済んだ後は再びトラムに乗って中心部に戻り、市庁舎の近くにある狩猟漁猟博物館を見ることにします。
狩猟漁猟博物館は比較的地味で、バイエルン地域の動物の生態を剥製をメインに展示していたり、同じくバイエルン地方の狩猟文化を様々な道具や絵画と共に展示していたりします。両側に飾られた獲物の鹿の角の並びが圧巻です。また、狩りだけでなく漁の展示もあり、こちらは魚の生態や漁具が展示されています。ミュンヘンは内陸部なので当然、川の漁ということになります。さすがヨーロッパの川は大きいからなのか、日本で見る大型の鯉のような、かなりの大きさの魚もいるようです。
この博物館は、入り口の前にイノシシと魚の像が置いてあるのが特徴で、中心部のメインストリートに面しているからか、これの前で記念写真を撮っている人は多いのですが、中まで入ってくる人はほとんどいないようです。
外に出て、そのままマリエン広場まで歩き地下鉄で1駅だけ移動、次にホーフガルテンという公園の奥にある戦没者慰霊施設を見ることにします。直方体のモニュメントの内部に横たわった兵士のブロンズ像が象徴のように置かれ、バイエルン王オットー1世の銅像が(そう意識しているのかはわからないが)それを見守る形になっています。
その後は中心部に戻り、最後の買い物タイムで、ボードゲームの店とディアンドルの店に行きました。最近、ドイツのボードゲーム界は少し不調気味なのか、結局、Scull Kingというカードゲームを買ったのみになりました。ディアンドルは1着購入し、最後に市庁舎の地下にある「Ratskeller」という店でバイエルン料理とビールをいただいてきました。この店は写真つきの日本語メニューもあってとても助かりました。
肉料理は解体して食べるようなボリュームたっぷりのものでしたが、一緒に頼んだミュンヘン風サラダ盛り合わせも酸味が効いていてなかなかの美味でした。量は多くなってしまいますが、これで口直しをしないと肉を食べきるのは難しそうです。
すっかり満腹になったところで店を出て、ちょうど市庁舎のからくり時計が踊っているのを見つつ地下鉄で中央駅へ。大きな荷物を引き出して、Sバーンで空港へ向かいます。
ハンブルグもそうですが、市内から空港へ向かう場合、空港行きと別の行き先の車両が併結しているので要注意です(ミュンヘンの場合、S1でなくS8で行けば大丈夫ですが)。
ミュンヘンでANAのチェックインを済ませると、半分日本に戻ってきたような気分になってほっとします。
時差もあり、21時出発、翌日15時着という夜行便でしたが、結局ほとんど寝ないまま羽田に着いてしまいました。