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イギリス旅行記・7日目

さて、旅行もいよいよ最終日となった。

ホテルの部屋は値段の割にはいまひとつであった。部屋の広さはあまり気にしないのだが、バスルームがシャワーのみ、朝食もセルフサービスでトースト(あと、インスタントコーヒーかティーパックの紅茶)が食べられるだけ。

昨日整理して、見た目は増えていないが確実に重くなった荷物を引きずって地下鉄に乗り、昨日と同じユーストン駅に向かい、同じ場所で荷物を預ける。最後に必ず立ち寄ることになる、ヒースローエキスプレスの出ているパディントン駅で預けてもよかったのだが、確実に預け場所のある駅ということで。

今日のメインはロンドン塔であるが、始まるのが10時からと少し時間があるので、いろいろ検討した結果、市の中心部からは少し離れたところにある、帆船の「カティ・サーク」号を見に行くことにした。

天文台や世界標準時で有名なグリニッジの近くにあり、19世紀に中国から茶を運んだという、ある意味必見の船である。

DLR地下鉄とDLRというライトレールを乗り継いでやってきたまではいいのだが、駅を降りてすぐ近く、テムズ川の河畔に展示されているはずの船は、なんとリニューアル中であった。

仕方ないので広場を少しぶらぶらして戻ることにしたのだが、考えてみると近くには海軍大学の建物や、テムズ川を歩いてくぐれるトンネルなんかもあったのでそっちに寄ってみてもよかったかもしれない。

ともあれ、DLRに再び乗ってロンドン塔へ。

この辺りは東京で言えば湾岸地域のビジネス街のような感じで、近代的なビルなどが多く建っているが、今日は日曜日とあってか閑散としている。

30分ほどでロンドン塔に到着。寄り道をしたので11時少し前になっていた。

早速入ろうとするが、チケット売り場がすごい行列。イギリス人は行列好きだと聞いたことはあるが……。

それでも、意外に待たされずにチケットを購入。城門から中に入る。

ロンドン塔定期的に出ているガイドツアーがちょうど始まったところらしく、特徴的な制服を着たビーフィーターがジョーク混じりでいろいろ説明をしているのが見える。勿論、英語で話しているのでほとんど分からないが。

売店で日本語版のガイドブックとしおりを求め、それを頼りにあちこち見て回ることにする。

最初に入ったのは、南側(川沿い)の城壁に接している「中世の宮殿」である。イングランドの王が居住と執務に使った建物ということで、これまでに見たウォーリック城などと同じように、外観や内壁はそのままに、調度は当時のものを再現して公開されている。中でも寝室はさすが、かなり立派であり、当時の布団に使われていた布地の見本なども展示してあった。

跳ね橋この宮殿を抜けるとそのまま川沿いの城壁を歩くことが出来るようになっている。川の方に目を向けると、運良く帆船型の遊覧船が通りかかるところであった。ロンドン塔のすぐ近くには有名なタワーブリッジがあるのだが、この跳ね橋が上がるところを見ることが出来た。

そして、次に向かったのは敷地の中央にあるホワイトタワーである。11世紀に建てられたものが最初で、それからいくつかの手直しなどが入って今の姿になっているそうで、城の中では防衛の中心になる「天守閣」に相当する建物である。茶色系統の石が使われている城壁や他の建造物と比べ、漆喰で白く塗り込められているのが、まさに名前の通りの特徴だ。

もともとロンドン塔には歴代の王家の使った武具が補完されていたそうだが、今はそれらがこのホワイトタワーの中に展示されている。中世の騎士そのものである、騎乗の甲冑一式であるとか、槍、ハルバード、ポールアクスといった柄の長い様々な武器、時代を下れば大砲や銃などもある。

展示してある鎧の中には明らかに日本のものであるものもあったが、解説を見ると徳川秀忠によって贈られたものだそうだ。

建物もがっちりしており、備え付けの暖炉などが残っている。面白かったのはトイレで、壁に向かって張り出した一角があり、そこにある床の穴から用を足すわけだ。上面図と側面図があって、とてもわかりやすく解説されている。また、当時の窓にはガラスはなく、木のシャッターで開け閉めしていたという、さり気ない疑問に答えた解説板もあった。

その次に見たのは、「ロンドン塔に来たからにはこれを見逃してはいけない」と言われている(パンフレットにそう書いてあった)ジュエルハウスである。上品な王族の館といった雰囲気の建物の中には、期待を裏切らない「光り物」の数々が。王の戴冠の儀式に使われた黄金の聖錫や宝珠、美しい刺繍の施された法衣やマント、そして歴代の王がイギリスや、それとは別に植民地の元首であることを示すために用いた冠(クラウン)、同じくヴィクトリア女王の冠などが展示されている。冠は正面に大きなルビー、サファイアなどを配し、周囲には文字通りきらめくほどにちりばめられたダイヤモンドが。説明によるとダイヤは約2800個使われているとか。動く歩道でゆっくりと、しかし強制的に鑑賞出来るようになっている。

ビーフィーター主立った展示はこんなところであるが、敷地にはまだ他にも見るところがあった。犯罪者や政敵を拘束した牢獄であるとか(ブラッディ・タワーといわれ、いわゆる怪談話に事欠かないらしい)、先に見た冠を作る工程の展示であるとか、拷問具(一応、解説では「イギリスで拷問が行われることは稀だ」とあったが)の展示などがあった。

城門の巻き上げ機この城も、近世になると防衛のために砲が置かれるようになり、城壁の内側の広場のあちこちにそれらが置かれていたし、巻き上げ式の城門の扉、排水溝などの「城の設備」もいくつか残っていてそれらを見るのも興味深い。

他にも陸軍フュージリア隊の資料館もあったのだが、休館中ということでここを見ることは残念ながら出来なかった。

こうして一通り見終わると、昼時を少し(でもない)過ぎた頃合い。17世紀の武器庫であった建物を使ったレストランで食事を取りつつ休憩し、ロンドン塔の見学は終了とした。

帰りの飛行機まではまだ少しだけ時間があるので、最後にトラファルガー広場の近くにあるホースガーズに行くことにする。王室近衛兵の本拠で、騎乗した衛兵が見張りに立っているのだそう。

ロンドン塔からは地下鉄で1本で行けるはずなのだが、ここで思わぬアクシデントが。その地下鉄線(サークル線)は何と土日はお休みなのだそうだ。駅の入り口のシャッターが閉じていて、係員が他の客に説明している。

仕方ないので私も別の駅まで歩いていき、動いている路線で移動することにする。

チャリングクロスという駅で降りると、地上が有名なトラファルガー広場になっている。ネルソン提督を記念して建てられた塔とその上の像は下から見ると迫力がある。周りにあるライオンの像は、あの三越のライオン像のモデルなのだという。

近衛兵ここから歩いて数分でホースガーズへ。私と同じような観光客が写真を撮っている。赤の制服に銀の鎧ととんがり型の兜で騎乗している衛兵はなかなかりりしい。近衛兵を見せ物にしているようで申し訳ないと思いつつも写真を撮る。

トラファルガー広場へ戻ると、アラブ人がデモを行っていた。言葉は分からないが、プラカードなどを見ていると、どうやらイスラエルに抗議を行うデモらしい。

地下鉄でユーストン駅に戻り、荷物を引き取る。

今度はハンマースミス&シティ線というのに乗り、今回の旅の始まりの駅にもなったパディントン駅へ到着。

ちょうどよい接続でヒースローエクスプレスに乗れたので、歩き回って疲れた体を休めつつ空港へ向かう。

空港の全日空カウンターに行くと、日本人係員がいて搭乗手続きもスムーズに済んだ。

セキュリティチェックはどの空港に行っても行列だと嘆くことになったが、ここまでくると旅も終わりだという気分になってきた。

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