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屋島ケーブル廃線跡訪問記

 今回は、暑い夏の盛りに、高松の屋島ケーブルの廃線跡を歩いてきました。

 全国的な観光地の屋島ですが、自家用車全盛のためか、意外にアクセス手段は限られていて、観光バスか車利用でない場合ですと、このケーブルカーが唯一の手段でした。

屋島駅 とはいえ、それほど利用されてはいなかったようで、十年近く前に二回ほどわたしも利用しましたが週末でも閑古鳥が鳴いているという状態で、当時から心配していたのですが、やはり廃止になってしまいました。

 現在は「代替バス」がシャトルバスとして琴電とJR両方の屋島駅と山上を結んでいますが、料金がなんと100円。ケーブルカーが片道700円近くした記憶がありますので(この値段の高さも利用の少ない要因だったのでしょう)、ある意味「便利」になったということでしょうか。

 さて、本題に入りましょう。

 琴電で高松築港から瓦町乗り換えで約30分、琴電屋島駅で降り、徒歩約5分ほどのところにケーブルカーの屋島駅(登山口駅)があります。

屋島駅 琴電の駅舎も昭和の雰囲気を残すいい感じのものですが、寂しいこの道を歩いていると、当然ながらケーブルの駅前にあった土産物屋、食堂なども閉鎖されています。

 ケーブルの駅は、少し洋風を感じさせる、シンプルなコンクリート製の建物です。中に入ることは出来ませんが、入り口の窓ガラスからのぞき見ることは出来ます。

 「コインロッカールーム」「手荷物一時預かり所」などの表示はそのまま残っていて、シャッターの下りた手前に「ケーブルカーは運行していないので登山口から上ってください」という趣旨の案内板が設けられています。

 駅舎の裏手には、改札口やホームがそのまま残されておりますが、人の手が入っていないので廃墟じみて荒れ果てています。

車両 正面からは入れないので右手のトイレの脇から回って入ると、薄暗い階段状のホームがあり、白地に赤帯の車両が放置されています。

 窓には、いつ貼り付けられたものかは分からないのですが、ケーブルカーを惜しむ近くの幼稚園の子供の絵が貼ってあります。

 ここから山上まではほぼ一直線で、ホームの先端に立つと、歩いて登るには厳しい線路が延びています。

 気を引き締めて歩き始めることにします。

見上げる振り返る

 山上まで全線800メートル程度ですが、線路は完全に残っており、架線柱や架線もそのまま、レールが錆びていて、周囲の草が放置になっている以外は遺構はそのままになっています。

 下にある車両を引くためのケーブル、それにレールの間にあるそのケーブルの誘導輪もきちんと見ることが出来ます。

誘導輪 勾配は最初の方はまだそこそこ緩やかで、途中から一気に角度を急にしていきます。

 この日は夏の晴天であったこともあり、三分の一も行かないくらいで息が上がってきます。その後は架線柱一つくらいのペースで休憩し、水分補給をしながら登って行かなくてはならないほどの厳しさです。改めて、ケーブルカー路線の勾配の規模を実感します。

 途中で後ろを振り返ってみると、琴電の屋島駅を含む、市街地が一望出来ます。

 線路の両側は木が生い茂っており、琴電の駅から登山口駅まで歩いてくる時に見えたように、山の斜面に一本だけ切り欠いた線が延びているような感じです。

中間地点 半分歩くと、当然ですが交換施設が見えてきます。

 斜面の厳しさは代わらずですが、特徴的なポイントで線路が左右に分かれます。線路の間に草が生えてきていることが、廃線になったことを感じさせますが、線路脇の階段状になった非常通路も含めて、遺構にダメージは全くありません。

 そのまま頑張って登り続けます。

 全線、ひたすら斜面で変化に乏しいのですが、この先は右手が斜面になっており、コンクリートの壁が設けられています。

 その先に進むと、今度は左側の斜面が急になっており、これまでのコンクリートの階段状の側道が、木製の橋組みのものになっています。これもダメージはないようで、きちんと歩けました。

トンネル 山上駅の車両がはっきり見えるようになってくると、直前にあるトンネルです。コンクリート造りのトンネルの入り口には、道路標識と同じような「警笛ならせ」のサインが。

 五十メートルほどしかないトンネルを抜けると、もう山上駅です。

 

 

 

上へ 青い手すりに囲まれたホームと、下と同じ車両がそのまま残っています。

 降りた客は左手の出口から外に出るようになっており、「出口」の看板もそのまま。車止めと大きなケーブルの巻き上げ施設を見ながら、一度、それに従って外に出て山上駅の駅舎を観察することにします。反対側の乗車側ホームには、駅名票も残されています。

車止め 山上駅は、コンクリートながら特徴的な作りの駅舎です。特に屋根の上にあるアンテナが印象的です。

 洋館のような造りになっており、二階に続く階段も(外に)あるのですが、団体用の待合室などがあったのでしょうか。

 登山口駅と同様に中には入ることは出来ませんが、窓越しに切符売り場なども見ることが出来ます。見ると、運賃はやはり片道700円。歩くと苦労しましたが、実際に乗れば五分程度。確かにこれでは高すぎる気がします。

 

駅の出口側山上駅の外観駅舎の中 そして、やはり同じように、駅の近くにある土産物屋と食堂は閉鎖状態。犬がいたりしましたので、商売を止めても人は住んでいるようですが……。

 ケーブルの運営会社と関係なく、自治体が管理しているためか、駅の側にあるトイレはきちんと現役で、中もきちんと手入れされているようです。

 屋島観光の中心地はもう少し先にあるので、ここから更に歩かねばなりません。

 屋島自体も、水族館やお寺のある中心部以外はかなり寂れており、それ以外の展望スポットにある土産物屋や旅館は全部廃墟になっていました。鉄道(ケーブル)の廃線以前にいろいろ考えさせられる風景でした……。

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