全難聴活動報告〈平成14年度〉
 

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■第21回全難聴青年部活動者研修合宿(名古屋市)
平成14年5月3日()〜4日() 東桜会館[名古屋市東区]
参加者:61名 京都からは3名参加
テーマ:未来への無限軌道「〜難聴青年プロジェクトチーム始動!夢実現のために〜」
1日目:開会式、研修(分科会)、夜のセミナー
2日目:全体会(グループ毎の発表)、閉会式、全難聴青年部定期総会

今回の研修合宿は、全国各地から58名の参加があり、京都からは3名の参加がありました。「未来への無限軌道 〜難聴青年プロジェクトチーム始動!夢実現のために〜」の研修テーマを基に、難聴青年が抱えている問題(PR、字幕、交流、職場、医療、子育ての6テーマ)毎にグループを作り、それぞれのテーマを実際に実現させるためにはどうしたらよいか?を、一人一人が自覚を持って熱い討論を戦わし、問題解決、実現方法を考え、プロジェクト実現に向けての企画案を出し合った。その後、それぞれのグループの代表者が企画案を発表し、10人のパネラーによる講評を受けた後、「プロジェクトチーム立ち上げ」に向けての投票が行われた(パネラーは一票5点、参加者は一票1点)。その結果、企画案の内容が優れていた、職場グループが最高点をあげた。このテーマは、難聴者運動で一番弱い部分であり、是非やっていきたいという声があがりました。最後に、全難聴青年部メーリングリスト(ヤンナン)のIT技術を活用して、「難聴青年が抱えている問題を、みなさんと一緒に考えて解決案を出していこう!」と締めくくりました。それぞれのテーマが夢で終わらないように、一人一人の小さな声も「社会を変えることができるんだ!」という自信につながるような、とても充実した研修合宿でした。以下に、各グループの発表内容を簡単にまとめます。
(PR)
各地に閉じこもっている難聴者に難聴者協会を知ってもらうには、市役所、医院(耳鼻科)などに難聴者協会機関誌を置いておく。ろうあ協会と同様に、難聴学級や親の会との連絡を密にしておく。世間に広める目的で、難聴をテーマにしたテレビ番組を作る。駅前に立って手話コーラスをやる。人の集まるところにOHPを置いて難聴の問題を知る。ことがあげられた。思い切ってやるとすれば、衆議院選挙で難聴者が立候補する。県内難聴者キャラバンを実施する。ワールドカップ日韓記念難聴者サッカー大会を開催する。を提案した。
(字幕)
難聴者が是非実現して欲しい要望とは、時間帯を限定した「100%字幕化」TV放送!。日本語DVD全てに字幕を!本編だけでなく、特典映像にも字幕を!。TVコマーシャルにも字幕を!。があげられた。これを実現させるためには、全難聴青年部で「字幕をつけよう運動」のホームページを開設することを提案した。具体的には、新聞のテレビ番組のようなものを作り、字幕を付けたい番組をクリックして投票する。掲示板を設けて「○○に字幕を付けたい」と要望を書き込む。ホームページの存在を政治家・行政・TV局などにPRする。ことがあげられた。
(交流)
多くの難聴者が気軽に交流してもらうには、全員参加全員協力型のレクリエーションが有効であることを提案した。具体的には、全難聴青年大体育祭を開催する。開催するにあたって、メーリングリストを活用して企画を募集し、各地域で分担して大会運営する。また、要約筆記者、手話通訳者にも参加してもらう。
(職場)
仕事がスムーズにいかないという問題を解決するための4つのプロジェクト(勉強の場:職業雇用の勉強、職場改善、行政(県や市)との結びつき、聴覚障害者プランへの策定の場へ難聴者の発言強化)を提案した。具体的には、独自にビデオマニュアルを作成し、会社に置いてもらう。自分の心をケアするために難聴者協会を利用する。メーリングリスト活用による、自分の心を強くする。ことがあげられた。
(医療)
医療技術が日々進んでいるが、難聴者が医療を受けるにあたって、病院で呼び出しがわからない。医師が筆談を書いてもらえない。胃レントゲンの時、医師の説明が聞こえない。などの問題があげられる。難聴者が安心して医療を受けられるためには、A.個人から病院へ:意見箱を設置する。聞こえないことをアピールする(耳マークの活用)。筆談をしてもらう。通訳の派遣を積極的にする。B.難聴者協会から病院・行政へ:要約筆記、手話のできる看護士を設置する。病院で手話講習会を開く。難聴者対応の病院の情報を提供する。C.自己啓発(これが重要):全難聴の活動により、既に安心して医療を受けるためのハンドブックやパンフ、ビデオが既にあるので、内容を理解し広く普及させるための勉強会を開く。自分に合ったコミュニケーションは何か?を説明できるように地元協会内で勉強会を開く。等を提案した。
(子育て)
難聴の親は、友人、知人、身近なレベルのコミュニケーションしかできないため、子育てに関する情報が健聴者に比べて不足している。このため、一人で悩む人が多い。難聴の親が安心して子育てできるようにするには、情報収集(フォーラム報告、福祉制度、子育てサークルなど)、子育て経験のある者をパネラーに呼んでもらい意見交換会を開く。情報提供冊子を発行する(保健所、役所などの連絡先など)。フォーラムを開催する(子育て支援)。を繰り返すことで情報不足を補うシステムを提案した。
   
第9回全国中途失聴者・難聴者福祉大会(千葉県成田市)
平成14年10月5日()〜7日(月) 成田国際文化会館・印旛教育会館他
参加者:712名 京都からは46名参加(青年部からは7名参加)
テーマ:
中途失聴者・難聴者の自立と完全参加を求めて 〜千葉発! 住み良い地域社会〜
1日目:分科会「文字情報をもっと!要約筆記や字幕放送を求めて」「デシベルダウン〜難聴者規定の緩和〜」「高齢難聴者の求める地域福祉サービス」「難聴医療と補聴器」「組織の活性化(聴障青年の集い)」、懇親会
2日目:式典、全体会、記念講演「人は誰でも人間になれるのか?」無着成恭氏、大会宣言、大会決議、閉会セレモニー
(分科会「文字情報をもっと!要約筆記や字幕放送を求めて」)
◆手書き要約筆記について◆
1.厚生省からカリキュラムが出されて3年半が経った。本当に理論的に間違いがないか?ひとりよがりで作られたのではないか?
2.52時間対応講座の人手が足りない。人での問題が大変深刻。参加者から発言→52時間のカリキュラムを消化するのに大変な時間がかかり、講座が終わると誰でも「疲れた!」と言われる。
3.要約筆記者が難聴者の講師を歓迎しない。養成問題は、長期が必要。参加者から発言→要約筆記をよりよいものにするには利用者であり、難聴者の講師の考え方を大事にしたい。指導者養成講座を開いた方が、疲れなくて済む。手話通訳者を育てているのは「ろうあ者」であり、ろうあ者が「手話」の先生。難聴者は、要約筆記通訳者を育てるのではないか?ボランティアの人は、ボランティアをしたいと意識していてボランティアをやりたくて手をあげている。難聴者のアシスタントがいないのが、少し問題。
4.講座を開く時、器材が不足している。行政・財団に申請するなど、手段はいろいろある。
5.PC要約筆記と手書きコースの同じ開催になると講師やスタッフが足りない。共通科目後、選択科目になる。
6.PC要約筆記コースの応募者には、タッチタイピングができる人で自分のノート型PCを持参できる受講生が少ない。全く出来ない人に「入門」から始めるわけにはいかない。
7.広域派遣は、公費出来ない。例えば、千葉から東京へ行く場合など、広域派遣が、まだ万全でない。全国どこでも行けるように。
8.学校・冠婚葬祭など、派遣体制は認められていない。早急に取り組む課題。派遣者のレベルが統一出来ないこと。全国的に出来るようにするのが課題。
9.手書き・PC要約筆記の「文字」の技術に限界がある。
10.「資格」について。現段階では、難しい面がある。要約筆記のレベルの差がありすぎ。資格のガイドラインを国に求めるのは無理。例えば・・ランク付け:A:始めたばかり、B:ある程度、経験を積めば書ける、C:上級、D:指導コース
◆PC要約筆記について◆
1.PC要約筆記の担い手は、悪戦苦戦していながら活動している。それぞれの現場が緊張の連続で「専門用語」が、聞き取れないとか、PC要約筆記者たちも現場で、今も苦労している。PC要約筆記技法が確立していない。大変努力しながら作っているが、いろいろ誤解も起こっている。
2.取り決めを作る必要があり、数字の入力は半角?全角?。71兆は、どういう表示が読みやすいか?漢字の使用も課題。難聴者と協力しながら、作っていく時期ではないか?
◆字幕放送について◆
1.身体障害者手帳を持っている人・・全国で30万6千人。
2.NHKの問題・・ニュースは夜の7時と9時に「字幕」がある。先日、関東で台風があったが、台風のニュースでは、東北地方には「字幕」が入らなかった。「字幕放送」は、2006年まで100%目指すことになっていて、2007年は、8〜9割の実施をする。
3.すべてのチャンネルに「字幕」がつくが、生放送は、やっていない。リアルタイム字幕放送は、いろんな方式がある。@スピードワープロによる「字幕」、A音声認識とスピードワープロを両方組み合わせてやっているのがNHK。表し方は、2つあり「全文字幕」と、喋ったことを「字幕」になる。肝心なことが、ポロ〜ッと抜けたり、入力が遅かったり、難しい漢字変換が、できなかったりする。大相撲の「字幕」は、リスピーク式で省略と要約を使いながら、アナウンサーの言葉を文字に出している。
4.どういう字幕を提供するか?全文字幕でいいのか?読みやすい文字数の要約がいいのか?スポーツ中継は、時間がかかり「字幕」は遅れて入ってきて、その時CMがはいる。あまり早いものだと違うものになったり、CMが中断する。米国では、CMにも「字幕」がつき、ドラマの「字幕」は、会社の提供でスポンサーが、ついている。
5.放送協議会という「障害者団体」があり、海外ではイギリス・米国では、放送された前後の「字幕」が視聴者の評価を得て改善する機構がある。
最後に・・
【全要研】の太田理事長から
1.フジTV「ごきけんよう」に「字幕」がついている。太田理事長のPC要約筆記サークルの方が「字幕」を作成している。テープを起こす人、要約筆記をする人と分けて、テープ起こしをやっておられ、いっぺんで可能になったと・・。1分あたり、300文字、週間で400文字位が、TVに流れる。1週間分、まとめて入力し、それをフジTVに送っている。
2.難聴者運動と要約筆記を別々に考えると負担がかかる。難聴者が講習会に関わる意味。会員一同と考え中で、今から勉強していく。
3.要約筆記・全要研は、利用される方があって、初めて「要約筆記」という活動があると考えている。難聴者と共に作っていく。よりよい社会福祉サービスを作っていく。力がある要約筆記者を確保する。要約筆記通訳派遣は、1つの運動である。
4.将来、要約筆記者が仕事になる必要があり、若い人がこれを仕事として学ぶ。これを考えると難聴者が養成によって一緒に歩んでいくことを目標に・・。
【全要研】の宇田常務理事より
口は、なんのためにある?しゃべるためにある!≪そうや!(^_^)v≫黙っていては、何にも変わりません。≪同 感!(^^)!≫
分科会「デシベルダウン」)
81名の参加で行われた。うち、障害者手帳なしの難聴者10名、手帳所持の難聴者46名、要約筆記者9名。他は不明。全難聴では、長年デシベルダウン運動を続けていて、厚生労働大臣との話し合いの中でも、今後段階的に制度として進める考えがあるとの返答を得ている。パネラーの意見をまとめてみると、障害者手帳をもらえない難聴者も生活で色々困っている。最近は老人性難聴者が多く、介護保険制度では難聴者は取り残されている。難聴の程度に関わらず必要な援助をすべきではないか。デシベルダウン運動は大切だが、それだけで問題は解決するのか疑問。この問題は難聴者だけではなく、国民全体で考えて行く必要があるのではないか。
会場からの意見としては、手帳のない難聴者として社会から差別を受けており、難協からも疎外されている、との意見。また、パネラーの中で軽・中度難聴を経験している人が一人だけいてその人の発言に一番共感できた、手帳のない難聴者を「軽度」と一方的に呼ぶのはやめて欲しい、との意見。
私からは、来年の京都大会で軽・中度難聴分科会を開催することが決まっており、京都で活動する軽・中度難聴者を中心としたグループ「かものはし」が担当、すなわち当事者が担当で開催すると、PRした。
分科会全体を通してみると、今年2月の全難聴主催の聞こえの実態シンポジウムで、「障害者手帳のない軽・中度の難聴者も困っているので、必要に応じた援助を行うべき」と結論づけたことに沿った内容だった。
(分科会「デシベルダウン」に参加しての感想)
このような分科会が開催されたことは、軽・中度難聴問題に取り組んでいく上で大きな意義があると思う。また、パネラーはさすがに軽・中度難聴者が置かれている社会的な立場をよく説明できていたと思う。不満だったのは、軽・中度難聴を客観的に述べる例が多かったことである。周りの人からみた軽・中度難聴者という感じ。しかし、軽・中度難聴はまず当事者の問題ではないのか。周りから難聴を認められない(だから難聴の自覚が、ないとされる?)当事者がどのような気持ちを持って生きてきたのか、本当にわかっているのだろうか?結局、この問題の解決には、当事者が自ら意見を述べていく状況を作っていかなければならないと思う。そのためにはどうすればよいのかを考えていきたい。
(分科会「組織の活性化」)
全難聴青年部が担当するテーマであり、全難聴青年部長の清成幸仁氏が座長を務めました。このテーマの狙いは、組織の活性化の根本にある「目的」を再認識することである。
まず、座長より、「難聴者はなぜ難聴団体に参加しているのですか?いったい何を求めているのですか?住みやすい社会に変えていくため?それとも一緒に悩みを語り合える友を求めて?・・・理由は様々でしょうが、「目的」があるからこそ、難聴団体が存在しているのではないでしょうか?しかしながら、設立はできたもののその後の組織維持に腐心されているのが現状ではないでしょうか?本来の「目的」を見失い、組織維持を「目的」にしている面はないでしょうか?」という提言がありました。
次に、青年部、女性部、高年部の活動に係わっているパネラーより、それぞれの立場で所属されている専門部の活動内容や活性化などで取り組まれていることを話してもらいました。各専門部の現実的な問題について拾ってみると、難聴者が「結婚そして子育て」「仕事」「家庭・近所とのおつき合い」「親の介護」「老後の生きがい」などで難聴活動に関わる時間がとれなくなったことで、組織の活性化を阻む原因となっている。つまり、難聴者少人数での活動では効果がないということ。また、各専門部が縦割りの活動となっているため、各専門部の現実的な問題・活動を把握できていないことも挙げられた。その後、会場の皆さんと「活性化」について積極的な議論を行いました。
議論のまとめとして、同じ難聴者同士がオープンな活動(組織上、横の繋がりを強化)を行い、難聴会員を増やすためには、
1.各専門部が抱えている問題意識の共有化・浸透化(同じ難聴者同士で、世代間・性別にとらわれず問題意識を持って臨む。)
2.トータルコミュニケーション理念の啓蒙(筆談、手話、口話、読話、補聴器などの全ての手段を利用して、お互いのコミュニケーション方法を認め、世代間・性別を超えるつき合いをする。)
3.専門部の垣根を取り払って、要望・活動の共有化(定期的に専門部長会議を開く。)
の3本柱が重要であること、さらに、難聴者だけの取り組みではできないので、要約筆記者など健聴者と一緒に取り組まなければならないことを再確認しました。
(記念講演)
講師は成田市の近くにある福泉寺住職の無着成恭氏で、テーマは「人は誰でも人間になれるのか?」でした。内容を箇条書きでまとめてみると、
・子どもの本質は自己中心的、身勝手。
・大人というのは、他人の心がわかるということ、「生きている」のではなく、「生かされている」ということがわかる人。
・大人の本質は、三寶を深く学び、真理に目覚めた人。
・三寶は「佛」大宇宙のいのち、大宇宙は縁起であり、空である、「法」は大宇宙の一因子として悟った正しい理論、「僧」はこの世を佛の世界にする人、自分が佛として生きようとする人。
・人は生まれたときから人間か?ヒトはイヌ、ネコと同じ哺乳動物として生まれる。万物平等の生命の尊厳さを有しているが、人間としての資格はまだない。
・人間としての資格(人格)を獲得するためには、自らの欲望をコントロールする原理を身につける。欲望をコントロールできないヒトは畜生。ヒトは畜生として生まれるが、そのままではいられない。欲望を追求するヒトは餓鬼。
・大人はヒトが人間になる手続きが必要だと理解して、子育てをする必要がある。
こういう内容だと、難しそう、堅苦しそうと思われるかもしれませんが、仏教や教育についての話を、所々駄洒落や冗談を織り交ぜながらお話しされるので、会場は笑いの連続でした。
人は一人で生きていけない、たくさんのいのちから自分が生かされていることを理解して自分を生かす、言葉にするのは簡単ですが、いろいろな意味が含まれていると感じました。
スナップ