全難聴活動報告〈平成15年度〉
 

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■第22回全難聴青年部活動者研修合宿(岡山県倉敷市)
平成15年5月31日()〜6月1日()  くらしき健康福祉プラザ[岡山県倉敷市]
参加者:64名 京都からは5名参加
テーマ:
夢に向かって全速前進! 〜悩みを語ろう、いまこそ解決に立ち上がろう〜
1日目:開会式、分科会 (職業、子育て、活動初級)、記念交流会
2日目:全体会(分科会報告)、閉会式、全難聴青年部定期総会

参加者は宮城県から福岡県まで64名、京都からは5名参加しました。なお、今回は「第11回中国・四国ブロック研修合宿」を兼ねています。一日目は開会式と分科会です。開会式は実行委員長、全難聴青年部長等のあいさつがあり、その後、分科会に入りました。分科会は、「職業」、「子育て」、「活動初級」の3つのテーマに分かれて行いました。夕方には宿泊地の「山陽ハイツ」で記念交流会がありました。中国・四国地方の観光地を使ったビンゴゲームは大変好評で、多くの参加者が賞品を獲得しました。交流会の後は、各自の部屋で夜遅くまで語り合いました。
2日目は、全体会で各分科会の報告があり、熱心な討論がありました。特に全難聴青年部が取り組んでいる職業問題については、作成に取り組んでいるマニュアルやアンケートについて質問や意見が交わされました。午後から全難聴青年部の定期総会があり、前年度の活動総括・決算報告、今年度の事業計画案・ 予算案、新役員の選出が発表されました。次に全難聴青年部の行事が行われるのは、10月に京都で開催される全国中途失聴者・難聴者福祉大会の分科会の一つの職業分科会で、これを青年部が担当しています。
【職業分科会】
この分科会の参加者から、自分の仕事に対し、どんな思いを抱いているのか、また、聴覚障害の故に生まれる仕事上での悩み、辛さをどのように工夫して解決してきたのか、教えられることが多かったように思います。各自、具体的な事例を挙げた上で、自分が抱えている職場での問題を如何にして解決してきたかについて熱を込めて話し、参考になるところがたくさんありました。自分の場合、以前の職場で、一番大きな壁になっていたのが、コミュニケーション問題でした。そしてその問題をとかく精神論で解決しよう、と力んでしまうあまり、現実がそれに追いつかず、ますます、辛くなる羽目になったことがあります。たとえ、ハンディがあったとしても、精神的にタフになり、仕事をバリバリこなすことが、できればいいとは誰もが思っていると思います。そして、そのように出来る人がいるのも事実です。しかし会社の中にいても、仕事上でのコミュニケーションはもちろんのこと、楽しく話し合える同僚が誰もいず、一人で昼食を食べている人が多いなど、難聴者が職場で抱えている問題がまだまだたくさんあるのが実情です。そうした辛い状況にある人を一人でも減らし、働きやすい職場を作るためには、何が必要で、何をどうしなければいけないのか、今後も引き続き、本音で話し合うことのできる場を設ける必要がある、と思います。(古くて新しい難しい問題です。)今では、難聴者たちが自分たちの切なる思いを、社会に積極的にアピールするなど地道な活動を続けてきた経緯もあって、難聴者を取り巻く社会環境が大きく変わってきているように感じています。ハンディのあるなしに関わらず誰もがお互いの気持ちを大切にし、困ったことがあれば、一緒に話し合い、できるところから解決し、少しでも居心地のよい環境を築き上げることができたら、と強く望んでいます。(相手の人格を尊重し、信じあうことのできるのは、とても素晴らしいことだと思います。)
【活動初級分科会】

まず、平成14年時点での各地域青年部活動実態調査の結果について、報告がありました。この調査は、最近の各地域青年部活動状況を把握するために、全難聴青年部で実施したものです。
最近の各地域青年部を見ると、
1)青年部活動の低迷
2)青年会員の難聴協会離れ
が加速され、青年層の会員が減少していることがはっきりと浮き彫りにされた。
その原因として、
1)青年部活動というは何をしたらいいのかわからない。
2)青年部活動が負担である。事業(行事)が多すぎる。
3)青年部活動者に問題意識が乏しい。
の3つが、活動運営上の問題点としてあげられました。
このため、
1)事業、企画の参加者が少ない。
2)新しい部員が入らない。
3)青年部役員のなり手がいない。
ことになり、結果的には、
1)青年部主催の事業や企画を行なう力が落ちてしまう。
2)更に青年会員の減少を招く。
という悪循環に陥ってしまう。それに一度活動を休止してしまうと、再び活動を開始するまでにかなりの年月を要してしまうことになる。
次に、調査結果をもとに、「青年部活動を活性化させるためにはどうすれば良いか?」を分科会参加者の皆さんで討論しあいました。討論した結果をまとめると、活動の3本柱として、
1)仲間作り
2)学習作り
3)要望作り
の3点が大切であることを再認識しました。つまり、仲間ができたならば、次は切磋琢磨に社会的知識、社会的教養を身につけるべきです。そして、そのステップまで到達した時、我々の前には、社会的障壁が大きく立ちふさがっていることに気付くであろう。その多くは、個々の力では解決しがたいものであって、多くの同胞の団結によって解決、または改善できるのではないでしょうか。
また、活動の3原則として、
1)わかりやすい(全員が情報を共有できる)
2)無駄がない(人の無駄、時間の無駄、金の無駄)
3)効果的な活動
を心がけねばならないと思いました。


 
第10回全国中途失聴者・難聴者福祉大会(京都府京都市)
平成15年10月11日()〜13日() 京都府民総合交流プラザ 京都テルサ
参加申込者:933名(平成15年10月9日現在)
テーマ:
いま求める私たちの福祉
1日目:分科会
「安心して暮らせる介護保険・医療制度を!」 、「レクリエーションで組織の活性化を!」、「最新の機器・人工内耳の現状」、「働きやすい職場を目指して」、「軽・中度難聴者の存在や問題を知って欲しい!」、「コミュニケーション手段のTPOを考えよう!」、懇親会
2日目:大会式典、
記念講演 「力いっぱい生きよ!」講師 ジェフ・バーグランド氏、各分科会報告、アトラクション 大蔵流狂言「千鳥」(京都伊呂波会)、大会宣言、大会決議、閉会セレモニー

第2分科会「レクリエーションで組織の活性化を!」 かたつむり会員 西原泰子
戦いすんで日が暮れて、全国大会がもう何日も過ぎて、なお、この満足感は何だろうか?観光も含めて3日間は、よく動き、よく働き走り回ったと思う。
6つの分科会のパネラー用、要約筆記の諸道具、録音テープ類等々の一式を小槙さんと2人で前日に揃え、各分科会会場に届けて当日に臨んだ。
全国要約筆記問題研究会(全要研)の全国集会を過去2回開催した経験をもつ“かたつむり”は、全難大会を同じ協力するのなら最初からメンバーに入れて欲しいと、私たちから願い出し、「実行委員会」に数名が参画した。
京都テルサでの分科会会場と、その参加人数によっては会場入り切れないかもと早くから危惧していた。その入れない人たちの受け入れ皿に大ホールを借用し「レクリエーション」の分科会にしては?と構想を練った。理由は今、全国的に難協も高齢化しマンネリ化している状態。その活性化に私の友人で岐阜の全要研集会で好評だった清水津利江氏をレクリエーションの指導者に、事例発表は島根県出雲市で難聴者と他の障害者とミュージカル等をしている「ベートーベン」を、座長には上野哲人氏をと、3人からは一斉に承諾を受け、府難聴者協会の坂本貞夫氏を司会とチーフに西原と共に準備を始めた。
申込みの蓋を開けると、各分科会は超満員、希望通りの分科会に参加できない人が続出した。早々に「学習したいのにレクリエーションとは?!」とキャンセルした人もあったと聞く。さて大ホールに人数分の座席を前方に置き、残りの座席は見事に収納してもらい、約百坪の広場の設営が出来た。「ベートーベン」からは、OHCやモニターTV等の注文があり、機器に弱い私は聞くだけでも気が重くなった。大会の前夜、準備に現場に行くと、さすがプロ、業者が事例発表者の注文通りに情報保障ができていて、すべてスタンバイ!安心して大会当日を迎えることができると信じた。
私の役割は第2分科会である。しかし受付の混乱、苦情の処理、本部との連絡に気が狂う思い、その間をぬって大ホールをのぞく有様だった。「しまった!OHPが1台ではみえにくい!今更、要約筆記者の確保も無理だ!」と図面の上と、現場との違いを思い知らされた。次にのぞいたのが広場でのゲームだった。
3つのゲームに分かれて、1つは文学的で漢字やひらがな文字を糸で釣って家族で単語にするゲーム。1つは「新投扇」でトックリの様の形に空気を入れ、扇で倒していくゲーム。1つは「ガラツキ」ソ連の丸太を放るゲームに似ている。この3つのゲームも場所が狭すぎた。
「要約筆記者は?ノートテイクを誰もしていない!」指導者の説明も手話だけではわからない。私は一目散に走って受付にいる要約筆記者を呼び集めて、ノートテイクをしてもらった。ロビーで展示をしていた業者が「走る肉弾」と私のことを表現していたらしいが、各ゲームに要約筆記者を配置していなかったことは大きなミスだった。それでも懇親会の時「レクリエーションに回されたけど、水戸黄門の印籠がよかった」とゼスチャーで示す人もいて救われる思いがした。結局、第2分科会は265名だった。アンケートによると、
・ゲームの説明のサポートがもっと欲しかった。
・遠くから来ているのに希望の分科会に入れなかったのはちょっと残念。
・OHCの位置がなぜ舞台の上なのか?会場から暗くて見にくかった。
参加者が100%の満足は無理なこと。当日の要約筆記や要員は京都府向日市の「フレンド」と長岡市の「ラビット」の皆様に力強い応援をいただいた。大会終了後、清水氏のところにゲーム器具販売店の問い合わせがあり、実際に購入された人もあるとか。各地域で難聴者が「組織の活性化」づくりに一役担っていただければレクリエーションの分科会も意義があったと言えるのだが。

第3分科会「最新の機器・人工内耳の現状」 かたつむり会長 市井秀子
10月10日の夜「ひよこ」の機材を運んだ後、3階東館の大会議室へ入る。
チーフの山口府難協会長、情報保障担当(PC・OHP)の亀岡「こだま」サークルの4人と、セッティングの打ち合わせ。要員集合のとき見た様子と随分違い、中央に大きなスクリーンが降り、両側に机が1台ずつ。舞台がなくフラットの床に机・椅子を置くことになるので、参加者からパネラーや、助言者、座長の顔の表情や、口元が見えにくいのではと困惑した。
大きな部屋なので、PC要約筆記担当,OHP担当者とスクリーンを置く角度等を相談。「見やすい視点に」との意見で、PC要約筆記のスクリーンを前に置き、中間にOHP用スクリーン(横に手通訳)を置き、左側に統一した。「手書きと、PC要約筆記が比較、補いながら同じ視線で見ることができて良いのではないか」との結論になった。
当日、パネラーの一人がパソコンのパワーポイントを使用して発表されるため、「プロジェクターは、大阪の○○さんが持ってこられる」と、聞いていた。しかし、借りる約束になっていた相手からは要領の得ない返事で、山口会長と、あちこちに問い合わせに走り、危機一髪で開始時間に間に合いほっとした。担当者と不十分な連絡で思い込み違いが発生していたようだった。
始まる早々「ループの声が混線しているよー」と言われ、慌ててアシストホン借りに案内する。併用されると、「OK」の笑顔で一安心。原因は、業者と会館のループに不調和が発生し、軽度難聴者に影響があったようだ。市難協で長い間役員をされていた方が「アシストホン初めてだが、効果すごい」と喜ばれたのでPRの必要性を感じた。だが、アシストホン設置近くで、女性の2人が私語をされ、私が座っているところに良く聞こえて、大変耳障りな初めての経験をした。
パソコン要約筆記は、「要約された情報量で、分かりやすく上手だった!」と難聴者の声。しかし、健聴者は「大分抜けていたね・・」と、評価が分かれる。聞こえの差、理解の差で意見が異なり、万人向けの要約筆記って難しい・・と思った。
視覚障害も併せ持つ方の参加があり、ノートテイク希望で「かたつむり」の2名で担当されたが、「対応は大変だった!」との報告をいただいた。資料は本人がルーペでゆっくりと読まれたそうだが、どの程度分かっていただけたのか・・。今後重複障害者の参加は増える可能性があり、情報保障のあり方は検討課題になった。

第4分科会「働きやすい職場を目指して」 分科会チーフ担当 渡部恭子
本分科会のメインテーマは「働きやすい職場を目指して」で私達難聴者、中途失聴者にとって働きやすい職場を目指すには、何が必要で、何を訴えていくべきかを考えようというのが、メインテーマの内容です。
会場の部屋が全分科会でも1番小さな部屋でしたが、他分科会に回された人が「立ち見でもいいから入れて欲しい」と懇願されるほど会場内は人々で溢れていました。
本分科会では、討論形式で、「個人レベルで取り組めること」「組織レベルで取り組めること」の2つのアプローチで行いました。
「個人…」では石倉さん(パネラー)の体験談で「会議」「研修」「外部との連絡」、それぞれに自分なりの工夫や努力をしながらも、やはり情報保障がないことの苦しさ、職場に理解を持ってもらうことの難しさの話から始まり、当日の朝、急遽参加が決まった全要研の太田理事長や、幹部である十時さんの要約筆記者の立場からの話もありました。
京都障害者職業センターの野澤さん(パネラー)の、障害者が働くための支援制度に関するお話は、物凄く参考になりました。それ以上に、野澤さんが「困ったことがあれば、何でも相談してください!」と、私たちをサポートしたい熱意が溢れていて、とても嬉しく思いました。
企業側は、さまざまな支援制度に関して、存在を知らないことが多いです。もっと企業に支援制度を知ってもらわないと、アピールをしないとなりません。私たちも、支援制度には何があるか勉強しないといけません。
「組織…」は、職業プロジェクトが取り組んでいる、職場環境改善マニュアルの活用方法と、障害者差別禁止法制定に向けての2つの面で討議しました。
職業PJは清成君がアンケート結果をもって、私たち難聴者は支援制度や通訳派遣制度を知ってはいるが、具体的な制度の内容に関しては、何もわかっていないことを鋭くあぶりだしました。マニュアルには制度に関する内容も盛り込むので、制度に関する知識はこれから必要です。
マニュアル活用方法は、配布と同時に説明会を開いたり、マスコミの力でPRしたりして、職場に読んでもらう状況をいかにして作るかが大切では、という方向で案が出ました。
日本版「障害者差別禁止法」は、「合理的な配慮」という観点で、情報保障を差別禁止法に取り入れることを求めていこうと。「欠陥条項をなくす会」の臼井さんが、差別禁止法についてADAの例も交えながらお話ししてくださいました。かなり深い内容で、勉強になりました。差別禁止法は私たち障害者が主体の法律。もし制定できたら、この法律が私たちの職場環境改善の強力な後ろ盾になるということです。この差別禁止法制定に向け、全難聴も本気で取り組んでもらいたいという方向で結びました。また、当然私たちも組織任せにせずに、1人1人が制定に向けて動いていかなければならない。ADAもはじめは制定はムリだとアメリカ国内で言われていたのですが、インターネットを利用し、障害者1人1人が動いていった結果、制定が叶いました。日本でできないわけがないのですが、やはり人任せではなく、自分から動かないとなりません。
法律だけでなく、聞こえの問題に関する理解を広め、また、職場の人たちの「心のバリア」を取り払う努力もみんなに求められます。
(全難聴青年部ML“ヤンナン”投稿 佐々木座長さんより)
第4分科会のチーフ担当させていただいた渡部です。
当日は、本部との連絡や参加者の応対などバタバタしておりまして分科会の内容をメモする事ができず、本分科会の佐々木座長さんに了承を得て、全難聴青年部ML“ヤンナン”に投稿されたメールを抜枠させていただきました。
福祉大会まであと4ケ月の時に、第4分科会チーフから都合で変わって欲しいと依頼を受け、市難聴協会に入会してまだ2年目という事もあり不安でしたが、市難聴協会の方々と親密になれる機会だと思い、お引き受けさせていただきました。
実行委員会議、チーフ会議、要員集会と平日の夜が多く仕事が終わって会社から直行するのはきつく、また帰宅後も第4分科会の座長、パネラー達に連絡や確認のメールやり取りしたりと今までの生活が変わり、大会に関わってこられた方々のご苦労を体験する事ができ、その方々の奉仕があったからこそ、私たちが大会に参加できるという有難さが身に染みました。
また、今まで青年部だけ関わってきましたが、市難聴協会の方々と接する事で色々と勉強になりました。チーフ担当をさせていただきありがとうございました。

第5分科会「軽・中度難聴者の存在や問題を知って欲しい!」 座長 中川 浩
昨年の大会に引き続き、2回目の分科会でした。軽・中度難聴の当事者たちが初めてこの分科会を運営しました。3人のパネラーから報告がありました。まず、浅井氏から、軽・中度難聴者としての立場から要望が出されました。
(1)補聴器の購入補助 (2)仕事を探す、働く上での困難の改善 (3)障害認定の改善 (4)心理ケアとして、難聴で心が傷ついている人へのサポートの4つです。
次に、全難聴の佐野副理事長から、デシベルダウン運動を中心にした軽・中度難聴への取り組み状況の紹介がありました。「難聴による弊害は難聴の重さに関わらず同じである」という認識を改めて強く持ちました。最後に、愛媛大学の立入助教授からは、「軽・中度難聴児の現状」が報告されました。
(1)福祉制度の対象にならないので、補聴器が全額自己負担となり、両親の負担が大きい (2)軽・中度難聴に対する理解がないため、教育的にも様々なの障害が起こる。一側性難聴の児童も教育を受ける上で理解してもらいにくい。と話されました。今後の課題として、福祉制度を改善して、必要な人には補聴器を給付する等の改善が求められることを報告しました。
報告を受けて、3つのグループに分かれて討論をしました。グループに分けることにより、参加者の発言機会を増やすことができました。磁気誘導ループの混線はあったものの、自由に意見を言いあい、論議を深められたのはよかったと思います。補聴器グループでは、「補聴器についての勉強会を開催するといいのではないか」との意見が出されました。活動・交流グループでは、「軽・中度難聴者が相談してもらえる場が非常に少ない」ことが課題としてあげられました。心理ケアグループでは、「お互いの体験談を聞いて、共感することが大切である」ということを確認しました。
質疑応答と参加者全員の総合討論では、
(1)一側性難聴者の困難さ (2)軽・中度難聴児への教育が充実していないこと (3)厚生年金による補聴器購入補助制度の活用の3点が改めてテーマになり話しあいました。そして、デシベルにこだわらず、必要な人には補聴器を安価で供給できるために難聴者協会だけでなく、医療関係、補聴器メーカー、言語聴覚士、難聴児教育、各方面の人たちの協力をあおぎながら、何よりも軽・中度難聴者自身の訴えが大切であると、まとめました。軽・中度難聴者の困難さは、この分科会でさらに明らかにされました。この改善は社会に対して求めていかなければならないと認識を深くしました。この分科会の参加者が地元に帰り、「軽・中度難聴問題を社会に知らしめる行動」を起こされることを望みます。この第5分科会に第1希望をあげたのが定員の倍以上でした。希望に添えなかった方には申し訳ありませんでした。けれど、こんなに関心が高いとは、予想もできませんでした。今後も、さらに掘り下げて話し合っていき、このテーマは継続していくべきだと強く思います。
最後に、グループ討論のために部屋を2つも用意していただく、ループも張っていただくなどいろいろとご配慮していただいた実行委員会のみなさまにお礼を申し上げます。有り難うございました。

第5分科会「グループ討論/難聴者の心理ケア」 富山県難聴者協会 井原由里子
平成15年も残すところ後わずかとなりました。今年は全難聴福祉大会が京都市で開催され、第五分科会の準備を担当しましたので、大変充実した一年となりました。
さて、第五分科会「軽・中度難聴者の存在や問題を知って欲しい!」では3つのグループ討論が行われましたが、そのうちの一つ「心理ケア」グループを私が担当しました。当日の狙いとして軽・中度難聴者の心理がどのようなものであるのか、参加者のみなさんに知っていただく意味で各自の経験談を発言してもらいましたが、わずか1時間の制限上、途中で終わることになりました。
終わった後の感想として「ケアの方法が知りたい」「私の心の苦しさを解消してもらいたい」というカウンセリング的なことを求める話をよく聞きましたが、司会者(私)の力不足が悔やまれてなりません。
軽・中度難聴者に限らず、難聴者全般において心のケアを求める人達はたくさんいます。福祉大会2日目の全体会でも「高齢難聴者の心理ケアをどうしたらよいのか?」という質問がありました。また各地域の協会でも難聴に関する個別相談などを行っているところもあるようです。
4年程前、難聴者の心理に関する書籍として『聴覚障害者の心理臨床』(村瀬佳代子・編)が出され、今年の8月には『中途失聴者と難聴者の世界』(山口利勝・著)が出されて、その心理状態が鋭く解明されるようになりました。しかし難聴者の心のケア、心理的サポートを充実させていく方法はまだまだ未開拓の状態ではないでしょうか?また私達難聴者が同じ難聴者の心をケアする方法として、どのようなサポートをしていったらよいのかはまだまだ研究していかなければいけない課題だと思います。
しかし私が日頃気になること、それは自分が難聴者である故、同じ難聴者の気持ちはわかったつもりということはないでしょうか?本当にわかっているのでしょうか?相手の経験談を自分の経験とだぶらせて自分の主観や考えから相手をサポートしていることはないでしょうか?また自分の物差し(尺度)で相手を見ていないでしょうか?ある意味、これは大変危険なことです。場合によっては相手を傷つけてしまいます。
ある難聴者が他の難聴者に「自分が難聴であることを言えない」という悩みを話したら「自分の障害をちゃんと認めてきちんと話さないとダメだ」と言われたそうです。長い間、そのことで悩んできた人にこのような言葉で解決するのかどうか、ちょっと疑問ですね。同じ難聴者といえども一人一人の置かれている状態、経験してきたことはみな違います。また難聴者が10人いれば10人の個性があるとも言われています。私達はまず相手の話をよく聞く耳を持たなければいけないのではないでしょうか?
社会全般で行われるカウンセリングはまず人の話を黙って聞くことが基本です。カウンセラー側から一方的なアドバイスをされることはまずありません。
また病気や障害を持った人達が集まる自助グループで行われるピア・カウンセリングもその基本は人の話を黙って聞くことです。一人の発言が全部終わるまでは途中で口を挟まない、話し終わった後も批判や同調はしないというルールがあります。仲間同士で行うカウンセリングは黙って聞く、話すが基本なのです。この基本が守られていく中から自分が抱えている問題をどうしたらよいのか、自分自身の力で解決する術が身についていきます。
人の話を聞くことにより様々な人達の人生経験に触れることができ、悩んでいるのは自分だけではなかった、と自分の視野が広がります。また自分の話を聞いてもらうことにより、自分の中にある心理的な負担、苦しい感情が解放されます。さらに共感して聞いてもらえることができれば何よりもその人の心が癒されるのです。
山口利勝さんの『中途失聴者と難聴者の世界』でも「私はなぜ精神的な危機を乗り越えることができたのか」という項目で「精神的な危機から回復に向かう際に重要だったのは、他者に共感してもらうことだったように思う」(要約)と述べています。自分の話を聞いてくれる人達がいるというのは、その心理的負担において大きな救いとなることでしょう。
しかし難聴者は聞くことに障害がある故、日頃の生活の中ではあまり人の話を聞く習慣が身についていないかもしれません。協会の行事などで要約筆記やループ、手話通訳を用意してもあまり人の話を聞いていない人を見かけます。「一体、何を聞いていたのだ!」と思うことも何度かありました。人の話をよく聞くことは自分のことを話すのと同様に貴重なことであり、癒されるものなのです。黙って聞くこと、話すこと、これが障害を持った仲間同士がお互いの心を支え合う基本なのではないでしょうか?
しかしそういう私もいまだに人の話をよく聞く習慣が身についていないようです。まだまだ難聴者の心のケアは開拓途上です。

第6分科会「コミュニケーションのTPOを考えよう」 中川美希枝
去る15年10月11日(土)〜13日(月)に3日間の日程で、京都テルサ(南区)において開催された第10回全難聴福祉大会に参加させて頂きました。全国から約1000名近い参加者、関係者の方々が集まり、初日は6つの分科会が開かれ、私は第6分科会の参加です。
分科会では1名の座長さんと4名のパネラーさんで構成され、座長さんの進行で、パネルディスカッション方式で約4時間近くエネルギッシュに話し合われていました。パネラーの方は、中途失聴された人工内耳装用者と難聴者、そして健聴の言語聴覚士の方とそれぞれの立場からのコミュニケーションのTPOについての意見が発言されました。
まず、分科会のテーマである「コミュニケーションのTPOを考えよう」について、以下箇条書きにて記述させて頂きます。
・健聴者中心の社会の中では、聴障者はコミュニケーション障害者となり、孤立しがちである。
・聴障者特有のコミュニケーションとして、主に口話(読唇)、要約筆記、手話、補聴器、人工内耳といったものの他に携帯電話やパソコンでのメールやチャットでのやり取りなど幅が広がってきている。
・聴障者それぞれのコミュニケーション手段は大きく分けると3つあり、「視覚情報を活用するもの」「残存聴力を活用するもの」「上記の両方を活用するもの」がある。それらをTPO(時、場所、場合)に応じて、コミュニケーション手段を取る事によって、どのような配慮や工夫が必要か、パネラー自身の体験や事例を交えて話し合われた。
・分科会の柱として、トータルコミュニケーションの理念が提示された。様々なコミュニケーションの状況に接近しようとするもので、口話、読話、筆談、手話、補聴器などをお互いに相手のコミュニケーション手段に合わせて用い、理解し合うという姿勢を持つという事である。
・身近な問題点として、いくつかの事例が出された。例えば、聴障者同士の会話の中で、話があいまいなまま理解してしまい、コミュニケーションのすれ違いが生じ、溝を作ってしまう。その場合の解決方法としては、あいまいにしないで、遠慮なく聞いて確認する勇気を持つということである。
・コミュニケーションは相手との会話のキャッチボールなので、いろんな方法でコミュニケーション方法を探し、成立できるようにするのが相手に対する思いやりにつながっていくのではないかと思う。
・話のすれ違いから生む誤解をなくすには、言葉の言い回しをうまく使い、「失礼ですが…。」「…かな?」などとたずねることで解決していく。
・健聴者の立場から見て、日頃感じている事として、聴障者が誤解している事に気付いたら指摘して欲しい。「○ナ」などの略語を「まるナ」と間違えて覚えて発言していたり、漢字の読み間違いが多いので、気付いたら教えて欲しいという要望がある。
まとめとして…
・コミュニケーションのTPOは大きなテーマだが、トータルコミュニケーションをひとつの核として健聴者の方々や社会に理念を理解してもらう。
・聴障者はコミュニケーションの弱者というのを自分で作らず、きちんと伝わったかお互いに配慮を取る事が必要である。
・コミュニケーションのずれがあった場合、気付いた人が注意を促す。立場が違うと、わからないことからスタートするのが大切で、理解してもらう努力をいろんな形であきらめずにやっていく。
以上、つたない報告で申し訳ないのですが、当時は記憶力に自信がなく、話を聞くより必死に記録していたものをまとめさせて頂きました。
今回の参加で特に印象に残ったのは、情報保障の充実ぶりでした。分科会でもパソコン要約筆記が導入され、OHPスクリーンに発言者と同時進行で内容が映し出されたのは感動的でした。また、パネラーの方々も従来のOHPスクリーンや手話通訳の方を中心に見ていくのに加え、各自の前に1台ずつ置かれたパソコンの画面に打ち出された内容を追っていく事で時間を有効に活用できているように感じたものです。
2日間の参加でしたが、沢山の方々に支えられて日頃の生活に役立てて頂いている事を改めて実感した大会でした。実行委員の皆様をはじめ、関係者の方々大変お疲れ様でした。どうもありがとうございました。


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