よもやま11 

カマキリのオスは…

 秋が深まっていくと郊外の草むらではカマキリが産んだ卵を目にします。

 そういえば、カマキリのメスってオスを食べてしまうんだっけ?
 人間の感覚からすると、いくら子孫を残すのに栄養がいるからって母親が父親を食べるなんて…かなり残酷な自然の掟という感じがします。とかくメスが残酷とか、弱いオスの象徴として語られるカマキリですが、果たしてオスは食べられるのがいやなのでしょうか?

 その昔、2対のカマキリ夫婦がいました。どちらも同じ種類のカマキリなのですが、片方のオスには、突然変異が起きて遺伝子が少しだけ異なりました。性質として何が違うかというと、本来のオスの方は、メスに食べられそうになると「いやだっ。いくら子供のためとはいえ…」って逃げてしまうのですが、もう片方は自分達の卵を宿したメスに食べられそうになると、充実感を感じて「気持ち良い」って感じながら身を捧げてしまうというのです。

 さて、秋。どちらの母カマキリも卵をたくさん抱えて栄養が欲しい季節。最初のメスはオスを捕まえて食べるのに一苦労、代わりに他の獲物を獲るにしても使うエネルギーも馬鹿にならないし、もしかすると収穫なしだったりして、栄養不足で卵を産めないなんてことも…。一方、後者のメスは。労せずして栄養分をゲット、卵もたっぷり産むことも出来ました。両夫婦が残した卵が孵る季節には、おそらく、「進んでメスに食べられたオス」の遺伝子を持ったチビちゃん達の方が圧倒的に優先して大人カマキリになることでしょう。

 こういうことが何世代も繰り返されるとどうなるか?おそらく「子供のために犠牲になるのは気持ち良い」遺伝子を持つカマキリが多数派になるのでは?もちろん、突然変異が起こる確率は非常に小さいから、長い歳月が必要なのでしょうけど…。

 でも、そう考えると、必ずしも、メスにむしゃむしゃ食べられているオスを見て、「哀れだなあ…」と思う必要はなさそうです。

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