〜「世論」「早急」「施行」〜
これらをあなたはなんと読みますか?ちなみに、わたしは「よろん」「そうきゅう」「しこう」と読みます。でも「せろん」「さっきゅう」「せこう」と読んでもいいですよね。「だから何だ」と言われると、返答に困りますが、世界の言語の中で日本語は難しいと外人に言わしめる原因に、漢字の読み方を正確にこなすことの困難さがありますよね。上の熟語のように、どちらの発音でも良い場合なら間違いは生じないでしょうが、例えば「施行」につられて「施工」まで「しこう」とよんでしまうことだってあるかもしれません。
漢字の読み方だけでなく、イントネーションも難しいですよね。イントネーションは多少間違えても通じるため、それほど問題にされませんが、最近、正確に(標準語を)発音できる人がきわめて少ないような気がします。私の知る限りで、イントネーションを間違いやすい単語として、「背景」や「周り」等が挙げられるのではないでしょうか。どちらも、低いほうから始まり2文字目で上げて最後まで水平(例えば、「民放」「同じ」等と同じ)、というイントネーションだったと思います。でも、最近はこれらを尻下がりに発音する人がすごく多いんです。とくに「背景」に関しては、民放のアナウンサーのみならず、NHKのアナウンサーでさえも間違って発音しています。あの「野茂」のイントネーションまでこだわったNHKですよ。TVでそれを聞くと、いつも私は、『それじゃ「拝啓」だろう。』と思うのです。 尻下がり発音は、ここ最近の傾向らしいです。私の説(証拠は無いが)は、「関西弁一般大衆語化説」です。関西弁は「紙」を標準語の「神」のように発音します(関西弁の「神」の発音はまた少し違うらしいですが…)。関西弁のイントネーションの特徴のひとつとして、標準語で尻上がりに発音する単語の多くを「尻下がり」に発音する、ということが挙げられます(ひとつだけ例外を見つけました。「姫路」です。関東の人の多くは「岩手」と同じイントネーションだと思っているようですが、実は「車」と同じなのです。非常にまれな例ですが…)。多くの人は知らず知らずのうちに関西弁の発音がうつっているのでは、というのが私の説です。NHKの朝の連続小説ドラマの多くは半年もので、東京と大阪のNHKが交互に担当します。NHK大阪が担当すると「ふたりっこ」や「やんちゃくれ」のように、大阪が舞台になります。すなわち、北海道から沖縄まで典型的な日本人の朝の半年分は関西弁で始まるのです。「朝のドラマなんて見ないよっ!」ていう人もいるでしょうが、その中の何人かは夜のお笑い番組を見るでしょう。お笑いタレントの多くは関西系です。人が使いこなす発音に対するTVの影響はかなり強いと思います。その証拠に、TVが普及してから生まれた若年層ではほとんどの人が標準語と方言を使い分けることができます。
という私は、つい最近まで「腿」のことを、「桃」と同じように発音していました。私はどちらかというと、上記の例とは逆に尻下がりの単語まで尻上がりに発音する傾向があるみたいです。これは、北関東や九州に多い傾向のようです。また最近、「カレシ」「クラブ」のように一部の方々の間でも、尻上がり発音が流行みたいですね。
最近、広辞苑の第5版がでました。現代特有の単語が追加され、「行う」が「行(な)う」と書かれるように、時代の変化による日本語の変化は拒絶を受けつつも次第に受け入れられていきます。単語のアクセントやイントネーションを収めた、NHK出版のアクセント辞典の内容も現代人の言葉に合わせて変化していくのでしょうか?
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