3.4 ピッチベンド

ピッチベンド音の高さに関する情報です。音の高さは通常ノートオンメッセージ中のノートナンバーで送られますが、ノートナンバーは半音単位でしかついていないため、その中間の値をとることができません。
それに対し、ピッチベンドメッセージは発音された音のピッチ(音の高さ)を連続的に上下に変化させられます。これによってギターのチョーキングやシンセサイザーのソロ演奏など色々な表現ができます。

ピッチベンドの使用例ピッチベンドを使ったサンプルを聞く

MIDI を送信できるキーボードの多くはピッチベンドを簡単にコントロールできます。ピッチベンダーとよばれるものがついているからです。
さまざまなタイプのピッチベンダーがありますが、通常は操作をしていないときにはセンターに戻るような仕組みになっています。ピッチがずれたままでは演奏がおかしくなるからです。

ピッチベンダーの写真

ピッチベンダー
鍵盤の左にある 2つのホイールのうち左がピッチベンダー。
触っていないときには自動的にセンターにポジショニングされる。


3.5 ベンドレンジ

ピッチベンドを使う際に重要なものの 1つに「ベンドレンジ」があります。これはピッチベンドのピッチシフト量を設定するためのパラメータで、普通半音単位で設定できます。
例えば、ベンドレンジを 12 とすれば上に 1オクターブ(= 12 X 半音)、下にオクターブの間でピッチ変化させられます。ベンドレンジの初期設定値は 2 になっていることが多いようです。

 ベンドレンジ
= 2
ベンドレンジ
= 12
最大値 +8192E4D5
中間値   0D4D4
最小値 -8192C4D3
ベンドレンジの違いによるピッチの相違
ピッチベンドが同じ大きさでも実際のピッチのずれ具合はベンドレンジに依存してしまう。

最近のシンセサイザーは音色ごとやマルチティンバーの場合は受信チャンネル事にベンドレンジを決められるものが多く、機種によっては+の最大値と−の最大値を違う値にアサインできたり、+−を反転できたりする機種もあります。
このベンドレンジを設定するためにピッチベンド・センシティビティというメッセージがあります。これはコントロールチェンジでも RPN という少し特別なものを使用しています。RPNについては後述します。


3.6 ピッチベンドメッセージ

ピッチベンドメッセージは機能的にはコントロールチェンジの一種ですが、メッセージは次のような形式で独立に定義されています。

☆ピッチベンド
 EnH xxH yyH

n : チャンネル (0H〜FH)
xx : LSB (00H〜7FH)
yy : MSB (00H〜7FH)


メッセージが独立なのには理由があります。1つめに精度の問題。コントロールチェンジはデータバイトが 1バイトです。つまり、128の分解能しかなくピッチを滑らかに変化させるには荒すぎます。そこでデータバイトを 2バイトにして、分解能を 14bit、つまり 16,384に分割できるようにしてあるのです。
2つめにデータの送信量の問題。データバイトが 2バイトでもバンクセレクトのように MSBと LSBを用いればメッセージとしては成り立ちます。しかし、ピッチベンドの連続的に出力されるという性質上どうしてもデータが混み合うのでデータ量を減らす為にこのようになりました。
1つ気を付けないといけないことは、LSBが先に送信されて MSBが後に送信されることです。


3.7 ピッチベンドとシーケンスソフト

シーケンスソフトイベントリストウィンドウでピッチベンド情報を表示させたとき、表現方法は大きく分けて2種類あります。
一番多く使われているのが最小値を -8192、最大値を 8192、ピッチベンド効果のかからないセンターを 0 とするタイプです。もう 1つは最小値を 「0, 0」、最大値を 「127,127」、センターを 「0, 64」というように MSBと LSBを表示するものです。
前者のタイプの方がベンドの様子を的確に表せるので、ほとんどがこの方法をとられています。
ピッチベンドの微妙なニュアンスは、ステップ入力よりもリアルタイム入力の方が容易にまた表現も付けられるのでリアルタイムで入力されることが多いようです。最近のシーケンスソフトはステップ入力でも感じをつかみやすいように、ピッチベンドの変化の様子をカーブで表せるものが多くあります。

ピッチベンドをリストウィンドに表示
ピッチベンドの様子をリストウィンドで表示。このシーケンスソフトは +/- で表示するタイプ。

ベンドの様子がグラフィックでわかりやすく見られる
  ベンドの変化の様子をグラフィカルに表示しわかりやすくしている。


3.8 ピッチベンドのリセット

ピッチベンドは次のような場合にセンターの位置にリセットされます。
シーケンサなどで演奏しているときに演奏を途中で中断したりするとピッチベンドがセンターからずれた状態のままになってしまうことがあります。そのままでは演奏がおかしくなるのでピッチベンドをセンターにリセットしてあげる必要があります。
MIDI データを作成する際には曲の頭でピッチベンドとベンドレンジを設定するようにしておきます。こうすることで、ピッチベンドのずれやベンドレンジの違いに影響されずに正しく演奏できるからです。


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