3.12 コントロールチェンジの種類と効果 3

この節では音源の様々な設定を変化させるタイプのものを見ていきます。コントロールチェンジ70〜79と重複する機能のものもありますが、音源の対応具合等で使い分けることが必要です。

◎データエントリー
 MSB : CN = 6
 ( LSB : CN = 38 )
 Data = 0 〜 127

これは後述するRPNNRPN で指定したパラメータのデータ値を設定するのに使用します。
また、リアルタイムに音色を変化させる場合にも使用されることがあります。

◎データインクリメント
 CN = 96
 Data = ***
◎データデクリメント
 CN = 97
 Data = ***

データエントリーと同様にパラメータのデータ値を設定するのに使用します。
データエントリーとの違いはデータインクリメントはパラメータを +1、データデクリメントは -1変化させるだけということです。
データが *** になっているのはデータがなくても機能するので、特に値が決められていないためです。

◎RPN MSB
 CN = 101
 Data = 0 〜 127
◎RPN LSB
 CN = 100
 Data = 0 〜 127

RPN とは Registered Parameter Number の略で、MIDI の規格上で名称/機能が定義されているパラメータです。
MSBと LSBをこの順に組み合わせて送って使用します。RPN はどのパラメータを変化させるかを指定するだけなので、前述のデータエントリーをこの後に送信して値を決めます。
つまり、RPN を使うときは、

RPN MSB → RPN LSB → データエントリー

と 3つ組み合わせて送信するということです。
RPN として実際に定義されているのはわずか数種類しかありません。いくつか見てみましょう。


◇ピッチベンドセンシティビティ
 MSB = 0
 LSB = 0

ベンドレンジと呼ばれるもので、ピッチベンドを最大でどのくらい音程を変化させるかを決定します。
データエントリーMSB の値 1に対して変化量は半音が割り当てられていて、2で全音、12で 1オクターブ、24で 2オクターブというようになります。
ただし音源によって指定できるベンドレンジの上限が決まっているので、あまり大きな値にすると意図した通りのベンドレンジに設定できるとは限りません。
また 0にしてしまうとピッチベンドの効果がでなくなってしまいます。

◇ファインチューン
 MSB = 0
 LSB = 1

チューニングを微調整するためのパラメータです。
データエントリーMSB の値 64を中心にして上下に最大半音まで調整可能です。

◇コースチューン
 MSB = 0
 LSB = 2

ノートシフト(トランスポーズ)をするためのパラメータです。
データエントリーMSB の値 64を中心に 1変化する事に半音づつ変化しますが、ほとんどの場合上下 2オクターブ程度までしか変化しません。

◇RPNヌル
 MSB = 127
 LSB = 127

このパラメータは RPNで指定したパラメータをリセットするのに使用します。
RPN を使う場合は MSB、LSB を送信して機能を選択してからデータエントリーで値の設定を行いますが、このままの状態ではデータエントリーを受信するたびに値が変化してしまうので、都合がよくないことがあります。
そこで、データエントリーで値を設定した直後に RPNヌルを送信して機能の選択をリセットし、その後にデータエントリーのみを受信しても値が変化しないようにします。
曲の最初のセットアップなどで RPNをまとめて送信するときには最後の RPNの直後にこの RPNヌルを送信するのが一般的です。また、後述の NRPNもリセットされるので共通で使用されます。

◎NRPN MSB
 CN = 99
 Data = 0 〜 127
◎NRPN LSB
 CN = 98
 Data = 0 〜 127

NRPN None Registered Parameter Number の略で RPNと同様にデータエントリーと組み合わせて様々は機能の設定を行います。RPNとの違いは MIDI規格上での定義はなく、メーカーや機種ごとに独自で機能を設定してもかまわないことです。
このような機種依存のパラメータ設定はシステムエクスクルシブを使うことが多いのですが、代わりにこの NRPNを使用することが多くなってきています。これはシステムエクスクルシブを使った場合、扱いが複雑であったり、シーケンサーが対応していなかったりするためで、NRPNで設定することでこれらを解消することができます。
以下によく使用される NRPNをあげますが、NRPNの性質上すべての機種で有効ではないので注意して下さい。

◇カットオフフリケンシー
 MSB = 1
 LSB = 32

フィルターのカットオフ周波数を設定します。データエントリーの値 64を中心に +- するタイプです。

◇レゾナンス
 MSB = 1
 LSB = 33

フィルターのレゾナンスを設定します。カットオフフリケンシーと同様です。
◇ドラムインストゥルメントコースチューニング
 MSB = 24
 LSB = RR (RR :ドラムノートナンバー)

LSB で指定したノートのドラムインストのピッチを変化させます。
データエントリーの値 64を中心に 1変化ごとに半音づつ変化します。
*ドラムのノートナンバーはここを参照

◇ドラムインストゥルメントパンポット
 MSB = 28
 LSB = RR (RR :ドラムノートナンバー)

LSB で指定したノートのドラムインストのパンポットを変化させます。
値は CN=10 のパンポットと同様です。

◇ドラムインストゥルメントリバーブセンド
 MSB = 29
 LSB = RR (RR :ドラムノートナンバー)

LSB で指定したノートのドラムインストのリバーブのかかり具合を変化させます。
値は CN=91 のリバーブと同様です。

◎汎用コントローラ

汎用コントローラは効果の内容が特に決められておらず、機器ごとに自由に設定して使用することが出来ます。


3.13 コントロールチェンジ使用時の注意点

コントロールチェンジには RPNや NRPNなどのように 2つ以上のメッセージで機能するものや、バンクセレクトのように他のメッセージ(この場合はプログラムチェンジ)と組み合わせて機能するものがあります。これらのタイプのものはメッセージを送信する順番が非常に重要になってきます。
シーケンサーなどに打ち込みをする場合は入力するティック(位置)に十分注意しなければなりません。シーケンサーには RPNやバンクセレクトなどを 1つのメッセージとして簡単に入力できる機能をもっていることが多くありますが、この機能を使った場合全てのメッセージが同じティック上に配置されることがよくあります。
このようなデータは別のシーケンサーで再生したときに問題が生じる可能性があります。それはコントロールチェンジナンバーの若い順に送信するタイプのシーケンサーだと、MSBと LSBの順番が逆転してしまい全く機能しなくなることがあるからです。
その他にも音源によって細かな動作が違っているので音源の性質を良く理解しておくことが大切です。
曲の先頭で行うセットアップについては別の章で詳しくとりあげる予定です。


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