第2章 ノートデータ



2.1 ノートオン・オフ

ノートオン・オフは MIDIの演奏情報でもっとも重要で基本となるメッセージで、チャンネルボイスメッセージの一つです。チャンネルボイスメッセージとは音色や音量、音像定位など、発音を制御する情報でチャンネル事に指定できるメッセージのことです。
鍵盤楽器で言えばノートオン「鍵盤を押した」ことをあらわす情報ノートオフ「キーを離した」ことをあらわす情報になります。
ノートオンのメッセージには、「どの鍵盤が押されたか」を表すノートナンバーと「どのくらいの強さで押されたか」を表すベロシティの 2つの情報を含んでいて、ステータスバイト 1バイト + データバイト 2バイト(ノートナンバーとベロシティ)という構成になっています。
#ノートナンバーとベロシティについては次節以降で詳しく扱います

☆ノートオン
 9nH xxH yyH
☆ノートオフ
 8nH xxH yyH

n : チャンネル (0H〜FH)
xx : ノートナンバー (00H〜7FH)
yy : ベロシティ (01H〜7FH)


これはデータをチャンネル 1に送信する設定だとすると、ピアノ鍵盤の中央のド(ノートナンバー 60 = 3CH)を最大の強さ(127 = 7FH)で押した瞬間に「90H 3CH 7FH」の 3バイトが送信されるということです。
ノートオフメッセージにもノートナンバーとベロシティの情報が含まれています。
鍵盤を離すのに弱いも強いもないのでベロシティは「不要」なのですが、鍵盤の離し方を伝えるためにある情報であり、「オフベロシティ」と呼ばれています。
しかし、このオフベロシティを活用している例はあまり多くありません。
ノートオンでもベロシティを 0とすれば、ノートオフと同様の機能を持ったメッセージとなります。
この表現法のほうが利点があるので、ノートオフを使わないことが多いようです。

「80H 3CH 40H」 = 「90H 3CH 00H」

 2つのメッセージの機能は同じ


2.2 ノートナンバー

MIDI では音の高さを表すために一番低い音から順に 0 から 127までの番号を割り当てていて、この番号を「ノートナンバー」と呼んでいます。
88鍵のピアノの音域をノートナンバーで表すと 21から 108となり、ピアノよりも広い音域を MIDIではカバーしていることがわかります。ピアノ鍵盤上の中央のドはノートナンバーでは 60になります。

ノートナンバーはただの数字なので、音階的には分かりにくいものです。そこで、英語の音名とオクターブを表す数字とを組み合わせて表記するのが一般的です。

ド → C
レ → D
ミ → E
ファ → F
ソ → G
ラ → A
シ → B
音名の後ろにオクターブを表す数字を付ける。
例: C3、A5

ノートナンバーの音名表記はわかりやすいのですが、メーカーによってオルガンの最低音 Cを C0として表記したものと、ピアノの最低音 Cを C0とした2種類の表記が存在するので注意しなければなりません。
2種類のノートナンバーの付け方


2.3 ベロシティ

音の重要な要素である「音の強弱」をあらわすのがベロシティ (Velocity) です。
ベロシティとは本来速度を意味しますが、MIDI では鍵盤が押されたときの速度を検出してそれを音の強さとしているのでこう呼ばれています。
1 から 127の数値で表現し、数値が大きいほど音も強くなります。音源によってはベロシティの大きさに応じて弱い音は柔らかい音、強い音は強く明るい音を発音するなどの効果も表現されます。

音色や機種などによって実際の音量感は違いますが、中間的な音の大きさである mf を 72から 80ぐらいにして音の強弱を表すと良いようです。
ベロシティの目安


2.4 ゲートタイム

ゲートタイム (Gate Time) とは、キーボードの演奏でたとえるならば鍵盤を押している時間の長さのことで、MIDI データ上のノートオンからノートオフまでの長さにあたります。
デュレーション (Duration) と呼ぶこともあります。ゲートタイムはベロシティとともに演奏上とても重要な要素の一つです。

普通ゲートタイムは楽譜上で表されている音譜の長さの 80〜90% 程度の長さにします。音符いっぱいにのばしてしまうと、ダラダラした感じになってしまいます。
ストリングスなどの楽器や演奏法によってもともと音の余韻の短い場合は、音の長さに関係なく一定のゲートタイムにしたほうが安定した感じになります。一番使用頻度の多い長さの音符の 70〜90% ぐらいを目安にゲートタイムを設定してあげるとよいでしょう。
スタッカートやタイなどの記号があるときはそれぞれ適切な値にしてあげます。

下のフレーズはピアノで弾く簡単なメロディのものです。これを MIDIデータ化したものをシーケンスソフトで表示したのが下のイベントリストです。イベントリストの見方は次節で説明します。
譜例 1
ゲートタイムによる変化の例を聞く

譜例 1 のイベントリスト


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