ノートオン・オフは MIDIの演奏情報でもっとも重要で基本となるメッセージで、
チャンネルボイスメッセージの一つです。チャンネルボイスメッセージとは
音色や音量、音像定位など、発音を制御する情報でチャンネル事に指定できるメッセージのことです。
鍵盤楽器で言えば
ノートオンは
「鍵盤を押した」ことをあらわす情報、
ノートオフは
「キーを離した」ことをあらわす情報になります。
ノートオンのメッセージには、「どの鍵盤が押されたか」を表すノートナンバーと「どのくらいの強さで押されたか」を表すベロシティの 2つの情報を含んでいて、ステータスバイト 1バイト + データバイト 2バイト(ノートナンバーとベロシティ)という構成になっています。
#ノートナンバーとベロシティについては次節以降で詳しく扱います
☆ノートオン 9nH xxH yyH ☆ノートオフ 8nH xxH yyHn : チャンネル (0H〜FH) xx : ノートナンバー (00H〜7FH) yy : ベロシティ (01H〜7FH) |
これはデータをチャンネル 1に送信する設定だとすると、ピアノ鍵盤の中央のド(ノートナンバー 60 = 3CH)を最大の強さ(127 = 7FH)で押した瞬間に「90H 3CH 7FH」の 3バイトが送信されるということです。
ノートオフメッセージにもノートナンバーとベロシティの情報が含まれています。
鍵盤を離すのに弱いも強いもないのでベロシティは「不要」なのですが、
鍵盤の離し方を伝えるためにある情報であり、「オフベロシティ」と呼ばれています。
しかし、このオフベロシティを活用している例はあまり多くありません。
ノートオンでもベロシティを 0とすれば、ノートオフと同様の機能を持ったメッセージとなります。
この表現法のほうが利点があるので、ノートオフを使わないことが多いようです。
「80H 3CH 40H」 = 「90H 3CH 00H」 2つのメッセージの機能は同じ |
MIDI では音の高さを表すために
一番低い音から順に 0 から 127までの番号を割り当てていて、この番号を「ノートナンバー」と呼んでいます。
88鍵のピアノの音域をノートナンバーで表すと 21から 108となり、ピアノよりも広い音域を MIDIではカバーしていることがわかります。
ピアノ鍵盤上の中央のドはノートナンバーでは 60になります。
ノートナンバーはただの数字なので、音階的には分かりにくいものです。そこで、英語の音名とオクターブを表す数字とを組み合わせて表記するのが一般的です。
ド → C レ → D ミ → E ファ → F | ソ → G ラ → A シ → B | 音名の後ろにオクターブを表す数字を付ける。 例: C3、A5 |
ノートナンバーの音名表記はわかりやすいのですが、メーカーによってオルガンの最低音 Cを C0として表記したものと、ピアノの最低音 Cを C0とした2種類の表記が存在するので注意しなければなりません。
音の重要な要素である
「音の強弱」をあらわすのがベロシティ (Velocity) です。
ベロシティとは本来速度を意味しますが、MIDI では鍵盤が押されたときの速度を検出してそれを音の強さとしているのでこう呼ばれています。
1 から 127の数値で表現し、数値が大きいほど音も強くなります。音源によってはベロシティの大きさに応じて弱い音は柔らかい音、強い音は強く明るい音を発音するなどの効果も表現されます。
音色や機種などによって実際の音量感は違いますが、中間的な音の大きさである mf を 72から 80ぐらいにして音の強弱を表すと良いようです。
ゲートタイム (Gate Time) とは、キーボードの演奏でたとえるならば鍵盤を押している時間の長さのことで、MIDI データ上の
ノートオンからノートオフまでの長さにあたります。
デュレーション (Duration) と呼ぶこともあります。ゲートタイムは
ベロシティとともに演奏上とても重要な要素の一つです。
普通ゲートタイムは楽譜上で表されている音譜の長さの 80〜90% 程度の長さにします。音符いっぱいにのばしてしまうと、ダラダラした感じになってしまいます。
ストリングスなどの楽器や演奏法によってもともと音の余韻の短い場合は、音の長さに関係なく一定のゲートタイムにしたほうが安定した感じになります。一番使用頻度の多い長さの音符の 70〜90% ぐらいを目安にゲートタイムを設定してあげるとよいでしょう。
スタッカートやタイなどの記号があるときはそれぞれ適切な値にしてあげます。
- スタッカート
スタッカートは音を短く切る演奏法です。
ゲートタイムは音符よりもかなり短めの 50% 以下にします。
しかし、一定の比率でゲートタイムを決めてしまうと音の長さの長短が極端になりやすいので、ある程度ゲートタイムをそろえてあげると良い場合もあります。このとき、フレーズで一番よく使われている音符の長さの 50% 程度にしてあげるのがよいでしょう。
- レガート・テヌート
レガートとは、スラーなどのようにフレーズの音符のつなぎ目を隙間なく滑らかに演奏することをいいます。
ゲートタイムは音符の長さギリギリの 100% くらいにします。オルガンやブラス系などは少し長めに次の音と重なるくらいにしてあげます。逆に、スローストリングスやウォームパッドなどの余韻の長い音色の場合多少短めでもよいでしょう。
- タイ
タイは、同じ高さの音符 2つを連結させる場合に使います。一般に MIDIデータでは 1つの音として扱われます。つまり、つながった 2個以上の音符の長さ全ての長さを 1つの音符の長さとして扱っています。
下のフレーズはピアノで弾く簡単なメロディのものです。これを MIDIデータ化したものをシーケンスソフトで表示したのが下のイベントリストです。イベントリストの見方は次節で説明します。