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熊野詣で(つづき) 8月20日 第一話
<赤城ババアのたたり>

今日も曇天である。
昨晩寝る前にTVでチェックした天気図では2日ほど落ち着きそうな気配もする。
朝、早起きしてラジオで今日の天気をチェック。
やっぱり午後から晴れるようだ。

今日こそは勝負の日である。本宮・大斎原へ行くのである。
重い荷物を持つのはやめて、あっくんは身体一つ+杖一本。
私は、昼飯調理セットをあっくんのバッグに詰めて背負っていくことにする。

一昨日リタイアした小広王子から続きをやろうと思っていたのだが、作戦変更・・・
赤城越えを湯峰から入って逆ルートで船玉神社、発心門王子・・・と行くことにする。
どうしても、発心門から本宮に入りたいのである。

朝一番でバスで発心門まで行く手もあるが大斎原を見るのは徒歩で最初に見たいのだ。
この馬鹿なプランがこの日の親子を少し不幸にするとは・・・この時はまだ誰も知らない・・・・

8:03川湯温泉亀屋前のバス停を出るバスに乗り湯峰温泉へ行く。
湯峰温泉に降りると何か懐かしい感じがした・・・そう、僕の田舎の温泉場の雰囲気なのだ・・・
嫌〜な予感がしたのだが、そのまま少し観光をしてね・・・そうそう、最近温泉??事件が多いから源泉を見なきゃ。
湯筒を見て、その脇の神社にお参りをする。

神社前の自販機で飲み物を買っていると最初に買ったあっくんと私の間に地元のおじさんが割り込んできて缶コーヒーを買い出した。
すぐそこの公衆浴場?みたいな所のおじさんにも声をかけて「おい、あまいのでいいか?」何て聞きながら買っている。
そして、何食わぬ顔をして「お兄さんたちはこれから歩きか?たいへんだなぁー」等といいながら駄弁りに戻るのであった。
おぉ〜・・・と、これは温泉場現象で、ガキのころ修善寺温泉場でよく経験した怪奇現象が湯峰でも再現されたのである。
そう、今は寂れまくった昔の伊豆観光の横綱修善寺に雰囲気似まくり・・・ここは俺らの温泉だ、オメー等すみっこでおとなしくしてれ!ってね。
胡坐をかいて商売してはいけないよ・・・修善寺みたいに寂れるよ・・・いくら世界遺産だからって・・・。

赤城越えに入る前につぼ湯の写真を撮っていこうと思ったが、TVの撮影をしていてオヤジが一人お風呂に入っているのであった。
仕方なく控えめに写真を撮ることにした・・・仕事の人は、もっと早起きして撮影してくれればいいのにね。

赤城越え入り口を探しているのだが良くわからない。
看板はあるのだが、そこにある石段は「どうみても民家の裏の石段で、通路の上に民家の屋根がかかっているのでどう見ても違うしな・・・」
「もしここ上がっても、あの屋根とリュックが必ずぶつかっちゃうよ。ここは違うな・・・」
そこに、ゴミ捨て場に白い服を着た年配のオバさんを発見した。

私:「おはようございます。赤城越えってどこ入っていくんですかね?」
ババ「そこに看板あるじゃろ!それをみたか!」
私:「見ましたよ。」
ババ「その看板をよーく見れば書いてある!」
・・・とオババに怒られてしまった。

素直に看板を見に行くのだが"ここが赤城越えの口です”とはどこにも書いてない。
「えーやっぱり書いてないよ・・・ここ行けばいいのかな???」
オババにもう一度聞こうとすると、もうそこには姿が無かった。

他に人が居ないので、その石段を上る事にした。やっぱり屋根にリュックが引っかかったりしてやばい雰囲気であったが
そこを越えると「なんか・・・熊野古道だね・・・」って感じになってきた。
すぐに、Y字の分かれ道があって、どっち行くのかな??右に行こう・・・と歩くと道標11があった。
あ:「やっぱり赤城越えで合っててよかったね・・・」
二人とも今日は荷物が軽いのでピッチ良く足が進む。

あ:「でも、さっきのおばさん腹立つね。」
私:「うん、観光地にはああいう人がいっぱい居る。
   嘘を言われないだけまだ良いよ。
   修学旅行で京都に行ったときなんか嘘つきおやじが居てひどかったよ。
   観光客に不親切な人は、伊豆にもいっぱい居るよ。
   観光客はさ、その場所に来るのがはじめてのひとが多いだろ?
   判らなかったりすることも皆同じだから聞くことも大体同じ。
   だから、そこに住む人は聞かれることがしょっちゅうの事だから嫌になっちゃうよね。
   でも、観光地に住む人は観光客が来てくれることで助かっている事が多んだよ。
   直接だったり間接的だったりするけど。たとえば道が良くなったり、路線バスが通ってたりさ・・・
   だからね、親切にしなきゃね〜。一生に一度しか会話しないんだから・・・その人と・・・
   せっかくだからさ、さっきんの 赤城ババアと呼ぼう。あのババア・・・」すっかり、湯峰が嫌いになった二人であった。

今回のルートは逆ルートなので、11、10、9、8・・・と順調に来た。
道標8から7へ向う途中分かれ道があり標識が壊れているところがあった。
・・・ここまで稜線を歩いてきたんだからこの先も稜線だろう、暗い側道に入るのも何だし・・・
ここまでの道沿いには数mおきに赤いリボンをかけた杉の木があった。
私が選んだ道にもそれがあったのでまさか間違えたとも思わなかった。

しかし、行けども行けども道標7は見えてこない。
道も怪しくなってきたし・・・・どうやら道を間違えたらしい。
今日は簡単なパンフレットのMAPしか持ってきていないし、コンパスも宿だ・・・

私:「あっくん、道間違えたね・・・戻ろうか・・・」
あ:「お父さん、山で迷ったら下れってゆうじゃぁ・・・」
私:「下るって、まだ迷って直ぐだし、この山の頂上の向こう側に古道があるのはわかっているから戻ろう・・・」
うらじろ(羊歯)の茂った山をぐいぐい登る。あっくんにはキツイ上りなので手を取って押し上げていく。
途中道が切れたので直登をすることにする。
靴のつま先を突き刺しながらあっくんを引き上げていく。
途中一息つこうとあっくんを引き上げたところで・・・
あ:「あぁっつ!」
あっくんは私を道連れにこけてくれたのである。
バタンと斜面に腹ばいに転んだ。
左手はあっくんの手を握り、右手には杖を持っていたのでど〜にもならない。
私:「いて〜・・・あっくんは大丈夫?」
私は、数箇所に擦り傷を負い、おまけにズボンが泥だらけになってしまった。
あっくんは幸い何事も無かった様である。

それでも何とか稜線まで上がると・・・間違った理由が理解できた。
「稜線沿いに境界があり、境界の杭と境界にはそれを示すリボンを気に結わえてあるのである。
さっきの分かれ道の標識のところで熊野古道は境界から分かれたんだ・・・」
私:「それにしても昨日みたいな雨で無くって良かったし、また元気な朝で良かったよな・・・
  天気悪かったら遭難だよな。」
あ:「そうなn」

稜線沿いに歩いていくと、ポンとそれらしい道に出て、歩くこと一分で道標7を発見。
「赤城ババアのたたりだったね・・・」
しばらく歩いて、宿のおばさんが作ってくれた”紀州の梅入り、のりたまのおにぎり”を食べて元気復活!

一時間近いロスがここで出たのだが、この馬鹿な親子は元気に船玉神社をめざして歩いていったとさ・・・


今日は荷物が無いし、天気も良いから気持ちよく歩けるな〜
今日の熊野古道はちょっと好きだぜ・・・     by あゆむ


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