1.1 MIDIの誕生

MIDI とは、Musical Instrument Digital Interface を略した言葉で、音楽の演奏情報をディジタル信号でやりとりするための規格です。
今日 MIDI は通信カラオケなどあらゆるところで使われるようになっています。

MIDI の特徴はその名前の由来通り情報をディジタルであらわしているところにあります。
MIDI が登場するまでのアナログシンセサイザーは「CV」という方法で情報のやりとりをしていました。
CV とは ContorlVolt の略で電圧の大きさで音程などの情報を伝達するものでした。しかし、この CV には次のような欠点がありました。

他にも 2つの値の中間ちかくの電圧のときに動作が安定しない、温度や湿度などでも変化してしまうなど難しい要素が多くあったのです。
これらの問題を解決するためにアナログではなくディジタルで情報をやりとりしよう、ということになったのです。ただこの場合でも CV のとき同様メーカーでばらばらであってはなんの意味もなくなってしまいます。
このような流れから日本の楽器メーカが中心となって協議、検討が行われ、1982年1月に最初の「MIDI規格」が誕生したのです。


1.2 MIDI機器の接続

MIDI は第1節でも述べたように複数の機器の間で情報をやりとりするための規格です。つまり、それぞれの機器には情報の出入口となる端子がついているわけです。
この MIDI端子には MIDI OUT、MIDI IN、MIDI THRU という 3つの種類があります。とはいっても全ての MIDI機器にこれら 3つの端子があるとは限らず、MIDI OUTしかなかったり、MIDI INしかなかったりします。
これらの端子間を MIDIケーブルで結ぶことで情報のやりとりが可能になります。内部の回路構成は図のようになっています。
MIDIの入出力回路標準的な
MIDIインタフェース回路

MIDI端子の写真3種類のMIDIコネクタ
(一番左からMIDI THRU、MIDI OUT、MIDI IN)

MIDI THRU端子 MIDI OUT端子 MIDI IN端子 A. MIDI OUT/IN 端子
MIDI OUT と MIDI IN をつなぐ名前から分かるように MIDI OUT端子外部へ MIDI信号を送り出すための端子で、MIDI IN端子外部からの MIDI信号を受け取るための端子です。
これら 2つは基本的には対で使いこのような配線をします。このとき信号を送り出す MIDI機器「マスター」、逆に受け取る側「スレーブ」と呼びます。つまり、マスターの MIDI OUT端子とスレーブの MIDI IN端子を繋げば、スレーブに対しマスターから情報を送り出すことが出来るようになる、ということです。

MIDI は電気的なトラブルを極力なくす工夫がなされています。例えば、接続方法を間違えてマスターの MIDI OUT端子とスレーブの MIDI OUT端子を繋いでしまっても問題が起きないようになっています。(もちろん情報の送受信もできませんが)
これは MIDI IN端子から内部の重要な心臓部とを「フォトカプラ」という部品で電気的に分離しているからです。なにかの拍子に MIDI INに多大な電圧が加わってしまったりした場合でも、フォトカプラが内部の重要な回路の破損を防いでくれます。
このフォトカプラは信号の伝達に多少の時間的遅延を生じます。これを考慮しながら使わなければなりません。
また、情報のやりとりには「カレントループ」という方式を使って信号が誤って伝わることを極力なくしています。

B. MIDI THRU 端子
MIDI THRU端子を使って接続MIDI THRU端子MIDI IN端子に入力された信号をそのまま送り出すための端子です。この端子を利用すれば図のように複数の MIDI機器を直列に接続することができ、1台のマスターで複数台のスレーブを同時にコントロールすることが可能になります。
THRUボックスを使った接続しかし、このような接続方法は望ましいとは言えません。フォトカプラを通過するするたびに信号の劣化や遅延が大きくなり信号が正しく送られない可能性があるからです。また、配線がスマートだとはいえません。
Thru端子で直列に繋げる場合は最大でも 3台程度にしておくべきでしょう。
4台以上繋げたい場合などは「Thruボックス」とよばれる機器を使って接続します。
Thruボックスには通常 1つの MIDI IN端子に対し 4個や 8個など多数の MIDI OUT端子がついています。MIDI INから入力された情報はそのまま全ての MIDI OUTに出力されます
結果としてマスターからスレーブへ届く情報はどのスレーブにおいてもスルーボックスのみ通過することになり、情報の劣化や遅延によるばらつきも最小限になります。

C. MIDIケーブル
MIDIケーブルの両端のコネクタは 5ピンの DINコネクタと呼ばれるものです。DINとはドイツ工業規格のことです。コネクタのピンは実際には 4番ピンと 5番ピンの 2つしか使われていません。
MIDIにつかわれているDINコネクタ5ピン DINコネクタ

ケーブルは長くなれば長くなるほどトラブルが発生しやすくなるので、余分な長さの物を使ったり束ねたりすることはせず極力短く配線するようにします。規格ではケーブルは最長でも 15mまでとされています。
MIDIではどのような場合でも基本的な原則「OUT → IN」、「IN → OUT or THRU」、「THRU → IN」さえ守っていれば接続の仕方に制限はありません。
よって同じシステムを実現をするにもあらゆるパターンを考えることが可能となり、ユーザーの要望に一番近いもので実現することができます。


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