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1919-1920年に発行されたバイエルン切手

 第一次世界大戦後の1918年11月8日(金)、バイエルン王国の作家であり政治家であったクルト・アイスラーが、労働者と兵士が集まる評議会でバイエルンの共和国宣言を行いました。共和国を意味する単語として最初に使われたのは「Volksstaat」の方で、これは時の政府(王国)に対抗して、民衆の闘争で勝ち得た民主主義(デモクラシー)という意味を込めて「Volk(民衆)」が使われたからです。アイスラーは暫定首相として就任し、臨時内閣の組閣が始まりましたが、直接民主主義か議会制民主主義かで争いが起こり、左派と右派の板挟み状態になり、態度を明確にしなかったアイスラーは1919年1月21日(火)に右派の将校らに暗殺されます。この事件をきっかけに左派と右派の対立が激化し、バイエルン共和国は混乱を極めました。
 その後、2月20日(木)に議会がバイエルン共和国の基本法を決議するに当たって、共和国を意味する単語として「Freistaat」の方を公式に使用しました。これは、ドイツ帝国とは自由(Frei)である、また、君主制ではない、という意味を含んでいます。この単語は、現在も使われていて、ドイツ連邦のバイエルン州は「Freistaat Bayern(バイエルン自由州)」とも呼ばれます。

1919.3.1 (土曜 Sonnabend, Saturday)

1.Volksstaat Bayern加刷 ルートヴィッヒ3世図案シリーズ

 共和国成立後の混乱もあって、しばらくルートヴィッヒ3世図案の切手がそのまま使われていましたが、遅ればせながらVolksstaat Bayernの文字が加刷されたものが発行されました。なお、発行された時は、すでに公式の名称はFreistaat Bayernの方でした。

3Pfennig
加貼り用
5Pfennig
50gまでの印刷物
7 1/2Pfennig
市内用葉書、50gを超え100gまでの印刷物
10Pfennig
20gまでの市内用書状、市外用葉書、外信葉書、250gまでの商品見本
15Pfennig
20gまでの市外用書状、20gを超え250gまでの市内用書状、100gを超え250gまでの印刷物
20Pfennig
書留料、配達証明料、20gまでの外信書状
25Pfennig
速達料、20gを超え250gまでの市外用書状
30Pfennig
市外用書留葉書、20gまでの市内用書留書状、20gを超え40gまでの外信書状
40Pfennig
40gを超え60gまでの外信書状、20gまでの外信書留書状、小包、価格表記、等
50Pfennig
60gを超え80gまでの外信書状、小包、価格表記、等
60Pfennig
80gを超え100gまでの外信書状、小包、価格表記、等
80Pfennig
小包、価格表記、等
1Mark
小包、価格表記、等
2Mark
小包、価格表記、等
3Mark
小包、価格表記、等
5Mark
小包、価格表記、等
10Mark
小包、等
20Mark
小包、等

 Volksstaat加刷シリーズには、無目打ち切手が存在します。これらは、1920年3月4日から出回りました。以下に、無目打ち切手の例を示します。

無目打ち切手の例

・有効期限は、1920年6月30日です。


1919.5.

2.Freistaat Bayern加刷 ゲルマニア図案シリーズ

 共和国の公式の名称である「Freistaat Bayern」の加刷が最初に行われたシリーズです。2回の加刷が行われたことが知られています。(15Pfennig、35Pfennig、75Pfennigの切手を除いて、1919年5月2日から5月12日まで行われたのが初回の加刷、2 1/2Pfennig、7 1/2Pfennig、10Pfennigの切手を除いて、8月9日から8月16日まで行われたのが2回目の加刷。)ミュンヘンでの政局の混乱でルートヴィッヒ3世図案切手の配給が途絶えたため、5月17日からラインラント・プファルツ地方で2 1/2Pfennig、5Pfennig、7 1/2Pfennigの各切手が発行されていることが分かっていますが、公式の初日は不明です。
 なお、この加刷に使われたゲルマニア図案切手の種類は、当時流通していたすべてではありません。

2 1/2Pfennig
加貼り用
3Pfennig
加貼り用
5Pfennig
50gまでの印刷物
7 1/2Pfennig
市内用葉書、50gを超え100gまでの印刷物
10Pfennig
20gまでの市内用書状、市外用葉書、外信葉書、250gまでの商品見本
15Pfennig
20gまでの市外用書状、20gを超え250gまでの市内用書状、100gを超え250gまでの印刷物
20Pfennig
書留料、配達証明料、20gまでの外信書状
25Pfennig
速達料、20gを超え250gまでの市外用書状
35Pfennig
20gまでの市外用書留書状、価格表記、等
40Pfennig
40gを超え60gまでの外信書状、20gまでの外信書留書状、小包、価格表記、等
75Pfennig
小包、価格表記、等
80Pfennig
小包、価格表記、等
1Mark
小包、価格表記、等
2Mark
小包、価格表記、等
3Mark
小包、価格表記、等
5Mark
小包、価格表記、等

・有効期限は1920年1月31日です。


1919.6.-7.

3.Volksstaat Bayern加刷 追加

 新額面の加刷切手が2種類発行されました。これは、新額面を作るため、わざわざルートヴィッヒ3世図案の原板の額面を差し替えて台切手を印刷し、それに加刷を施したものです。

35Pfennig 1919年6月27日(金)発行
20gまでの市外用書留書状、価格表記、等
75Pfennig 1919年7月17日(木)発行
小包、等

・どちらの額面にも無加刷切手が存在します。無目打ちも存在します。もちろん、それらは扱い的にはエラー切手です。
・有効期限は1920年6月30日です。


1919.8.6 (水曜 Mittwoch, Wednesday)

4.Freistaat Bayern加刷 ルートヴィッヒ3世図案シリーズ

 共和国の公式名称である「Freistaat Bayern」の加刷が、ルートヴィッヒ3世図案シリーズにも行われました。追加額面の35Pfennig切手は発行されず、75Pfennig切手は、50Pfennig切手と紛らわしいため、刷色を変更して発行されました。

3Pfennig
加貼り用
5Pfennig
50gまでの印刷物
7 1/2Pfennig
市内用葉書、50gを超え100gまでの印刷物
10Pfennig
20gまでの市内用書状、市外用葉書、外信葉書、250gまでの商品見本
15Pfennig
20gまでの市外用書状、20gを超え250gまでの市内用書状、100gを超え250gまでの印刷物
20Pfennig
書留料、配達証明料、20gまでの外信書状
25Pfennig
速達料、20gを超え250gまでの市外用書状
30Pfennig
市外用書留葉書、20gまでの市内用書留書状、20gを超え40gまでの外信書状
40Pfennig
40gを超え60gまでの外信書状、20gまでの外信書留書状、小包、価格表記、等
50Pfennig
60gを超え80gまでの外信書状、小包、価格表記、等
60Pfennig
80gを超え100gまでの外信書状、小包、価格表記、等
75Pfennig
小包、等
80Pfennig
小包、価格表記、等
1Mark
小包、価格表記、等
2Mark
小包、価格表記、等
3Mark
小包、価格表記、等
5Mark
小包、価格表記、等
10Mark
小包、等
20Mark
小包、等

 Freistaat加刷シリーズには、無目打ち切手が存在します。これらは、1920年3月4日から出回りました。以下に、無目打ち切手の例を示します。

無目打ち切手の例

・有効期限は1920年6月30日です。


1919.8.25 (月曜 Montag, Monday)-12.22

5.戦傷者救済付加金付き

 第一次世界大戦の旧バイエルン王国の戦傷者(傷痍軍人)を救済するため、5Pfennigの付加金付き切手が8月25日に2種類、郵便料金値上げ後の12月22日に1種類発行されました。ドイツ本国でも同じ趣旨の付加金付き切手が発行されていますが、こちらは2種類のみです。
 この付加金付き切手は、すでに発行されていたFreistaat Bayern加刷切手に付加金を加刷したのではなく、無加刷のルートヴィッヒ3世図案切手に加刷しています。これは、発行済みの加刷切手では、「戦傷者のために」という文字を加刷するスペースがないためです。無加刷切手の在庫がいつまでも残っているとは考えにくく、おそらく、原板が残っていて、無加刷切手をいつでも製造できる状態にあったのかもしれません。

10+5Pfennig 8月25日発行
20gまでの市内用書状、市外用葉書、外信葉書、250gまでの商品見本
15+5Pfennig 8月25日発行
20gまでの市外用書状、20gを超え250gまでの市内用書状
20+5Pfennig 12月22日発行(郵便料金値上げ後)
20gまでの市外用書状、20gを超え250gまでの市内用書状、100gを超え250gまでの印刷物、250gまでの商品見本

・いずれも、無目打ち切手が存在します。
・有効期限は1920年6月30日です。


1919.10.1 郵便料金値上げ

1919.12.17 (水曜 Mittwoch, Wednesday)

6.Freistaat Bayern加刷 追加

 新額面の切手が発行されました。以前は、新しい額面の切手を発行する場合、原板の額面を取り替えて台切手を印刷して、それに加刷するやり方をとりましたが、今回は1Mark切手の色を3種類に変えて、それに加刷をするだけですませています。切手の左上に、加刷文字の下に隠れて、「1」の数字が見えることに注目してください。

1.25Mark
小包、他
1.50Mark
小包、他
2.50Mark
小包、他

 追加シリーズには、無目打ち切手が存在します。これらは、1920年3月4日から出回りました。以下に、無目打ち切手の例を示します。

無目打ち切手の例

・有効期限は1920年6月30日です。


1920.1.18 (日曜 Sonntag, Sunday)

7.紋章図案加刷

 郵便料金値上げ後、需要の多い20Pfennig切手が不足したため、有効期限切れで保管してあった紋章図案の3Pfennig切手に、急遽「20」の額面を加刷して発行されました。もともとの紋章図案切手が四隅に額面を配置していたので、加刷はそれらを隠すように4カ所あります。

20Pfennig
20gまでの市外用書状、20gを超え250gまでの市内用書状、100gを超え250gまでの印刷物、250gまでの商品見本

・有効期限は1920年6月30日です。


1920.2.14 (土曜 Sonnabend, Saturday)

8.新図案シリーズ

 退位した国王の図案が一年以上も使用されていましたが、これではいつまでも旧体制を支持しているように見えかねないので、素朴で平和的な新図案のシリーズが発行されました。これが、バイエルン最後の切手シリーズです。
 しかし、4月1日(木)から、バイエルン郵政がドイツ郵政に吸収されたので、短命に終わり、残りの切手は、Deutsches Reichの文字が加刷されました。

5Pfennig-15Pfennig
20Pfennig-40Pfennig
50Pfennig-75Pfennig
1Mark-2 1/2Mark
3Mark-5Mark
10Mark-20Mark

 2 1/2Mark切手に2種類の印刷があります。図案の背景に描かれた白抜きのつぶつぶのぼやけ方から、はっきりと区別することができます。

(左)石版印刷(リトグラフ)
  白抜きのつぶつぶがぼやけている
(右)活版印刷
  白抜きのつぶつぶがはっきりしている

・有効期限は1920年6月30日です。


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