| Home | Back | 「ぺんぺん草」 |

ECU(PGM−FI)の修理編


 2003年2月のすごく寒い雨上がりの深夜、会社帰りの僕は家から約3キロ離れたサークルKの交差点で赤信号による停車をした。
しばらくして、”プスッ”とBEATくんは突然の心停止。
何度イグニッションキーを回してもエンジンは起動しない。
ガソリンメータを見ると・・・少し残っているし・・・
後ろにビッタリくっ付いて止まっているヤンキー車を無視して、一人でサークルK駐車場にビートを押し込む。

とりあえず、エンジンルーム、ヒューズ、その他諸々をチェックしたが異常なし。
30分ぐらい前に会社の駐車場で別れたOH氏にHELPの電話を入れる。
しばらくすると、エンジン起動・・・しかし一分程でまた死ぬ。
・・・「電装だね・・・」
OH氏の車には牽引ロープが積んでなかったので、妻を呼ぶ。

2キロぐらい離れたところに、ホンダプリモがあるので、そこまで牽引していって車を置いて帰ることにする。
妻の車に豪快に牽引されて、とりあえず事故らずにプリモに到着・・・

その後すぐに僕はタイに行っちゃったので、存分に点検をお願いしたのである・・・

それから約2ヶ月後、妻に車の状態を確認してもらったら・・・「再現しないのでわかりません・・・」とのこと。
仕方ないので、自分で直すことに決め、妻に車を引き取っておいてもらった。

メカ屋にわからない車の故障ですか・・・ピピッツ!
電気屋(エンジニア)である僕の頭の中で、”PGM−FIが死にかけている!”と診断されたのである。
(※PGM−FIとは、ホンダの燃料制御関係のコンピュータの事。
ホンダの呼び名はECU(エンジン・コントロール・ユニット?
トヨタはお馴染みEFI(エレクトリック・フューエル・インジェクション。
つまり、昔のキャブの仕事をインテリジェントに電子制御しているのである。)

先週の日曜日の朝、SARS騒ぎでガラガラの成田に帰ってきた私は必要なパーツを揃え休日である5/17(土)を待つのであった。
いつ心停止するやも知れぬ車に乗るのも怖いものであるが、なんとか5日間持ったのである。

朝、ジョンのお散歩に行き、その後、息子のあっくんを助手にビートのECUを降ろす。

[作業内容]

注意: 電子部品を扱うので、静電気で電子部品を破壊しないように自分自身を十分放電してから?作業する事。
なるべくなら、空気が乾燥していない雨上がりの日とかね・・・

@バッテリーのマイナス端子を外す。

Aセンターコンソール(後ろ)、助手席裏のドキュメントボックスを外し、内装をベリベリ引っぺがす。

写真 左:この内装を引っぺがすと出てくる。   右:奥に見えるお弁当箱がECU

BECUを止めている外側の3箇所のボルトを外す。
 注:表面の鉄板のねじをここで外さないように。

CECU下側のコネクタを外す。これでBeatは脳みそと完全分離。
 注:コネクタを外す時は、コネクタの爪を押さえながらコネクタ本体を下に引き抜く。
   決してワイヤを引っ張ってはいけない。(切れちゃうよ)

DECUを持って、お家の中に・・・外では、はんだコテの温度が安定しないので作業不可。

E下の写真左に示す道具を使った。
 注:はんだ吸取り器は、できたらスポイト式が良い。慣れない人がソルダー・ウィックを使うとパターンを切ってしまう事がある。

F先に、やや小ぶりの+のビットのドライバーで、デバイスの放熱のために止めているネジを外す。
 注:ネジロック(接着)されているので、上から押しながらネジを緩める事。

Gその後、基板を止めているネジを外す。


Hとりあえず、電解コンデンサを交換しよう。
 正規の電解コンデンサは次の4種類・計6個。
 220μF・35V  1個
  33μF・35V  2個
  47μF・35V  1個
 470μF・10V  2個
 ※コンデンサの耐圧(V)は、この通りでなくっても大きい値であれば使用可。
  通常電解コンデンサは使用する電圧の倍程度の耐圧の物を使う。
  僕は、35V耐圧のコンデンサは50Vに、
     10V耐圧のコンデンサは16Vに余裕を与えて使用した。
  但し、容量(μF)は、同じ値の物を使う。
  電解コンデンサは+−の極性があるので注意しよう。
  コンデンサ本体に−記号が書いてあるし、基板にも+−表示があるから大丈夫。

 ※重要  コンデンサの使用温度範囲 ※
  電解コンデンサには上に書いた耐圧(定格電圧の事)以外にカテゴリ温度範囲(使用温度範囲)という定格がある。
  普通に使われている電解コンデンサは85℃と表示される−40〜85℃の使用温度範囲が保障されたものである。
 このECUの様に温度がバリバリ上がってしまう環境で使う場合には105℃と表示される−55〜105℃の物を使うこと。
 手に入るのであれば120℃の物も市販されているのでそちらを使ったほうがより安心だね・・・

 僕のECUは、電解コンデンサの頭に初めから青マジックのマーキングが付いていた。
 もし、マークがなかったら、作業前に付けておこう。
 そして、付け替えたコンデンサの頭には別の色のマークを付け、確実に交換した事がわかるようにする。


I上図左の赤丸が、電解コンデンサ。
 良く、電解コンデンサ不良=パンク・・・をイメージして、コンデンサの頭の部分に着目するけれど、
 実際に、コンデンサの頭が膨れちゃうなんて滅多にない。
 よっぽど、コンデンサの電解液の純度が低かったり、設計で耐圧を間違えたりしなければそんな事にならない。
 ただ、電解コンデンサは電解液のトラブルが多い(って言っても医療ミスより少ないと思う・・・)のが難点だ。
 僕のECUは上図右の47μF・35V(nichicon製)の電解コンデンサが液漏れを起こしていた。
 上から見ただけじゃあ分からないが、取り外せばよく分かる。
 子供のお漏らしの様に、オムツがパンパンに膨れ、足の間からチビチビ漏らしていたのである。
 その部品の下側に位置する部分は、電解液に荒され、酸化が始まっている。
 家にある、消毒用のエタノールを綿棒に付け、きれいに洗い流す。
 1個抵抗器に異常な酸化状態のものがあり、これもついでに交換(1kΩ)。

Jゴム系の接着剤で写真下の赤丸部分を接着。

K後は、元に戻すだけ。


 やれやれ、思った通りの故障内容でした。
 これから、一年に一度ぐらいの頻度で、ECUを空けて目視で点検しよう。