君にもできる?日本縦断自転車旅行(7)
                               安全について

ああ、ええ気持ちやなあ。天気はええし、早朝で空気はきれいやし、河川敷の風景も素晴らしい。もう、いうことないなあ・・・。などと思いながら、私は秋田県は雄物川の堤防の道を走っていた。自転車旅行の至福の瞬間である。

 しかし、幸せは長くは続かない。その堤防の道に車が走ってきたのだ。それも1台や2台ではない。次々と、次々とやってくる。どうも通勤時間帯に入ってしまったようだ。車1台がやっと通れるぐらいの道幅なのだが、けっこうなスピードで走ってくる。そして、私のそばに来ても減速もせずにぎりぎりの所を追い抜いていく。

「なにゃこいつら。ちょっとぐらいスピード落としたらどないやねん。あたったらどないすんねん」とぶつぶつ言いながらも私は走り続けた。しかし、あまりの車の多さに、ついに私は根負けして、自転車を堤防に置いて、車が少なくなるまで川を眺めて休憩することにした。

実は、この道に入るときに確認していたのだが、ここは「自動車通行禁止」の道なのである。しかし、どこかの道路の抜け道になっているようで、通勤の車が次々とやってくる。堤防に腰掛けながら私は、この細い道に、大きなトラックを10台ぐらいつれてきて、反対向きに走ったろか、などと想像した。

自転車の旅は車との戦いの連続である、といってもいいかもしれない。とにかく日本はどこへ行っても車が多く、一日通して車に対して腹の立たない日はまったくない。特に腹立たしいのは、このようにどこにでも進入してくる車。そして、細い道でスピードを落とさずに抜いていく車。さらに、携帯電話をしながら運転している人、指示器を出さずに曲がる人、信号を守らない人、犬や子供を抱いて運転している人、わざと幅寄せしてくる人、などなど・・・。まったく、こっちも命がけである。路上駐車をしている人にも腹が立つ。これをよけて走るうっとおしさと、危険さをわかってほしい。歩道の真ん中に堂々と止めている車など、言語道断である。一発蹴りでもお見舞いししたろか、と思う。

まだある。
しかし、これぐらいにしておこう。文句を言っているばかりでは一生旅に出られない。自転車に乗って旅する人は、起こりうる危険を十分知った上で、自衛の手段をとらなければならない。

狭い道から停止することなしに広い道路に飛び出す、無灯火で夜道を走る、後方も確認せずに道を横切る、歩道から突然車道に出る・・・。これらはすべて文字通り自殺行為である。死にたい人は死んでもらってけっこうだが、轢いた人も気持ちが悪かろうから、やはりこれらの行為は慎むべきだ。

安全を確保する策としては、道路は左側通行を守る、後方確認をしっかりする、後方を確認するときは自転車を止める、駐車場などから突然出てくる自動車に気を配る、派手な服装を心がける、自転車はしっかり整備しておく(特にブレーキのチェック)、疲れているときは走らない(疲れているときは、注意力が減退する)、などなど・・・。どれも当たり前でつまらないことのように思われるかもしれないが、当たり前のことを一つ一つ確実に実行することが、確実に自分の寿命を延ばすことにつながる。

また、危険防止に役立つグッズとして、点滅するミニライト、バックミラーなどがある。ミニライトは、トンネルにはいるときなどに荷物の後ろに取り付けて点滅させ、後方からくる車に自分の存在を知らせる。発光ダイオードを使用しているので、電池もかなり長持ちする。バックミラーの方は、言うまでもなく後方を確認するためのものである。自転車にこれを付けている人はほとんどいないが、効果は高い。私は、旅の後半でこのバックミラーを付けて走ったが、自転車に乗ったまま後方を確認できるので大変ありがたかった。最初のうちは、ミラーに気を取られて前方が怪しくなることもあったが、慣れてしまえばどうということはない。おすすめである。(ただし、ドロップハンドルに付けられる物はなかなか売っていない。見つけたら教えてほしい)

とにかく、旅においては、「無事に帰る」ということが最優先課題である。どんない楽しい旅であっても、怪我をしては台無しである。ましてや死んでしまえばそれまでである。とにかく安全第一。元気に帰ること、それが自分の旅を支えてくれる家族や友人に対する責任だと思う。肝に銘じてほしい。

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