さて、琵琶湖一周の旅が始まった。
今回のコースは、宇治田原にあるN氏の実家を出発して瀬田の唐橋に向かい、そこから左回りに琵琶湖を一周する。
距離にして、約220kmである。
N氏が前を走ってペースを作ってくれるという。
「あーあ、ついに出発か。ちょっと憂鬱やな。途中でやめたりしてN氏に迷惑かけたら悪いしなあ。」
などと考えながらペダルを漕ぎ出す。
あれ?遅いな。
あれあれ?こんなペースでええんかいな。
前を走るN氏は、時速13km前後でゆっくりゆっくり走る。さすがの私にもこれは遅すぎる。
気になってN氏に聞いてみる。
「ええの、こんなペースで」
「うん、あんまり急いで走るの嫌いやねん。
このほうが景色も楽しめるし」
と、あっさりと答える。
それならば、と私もゆっくりと琵琶湖の景色を楽しみながら走るか、と気持ちを切り替えてみた。
確かに、これぐらいのゆっくりしたペースになると周囲の景色を楽しむ余裕も出てくる。
琵琶湖から吹いてくる風が気持ちいいや・・・、などと考えているうちにどんどん距離が伸びてきた。
10km、20km、30km・・・。
50kmを過ぎたあたりで、いつもと様子が違うことに気がついた。
「あれ?しんどくないぞ」
一人で走っているときは、50kmあたりギブアップしていたのに・・・。
60km、70km・・・、さらに距離が伸びる。
キャンプ地についたときには、距離計は、なんと92kmをマークしていた。
体力なし、根性なしの私が90kmも。これは驚いた。しかも、脚の疲労はほとんどなく、まだ走れそうである。
「ゆっくり走ると長く走れるやろ」
と、こともなげにN氏が言う。
うーん、なるほど、まいった。そういえば、本にもそんなことが書いてあったようなきがするな。でも、実際に走ったペースは、私が考えていたよりも、さらにさらに遅いペースであった。
つまり、長い距離を走るためのコツは、
「ゆっくり走ること」
ではなく、
「自分でもびっくりするぐらい、ゆっくり走ること」
だったのだ。
(補足:念のために補足しておくと、N氏は一人で走るときは、当然もっと速いスピードで走っている。体力も根性もない私のために思いきりゆっくり走ってくれたのだ。) |