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06


 まったく、枚挙に暇がない。
 学校へは誰よりも遅くやってきて、誰よりも早く帰っていく。遅刻は日常茶飯事で、そもそも時間の観念があまりない。玄関から入ってこないで窓から入ってくる。上履きも使ったことがなくて、中でも外でもいつもはだしだ。彼女が窓枠を飛び越えるときにふわりとまくれあがる白いスカートの……あ、これはどうでもいいや。
 教室の中ではおとなしい。いつもすました顔で物静かに授業を聞いている。成績がトップだというのは先にも述べたとおりだ。ただ、静かであればいいってもんじゃない。時々思い出したように、背筋をびしりと伸ばすと、尋常でない能面で、目玉までぐるぐる回しながら辺りをきょろきょろし始める。アーイーの席は教室の一番後ろだから気がつきにくいが、これが始まると、見たくないものを見たという形相でロクシオ先生がビビり出すのですぐわかる。
 その他もろもろ彼女の行動は逐一不気味で、常識のスジから一本ずれていた。
 「どうしてこんなことばかりするの」問うたことは何度もある。
 「ごめんね、迷惑かけて」きれいな顔でにっこり笑ってそう突き放されると継ぐ言葉がなかった。『どうして』への回答は、得られなかった。

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