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03


 そんなこんなで、僕はアーイーの家に行くことになった。地図によればアーイーの家は、狭苦しい集落とは逆方向の森の奥深くだった。
 森の中から学校に通うのは、僕の親友のプラニチャをはじめ何人かいる。でも、それは森にただひとつあるきこりの集落に住んでいるからだ。地図の示す位置はその集落から遠く離れていた。
 噂では、彼女は魔法で造られた幻の御殿に住んでいるとかなんとか。魔法なんて、昔はどうだか知らないけど、今は信じる子供なんてひとりもいやしない。
 僕は決してアーイーが嫌いなワケじゃなかった。むしろ、その変人っぷりがなかったらぜひおつきあいしたいと思っていた。いや、それはクラスの男子のほとんどが思っていたかもしれない。アーイーはぬきんでてきれいであか抜けておとなびていた。大きくて透明感のある、吸い込まれそうな金色の瞳。芯の強そうな、きりっと高い鼻筋。つやのある白い肌、茶色の長い髪。僕らを追い越してどんどん背が伸びてきれいになっていく女の子たちの中でもとりわけ背が高くて、それから、その、おっぱいも学校の誰より大きかった(二年生の担任をしているつるぺたのサイネヤ先生が顔を引きつらせていたっけ!)。
 誰よりも早く、大人になろうとしているかのようで、まだまだガキンチョの僕にとって、背伸びしたい僕にとって、普段の彼女はアダルトでミステリアスな魅力に満ちていた。
 でも、普段でない彼女は、ミステリアスだけど魅力がころりと転げ落ちてしまうんだ。

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