『風間一輝〜深志荘に関わる男達の物語〜』

(早川書房 『男たちは北へ』(現在版元にも在庫無し、重版未定。取りあえず本屋で探そう)
 早川書房/ハヤカワ文庫『地図のない街』
 角川書店/角川文庫 『漂泊者(ながれもの)』
 角川書店 『されど卑しき道を』『海鳴りに訊け』
 幻冬舎/幻冬舎文庫 『片雲(ちぎれぐも)流れて』『今夜も木枯らし』
 幻冬舎 『今夜も月は血の色』(未完)
 光文社/光文社文庫 『片道切符』
 酒口風太郎・桜井一名義
 光文社/知恵の森文庫 『図解ミステリー読本』                    )


 さて、最初に上の一覧を見て頂きたい。『おや?』と思う部分が無いだろうか。
 そう、『今夜も月は血の色』の後に、(未完)と付いているのである。
 残念ながら、作者、風間一輝氏は99年11月に死去している。
 その為、『今夜も月は血の色』は作品半ばにして途切れてしまい、未完となったのだ。
 同著の内、雑誌掲載されていた二編の後、表題である書き下ろし部分『今夜も月は血の色』の
前半で惜しくも話は終わっている(残されたプロットによって後注はされているが)。
 これ程作者自身にとっても、そして読み手にとっても悔しく哀しい事は無い。
  終わる事無く止められてしまった物語の行方は、もう分からないのだから。
  ……それでも、この作品は終わっているのだと、思うしかないのだけれど…。
  今はただ素晴らしい作品を読ませてくれた作者に哀悼の意を示すだけである。
  閑話休題。
  言う所の『風間作品』には、必ずと言って良い程『深志荘(しんしそう)』と言う名のアパート
の住人が登場する。
 深志荘は池袋のさびれた裏通りにある古アパートで、二階建て。
 一階二階とも部屋は五室で計十室、今どき流行らない共同トイレの古アパート。だそうだ。
 何とも特徴が有る様な無い様な、そういうアパートである。
 そして、このアパートの住人はと言えば、自身も認める悪徳私立探偵やら、暇を持て余してあち
こちにサイクルツーリングに出かけているグラフィックデザイナーやら、恐ろしく発行年の古い
百科事典を売るセールスマンやら、とにかく怪し気な人物達ばかり。
 そんな彼らが関わっているのが、上記の作品だ。
 各作品や登場人物達の説明は別に用意するのでそちらを参考にして貰うとして、(私が入手する
事が出来た)全ての作品に共通しているのは、登場人物達の魅力が素晴らしく引き出されている事だ。
読んで行く過程で、最初のイメージでは近寄りがたいと思った人物が、ふと微笑ましい部分を見せる
時が有り、それと同じ位はっと胸を打つ時も有る。
 物語の中で丁寧に書かれているその描写が、読者を惹き付ける要因になっているのは確かだろう。
 ジャンルがハードボイルドと言う事で、登場人物達は男性主体であるものの、数少ない女性達が
彼らに対して引けを取らない重要度と存在感を持っているのも特徴の一つ。
 悪徳私立探偵の室井の台詞じゃないが、風間作品では『女はみんな強か』なのだった(笑)

 

 でもってその後。
 探しに探して結局無かった『男たちは北へ』と『されど卑しき道を』をオークションにて
発見&落札!
 いやぁ‥エラい買い物だった…(遠い目)
 読んで良かったけど、妙に懐が温かくなる買い物(爆)だった様な気がするとかしないとか。
    これからは新刊も出ないし、寂しいなァ…と思っていたら、もう一つ(二つ)の名前である
酒口風太郎・桜井一名義で『図解ミステリー読本』が去年の十二月に発売されていた。嬉しい。
本当に嬉しい。
 遅れて来たクリスマスプレゼントみたいじゃないか<かなり本気
 純粋なミステリに関する小道具(一部大道具、あるいは人間対象)を知る資料にも出来るし、
読み物としても楽しめる。一粒で二度美味しい本なのだ。


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