「だからね。僕は多少なりとも強引な手段の方が効果的だと思うんだ」
「んー…でもさぁ、相手はあのヒイロだぜ?強引つったって…」
宇宙の命運をかけた戦いを目前に控える、しかも最前線に在る船・ピースミリオン。
その主戦力たるガンダムのパイロット二人は、仲良く肩を並べてこそこそと内緒話をしていた。
ココはカトルの与えられた部屋で。どこから持ち込んだのだろうか、いい香りのするハーブティーだの美味しそうなクッキーだのまで存在している。
そして真剣な顔で先程から話しこむ二人。
内容はもちろん今後の戦局の行方…などではなく、恋の悩み相談だった。
「だからさ、オレとしては高望みはしないから。とりあえずオレにだけ妙に冷たいっていうあの態度をなんとかしたいだけなんだ」
「デュオーー…それじゃ理想が低すぎだよ」
カトルは不満そうに眉をしかめた。
「んなこと言ったってこればっかりはどうにもならないだろ」
デュオとしては現状はなんでこんな事に、という感じである。
別に自分はそのことに対し悩んでいた訳でも、不満があったわけでもないわけで。
ヒイロが好きだ、というのはいつのまにかはわからないけれど自分の中にあった感情。
それをどうこうするつもりはなかったし、受けとめて欲しいとか。振り向かせてやる、とかそういった事を考えることもなかった。
好かれたいかと言われればもちろんそうだが、かと言って人の心ほど自由にならないものはないのだ。
けれど、カトルの意見は違うらしかった。
「諦めるのは早いよ。絶対!ヒイロはデュオに気があるんだから。押して押して押しまくれば絶対に落ちる!!僕を信じて」
どっからそんな発想が、の世界である。
「信じるもなにもさ、そもそもなんでそんなー…」
「だーかーらー!」
この後、カトルの説得によって丸め込まれるまで6時間。
妙に自信満々のハイテンションデュオがヒイロに「好き」攻撃を始める直前までの出来事だった。
end.
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