やわらかな声音で、楽しそうに。 「まあ、しょうがないわよね。今更あの人たちが実技試験なんかで落ちるとも思えないもの。人数制限もないし、一緒に試験受けたら同時に合格して当たり前だわ」 意図的に言葉を切り、のんびりとした歩みを止める。 「………だから」 そうして、思わせぶりにくるりと振り向いた。 「選ぶのは、貴方よ」 そう微笑むリリーナを、デュオは複雑そうな眼差しで見つめていた。
単なる王女につけられる敬称ならば「姫」なわけだから、当然普通の姫なわけがない。 予知、先見、言葉はともかくつまりは未来を視る力をもつ者だけがこの名を与えられるのだ。
役目としては塔の神官を束ねる存在、としてが一般的。
王族の、しかも近い未来を視る存在による監視。 まあ、この辺の事情はとりあえずどうでもいい。
とにかく巫女姫とはそういう存在であり、そしてリリーナは現巫女姫であり。 余談だが、初対面ではない。
変わり者の姫君は自らも正天使の資格を取ろうと元気に塔に通っているのである。
リリーナの言葉に、デュオは困ったように瞳を細めた。
「いきなり呼び出して、そんな話されてもオレ答えられないぞ、そんな問い」
にーっこりと微笑む。
「………」 困ったように沈黙を保つデュオに、助け船を出すように呟く。 「4人全員、一気に正天使に昇格するわ。その中の一人が確実にあなたのパートナーになる。これは変え様のない事実よ。だって天界は優秀な人材を遊ばせておくほど暇じゃないもの」 そこまで言って、リリーナは苦笑を洩らした。 「一生モノだし。皆仲がいいし。迷って当たり前なのだけれどね。それでも、貴方が選ぶ以外の決めようがないし」 何せ彼らの能力は全員が全員文句のつけようがないのだ。 「決め方は自由にしていいの。誰かを選んでもいいし、試験を出しても構わないわ。それに関しての自由は私が責任を以って保障します」 それくらいの権力はあるのだ。 「己の心を偽ることなく、己の心の導くままに。あなたのたった一人を選びなさい」 そこだけは、厳かに。王族としての威厳のようなものを垣間見せたリリーナは、次の瞬間にぱっと満面笑顔になった。
「誰を選ぶか、すっごく楽しみなの♪」
デュオは一瞬で疲れたような気持ちになってしまった。
微笑むリリーナから、デュオはすっと視線を逸らした。
「ねえ、ずっと聞きたかったの。あなたは何故パートナー登録を拒むの?」
すっ、と。
「図星ね。だって、機会はあったもの。多少ランクが落ちるけどあなたと登録したいって人は何人かいたわ。あなたが了承しさえすれば登録は為された…神官たちは例外措置として許してた。なのに貴方はしなかった」 デュオに向き合う様に真剣な表情のまま続けて問いかける。 「今だって嫌がってるでしょう。でももうランクとか、そういう言い訳は使えないものね。そして、気が合わないという理由で断るのも不可能だわ」
「………」 ね?というように笑顔で小首を傾げてみせるリリーナを前に、デュオが深く溜め息を吐く。
「笑うなよ」 軽い返事に一瞬眉を顰めたデュオは、けれど気をとりなおしたのか視線を逸らしつつ言葉を続けた。
end. |
2000.9.16.
ようやく終わりかけてます。
さりげなく長いです…天使シリーズ。 最初書き逃げのような短編のはずで、それを続き書くと決めたときからだいたいの話の流れは決まってました。 でも実際に書くとやっぱり設定とかかなり荒いですね(-w-; 自分で「そんなのあるかー!」とツッコミ入れつつ書いてマス(苦笑) でも根本的にこういう好き放題出来るのって好きです。 書きたいこと書けますからねー…私がこのシリーズでどの部分を一番書きたかったかは完結したときのお楽しみです♪ わざわざ書かずに伝わるのが理想ですが、それはきっと無理だから。 このコメントスペースに答えは載ります。 次はANGELNOTE4。ようやく「現在」のヒイロが出てきます。 |