容姿が悪かったわけではない。 これで愛想が良ければかわいかったのだろう、多分。 ただ、歴史に『もしも』はなく、ヒイロはやはりかわいげのない子供だった。 子供のくせに妙に自信と落ち付きに満ちた態度や、態度に見合った能力が 醸し出す空気は彼と同世代の者たちにとって彼を近寄り難い存在としていた。
だから、ヒイロは大抵一人でいた。 ただ、平穏だった。 退屈なくらいに。
ここでモノを言うのは適性。と、言うかそれのみ。 もちろんその道に進むかどうかは神の名の元に自由だが、ヒイロは敢えて面倒な道を 進む必要もないだろうと示されるままに「塔」への道を選んだ。 塔の管轄は地上の輪廻。
ここで、天使か死神かを選び見習いからのスタートとなる。 「なあ、お前がヒイロ・ユイ?」
与えられた寝所へ向かおうと、てくてくと廊下を歩いていたヒイロを呼び止める
声がした。 「……そうだが」 何の用だ、と言うと少年はにっこりと微笑んだ。 「サーベ」 言葉が紡がれた瞬間、真空の刃が出現する。 「……っ?!」 ヒイロが「壁」を造るのと衝撃波は、ほぼ同時だった。 瞬間的にかかったプレッシャーに、臓腑を抑えつけられるような感覚に声が出ない。 背後の壁が、力場に耐えきれずヒビを入れた。
「なっ……?!」
自分に何が起こったのかわからず、呆然としかけた頭を冷静にするかのように
歓声が上がった。 自分は感激しているんだ、ということを目一杯に主張するかのように、興奮の余り 頬は赤らんでいた。 その様子を見る限りでは、どうやら害意があるというわけではなさそうである(まともに当たれば死んでたが)。 「………どういうつもりだ」 「うん、ちょっと試してみたくて。あ、気ィ悪くしたなら謝る」
重ねて言うが、結構殺傷力の高い法術である。 「改めて初めまして、ヒイロ。オレはデュオ、デュオ・マックスウェル。お前んとこの じーさんとうちのじーさんは古馴染みなんだ。オレたちは会ったことなかったけど、 話くらいは聞いたことない?」 「……」
ヒイロの記憶には、覚えがあった。 「……“試す”?」 とりあえず相手が何者かはわかったので、未だ残る疑問を解消すべく問いを重ねる。
すでに、ヒイロの中では警戒というよりも変わった相手に対する興味の方が勝っていた。
「うん、お前んとこのじーさんが『ウチのは強い、負け知らずだ』って言ってたから
どんなもんかなーって。オレより強いヤツって会ったことなかったからさ」 にこにこ笑顔で話すデュオは、大層ご機嫌だった。 「そうか」
デュオの説明に満足したのか、ヒイロが頷く。 この時点で、ヒイロにはデュオに対する興味が沸いていた。 今まで、自分の防御壁を消すほどの術を使う同年代の人間なんて一人もいなかった。
大人相手でも高位の者でなければ勝てる自信があるヒイロを相手に、一歩も引けを
とらない。 それが相殺されたのだから、おそらくデュオの力はヒイロを超える。わずかの差ではあるだろうけど。
「これからよろしくな、ヒイロ」
―――おもしろい。 今までいなかった類の人間。その力も、向けられる明るい笑顔も。
「ヒイロ、やった!受かったーーー!!」 腕を振りまわしながら駆け下りてくるその姿に、知らず苦笑が洩れる。 あれからとりあえず自然と進路が別れてここまで来た。
追いつくまで、越える試練はあと2つ。
力の差が追いつくまではあと少し…では追い越すまでは?
end. |
2000.3.10.
何故だかなんとなく続いてます(笑)
でも、なんか…なんかがチガウ…………。 ヒイロ視点なせいでしょうか、それともデュオが奇妙に明るいせいでしょうか。 何故こんなにヒイロらぶってるんでしょう……(汗)(汗)(汗) とりあえず出会い編……ただ出会い頭に法術ぶっぱなすデュオが書きたかっただけ。 使った呪文はSD外伝より。ヒイロの「壁」ってのはアンチマジックって呪文です。 (自分で考える頭がないので説明書から引っ張ってきました……) |