ANGEL NOTE



「ヒイロ、準天使昇格おめでとー♪」

聖堂を出たのとほぼ同時と言っていいタイミングで、何者かがタックルを 仕掛けてきた。

「またお前、さぼったな」

ある程度予測はついていたので、それを軽くかわして腕を掴みあげ、 睨みつける。

「だってさ、幼馴染としてはやっぱ気になるしー」
そのために稽古の一つや二つ、と軽く笑い飛ばす。

「優秀なくせに要領悪いからいつまでたっても一人前になれないんだよ、 ヒイロは。早く正天使になって一緒に地上へ遊びに行こうな」

にこにこ笑いながら、結構酷いことを言っている。
こういうセリフは先に上まで昇りつめた奴が言うとなるとかなり腹が立つが、 不思議とデュオが言うとそんなに嫌味がない。

嫌味はないが本心から言っているということは確かなので、まあぐさりと くることには変わりないが。

「うるさい」
「だって、オレ早く地上見たいんだもん」
「俺と組むことになるとは限らないだろ」

天使と死神は一対となって行動する。
死神が命を刈り魂に休息を与え、天使が転生へと再生の力を行使する。
相反する作業ではあるが、結局は流れ作業ということで対となり一気に 片付けるのが通常であった。

「いーや、きっとヒイロだぜ。他にいないもん」

そして、むうとふくれてこぼすデュオにはまだ対となる相手はいない。
デュオの死神としての能力値に見合う相手がいないせいだ。

逆に言えば、能力値の高い人物が正天使に昇格すれば、その時点でそいつは デュオのパートナーとなることが決定する。

「それにさ、対になったらずっと一緒にいられるだろ?」

楽しそうに言うその笑顔には、他になんの含みも見当たらない。
ただ、一緒にいるだけ。
それは、すでにヒイロにとっては過酷なセリフだったりするのに。

「あっ、と。そろそろ戻んなきゃ」
がんばってなー。

いきなり現れて、激励のセリフだけを残し軽やかに去っていった人物の後姿を 見つめ、ヒイロは深ーく溜め息を吐いた。

『他にいない』とデュオに言い切られはしたが、実際のとこ候補は自分以外にも 3人いるのだ。

不精なデュオは他人の能力値について調べもしないから、多分 気がついていないのだろうけど。

しかもそのうち二人は、デュオが死神の道を選んだ時点で志望進路を天使に 変更したという根性入り。

全く、自分を知らないというのは心底恐ろしい。


勝てば極楽、負ければ地獄。

しかし、勝ったところで次の壁が待っているという状況。


「あいつがにぶいのが一番の問題か…」


さて、何から手をつけたものか?

                                          end.



2000.3.6.
久々のちんまり更新。
ファンタジーネタって好きです。設定を細かく考えなければ(笑)
ヒイロが天使でデュオが死神。
ヒイロが騎士でデュオが法術士。
王道ですが、ビジュアル的にも素敵です…(-w-)
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