OKAYAMA LIGHT RAIL VEHICLE MOMO

2002年7月5日、ついに岡山の街にも路面電車のニューウェーブ「MOMO」が誕生しました。
市電ではない岡山電気軌道の新車として1編成が導入されました。

2002年は超低床車の当たり年で、既に鹿児島市交・伊予鉄道・土佐電鉄・函館市交で走り始めています。

しかし今回の岡電の場合は、市民運動の盛り上がりから端を発して官民を巻き込んだまちづくり運動に発展して、路面電車を単にバリアフリー・環境にやさしい乗り物というだけでなく、市街地再開発に活用しようという重要な使命を帯びています。

そのためにも乗って楽しいものを、
ということでデザイナーにはドーンデザイン研究所・水戸岡鋭治氏を起用。
JR九州の特急列車の車両デザインなどで鉄道ファンにはおなじみですね。
水戸岡氏が岡山市出身という縁もあって、なんと無償で引き受けられたとのことです。

ファン的には水戸岡デザインが注目されるところですがさてさて・・・

取材日 2002/07/21


MOMO全景。
岡電では初の連接車です。
落ち着いた色調で街中にもとけこみやすい雰囲気でしょうか。


超低床車ということで、注目されるのが床面の高さですが、出入口でわずかに30cm!
電停をかさ上げすることでほぼ段差ナシが
実現しています。


具体的にはこんな感じです。
ほぼ段差がない状態です。

柳川電停にて。


車内は狭軌ながら非常にゆったりした幅になっています。もちろん車椅子も楽々通過可能。
水戸岡氏によると車椅子利用者に特別に配慮があったわけではなく、人それぞれに楽しめるように考えた結果ということです。
バリアフリーを飛び越えてユニバーサルデザインといったところでしょうか。

注目の車内インテリアですが、
床材やベンチに木をふんだんに使った暖かみのあるデザインです。
これを見ると「ゆふいんの森」のデザインが思い起こされます。

超低床車の構造的弱点である車輪の突起部分を
非常にうまく処理していると思われます。


車内の様子。

一番手前の女性が座っているのが「サロンベンチ」。
車両中央部の入口のすぐ向かいにあり、すぐに座れることもあって一番利用率が高いです。

通常は、この画像の他の乗客の方が座っている向かい合わせのベンチがすぐ埋まってしまうようでした。


向かい合わせベンチ。

中央の小さなテーブルは「キャンディテーブル」と呼ばれます。何かちょこっと置くにはちょうどいい大きさでしょうか。


これがうわさの「ラッキーベンチ」。

混雑時でも軽く腰掛けることができる、まさにラッキーなベンチです(笑)


画像正面の10cmあるかないかのほんのわずかのベンチスペース。
名前は「チョコットベンチ」(^^;

グループで行動する時なんかは結構有効かも。


梅雨も明けて夏真っ盛りな岡山。
日よけも当然必要でしょう。

ということでブラインドにはなんと簾(すだれ)が使われています(^^;;;
う〜ん、日本の夏だ(笑)


MOMOから手紙を送りましょう、
ということでなんと車内にポストが登場。

鉄道車内にポストというのはSLばんえつ物語号に次いで2例目、路面電車ではもちろん全国初です。

集配は19:30の1回だけで、特別に岡山東局の風景印が押されるということです。

3年後(平成17年)の岡山国体開催のプロモーションの一環、ということで2002年11月30日までの限定設置です。


車端部のパネル。右から形式番号、禁煙表示、メーカーの新潟鉄工所、
そして一番左にドーンデザイン研究所のロゴが・・・
デザイン事務所の名前が出てくるのは鉄道車両としては極めて異例のことですが、
「作品」としての自信の表れというところでしょうか。


MOMOにはもう1つパネルがあります。
上から順に、所有者である岡電(岡山電気軌道)、
メーカーの新潟鉄工所、車両技術のライセンスを持つドイツのボンバルディア社、
デザインの水戸岡鋭治氏率いるドーンデザイン研究所。

そしてCOOPERATOR・・・協力者としてRACDAという市民団体。
間違いなくMOMOを生み出した原動力といっていいでしょう。→ RACDA岡山のサイト
そして右にはRACDAのMOMO導入のための募金活動の多くの協力者の名前が刻まれています。


MOMOは非常に魅力ある車両ですが、鉄道車両としては異例な手法が用いられて誕生しました。
特に市民参加というカタチでは極めて異例でしょう。
それだけにむしろこれからどのように利用されていくかが大きなポイントになると思います。
また、市街地活性化という重要な使命を帯びているため、各方面のモデルケースとなるだけに今後の動向が
注目されます。

<雑感>追記:7/22 23:45
わたしは持病のため、約4年間ほど月1回はJR網干から岡山大学付属病院に通ってました。JR岡山駅からの交通機関はもちろん岡電。鉄道好きということもありましたが、バスより安いというところも気に入りました。
行きは岡山駅前→清輝橋、帰りは清輝橋から新西大寺町筋まで乗って、あちこちを街歩きしたり、たまには城下近辺の美術館・博物館とかに寄って、城下から岡山駅前に戻る、というパターンでした。
まあ、RACDAのまちの回遊の考え方を地でいってるようなものでした(笑)

今回、MOMOに乗るために久々にいろいろ回ってみましたが、病院に通っていた当時より街のパワーが格段に落ちた印象があります。商店街の店がかなり無くなっていてものすごく寂れてしまった感じです。
一方で、人の流れはクレド岡山(ファッション+オフィスビル)にかなり集中していてひとり勝ち、といったところでしょうか。

寂れてしまった街にどうやって活気を取り戻すことができるか。
MOMOで一時的に人を呼ぶことができても、根付かなければ何の意味もありません。広島のグリーンムーバーのようにうまく根付いて欲しい。MOMOと岡山市民の方々に期待してます。

参考サイト:
岡山電気軌道
http://www.okayama-kido.co.jp/
RACDA岡山
http://www1.harenet.ne.jp/~racda/
山陽新聞 水戸岡鋭治氏インタビュー記事
http://www2.sanyo.oni.co.jp/news/2002/06/06/36.html

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