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分の物語」について


 この物語群は、「千分の一物語」のシリーズとして考えてきたもので、大人向けの童話のようなものです。
 この物語をつくるにあたって、多大な影響を受けたのが、稲垣足穂著「一千一秒物語」でした。高校の時この作品を読んで、自分もこんな風な話を書いてみたいと思ったのがきっかけです。
 それ以来、わたしの中のちょっとした宇宙的な出来事やイマジネーションは、こういう風な短い話となって吐き出されるようになりました。
 また、ますむらひろし「アタゴオル」シリーズにも感銘を受けました。なんて美しい世界なのだろうと思います。その真ん中に鎮座するヒデヨシにわたしは感心したり呆れたり。テンプラやタクマがヒデヨシのことを「得ようと思っても得られない、最高の友達」だというようなことをたまに言っていますが、ここで「ええ?」と思う人は、文明に毒され過ぎているのです(笑)。ヒデヨシは自然そのもの、大地そのもの、そして猫そのものなのだと思います。
 横道にちょっとそれてしまいましたが。
 わたしにとって、この話を書くというのは、夜中に聞こえてくるかすかな物音、自然の息づかい、風の流れ……というような普段は忘れているものをふと思い出し、見つめたときに出てくる空想を書き留めているにすぎません(それにしてはイカレた話が多いですが)。
 そうしてできた物語は、一つ一つが地球を感じた心のかけらなのです……。
 この物語群に物語としての意味はありません。言葉そのままを読んだままに受け取って下さって、夜に昼に、空を見上げて下さったなら、微かな物音に聞き耳を立てて下さったなら、わたしの試みは成功しているとほくそ笑むことができるのです。

1998/2/1 室生 園臣

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「一千一秒物語」

稲垣足穂の著作。新潮社、その他の出版社から出ている。

ここでは、新潮社/昭和44年12月25日発行、平成3年2月25日33版「一千一秒物語」から解説「一千一秒物語」の部分を抜粋する。解説者は松村実氏。なお、漢数字表記の一部を数字に置き換えた。

「一千一秒物語」(1923年1月、金星堂刊行)

「新鮮な特異な物語」(宇野浩二)や「これこそ、ショートショートの元祖である」(丸尾長顕)に続いて、現代ショートショートの旗手である星新一は「星をひろった話」を挙げて、「一つの独特の小宇宙が形成」されていて「感性による詩の世界」と言う。

「一種の文学的絶縁とニヒリズム」と足穂が語るように、ここには人間的な暖かさは全然感じられず、あらゆるものは無機物のレトルトによる金属性血液を注入されて、自由自在に飛び回っているのである。

愛弟子の処女作品集に、「一千一秒物語」の題名とともに「童話の天文学者 ── セルロイドの美学者」の序文を書いたのは佐藤春夫だが、「大きな三日月に腰掛けているイナガキ君、本の御礼を云いたくてもゼンマイ仕掛の蛾でもなけりゃ君の長椅子へは高くて行かれあしない」と厚意を寄せたのは芥川龍之介である。

はじめの200編は、自選により68編(1923)の後、70編(1957)と改訂されているが、春夫の序詞は初版及び復原版以外では見ることができない。


ますむらひろし(1952〜)

1952年
10月23日山形県米沢市生まれの漫画家。

1973年
上期「少年ジャンプ」手塚治虫賞に「霧にむせぶ夜」で準入選。

1985年
7月にますむらひろし原作・劇場用アニメ映画「銀河鉄道の夜」大ヒット。

1988年
「PARTIFALパルチファル」のデビューアルバム、「アタゴオル玉手箱」がワーナーパイオニアから発売。

1997年
日本漫画家協会賞大賞を「アタゴオル玉手箱」で受賞。
イメージ・サウンド・トラック集「アタゴオル・クリスマス」が日本コロムビアから発売。

代表作は、
「アタゴオル物語」スコラ
「アタゴオル玉手箱」偕成社
「アタゴオル」スコラ
「コスモス楽園記」スコラ
「宮沢賢治マンガシリーズ」朝日ソノラマ


「アタゴオル」シリーズ

ますむらひろしの代表作。

数々の同一世界、同一登場人物のシリーズ作品がある。

ヨネザアド、アタゴオルは、自動販売機と家との10センチの隙間などを入口に行くことのできる別世界、その、一地方の名前と思われる。様々な森から成り、猫、人間、その他の生き物が同じ言葉を共有して生きている。

いろいろ脇役に入れ替わりがあるものの、主人公のヒデヨシ、テンプラ、パンツ、チビ丸、唐揚げ丸といった登場人物達の織りなす、自由という言葉のない世界の物語。

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