◎アクションゲーム 2011-2012 目次
2011年のFPS/TPS界を振り返って |
最初に上段はゲームサイトや雑誌のレビューを点数化して集計しているGame Rankings.comでの、PC版での点数による上位ベスト5(集計サンプル数10以上)。それと2011年に発売された大物タイトルをプラス5個挙げておく。 1. Portal 2 2. Deus Ex: Human Revolution 3. Assassin's Creed: Brotherhood 4. Battlefield 3 5. Dead Space 2 *Bulletstorm *Call of Duty: Modern Warfare 3 *Crysis 2 *Duke Nukem Forever *Rage 以下はその他の主な発売タイトル(PC版の発売年&西欧市場での発売年基準) *Alice: Madness Returns *Assassin's Creed: Revelations *Batman: Arkham City *Brink *Call of Juarez: The Cartel *The Cursed Crusade *Dead Island *Dead Rising 2: Off The Record *Driver: San Francisco *Earth Defense Force: Insect Armageddon *F.3.A.R. *The First Templar *Global Ops: Commando Libya *Homefront *Hunted: The Demon's Forge *Operation Flashpoint: Red River *Painkiller: Redemption *Postal III *Red Faction: Armageddon *Red Orchestra 2: Heroes of Stalingrad *Saints Row: The Third *Section 8: Prejudice *Serious Sam 3: BFE *Shadow Harvest: Phantom Ops *Warhammer 40,000: Space Marine ダウンロード販売を主体(或いは現時点ではそれのみ)としたインディーズ会社からのリリースタイトル。 *Afterfall: Insanity *The Ball *Bunch of Heroes *Cargo: The Quest for Gravity *Dead Block *Dead Horde *Dungeon Defenders *E.Y.E: Divine Cybermancy *Hard Reset *The Haunted: Hells Reach *Hydrophobia Prophecy *Magicka *Monday Night Combat *Nuclear Dawn *Orcs Must Die! *Payday: The Heist *Sanctum |
☆大作ラッシュの一年 当初から予想されていた事だが、2011年は数々の話題作や注目作が集中して発売される年となった。開発サイクルの一致というのもあるのだろうが、2004年, 2007年が同じ様にそれに当たる年と言えて、今回はゲーム製作に時間が掛かるようになったという影響からか4年振りの大作ラッシュとして位置付けられる。 ただしその話題作の評価はマチマチとなり、非常に期待されていたのだが実際のユーザーの評価は良くなかったという物も結構出ているという状況である。特に遂に発売されたDuke Nukem Foreverの騒動は大きく、レビューサイトでの叩かれ様の酷さに公式掲示板で反論スレッドが増えて、肯定派と否定派による論議で荒れ模様にもなったりしていた。個人的にはまだ未プレイなので何とも言えないが、ユーザーレビュー自体はレビューサイトの平均スコアほどには悪くないものの、良いとは言えないレベルのスコアに留まっている。 上記の平均スコアベスト5の作品は、Battlefiled 3を除けばレビュースコアと同様にユーザー側の評価も相当高かった作品が並んでいる。一方でそれ以外の大作には、よくあるケースなのだが「レビューサイトでの評価はかなり高いが、ユーザーの評価はそれよりも結構低い」という物が目立った様に思える。上記のBattlefiled 3の他だとBulletstorm, Call of Duty: Modern Warfare 3, Crysis 2, Rage等がそれに当たる。差が出てしまう理由としては、そもそもマルチプレイがメインのタイトルは発売前の評価は困難, PC版の評価にコンソール版の文章(スコア)がそのまま流用されている為に、PC版をプレイしたユーザーとは感覚が異なってしまう, そのサイトでのスコア計算システムにより、実際のレビュアーの感覚よりも総合スコアが高くなる傾向にある, 提灯記事等々。逆にレビューサイトでの評価が良くないのに、ユーザーの評価が高い物としてはSerious Sam 3: BFE, Alice: Madness Returnsなどがあったりする。 いずれにしろ大作ラッシュの年にしては、面白いゲームが沢山遊べた充実の一年という雰囲気は無い様であり、その意味では残念な年であったとも言えそうだ。 ☆発売時期の変化 近年見られた発売月のシフト化傾向はより顕著となり、ホリデーシーズンをターゲットにせずにバラけるようになってきている。売り上げデータとして「ホリデーシーズンに出さなくても十分に売れるという見込みが立った」と見る販売代理店が増えたという事だろう。それでもまだ半分程度は9月〜11月辺りに集中はしているが、決算の多い3月期が第二の山として定着しそうな印象を受ける。 ☆インディーズ会社の台頭 2011年におけるPCゲーム業界の大きな動きとしてはやはりこれを外す訳には行かない。小規模なゲーム製作会社の活動の場としては、これまではカジュアルゲームのポータルサイトがメインとなっていた。多数存在するこういったサイトは市場規模は相当なものの、ユーザー層は主婦や高齢者がメインの為にパズルゲームやアドベンチャーゲーム系が中心となり、FPS/TPSなどのゲームはほぼ扱われていない。またアイディア一つで個人レベルでも製作可能なパズル系に比較して、FPSなどはある程度の製作人数が必要でコスト高となる。よって代理店と契約して資金を出して貰う訳だが、実績の無い無名会社では契約自体が難しいし、マイナーな代理店と契約したところでプロモーション費用が捻出出来ないので存在自体を知ってもらえない可能性が高い。更にリテール版は中間コストが掛かるので儲けが少なくて黒字にするのが困難という事情もある。結果的にこのジャンルではインディーズ会社は成立し難いという図式になっていた。 しかしPCゲーム界においての急速なダウンロード販売市場の拡大により(この問題を解消出来る市場となるという見方は少し前辺りから在ったのだが)、それが現実の物として達成されたのが2011年だと言えよう。2010年頃に「これなら行ける」として本格的に製作に取り掛かった多くの会社のゲームが、実際に完成したのがこの年だったという風にも取れる。「ダウンロード販売(特にSteam)無しにはこのゲームは製作出来なかった」というコメントが多く見られる。 ☆ダウンロード販売セールの過激化 定期的に行われるダウンロード販売サイトでのセールにて、対象商品の数と値引率が一段と増加している。新作の大物タイトルでもセールに出るまでが早くなったし、その他のゲームでは一日限りと称しての大幅値引きが目立つようになった。この辺の売り上げデータは公開されていないが、50〜75%オフで売っても納得出来るだけの利益が見込めているという事なのだろう。仮に$20のゲームを一本売ると70%が会社側の取り分になるとして$14の利益だが、75%オフの$5で売ると$3.5の儲けとなり、これだと4倍売れれば同じ$14の利益を稼げる計算になる。つまり「特に買いたいという意志はないのだが、大幅な値引きになりさえすれば買う」というユーザー数がかなり多く、75%オフにする事でそういったユーザーの購入が大量に見込めるというデータがあるので、この様なセールが良く行われているのだと思われる。ユーザー側にしても悪くない話なので、この傾向は更に増加すると考えられる。 ☆Co-op リストを見てもCo-opに対応しているゲームの比率は相当に高く、製作会社の多くが重要な要素として捉えているのは間違いない。これにはマルチプレイを敬遠するカジュアル層へのアピールや(将来的には対戦マルチプレイへと導こうとする狙い)、シングルプレイのプレイ時間の短さを補うコンテンツとしての意味合いも含まれている。特にインディーズ系の製作ゲームに対応している物が多く、これは予算不足によるコンテンツ不足を補完しようという狙いがあるのだろう。 Co-opのファンとしては喜ばしい事ではあるのだが、その全てが面白い内容である訳ではない。シングルプレイのキャンペーンをそのままCo-op出来るのかどうかは重要な点であるが、それを達成出来ているゲームはそれほど多くない。ホードモードと呼ばれる、敵のウェーブを延々とクリアして行くという別のモードが用意されているだけという物が多く、短時間で飽きてしまうという内容の薄いゲームも存在している。 ☆シングルプレイ 大作が多く出た年であり、その意味ではシングルプレイ派にとってもそれを含んだ数多くのゲームがプレイ出来た年であったはず。しかし上で書いた様にそのクオリティが満足の行く物であったのかどうかは疑問が残り、反対に期待して待っていた割にはそれを超えるレベルの作品が少なかったという失望感の方が目立っていた様にも見えた。 既存フランチャイズに頼る傾向は相変わらずで、全くの新規タイトルは数少ない。北米も欧州も異なる嗜好を持った人々(国々)で構成される広大なエリアを持つ為に、ゲームの宣伝を行うのは物凄い費用が掛かってしまう。そこでストーリー的な続編では無くても、知られているフランチャイズの名称を使って新作をリリースする事で、ユーザーの興味を惹くチャンスを増やすというのがその狙い。しかしそれだけマンネリ化も防げない事になるので、ユーザー側からすると好ましい状況とは言えない。 ☆対戦マルチプレイ 個人的にはすっかり離れてしまっているので詳しい状況は掴めていないのだが、とにかく「経験値(XP)を稼いでランクを上げ、それで様々な要素をアンロックしていく」という形式のゲームが増えているというのは確か。 |
2012年のFPS/TPS界を展望する |
2012年リリース予定のアクションゲームのリストから。上段は業界的に注目度が高い物を10本選んでいる。 *Aliens: Colonial Marines *BioShock: Infinite *Borderlands 2 *Counter-Strike: Global Offensive *Far Cry 3 *Grand Theft Auto V *Hitman: Absolution *Max Payne 3 *Prey 2 *Tomb Raider (2012) *7554 *ArmA III *Brothers in Arms: Furious 4 *The Darkness II *Darksiders II *Death to Spies 3 *Deep Black *Dishonored *Ghost Recon: Future Soldier *Lucius *Metro: Last Light *Natural Selection 2 *Prototype 2 *Resident Evil: Operation Raccoon City *Sniper Elite V2 *Sniper: Ghost Warrior 2 *Spec Ops: The Line *Syndicate *True Crime: Hong Kong *XCOM 以下は発売される可能性はある物及び、PC版がリリースされるのかが公式にアナウンスされていないゲームである。 *Army of Four *Call of Duty(新作) *Doom 4 *Thief 4 |
☆発売予測 大作ラッシュの翌年とあって、発売が予想されるタイトルの数は例年よりも少な目である。またAAAランクの大物も同時に少ないと言える。現在公開されているデータの量にも影響されるが、この中では特にBioshock: Infiteの注目度(期待度)が業界的には最も高いと感じられる。全体としてのクオリティがどうなるのかは未知数だが、ゲームのリリース数自体は減るとみて間違いないであろう。 現在では製作予算の最低ランクが二千万ドル(15億円程度)と言われており、それに加えてAAAタイトルでは数十億円の宣伝費用を掛ける為に、アナリスト等の論調では中間層が生き残れない時代という見方が強い。そこそこの予算でそれなりのゲームを作っても、製作&宣伝必要が高騰している為に黒字を出すにはかなりの水準の売り上げが必要とされてしまうからだ。そこで数少ないAAAタイトルに予算と人員を集中させて、大金は掛けるが大量に売って利益は出すという方針の販売代理店が増えているという事である。よって発売されるタイトルは少数精鋭となり、ゲームの発売本数自体は減るという傾向は続いていくと思われる。 ☆インディーズ会社の躍進 逆にダウンロード販売市場を中心としたインディーズ会社の活躍は更に期待出来る筈である。2011年の躍進を見て、これなら自分達でもやれると考える会社が増えると思われるからだ。こういった会社のゲーム情報は完成の数ヶ月前辺りにならないと出て来ないのでその規模は予測出来ないが、少なくとも2011年並の数は出て来るのではないかと期待している。上記の高額予算ゲームへの移行と合わせて、インディーズゲームとの二極化状態が強まる可能性が高い。 ☆ダウンロード販売の競争が激化 PCゲーム市場におけるダウンロード販売の比率は増す一方だが、業界全体が好調という訳では無い。ImpulseはGameStopに買収され、Direct2DriveはGameFlyの傘下に移行するという形で、Steamのライバルだった大手2社に変化が起きている。今年もどうやって他店に差をつけるかという面で競争が激しくなる事が予想され、同じゲームならば独占特典(買う店によって特典が異なる)などのサービスが増えるケースも考えられる。そして当然競争が激化すれば大手が有利であり、今後中堅以下の会社が生き残るには独自のコンテンツ(ゲーム)を持っているとかでないと厳しいと思われ、今年も更なる統合化が進む可能性は大いにある。 業界トップのSteamは安定して伸びており、その伸びは今年も変わらないだろう。インディーズ会社からも「ダウンロード販売の発達というよりも、Steamが在ったからこそゲームの販売が可能になった」という声が出ておりその支持率は高い。インディーズ会社の大きな弱点は宣伝広告費をほぼ持たないという点になるが、その点Steamはプロモーションの観点からは飛び抜けて優れており、発売前後のストアページへの登場でユーザーにその存在を知らしめるチャンスを持っているのが大きい。これは数多くのゲームがSteamを必須としているので、必然的にそれを利用するプレイヤーが多く、その際にストアページを見る機会が生じるからである。デイリーセールがあるのでストアページを見るのを日課としているプレイヤーも多いはず。結果的にインディーズ会社の多くがSteamをメイン(または独占)の販売サイトとして使用するので、ユーザー側もそれに倣ってSteamへの注目度をより高めるという相乗効果が生まれ、益々Steamは独占状態を加速していくと思われる。 ☆Co-op 発売予想リストを見る限りでは、Co-op対応のゲームは昨年よりは少なそうに思える。まだ詳しい仕様が発表されていない物もあるので何とも言えないが、キャンペーンCo-opとは別モードとしてCo-op形式の物を用意してもそれ程人気が出ない事が多い。その結果を踏まえてキャンペーンをCo-op仕様にするのを重視するゲームと、無理に別モードとしては設けないという考え方をする所に分かれそうな気がする。 反対にインディーズ系のゲームはコンテンツ不足を補う為にCo-op対応の比率が高く、それは今年も変わらないと予想される。 ☆有料システム 何年も前から出ている話なのだが、FPS/TPSゲームにも有料化の要素を盛り込もうという考え方がある。とにかくゲームの開発&宣伝に金が掛かるので、「何とかユーザーからもっと金を集める方法はないか?」と考えている企業がほとんどであり、現在ではそのメインは有料DLCとなっているが、それ以外の方法として課金システムの様な物が考えられているという話である。 一つはMMOGの様な世界を作り上げて月額課金にするという方式で、例えばCall of DutyシリーズのMMOGが作られているといった噂は時折聞くのだが、韓国や中国向けならともかくとして英語圏では定額課金には抵抗が強いので可能性は薄そう。またFPSでMMOGを作ろうと思ったら世界観をSFかファンタジーにしないとやり難いのだが、最も人気の高いのは実銃を扱う近未来の戦争形式なので人が集まり辛いという事情が在る。(現実の軍隊ではMMOGで非常に重要な外見のカスタマイズが出来ない, 死亡時の扱いをどうするかという問題, モンスターを狩るCo-op形式には出来ず対人形式に限定される等)。 よってプレイスタイルは現状同様の対戦形式で、アイテム課金により金を徴収するという方式の方が可能性が高そうだが、ちょっと間違えるとユーザーから猛反発を受ける恐れがあり難しい。それを持っていると有利になるというアイテムを売るのは反発を招くので、“特別有利になる訳ではない新しい武器”等を売る位しか出来ず、それだと幅広い課金が不可能になってしまう。よって当面は「基本無料でアイテム課金。そしてカジュアル寄り。」というBattlefield Play4Freeの様な物に限定されているが、Ghost Recon: Onlineの様な別の代理店からのサービスもスタートするし、この辺が成功すれば今後の有料化の展開に大きく影響するとも考えられる。 ☆OS 2011年は「XPではプレイ出来ない」というタイトルは予想通りにごく少数のリリースに留まった。しかし快適な動作にはメインメモリ4GB以上を要求するタイトルが多くなったので、推奨環境にWindows7推奨を謳うタイトルは結構増えている。Steamの調査ではもうXPユーザーの比率は2割を割っているので、2012年にはVista以上を必要とするゲームの数は確実に増えるだろう。 |