◎アクションゲーム 2010-2011          目次

2010年のFPS/TPS界を振り返って
 最初に上段はゲームサイトや雑誌のレビューを点数化して集計しているGame Rankings.comにおける、PC版での点数による2010年発売ゲームの上位ベスト5(集計サンプル数10以上)。それと2010年に発売された大物タイトルをプラス5個。


1. Battlefield: Bad Company 2
2. Amnesia: The Dark Descent
3. BioShock 2
4. Just Cause 2
5. Assassin's Creed II


*Call of Duty: Black Ops
*Medal of Honor
*S.T.A.L.K.E.R.: Call of Pripyat
*Mafia II
*Splinter Cell: Conviction



 以下はその他の主な発売タイトル(PC版の発売年&西欧市場での発売年基準。)


*Alien Swarm
*Aliens vs. Predator
*Alien Breed: Impact
*Ball, the
*Blacklight: Tango Down
*Cursed Mountain
*Dark Void
*Darksiders
*Dead Rising 2
*I'm not Alone
*James Bond 007: Blood Stone
*Kane & Lynch 2: Dog Days
*Lara Croft and the Guardian of Light
*Lost Planet 2
*Metro 2033
*NecroVisioN: Lost Company
*Precursors
*Prince of Persia: The Forgotten Sands
*Star Wars: The Force Unleashed II
*Scourge Project, the
*Serious Sam HD: The Second Encounter
*Singularity
*Sniper: Ghost Warrior
*Terrorist Takedown 3
*TRON Evolution
*Twin Sector
*White Gold




☆発売時期の変化

 昨年の予想として、「大物タイトルを含めてかなりの数が出る予定だが、ホリデーシーズンを避けて来年度Q1へと移行するタイトルも考えられる」としたが、実際には想像以上に2011年へとシフトするタイトルが多く、むしろ逆に2010年度は発売されたゲームが例年よりも少な目だったというレベルに終わっている。またホリデーシーズンを避ける物が増えたので、大物タイトルが上半期に集中する結果となり、あまりゲームが出ていないかの様な錯覚すら感じてしまう一年だった。

 発売時期のズレた理由として、一つは前回も述べた様なホリデーシーズンへの一極集中を避けた分散化の流れ。2010年のQ1へとシフトしたゲームの売り上げがどうだったのかというのは詳細なデータが無いが、「ズラした事が良い結果に繋がったので、また今年もシフトさせる」という事態になった可能性が高い。

 次にCall of Dutyシリーズの存在。モンスタータイトルに成長したこのゲームとのバッティングは、同ジャンルのゲームとしては出来れば避けたい所であり、そうなると11月上旬発売のBlack Opsの前後には発売しにくい。すると10月中旬辺りまでに出さないとならず、その早めのスケジュールを考えると無理をするよりは来年へと先送りした方が無難である、という判断が働いたというのは考えられる。

 最後に2010年のホリデーシーズンはKinectやPS Moveの登場。それと3DSの発売が予想されていたので、そちらへの注目度を考えて避ける様にしたというのもありそうだ。


☆シングルプレイ

 ランキングを見ると一位のBattlefield: Bad Company 2はマルチプレイとしての評価と考えるべき。二位に入ったAmnesia: The Dark Descentは誰一人予想していなかったと思うが、本来ならば10本レビューが集まるかが問題という程度のマイナーゲームだったのが、評判の良さから数が増えてこの結果となった。それ以外の3本は続編となり、出来はともかく新鮮さに欠けるランキングなのは確か。

 満を持してのMedal of Honorの新作は期待を下回る低評価となり、同じくAliens vs. Predatorの久し振りの続編もファンの期待に適うレベルには達していなかった。Mafia IIも評価は今一つと、期待作の低迷が際立つ年となった感は否めない。

 2009年に比較すると平均的な水準は上昇して、70〜80点クラスのゲームは増えているが、強いインパクトを持った作品は登場しなかった様に感じられる。言い方を変えれば「年間一位」となる作品を選ぶのに苦労するという年だったのではないか。


☆対戦マルチプレイ

 2010年はほとんど対戦マルチプレイをしなかったし、各ゲームのシステム自体を良く把握していないという状況なのでパスさせてもらう。ただ話題としてDedicated Serverをサポートするかどうかの論議が目立っており、これは今後もPC版のマルチプレイが成功するかどうかの重要なポイントになりそうである。


☆Co-opの人気が継続

 Co-op採用タイトルは2010年もそれなりに多く、人気は定着しつつあると言える。ただしそれに関連した新たな問題が目立ち始めているのも事実である。

 そもそも2000年代に入ってからCo-opが衰退していった大きな理由として、シングルプレイ用キャンペーンとの整合を取るのが困難という件があった。キャンペーンを最初から最後までCo-opでもプレイ可能にするとなると、シングルプレイの方のデザインに制限が掛かってしまい、イベント等を自由に起こせないといった問題が生じる。例えば何かが崩れて後戻り出来なくなるイベントを発生させる場合、Co-opで参加メンバーが分断されてしまうのをどうやって処理するのか等。若しくは一人分しか戦うスペースがない場所での戦闘というシチュエーションも不味いし、一人だけが行うと想定しているアクション(パズル)なども設け辛くなる。それと難易度についても、参加人数増加による調整をどうするのか考えないとならない。

 その問題を近年のCo-opでは、最初からCo-opの最大参加人数分のキャラクタが用意されていて、シングルプレイにおいてはAI操作のその仲間と共に進めて行くという形式が増えている。これなら整合性の問題を解決し易いからだ。ところがこの方式では、Co-opに合わせてゲームを調整すると、シングルプレイの方に問題が生じてしまう事が多い。Co-opでは人間がキャラクタを操作するのに対して、AI操作のシングルプレイではその能力はかなり劣る事になり(射撃能力以外)、出来る事が大きく制限されてしまう。

 その状態でCo-opならば面白くなるようなイベントを設けたりしても、シングルプレイでのAIはそれを行えないとなったら、シングルプレイしかしない人は本来のキャンペーンの面白さを楽しめない。同様に人間チームで丁度良い難易度に設定すると、AIとのシングルプレイではやたらと難しくなったり、的確な動きをしてくれないAIにフラストレーションが溜まったりになりがち。

 結果的に人間同士で集まってプレイするCo-opならば面白いのだが、シングルプレイではAIがちゃんと動いてくれないので相当グレードダウンしてしまうというゲームが増えている。L4Dの様にCo-op前提と割り切った物なら良いが、「シングルプレイでもCo-opでも面白いですよ」と宣伝しているが実際にはそうではないというケースが多いのが問題。今後はシングルプレイとCo-opのそれぞれを調整し、変えるべき点は面倒でも双方独自に作り上げるといった努力が要求されてくる。


☆東欧勢

 2010年で一番目立ったのはMetro 2033の4A Games。今後が期待出来そうな会社である。土壇場になってPrecursorsWhite Goldのリリースがあったりしたが、全体的にはそこそこという数だった。しかし2009年に比べると満足の行くレベルではなく、もっと独特な色を持ったゲームの出現に期待したい。

 City InteractivからはSniper: Ghost Warrior, Terrorist Takedown 3辺りが英語圏でもPRされていたが、その他のタイトルは英語版が売っているらしいのだが見掛ける事すらない物があり、何本か2010年に出たらしいバリュー系タイトルは確認が取れていないので掲載していない。(検索するとイタリアやフランス等の通販サイトが主にヒットする)。


☆ダウンロード販売

 ダウンロード販売への流れは更に加速しており、今後もダウンロード販売に力を入れる代理店が増える事が予想される。PCゲームが簡単に買えるというのはユーザー数を増やす事にも繋がるので歓迎すべき要素ではあるが、ここ日本では販売地域制限に引っ掛かるゲームもあり、2010年ではAliens vs. Predatorが発売中止の憂き目にあった。よってあまりにもダウンロード販売が発達してしまい、リテール版が単なるデータの配布媒体という位置づけになって、必ずオンラインで認証しないとならないという話になるのは、Modern Warfare 2の一件からしても不味いなと考えている。


☆Games for Windows - LIVE

 新たなコピープロテクト方式を採用したりと変化が見られるこのシステムだが、上記のラインアップを見ても対応ソフトが結構増えてきている。しかし御存知の方も多いと思うが、このGFWLは“凄まじい”というレベルで評判が悪く、カジュアルゲームのマッチング方式としてはともかく、FPSのオンライン対戦に採用するにはいろいろと問題が多い。

 個人的にはサポートの頁でも書いたように、実績獲得における不正防止の為にセーブデータを他のPCへは移せない仕様のゲームがあったり、内部の設定ファイルが暗号化されていて修正出来ないとか、セーブデータのバックアップが個別には行えない等の点から、これを直せないのならばあまり普及はして欲しくないと考えている。

2011年のFPS/TPS界を展望する

 2011年リリース予定のアクションゲームのリストから。緑色は業界的に注目度が高い物を10本選んでいる。


*Aliens: Colonial Marines
*Alice: Madness Returns
*Assassin's Creed: Brotherhood
*Batman: Arkham City
*Bodycount
*Brink
*Bulletstorm
*Crysis 2

*Dead Space 2
*Death to Spies 3
*Deus Ex Human Revolution
*Driver: San Francisco
*Duke Nukem Forever
*F.3.A.R.

*Ghost Recon: Future Soldier
*Hunted: The Demon's Forge
*Lucius
*Max Payne 3
*Natural Selection 2
*Operation Flashpoint: Red River
*Parabellum
*Portal 2
*Postal III
*Rage
*Red Faction: Armageddon
*Red Orchestra: Heroes of Stalingrad
*Saints Row 3
*Section 8: Prejudice
*Serious Sam III
*Shadows of the Damned
*Spec Ops: The Line
*Tactical Intervention
*Tomb Raider (2011)
*True Crime: Hong Kong
*XCOM




☆発売予測

 ホリデーシーズンを避けて2011年Q1へと移動したゲームが多く、その1-3月期に大物が集中しているのがまずは目に付く。ホリデーシーズンにおけるバッティングを避けた訳だが、むしろここに集中してしまってバッティングによる売り上げ減が懸念されるくらいだ。ただし代理店にもよるが3月決算の会社ではこれ以上ずらせないという面もあり、概ね予定通りに出るであろう。今後もホリデーシーズンを避けて翌年へとシフトするケースは続くと思われるが、他社の動向を見てあまりにも集中しない様にするという見極めも必要になってくる

 全体的に大物タイトルは多いが、発売時期が現時点では2011年とアナウンスされているのみで、何時出るのか不確定というゲームもあるので、この中でどの程度が実際に発売されるのかは読み難い。特に影響が強いと考えられるのがModern Warfareの新作がどうなるのかという点。2011年はInfinity Wardの番でMW3が発売される筈なのだが、会社があんな事になってしまったので2011年中に間に合うのかが疑問視されている。売り上げ的には超が付くほどの稼ぎが期待出来るタイトルなのでActivisionとしては当然出したいだろうが、急ぎ過ぎて変な物になってはブランドが傷ついてしまうので難しい所。もし今年のホリデーシーズンには出さないとなれば、他の代理店はその間隙を縫ってホリデーシーズンに間に合わせて出すという方針に変わる可能性が高く、そうなれば年内の発売本数は増える事になる。


☆リスト外作品

 昨年も書いたがHalf-Life 2: Episode Threeは、一向に開発状況が見えてこない状態である。エピソードと呼ぶには前作からの間隔も空きすぎている。同じくValveからはLeft 4 Dead 3も考えられる。

 Battlefield 3Medal of Honorの限定版にβテストへの参加権が付けられていた事から、想像以上に発売されるのは早いのではないかという予測も出て来ており、今年中の発売も可能性が増している。

 Hitman 5については親会社のスクエアエニックスの方針もあるのでどうなるのか判らない。IO InteractiveはKane and Lynch 2の評判も良くなく、昨年はリストラが行われたという話なので、プロジェクトに遅れが発生しているというのも考えられるだろう。

 個人的には注目しているが音沙汰のないTechlandのゲームだが、2010年時点での情報として現在では社内のリソースをDead Islandに集中させており、Chrome 2, Warhoundの2本については開発を一時凍結しているそうだ。よってDead Islandについては年内の発売も期待出来そうである。


☆新OSへの移行

 Steamの最新調査によると、VistaとWindows 7の割合が70%程度に達しており、XP使用者の割合は大幅に減少している。そこで今年の内にVista或いはWindows 7が必須となるゲームが増えるのかどうかだが、マルチプラットフォームでの開発がほとんどというこのジャンルでは、開発エンジンが大きく進化しない限りは変化は無さそうな気がする。Xbox 360とPS3というハードウェアは変化していないので、よりこの二機種の性能を引き出せるようなマルチプラットフォーム用の開発エンジンが出て来て、PC版ではより高性能を要求するという風にでもならないと変わりそうにない。

 DX10以上を想定して、それに最適化したコードを生成出来る様にするのが理想だが、売上比率の低いPC版の為にそれだけの努力をするかどうかになる。Crytekの様に技術志向が高い開発会社のエンジンでないと、早期にDX10以上に限定した物は出て来ないように思える。Just Cause 2の様に“マップが広い+高速移動が可能”でメインメモリを要求するタイプのゲームでは、XPのメモリ制限とDX9の仕様から、DX10を要求するエンジンを採用する可能性が高くなるが、そこまで要求する物はそれほど一般的ではない。

 DX10以上を必須とする様なPCメインで作られたゲームも出て来て欲しいのだが、これは現状東欧の会社とかに期待するしか無さそうだ。


☆Co-op

 Aliens: Colonial Marinesはプロジェクトは存続しているそうだが、昨年のAVPが期待を下回る結果に終わった事からSEGAが同フランチャイズの発売に慎重になる可能性もあるし、GearboxにはDuke Nukem Foreverもあるので微妙である。2010年には出ると宣言されながら発売されなかったSerious Sam IIIは今年中には出る事を期待したい。Portal 2のCo-opというのも注目である。

 その他にもF.3.A.R., Bulletstorm, Section 8: Prejudice, Hunted: The Demon's Forge, Operation Flashpoint: Red River, Brink, Red Faction: Armageddon, Spec Ops: The Line, BodycountGhost Recon: Future Soldier等々、全てがキャンペーンCo-opではないにせよ対応を謳っている作品は今年も相当な割合になり、流行は続いているのを強く印象づけられる。

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