◎アクションゲーム 2009-2010          目次

2009年のFPS/TPS界を振り返って
 最初に上段はゲームサイトや雑誌のレビューを点数化して集計しているGame Rankings.comでの、PC版での点数による上位ベスト5(集計サンプル数10以上)。それと2009年の大物タイトルをプラス5個。


1.Batman: Arkham Asylum
2.Left 4 Dead 2
3.Call of Duty: Modern Warfare 2
4.Resident Evil 5
5.Red Faction: Guerrilla



*Borderlands
*F.E.A.R. 2: Project Origin
*Mirror's Edge
*Operation Flashpoint: Dragon Rising
*Wolfenstein




 以下はその他の主な発売タイトル(PC版の発売年&西欧市場での発売年基準。)

*America's Army 3
*ARMA II
*Battlefield Heroes
*Call of Juarez: Bound in Blood
*Code of Honor 3
*Chronicles of Riddick: Assault on Dark Athena
*Cryostasis
*Damnation
*Dark Sector
*Darkest of Days
*Death to Spies: Moment of Truth
*Dreamkiller
*Godfather II, the
*Killing Floor
*Manhunt 2
*NecroVision
*Painkiller: Resurrection
*Prototype
*Quake Live
*Raven Squad: Operation Hidden Dagger
Rogue Warrior
*Saboteur, the
*Saints Row 2
*Scorpion: Disfigured
*Section 8
*Serious Sam HD: The First Encounter
*Shattered Horizon
*ShellShock 2: Blood Trails
*Star Wars The Force Unleashed
*Terminator: Salvation
*Twin Sector
*Velvet Assassin
*Void, the
*Wheelman
*X-Blades
*Zeno Clash



☆発売時期の変化
 2009年になって新たに見られた業界の変化として、早々に翌2010年のQ1(1〜3月期)へと発売時期をシフトさせるタイトルが増えた。大手販売代理店の中の大物タイトルに特にその傾向が顕著である。これまではホリデーシーズンに合わせて9〜11月に発売されるタイトルが多かった。当然その時期に集中する事によって他のタイトルとのバッティングによる売り上げ減の危険性は存在していたが、それでも消費者から大量の金が落とされるこの時期に発売するのが有効であるという認識があったからだ。

 ところが近年になってゲームの制作費が急激に高騰し、更にそれを大量に売らないとならない為に宣伝広告費も上昇。よって損益分岐点が高くなって、大物タイトルだと100万本売った程度では成功とは言えないという状況になってきている。「(Xbox 360やPS3向けの市場では)100万本以上の売り上げが見込めないタイトルは制作しない」といった声も聞かれるようになり、売れるゲーム制作への絞り込みから代理店配下の制作スタジオの閉鎖や再編も進んでいる。そういった状況なので、ホリデーシーズンに出せば確かに販売本数は期待出来るが、もはやその数値が満足の行く所までは達しない恐れがある。そこで発売時期を大作が比較的少ない翌Q1へとずらして、ライバルの少ない状況下での売り上げ増を狙おうというのがこの分散化の理由となる。

 ただしこのシフトが成功するのかどうかはまだ未知数であり、もしもQ1にシフトしたタイトルが十分に売れればその傾向は今後より強まるだろうし、思ったほど売れなければやはりホリデーシーズンに出した方がマシだったという結果に終わるかも知れない。なお総合的に見るとこのシフト化現象は、「開発期間の延長からゲームの完成度が高まる」、「欲しいゲームが出ないという空白期間が減る」といった理由から、ゲーマーにとっては利点の方が大きいと思える。いずれにしろ2009年においては予想していたよりも大物タイトルは発売されなかったと言えるだろう。


☆失望の一年(シングルプレイ)
 上記の様な発売時期のシフトがあったものの、2007年の発売ラッシュの結果から谷間となった昨2008年よりは、全体の発売数や大物タイトルも増加はした。だが例えばF.E.A.R. 2: Project Origin, Wolfenstein, Operation Flashpoint: Dragon Risingの様な期待度が高かったタイトルが、そこまでの評価を得られずに終わっている。その他でも全体的に低調という感があり、全くの予想外と言える高評価作品となったBatman: Arkham Asylumを除くと、広範囲から絶賛されるタイトルも登場しなかった。

 逆に酷い点数を付けられて叩かれるタイトルが目立った年でもあった。「無難に70点クラス」といった標準的な域にまで達するゲーム自体が少な目で、明らかな失敗作として批判されるゲームが多数。全体的な質が落ちた一年となった


☆東欧勢の健闘
 そんな中で東欧勢の健闘は明るい話題であった。売り上げ的にはともかくとして、Cryostasis, NecroVision, The Void等の個性的なゲームがリリースされている。ユニークなゲーム性故に評価も分かれてはいるが、幅広い層に受ける為に大物タイトルの没個性化&安定路線が進んでいる中、強い独自性を持ったゲームには頑張って欲しい所である。この御時世ではゲーム制作費が安くて済む東欧系の制作スタジオのゲームは更に注目を集める可能性を持っており、まだ数多い西欧圏では未発売のゲームがもっとリリースされる事を期待したい。


☆対戦型マルチプレイの衰退
 こちらは既に危機的状況と言えるかも知れない。まずは原則無料のタイプとして、Battlefield Heroesはカジュアル向けという観点からPCのコアなゲーマーには想像していた程の注目を集められず。また最近の有料化傾向を強める仕様変更から、今後も伸びは期待出来なさそうだ。Quake Liveの方は流石に過去の大人気ゲームというのもあって結構人気を集めているようだが、逆に相当古いゲームという事で大きな動きにはなっていない。それとクラス制や大規模チーム戦全盛の現在では、1on1に人気のあった高速アクション系は人を選ぶという状況にもなっている。

 マルチプレイ用タイトルとしては最大規模と言えるCall of Duty: Modern Warfare 2は、Dedicated Serverの廃止と運営側によるサーバーの一元管理いう仕様が大きな論議を呼んだ。DS無しでは対戦時のラグやホストが有利になるという問題、また大人数での対戦が不可能となるしModにも対応が出来ないとなり、発売前には大変な反発を生んだ。私自身はまだ未プレイだが、公式掲示板を見る限りでは実際にPC版においては前作に比べて問題点が多いと不評であるのは確かな様だ。

 次に前作が今でも人気を誇るWolfensteinのマルチプレイは(現在ではEnemy Territory)、どんな物を用意してくれるのかと期待していたのだが、こちらは全くと言って良いほど人気が出ず。一応まだパッチが出てはいるが、大幅な仕様の変更は不可能と思われこのまま消えそうである。F.E.A.R. 2の方もマルチプレイへのサポートが大して無く、無料化されて人気の出た前作には及んでいない。新顔の中ではSection 8があったが、こちらも公式掲示板を見返すと、FPSゲーマーには評判の悪いGames for Windows - LIVEを採用したのが徒となって人気を得られなかったようだ(デモがリリースされなかったのも痛い)。

 結果的には旧来の人口の多いタイトルがそのまま人気を維持するという形で、新鮮な風というのは残念ながら感じられなかった。この兆候は2008年から続いており、停滞振りがハッキリとして来ている。


☆Co-opの人気が継続
 わずか一年のインターバルでのリリースとなったLeft 4 Dead 2は、当初ファンからの反発を受けながらも売れ行きと評価は共に好調。大手からではないがCo-op専用となるKilling Floorもプレイヤー人口を考えると成功の部類に入るだろう。BorderlandsもCo-opに力が入れられており、評判もシングルプレイよりそちらの方が高いという結果になっている。そしてコンソールをメインにしたゲームでも2人までのCo-opが可能な物を含めると結構数が増えており、予測していた以上にその広まりは早いという印象である。

 大幅な売り上げ増を狙うにはライトユーザーへの販売が重要であり、そのライトユーザーは対戦よりもCo-opの方を好むという傾向にある。昔の様に画面の前に友人同士が2〜4人で集まってプレイする分には対戦形式でも構わなかったのだが、オンラインでの対戦が普及して顔の見えない相手との対戦が基本になると、水準よりも下に位置するプレイヤーは負けが混むようになり、それが嫌になってマルチプレイを止めてしまう恐れが出て来る。そこで勝敗の無いCo-opの方がオンラインでのプレイでは受けが良いというのが制作側の分析である。


☆ダウンロードコンテンツの普及
 DLCに力を入れるゲームが多くなっており、その重要度は急速に増している。これについては分析すると長くなるので、詳しくはまた別の機会に書いてみたい。


2010年のFPS/TPS界を展望する

 2010年リリース予定のアクションゲームのリストから。緑色は業界的に注目度が高い物を10本選んでいる。


*Aliens: Colonial Marines
*Aliens vs. Predator
*Amnesia: The Dark Descent
*Assassin's Creed II
*Battlefield 1943
*Battlefield: Bad Company 2
*BioShock 2

*Brink
*Call of Duty 7(仮)
*Crysis 2

*Dark Void
*Dead Rising 2
*Dead Space 2
*I'm not Alone
*Just Cause 2
*Kane & Lynch 2: Dog Days
*Mafia II
*Max Payne 3
*Medal of Honor(新作)
*Metro 2033
*Natural Selection 2
*NecroVisioN: Lost Company
*Parabellum
*Postal III
*Prince of Persia: The Forgotten Sands
*Red Orchestra: Heroes of Stalingrad
*Scourge Project, the
*Serious Sam III
*Serious Sam HD: The Second Encounter
*Singularity
*Spec Ops: The Line
*Splinter Cell: ConViction
*S.T.A.L.K.E.R.: Call of Pripyat
*Tactical Intervention
*TRON Evolution
*True Crime(新作)




 以下は発売時期がハッキリしない物及び、PC版がリリースされるのかが公式にアナウンスされていないゲームである。

*Alan Wake (Xbox 360のみでの発売となる。PC版の発売はMS次第という事になった。)
*Beyond Good & Evil 2
*Dead Island (開発が止まっている状況)
*Deus Ex 3 (おそらく2011年)
*Ghost Recon(新作) (今回はPC版が出るかどうか不透明)
*Half-Life 2: Episode Three
*Hitman 5(仮)
*Lost Planet 2 (PC版の発売はまだ未定)
*Precursors
*Prey 2 (3D Realmsはああなったが、その後ZeniMax Media { id SoftwareとBethesdaの親会社 } が新たに開発の権利を取得している)
*Rage
*Thief 4
*Warhound
 (開発が止まっている状況)



☆発売予測
 ざっとリストを見る限りでは大物タイトルが結構多目で、全体の数的には特に多い訳でもないが少なくもないという程度。ただし先に書いたホリデーシーズンを避ける発売時期のシフトに効果があるという結果が出た場合、当然2011年Q1への分散化が強まるので例年に比べて予測が難しい。例えばEAの2010年度の発売予定リストにはCrysis 2Dead Space 2がリストアップされているのだが、EAの決算は3月なのでこれは2010/04〜2011/03間の発売予定を意味する。これまでならばホリデーシーズンの発売可能性が高いという事から2010年内の発売となるだろうという予測が立てられたのだが、それがシフト化傾向により片方を2011年のQ1へと動かすというケースが考えられるという風になっている。

 一方で昨年のホリデーシーズンを回避したシフトの影響から、例年よりも1-3月期に大物が多いのも今年の特徴になっている。Aliens vs. Predator, Assassin's Creed II, BioShock 2, Battlefield: Bad Company 2, S.T.A.L.K.E.R.: Call of Pripyat等。


 Half-Life 2: Episode Threeはもう出ても良い頃なのだが、一向に開発状況が見えてこない状態である。エピソードと呼ぶには前作からの間隔も空きすぎているという印象で、そろそろ出さないと不味いという気がする。一方で大成功したフランチャイズとしてLeft 4 Deadの新作が今年もまた出る可能性は否定出来ないし、Portalの続編もそろそろ有り得るだろう。

 idのRageは依然として「完成したら」というスタンスだが、Doom 3では「発表からリリースまでが空きすぎて注目度が落ちてしまった」点を反省材料としていた事から、可能性としては2010年中には8割方程度出そう。PC版が保留となったAlan Wakeはいずれ出そうな気はするが、Xbox 360版からは時間を置いてになる訳なので今年は出ないかも知れない。


☆東欧系のゲーム
 東欧系の自由度の高いゲームとして注目していたPrecursorsであるが、地元ロシアではやっとリリースされたものの、White Gold: War in Paradiseと同じく英語圏での発売は怪しいという状況である。Techlandからの2作品Dead IslandWarhoundはどうなっているのか見えてこない。自社の制作エンジンをPS3にも対応させる為に延期という話だったが、その改造された物で制作されたCall of Juarez: Bound in Bloodは既にリリースされており、何か他の問題が発生しているのかも知れない。この辺のユニークで自由度の高いゲームがリリースされないのは残念である。

 数年の沈黙を破って発売されるロシアからのMetro 2033は雰囲気としてS.T.A.L.K.E.R.を思わせる作品だが、こちらは自由度が高いゲームでは無くストーリーを重視したスタイル自体は普通のFPS。S.T.A.L.K.E.R.: Call of Pripyatは既に地元では発売済み。今回は特別に斬新な要素は無い為に、完成度はともかくとしてインパクトという面ではあまり期待は出来ない。


☆新OSへの移行は?
 2001年11月に発売されたXPにおいては、満3年を待たずにDoom 3の様なWindows 98以前のOSには非対応というXP必須のタイトルが登場し、2005年にはXP必須のゲームが大半を占めるという流れであった。一方で2007年1月発売のVistaのケースでは、既に丸3年が経過する事になるが、まだ必須タイトルはプロモーション目的のMS自身からの物以外は(おそらく)出ていない。

 Steamの最新調査によるとXP使用者の数は半分程度を占めており、PCでの売り上げを重視するとなると無視はし辛い状況にある。よって今年の内にVista或いはWindows 7が必須となるゲームが出る可能性は在るが、出たとしてもその数は相当少数と予想される。メインメモリが4GB以上あった方が良いので“Vista以降の64bit OSを推奨する”というゲームは増えると思うが、本格的な移行が進むのは2011年以降になるであろう。今年中にMS及びSonyから新コンソールが発売されるという可能性も低く、同じマルチプラットフォーム用の制作エンジンが使用されるのであればPC版での必要環境にも大きな変化は無いと思われる。


☆注目作品(シングルプレイ)
 話題性という点ではCall of Dutyシリーズの新作がやはり筆頭か。今度はModern Warfareシリーズではない通常物の番になるが、既にベトナム戦争物になるといった噂が出て来ている。その人気を考えると今年中に新作が出る可能性は高いと見るべきだろう。そして以前はライバルと称されたそのCoDシリーズに大きく水を開けられた状況のMedal of Honorが、遂にCoD:MWと同様に舞台をWWIIから現代戦(アフガニスタン)に移しての新作にて登場する。これはマルチプレイの方をBFシリーズのDICEが手掛けるという点も注目されており、フランチャイズとしては勝負の作品となる。MWの二番煎じという見方に対して、「MWとはシングルプレイもマルチプレイも大きく異なるゲーム性になる」と宣言されているが、実際にどれだけ差別化を図れるかがポイントになる。

 それとリアル系特殊部隊物の元祖として知られるSpec Opsシリーズ(後発のRainbow SixやDelta Forceシリーズに比較して評価が低く、知名度はそれ程でもない)の新作が、PCとしては10年ぶりに登場するのも注目される。Spec Ops: The Lineがそれで、今回はどれ位リアル系なのかハッキリしないが三人称のカバーアクションになっている。なお特殊部隊物といえば、リアル系の新作はやはり減りつつある点は2010年も変わっていない。戦争を題材にしたリアル系もほとんど見当たらない状態である。


 アクション系FPSではAliens vs. Predator, BioShock 2, Crysis 2, Serious Sam III, Singularity辺りに期待している。Serious Sam IIIは今年の発売は明言されているがまだ内容についての情報が無く、初代の感覚を取り戻せるかどうかが重要になるだろう。Crysis 2はマルチプラットフォーム化となり、また舞台がNYになるという点に若干の不安も感じさせる。制作作品が玉石混淆といった感じのRebellionだが、新しいAvPは良い方に転んで欲しいものである。

 TPSでは前作が非常に面白かったDead Rising 2が注目作。そして素晴らしかった初代から8年振りの新作となるMafia IIが個人的には双璧。それと今回はPC版も発売されるDead Rising 2や、ゲーム性を大幅に変えて再度作り直されたSplinter Cell: ConViction等大物が多い。その他では名作だった1,2に引き続いての久し振りの新作となるMax Payne 3は開発元も変わっており、こちらは不安の方が大きいというのが正直な所。


☆注目作品(マルチプレイ)
 近年では新作に成功するタイトルが少なく、限定されたタイトルに人が集中するだけという傾向にあったマルチプレイFPSだが、2010年はかなりタイトル数が多くなっている。大手ではBattlefield 1943, Battlefield: Bad Company 2, Brink, Medal of Honor等。BF系ではカジュアル路線な1943よりもBC2の方に人気が集まりそうである。MoHも制作が同じDICEなのでBF系の色が濃くなりそうで、PC向けBFシリーズの新作が出ていないだけにこの辺が人気を得る可能性は十分に持っている。ETQWを出したSplash DamageからはBrinkがリリースされ、こちらはシステムがシンプルになった分広範囲のプレイヤーを集められるかも知れない。

 インディーズ系からはModに人気があった前作から製品版に昇格したNatural Selection 2と、人気作の続編となるRed Orchestra: Heroes of Stalingrad。前者は非対称型のチーム戦なだけにライトユーザー向きではないが、非常にユニークなゲームなので商用版として前作よりも知れ渡ることで人気が出る可能性はある。

 その他では基本無料型に変更された、タクティカルな少人数チーム戦となるParabellumがそろそろ本稼働に移る。またCounter Strikeの創始者の1人が開発に関わっているTactical Interventionも話題になっているが、韓国産という事で西欧で人気を得られるかは微妙。

 BFシリーズやTF2等の数年前のタイトルに依然として人が多いというのは悪いことではないのだが、新作による世代交代も起きて行かないと健全な状態とは言えないというのも確かであり、2010年は変革が見られる事に期待したい。


☆Co-op
 こちらは相変わらず採用タイトルはそれなりに在りそうだ。Serious Sam III, Aliens: Colonial Marines, The Scourge Project等のCo-opに力を入れているタイトルや、Aliens vs. Predator, Splinter Cell: ConVictionも対応。CoDやMoHの新作も対応の可能性を持っている。

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