アクションゲーム 2006-2007          目次


◎2006年のFPS/TPS界を振り返って

 以下はFPSゲームを中心として、2006年にリリースされたアクションゲームを30本ほど集めてみたリストである。


*Bad Day LA
*Battlefield 2142
*Call of Cthulhu: Dark Corners of the Earth
*Call of Juarez
*Commandos Strike Force
*Condemned: Criminal Origins
*Dark Messiah of Might & Magic
*El Matador
*Ghost Recon: Advanced Warfighter
*The Godfather
*Half-Life 2: EP1 Aftermath
*Hitman: Blood Money
*Just Cause
*Lego Star Wars II: The Original Trilogy
*Marc Ecko's Getting Up: Contents Under Pressure
*Prey
*Rainbow Six: Lockdown
*Rainbow Six: Vegas
*Red Orchestra: Ostfront 41-45
*The Regiment
*Rogue Trooper
*Scarface: the World is Yours
*Shadowgrounds
*The Ship
*SiN: Episodes 1
*Splinter Cell: Double Agent
*Tomb Raider: Legend
*True Crime: New York City
*Ubersoldier
*Warpath



☆盛り上がりに欠けた一年
 2004年が大作ラッシュで盛り上がった一年、そして昨年は期待作がそれに応えられなかったケースが目立った年とするならば、今年は大作が軒並み来年へと延期されてしまって、そもそもの発売ゲームにインパクトが有る物が少なかった年と言えるだろう。リスト中でまだプレイしていない物も有るのでハッキリとは言えないが、大物や傑作の不足で寂しい年となった感は否めない。

 特にFPSについては、3Dグラフィックス・アクセラレータが定着してUnreal, Half-Life, Thiefといったタイトルが発売された1998年から辿って見て、今年が最も傑作・話題作が少ない年ではなかったかという印象。各サイトの年間ベスト等にもノミネートすらほとんどされていなかった。エピソードの最初であり完全な作品ではないHalf-Life: EP1が業界的には最も高い評価を受けていた感じだが、そういった作品がFPSのベストとなるという状況は(HL2:EP1自体の出来は置いておくとして)やはり問題だろう。


☆マルチプレイ
 注目度の高かったタイトルが延期になってしまった事も有って、大物としてはBattlefield 2142が突出して目立った年だった。ランキングを上げない限りは基礎的なアイテム類さえ使えず、必然的にランキングサーバーでのプレイを余儀なくされてしまうというアンロック・システムや、発売直後のゲーム内広告問題等で槍玉に挙げられたタイトルだが、参加人口と言う点ではやはり今年一番という結果になった。ただ情報を見る限りでは発売後それ程経過していないのにあまり伸びは良くないようで、来年以降も人気を保てるのかには不安が残る。

 ダークホースとしてはModからスタートして製品版となったRed Orchestra: Ostfront 41-45の健闘が目立った。相当人口も多く、リアルさ故にプレイヤーを選ぶタイトルでは有るがゲーム自体の評価も非常に高い。同じくSteamで配信されているThe Shipも、来年は本格的に北米地域での発売が行われるので伸びが期待出来そうだ。他には年末に滑り込みで発売されたRainbow Six: Vegasは予想外に評判が良いようで、マルチプレイの方もバグ修正が進めばより人気が上がりそうな気配を見せている。

 一方で期待を外したタイトルとしては、発売時点でのバグ多発騒動でシングルプレイと共に批判の対象となったDark Messiah of Might & Magic。一応の修正やパフォーマンスを上げる為の改善パッチはリリースされているが、現状では人口が少ない状態に留まっている。


☆マルチ・プラットフォーム
 PCのみでの発売となっているタイトルは30本中11本と1/3程度で、これでも昨年よりは増えている。必ずしもPC専用の物がクオリティが高いのかというとそうでもないのは変らず、PC独自路線で行くのは大切だが、マルチにして予算を多く確保する事も非常に重要というのを表しているとも言える。なおPCオンリーの中にはデジタル配信の物が多く含まれており、PC独自路線を貫きたい製作会社がデジタル販売にシフトする傾向は強まりそうである。


◎2007年のFPS/TPS界を展望する

 2007年リリース予定のアクション・ゲームのリストから。緑色は業界的に注目度が高い物を10本選んでいる。


*Alan Wake
*Alliance: The Silent War
*Alone in the Dark: Near Death Investigation
*Armed Assault
*Assassin's Creed
*BioShock
*Brothers In Arms: Hell's Highway
*CellFactor: Revolution
*Collapse: Devastated World
*Crysis
*Dead Island
*Enemy Territory: Quake Wars
*Field Ops
*Frontlines: Fuel of War
*Half-Life 2: EP2
*Halo 2
*Haze
*Interstellar Marines
*Kane & Lynch: Dead Men
*Medal of Honor: Airborne
*Monster Madness
*NecroVision
*Parabellum
*Penumbra: Overture
*Possession
*Precursors
*Resident Evil 4
*Savage 2: A Tortured Soul
*Shadowrun
*S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chernobyl
*Stranglehold
*Strike Force Red Cell
*They Hunger: Lost Souls
*Timeshift
*Tomb Raider: Anniversary
*Unreal Tournament 2007
*White Gold: War in Paradise




☆期待出来る年
 中には2007年中の発売はどうなのか疑わしい物も幾らか混じっているが、リストの8割程度の発売は見込めそうである。一見して判る通りに2007年は大作・注目作が目白押しという感じで、2004年以来の盛り上がりが期待出来そうだ。FPSのシングルプレイとしてはBioShock, Crysis, S.T.A.L.K.E.R.辺りが中でも注目度が高い。Medal of Honor: Airborne, Brothers In Arms: Hell's Highwayも新しい面を打ち出したシリーズ最新作として期待出来る。

 マルチプレイではEnemy Territory: Quake Wars, Unreal Tournament 2007, Team Fortress 2がビッグ3となりそうで、こちらも久し振りに大物が揃っている。他にもFrontlines: Fuel of War, Parabellum, Savage 2: A Tortured Soul, Shadowrun, Strike Force Red Cell等マルチプレイをメインとしたゲームも例年に比較して多い。


☆VistaとDX10
 いよいよVistaが発売されるが、現状では2007年中にスタンダードとなる可能性はまず無さそうである。上記タイトル中でVista専用はAlan Wake, Halo 2, Shadowrunだが、全てMicrosoftからのタイトルとなり販売促進の意味合いが強い。他の会社としてはVista専用に製作するのはリスクが大き過ぎて難しいとなっており、当分の間はパッチで対応するという形を取らざるを得ないはずだ。

 ただVistaとDX10の導入は開発会社側からは一様に歓迎されており、XPの時よりは早く普及する可能性は高い。対応する事になっているCrysis, Unreal Tournament 2007というビッグ・タイトルでどの程度の差を見せてくれるのかも鍵になりそうだ。ゲーマーとしてはこれまでのゲームのVista上での互換性や安定性がハッキリするまでは、XPとのマルチブートという形態か、専用にゲームマシンとして別に一台用意するかになるのではないか。


☆コンソールとの関係
 アクションゲームに限っての話になるが、ハードウェアでの3Dアクセラレーションが導入された90年代中盤以降(PS1やサターン等)、PCとのテクノロジーの発達による主導権の移り変わりは交代で行われて来た。最初に高度な処理機能を持ったチップがコンソール側に装備されてリードするが、その後はマシンの進化が行われないのでPC側が優位に立つといった具合であり、コンソールの発売サイクルを5年とするならば、最初の2年半はコンソール側に大手の販売会社が注力して開発・販売を行い、その後は常に進化を続けるPCの方に戻って来るという流れが繰り返されている。その意味では2007から8年辺りは、大手販売各社がコンソール側に力を入れてくる周期となるのは間違いないだろう。
 PC側からすると大手の目がコンソールへ向くのはマイナスだが、逆に相当な資金が無いと新規発売のコンソールへの参入は厳しい面が有るので、力は有るが資金が無い製作会社がPCへとシフトするという状況も出て来たりするので悪い面ばかりではない。

 もう一つは近年顕著なマルチ・プラットフォーム化の加速という点が有る。ゲームを製作する予算が増大し、その増加分全てを価格に反映出来ないとなれば、当然マルチ・プラットフォームで発売して売り上げの増加を狙うという販売方法に行き着く。現在マルチ・プラットフォームでの開発エンジンとして人気の高いUnreal Engine 3も、これまで業界で一般的だったプラットフォーム単位での契約ライセンス方式から売り切りの契約へと変更しているのもそれに拍車を掛ける可能性が高い。「これまでとは違ってどれだけのプラットフォームで販売しようが契約料金は同一なので、PC, Xbox 360, PS3の全てでリリースしないと或る意味損にもなるから、マルチ・プラットフォームで発売されるタイトルが増えるはず。」という事である。
 大手の販売会社からしてみれば、新規コンソール市場で地位を確立する為にそちらを優先するが、製作資金回収の為にはマルチ・プラットフォームで出したい。しかし競争相手との同時発売はそれぞれの戦略によって難しい面も有るので、コンソール戦争とは離れた位置にあるPCとの共通発売は今後は増えるという見方は強い。

 これには利点と欠点がある。マルチ・プラットフォームでの販売が増えればPCゲームのリリース数も増えるという意味ではプラス。逆に開発が共通化する事でPCらしさが失われたゲームが増えて来るという点はマイナス要素である。ただこのマイナス面については、PS2 & Xboxという掛け離れた性能のマシンとの共同開発ではなく、Xbox 360 & PS3といった性能のマシンとであれば比較的問題は起きないという見方も有る。旧世代機の性能を前提としたデザインで作られた物をPCに持って来るのと、現在の新世代機の性能を考慮して製作された物とでは話が違ってくるからである。しかしコンソール風のゲームデザインの時点で問題が有るという見方が根強いのも確か。
 そうなると結局の所、(コンソールでも発売されるにせよ)PCがメインとしてデザインされているゲームがどの程度残るか?という話になってくるが、来年のリストを見ても特にどちらに偏っているとも取れないので微妙。PCのみにこだわる会社は東欧・ロシアを中心に減らないとは思うが、資金が無ければテクノロジー面ではともかくとしてモデリングの作り込みや多彩さでは不利となる。PCらしさにはこだわっているが、グラフィックスの見栄え的にはマルチ・プラットフォームでの高予算ゲームに劣るという物を、どの程度PCアクション・ゲームのファンが受け入れられるかも鍵となるだろう。



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