FPSゲーム 2005-2006          目次


◎2005年のFPS/TPS界を振り返って

☆概観
 以下はFPSゲームを中心として、2005年にリリースされた話題作や大作を30本ほど集めてみたリストである。


*Advent Rising
*Area 51
*Battlefield 2
*Bet on Soldier: Blood Sport
*BloodRayne 2
*Boiling Point: Road to Hell
*Brothers in Arms: Road to Hill 30
*Call of Duty 2
*Close Combat: First to Fight
*Cold War
*F.E.A.R.
*Grand Theft Auto: San Andreas
*GUN
*Land of the Dead: Road to Fiddler's Green
*Pariah
*Prince of Persia: The Two Thrones
*Project: Snowblind
*Psi-Ops: the Mindgate Conspiracy
*Psychonauts
*Quake 4
*Serious Sam II
*Sniper Elite
*Splinter Cell: Chaos Theory
*Star Wars: Battlefront II
*Starship Troopers
*Stubbs the Zombie in Rebel Without a Pulse
*SWAT 4
*The Suffering: Ties That Bind
*Total Overdose

*Vietcong 2


 取りあえず今年出るであろうとされていたタイトルに関しては8-9割方は発売されており、それ程多くの(注目)タイトルが延期された訳ではない。しかしこれを見てまず感じるのは、昨年から予想はしていた事だが2005年は”狭間の年”だったかなという点である。ビッグなタイトルの割合が2004年なんかに比べるとかなり減少している。今年中に出るのかどうかハッキリしていなかったQuake 4, Call of Duty 2なんかがもしも延期されていたら、より寂しい物になったであろう。

 個人差は当然ある訳だが、ゲームサイトやファンからの総合的な評価をまとめる限りでは、Battlefield 2, Call of Duty 2, F.E.A.R., Quake 4, SWAT 4の5作品が2005年のFPSのベスト5といったところに落ち着くと言える。

☆不発に終わった期待作
 一覧から感じるインパクトが薄いのには、相当な期待をされていた作品がそれに応えられなかったというケースが多かったというのも関係している。Boiling Point(旧名Xenus)は広大な地形に自由なゲーム性を売りにしていた注目作だったが、実際の作品は広い故に重く、自由度の高さ故にかバグも多いとなってしまい、洗練されないままの形で発売されてしまったという感がある。
 Serious Sam IIはレビューの成績も比較的良かったが、これまでの作品のファンからはゲーム性の変化に対しての批判が多かったタイトルとなる。大きな売りであるCoop系のインターフェイスの不備や、Dedicated Serverのサポートの遅れ等により、スタートで躓いた感も強い。これもまたリリースを急ぎ過ぎたかという点は否めない。

 更に大きく空振りしたタイトルとなると、まずはPariahが挙げられる。これまでは裏方に徹していたDigital Extremesの単独プロジェクトとして高い注目を集めていたが、発売後は一気に失速。悪くは無いが普通のFPSという評価を受けてしまい、期待と実際の落差が大きかったゲームとして消えてしまった。
 次に挙げるのはVietcong 2。前作はシングルプレイの評価も高かったし、マルチプレイにも人気があって大いに期待されていた作品だが、いざ発売されてみるとフレームレートの落ち込み問題や、AIの挙動の奇妙さでかなりの低評価を付けられる結果に。発売時にCDの製造ミスやインストールの停止問題というトラブルが重なったのは不運ではあったが、それを差し引いても期待を裏切った印象は拭えない。

☆マルチプレイ
 2004年のマルチプレイは凶作だったと書いたが、今年についてもそれ程良くは無かったというのが実情だろう。今年最大の大物とされていたBattlefield 2は予想通りの盛況ぶりであり、トップクラスの人気を博している。前作Vietnamの失敗を取り戻したといったところ。Call of Duty 2の勢いも凄い。前作に人気が有っただけに今回の2の発売でどうなるかと思ったのだが、1のユーザー数をそれ程減らさない状況のままで2にも大量のプレイヤーが集まっており、これは想像以上の人気と言って良いのではないか。一時ファンからのボイコット運動も起きたが、今後のサポートをしっかりやれば人気も続きそうだ。

 しかしこれ以外に人気マルチプレイの枠に食い込んだゲームは無かったのが実際の所(Day of Defeatという特殊な例は存在するが)。顕著な例としてはQuake 4が筆頭に挙げられる。ここ最近1on1形式のFPSゲームに目ぼしい物が無く、Q3やUT2002(現2004)はちょっと古いしで、隙間をぬって入ったようなPainkillerは一般レベルでは人口が少ない。そう来ればQ4がその地位に収まるのは必然となるはずなのだが、これがどうにも人気が上がって来ない状態である。確かに重さに関する不満は多いようだが、内容的にはそれ程大きな失望の声が有る訳でもないし、それにしては人が少な過ぎるような....。今後プロゲーマーの競技種目に公式採用されるようになれば人口も増えてくるのだろうが、現在の人気の無さはちょっと想定の範囲外ではなかっただろうか。

 Vietcong 2も1の人気を考えると失敗なのは間違いない。ゲームプレイに関連するパッチも出せておらず、Coopについてもマップが少ないといった状況に陥っている。Star Wars: Battlefront IIも巻き返しを図った割には人口が伸びていない。F.E.A.R.もモードが増えるかModツールが充実して来ないと現状のままで変らないだろう。

☆コンソールとの並行開発
 近年FPSゲーマーが憂慮している点になるが、実際問題として今年は最初から平行開発を考えて(或いはコンソールをメインとする)製作された新タイトルという物が多かった。元々はPC側のゲームだったのにコンソール畑まで手を広げるようになったというタイトルはSerious Sam IIPariah程度か。中でもSSIIはメイン・メニューのインターフェイスをパッド仕様で製作されると、PCの頃と比較して使い難くて困るというのを教えてくれたゲームでもある。
 PC専用タイトルの方が一般的に受けは良く、最初から平行開発の物はそれほど注目を集めないで終わるという図式は例年通り、ただし必ずしもPC専用に留まった方が良いゲームが出来るという訳でも無いというのも何時も通りである。

 来年からコンソール市場が次世代機に切り替わる事で、平行開発の影響は軽減される可能性はある。例えばXbox 360との並行開発においては、特にPC版の開発が制限を受けるという事も(現時点では)ない様だ。Quake 4Call of Duty 2がそれに当たる。金が無かったらそもそもゲームが製作出来ないという事情を考えた場合に、製作会社側のコンソールとの並行開発を全面否定していくというのも問題が有る訳で、これは難しい問題として残されていくであろう。


◎2006年のFPS/TPS界を展望する
 まずは発売が予定される注目タイトルを30本ほど列挙してみよう。色付きは注目されるFPSゲーム10本である。


*Alan Wake
*Bad Day L.A.
*Call of Cthulhu: Dark Corners of the Earth
*Call of Cthulhu: Destiny's End
*Commandos Strike Force
*Dark Messiah of Might & Magic
*Enemy in Sight
*Enemy Territory: Quake Wars
*Full Spectrum Warrior: Ten Hammers
*Ghost Recon: Advanced Warfighter
*The Godfather
*Half-Life 2: Aftermath
*Hitman: Blood Money
*Marc Ecko's Getting Up: Contents Under Pressure
*Monster Madness
*Prey
*Rainbow Six: Lockdown
*The Regiment
*Savage 2: A Tortured Soul
*Scarface: the World is Yours
*SiN: Episodes
*SPECNAZ: Project Wolf
*Splinter Cell: Double Agent
*S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chernobyl
*They Hunger: Lost Souls
*Timeshift
*Tomb Raider: Legend
*25 to Life
*Unreal Tournament 2007
*Vivisector: Beast Within
*You Are Empty



 この中で最大の注目作と来れば、やはりUT2007という事になるか。新世代エンジンとされるUnreal Engine 3を搭載しての高度なグラフィック。そしてUT2002がUT99ユーザーから全面的に支持された訳ではないという観点から、よりUT99のプレイ感覚に近付けたという点が成功しているならば、大きなヒットとなる可能性も秘めている。S.T.A.L.K.E.R.も大きな注目作品であるのは変らない。延期によって注目度は薄れているのは事実だが、このゲームの場合にはやろうとしている事が前例の無いテーマなので、それが実現出来るならばインパクトはその時点でも十分に与えられるだろう。

 Enemy Territory: Quake Warsはマルチプレイ部門での期待作となり、現在人気のRTCW:ETのシステムを採用している事から成功の要素は十分に秘めていると思うが、何時もながらここは延期が多いのが一番の心配点。
 Ghost ReconRainbow Sixシリーズの最新作は、どちらもコンソール版とは独立して製作する為にPCバージョンの発売を遅らせたというタイトルとなる。しかしこれはPC版が先に出来てそれをコンソール版へとコンバートするのでは無く、その逆という代物である。よって正直な所、両作が過去の栄光を取り戻せるのかには大きな疑問符が付く。ただマルチプレイについてはそこそこ人気は出るのではないかと考えている。

 違った意味での注目作品としてはSiN: Episodesが目を引く。来年中には開始されるはずだが、終了するのはおそらく2,3年後というプロジェクトであり、このシステムが受けるのかどうかは気になるところ。
 穴的な作品としてはCall of Cthulhu: Dark Corners of the Earth。長年の延期の末にやっとコンソールでは発売されたが、この評価が思いの他優秀であり、PCバージョンも期待が出来そうである。それと異色作品としてはThey Hunger: Lost Souls。Half-Life 1のファンならば知らない人はいないトータル・コンバージョン作品They Hunger三部作、これを製作した同社がSource Engineにて新たに製作する商業版作品がこれになる(単なるコンバートではない新作)。これは過去の三部作のクオリティを考えると、大手の作品を喰う可能性も秘めている。

 TPS作品としてはTomb Raiderの新作はやはり注目度が高い。前作の大失敗を踏まえての巻き返しなるかというタイトル。The Godfatherも元となる映画が有名なだけに話題になっており、Scarfaceも同じ事が言える。ただこういったクライム・アクション物はGTAシリーズの影響が強くなる傾向にあり、その辺をどうオリジナリティを出すかがポイントになりそう。
 Alan Wakeも年間ベスト10クラスが期待出来る作品だが、会社が秘密主義の為に今の所ゲーム内容に関するデータが少な過ぎる。しかし過去の作品のクオリティを考えれば相当な物が出来てくるという期待感は十分に持っているタイトルである。


 次にリストには無い隠し玉を探ってみよう。毎年5月のE3辺りで年内発売作品の見極めがつくというか、開発側もとにかくそこまで作り込んでいって、E3の時期の進行状況を見て年内に間に合わせるか翌年に回すかの判断をするというケースも多いようだ。今の所全然進行状況は分からないレベルなのだが、Far Cry, Painkiller, Medal of Honorなんかは続編の製作は始まっているようである。Soldier of Fortune 3も作っているという噂は絶えない。DICEもBFシリーズとは異なる新作に着手しているというコメントが出ているし、Epicも新エンジンを使用したUnrealブランドではない新作を予定しているのだが、これが来年に間に合うのかは何とも分からない。

 Operation Flashpoint 2については、この名前を巡ってCodemasterとの争いが続いており、おそらくは異なった名前でリリースされるという話になっている。2006年内には出る可能性もあるが、更なる延期も考えられるという状況。別の作品であるArmed Assaultの方は先にでるようだが、こちらも情報が無くてちょっと心配。Team Fortress 2: Brotherhood of ArmsDuke Nukem Foreverについては相変わらずの状況である。

 最後にFPS界のハードウェア的な話題としては、AGEIA社の物理計算専用のボードPhysXがどこまで普及するかというのが挙げられる。新Unrealエンジンが使用するNovodeXという物理エンジンに対応しているので、このエンジンの普及率が高い事から成功する可能性も大いにある。一方でHavokはGPUによる物理計算に力を入れており、また物理エンジン自体の機能アップにも熱心なので、この辺の争いも面白そうである。



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