『夢を見る方法』
 
 
この作品をHID様に
 
そして、夢の見方が分からずに泣いている、全ての人へ。
 
 
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(前編)
 
 
私の妹が奇跡的に病気から回復して、もうすぐ1ヶ月が経とうとしていた。
 
最近では、学校に出る魔物のうわさも絶え、平和な春を迎えようとしていた。
 
私は、幸せだった。
 
「香里さん、早く早く」
 
栞とは、登校時間も一緒だ。
 
「あら、また相沢君にお弁当?」
 
「ううん、みんなに食べてもらおうと思って、たくさん作ってきたんだー」
 
「・・・上手くできてればいいけどね」
 
「そういう事言う香里さん、嫌いです」
 
妹の笑顔がある。
 
それだけで、もう十分だった。
 
だから、自分の犯した罪の罰は受けるつもりだった。
 
・・・いや、言い訳はよそう。
 
「ごく偶にあるケースなのですが・・・・」
 
今も耳に残る、お医者様の最後の言葉。繰り返し響く、言葉。
 
そう、妹は、たった一つの言葉がいまだに言えない。
 
言わないわけではなく、言えないのだ。
 
『・・・・日常生活に支障はないでしょう。退院おめでとうございます』
 
軽い心因性の障害で、普段の生活には何ら問題はない。そうお医者様は笑っていた。
 
私も笑っていたと思う。
 
だが、私はその意味を知っていた。自分の罪の深さを。
 
決して許されたわけではないことを。
 
「香里さん、栞のクラスはここですから、また昼休みに行きますね・・・」
 
隣を歩いていても分かる、以前はなかった、半歩分の隙間。
 
たいしたことじゃないわね。
 
そう、たいしたことじゃない。
 
妹は、私の事を、『お姉ちゃん』と・・・・・・呼べなくなっていた。
 
 
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 
 
夢を見ている。
 
女の子が泣いている。
 
よく見知った顔なのに、どうしてもぼやけて分からない。
 
どうしても、わからない。
 
「どうして泣いているの・・・?」
 
私は、できる限り優しい声で、語り掛けた。
 
「・・・・な・・・の。どう・・・る・・・て」
 
女の子は、泣きじゃくっていて、よく声が聞き取れなかった。
 
私は、その子を抱きしめてあやしてあげたいのに、どうしてもそれができないのだ。
 
もう半歩踏み出せば、その子の頭をなでてあげられるのに、私の足は、動かなかった。
 
・・・動かなかったのだ。
 
『私は、知らないの・・・良い夢の見方なんか知らないのよ』
 
 
「では、つぎ美坂」
 
「・・・美坂?」
 
自分の独言で、我に返った。
 
「・・はい。ここの訳は、『万歳三唱で、その会合は終わった』です」
 
「よろしい。先生の授業は眠いか、美坂?」
 
クラスの笑い声を遠くに聞きながら、私はゆっくり席に着いた。
 
「大丈夫か、美坂」
 
北川君が、声をかけてくれる。心配させないようにしなくちゃ。
 
「大丈夫。昨日少し遅くまで起きてただけだから」
 
私は、嘘をつくのには自信がある。あまり誉められた特技じゃないけれど。
 
「そうか」
 
ふふ、いい人だね、北川君。・・・それから、ごめんね。
 
 
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屋上。
 
「で、舞、わざわざ俺を屋上まで呼んだ理由は?」
 
「ひゃものらいむ」
 
「だから、食べ物を口に入れたまましゃべるな!」
 
ゴクン。舞は、食堂で買ったくし団子を飲み込むと、言い直した。
 
「・・・魔物がいる」
 
「え、あれは確かに全部いなくなった筈・・・・。それに、元々は・・」
 
「・・・わかってる。でも、間違い無い」
 
あれは、舞が作り出したものだ。しかし、もう襲ってくる理由なんて考えられない。
 
「力の制御が、できなくなったのかも・・・」
 
そんな筈はない。・・・だが、俺が舞の力について全て知っているわけでもないのだ。
 
「私は、魔物を討つものだから・・・」
 
俺は、黙ってうなずいた。なら、俺も付き合うまでだ。
 
すると突然、緊張感のかけらもない声で、
 
「はえーっ、舞、こんなとこにいたんですかー」
「わー、裕一さん浮気は駄目ですー」
よく見知った二人が、重箱をもって、声をはもらせていた。
 
そして。昼休みの屋上は、大所帯となっていた。
何だか自己紹介のようなものも済ますと、大き目のシートに取り出された重箱をつつく。
「・・・おいしいわね」
「香里、おまえがなぜここに?」
「栞に連れて来られたからよ」
「名雪は?」
「香里につれてこられたんだよっ」
「・・・そして北川、おまえは?」
「ほまかいほときにふるな」
北川と、舞の二人は、たこさんウインナーの取り合いをしていた。
「あの、味の方はどうですか?」
「うん、上手い」
「うれしいですー」
「佐祐里の作っただし巻きもどうぞ」
「香里さん、今日は、香里さんの好きなポテトサラダいれてきたんですよー」
栞が、香里に重箱を進める。
その様子を、佐祐里さんが不思議そうに見ていた。
「・・・あの、香里さんと、栞ちゃんて・・・」
「姉妹よ。どうかした?」
香里は、笑顔でいる。
「うむ。今時礼儀正しくて、お兄さんはそんな妹がほしいぞ」
北川が横から半畳を入れる。
「・・・あははーっ。佐祐里も栞ちゃんみたいな妹がほしいです」
「えっ・・・あっあの・・・私・・・」
「あ、栞ちゃん照れてる、かわいー」
「・・・裕一」
「何だ、舞」
「私も、欲しい」
「・・・あら、大人気ね、栞。お姉ちゃん、替わってあげようか?」
「嫌です!絶対に嫌です!」突然、栞が、ものすごい剣幕で言った。
 
「・・・・・・・・・」
 
沈黙。
 
「・・・裕一」な、何を言う気だ、舞。
「そこの、春巻きが、私も欲しい」
 
そこからは、終始和やかな雰囲気で昼休みの食事会は終わった。
 
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『私には、やさしい夢を見る権利なんか無いの』
 
夢。
 
夢の続き。
 
「どうして泣いているの?」
 
「・・・きっと許してもらえないの」
 
紺色の制服。栞が小学校の時に着ていた服だ。
 
そっか。
 
「もう、怒ってなんかいないと思うよ・・・」
 
「だって・・・だって・・」
 
相変わらず、女の子は、泣き止まない。
 
そう言えば、泣き虫だった栞をよくなだめたっけ。
 
でも、私は、なんて言って慰めていいのか、よくなだめた筈なのに
 
その言葉が、どうしても・・・・でてこない。
 
 
放課後。
 
私は、夕暮れ時の教室で、ほう杖をついていた。
 
特に誰を待っていたわけでもない。
 
「絶対に嫌です!」
 
なんとなく、昼間の栞の言葉を思い出していた。
 
妹が、私の事を、もうお姉ちゃんと呼ぶ事はないと、名雪と相沢君には言ってあった。
 
二人には、聞く権利があると思ったからだ。
 
・・・・おこがましい言い方はよそう。
 
私は、誰かに、自分の罪深さを聞いてもらいたかったのだ。
 
多分、北川君にも気づかれているだろう。
 
彼は、少しとぼけた所があるけれど、なぜか時々鋭くなる。
 
「私は、『お姉ちゃん』て呼ばれなくても、気にしてないのにな・・・」
 
口に出して言ってみる。気にしていない。気にしていない。気にしていない。
 
・・・よし、完璧。
 
「よう、美坂」
 
振り向くと、少し頼りなげな笑顔の、彼がいた。
 
「どうしたの、北川君」
 
「・・・うん?忘れ物」
 
「・・・そう」
 
「・・・・・」
 
「・・・・・」
 
「あっ・・・あの・・・聞いてた?」
 
「え、何を?」鞄の中に、いつも机に入れっぱなしの教科書を入れながら、彼は言った。
 
・・・・聞かれてたわね。
 
夕暮れ時。お互いの顔がよく見えなくてよかった。多分私の頬には、涙の跡があったから。
 
「俺・・・帰るわ」
 
「うん・・・さよなら」
 
「帰り際の挨拶は、『またあした』の方が好きだな」
 
私も、今はそっちの方が好きだ。だから・・・
 
「・・・また、あした」
 
「それと、俺でよかったら肩でも背中でもいつでも貸すよ・・・じゃ、またあした」
 
「ばか」
 
・・・ありがとう。
 
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だいぶ暗くなって、私は自分の席を後にした。
 
パリン
 
・・・・?
 
どこかで、何かが壊れるような音。
 
パリン、パリン
 
 
いやだ。・・・・近づいてきている。
 
ひたひたひたひた・・・・・
 
ヒタヒタヒタヒタ・・・・・・・
 
そして、私は、見た。
 
正確には、感じたという方が正解なのだろう。
 
リノリウムの床に時折入る亀裂。
 
ひどくスローモーに感じられたその動きが私の横をものすごい速さでよぎると同時に廊下の窓ガラスが割れ、私は恐怖する感覚がよみがえり
ものすごい速さで、真正面から、動く事ができない!真正面から、恐怖する感覚が戻ると同時に、ものすごい速さで、誰か助けて!
恐怖する感覚が戻ると同時にキョウフスルカンカクガモドルトドウジニキョウフスル・・・・
 
「しおりいいいぃ!」
 
私は、叫んでいた。
 
廊下の窓ガラスが四散し、浮かびはじめた満月を散り散りに映し出していた。
 
「・・・・逃がした」
 
そのガラスの光に照らしだされるように、深遠な瞳を持った少女が私の前に舞い下りていた。
 
手には、剣を携えて。
 
「・・・・川澄先輩?」
 
それが、私の・・・長くて短い夜の戦いの幕開けだった。
 
 
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(中編)
 
 
私は、公園で絵を描いていた。
 
周りの景色が、全部赤に染まるまで。
 
いつもの噴水に腰掛けて、時計の針に、私の長い影が重なっていた。
 
「となりに座ってもいいですか?」
「佐祐里さん・・・」
「今日はよく会いますね。佐祐里はここの噴水、好きなんですよ」
 
私は、黙ってクレヨンを滑らせていた。
 
佐祐里さんが、私の絵を見ながら言った。
 
「お姉ちゃんの事、本当に好きなのね・・・」
 
私は、どんな顔をしているんだろう。そう言われて、うれしい筈なのに、
・・・どうしてか、首を縦に振れない。
「私、いやな女の子なんです・・・」
「そんな事、ないと思いますよ」
クレヨンで書いた風景が、厚く塗りすぎて、滲んでいた。
「だって。私、香里さんって・・・まるで他人みたいに私は・・あの人を・・」
 
『お姉ちゃん』たったこれだけの言葉が、喉に絡まるように詰まるように。
一番近くにいる人なのに、心の中では、何度も叫んでいるのに。
私の口からその言葉が出る事は、ない。
 
「・・・でも、私が気にしているほど、香里さんは、気にしていないのかもしれない。いつも、笑顔で・・・」
 
私に接してくれている。全然、何てこと、無いのかな。ずうっと一緒にいる筈なのに、お姉ちゃん強いから、私わかんないや。
 
「・・・そんな事、ないと思いますよ」
佐祐里さんは、少し寂しげに笑って言った。
噴水の水が、少し大きな音を立てて、水が高々と舞い上がる。
「・・・佐祐里にも、弟がいたんです。名前を一弥って言います。・・・佐祐里が唯ひとり名前を呼び捨てにする男性です・・・」
 
 
いつのまにか、噴水の水の音は、静けさを取り戻していた。
私は、塗り終えたスケッチブックに目を落としたままだった。
 
だから、佐祐里さんが、この時どんな表情だったか知らない。
二人分の長い影は、黙ったまま周りの影と同化していった。
 
「私・・・あの・・・」
 
こんな時、どう言えばいいんだろう。くじけそうな時には泣いてもいい。それは、相沢さんに教わった。
 
でも・・・。
 
結局私は、黙ったままだった。
 
他人を好きになる事よりも、自分を好きになる事の方が、ずっと難しいのだ。
 
 
「・・・早く、お姉ちゃんて呼べるようになるといいですね。近いうちに佐祐里と、舞のマンションにも、お二人を招待しますね」
 
そして、差し出される、右手の小指。
 
佐祐里さんも早く、自分と仲直りできるといいですね。
 
これは誓い。大切な、約束。だから、私は、自分の小指をからめて・・・・
 
「ゆびきった」
 
私は、家に帰る足を速めた。きっとお姉ちゃんが、夕食の用意をして待っているだろう。
今日描いた絵を見てもらって、またあのやさしい微笑みを見るために、急いだ。
 
だから、まだお姉ちゃんが家に帰ってないなんて、その時は知る由もなかった。
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夜の校舎。
 
私は、ずっと廊下の真ん中で、息を潜めていた。隣には、川澄先輩と、
 
そしてなぜか、クラスメートの相沢君。
「巻き込んじまってごめん。ただ、あの魔物は、俺をねらってくる筈だから」
違う。あれは、確かに私を狙っていた。
「・・・被害者として聞きたいんだけど、あれは何なの?」
少し首をかしげて、相沢君は川澄先輩の方を見る。
「あれは、・・・人の思いが実体を持ったものなんだ。と、思う。俺もはっきりとは言えないけれど」
人の、思い?じゃあ、私に向けられた、あの敵意は?
「ただ、あれは無意識に実体化しているから、あれを創り出した本人も創りだした事には気づかないんだ」
「どうすれば、倒せるの?」
「・・・私がいる」
川澄先輩が、剣を構える。昼間は、無口な人だという印象が強かったが、今は戦の女神のようだ。
「ま、弱らせて、本人の意識の中に返ってもらうのが一番かな?」
「と、言うわけで、安心して帰っていいぞ、香里・・・」
相沢君が、いつもの笑顔で言いかけた時。
 
そいつはやってきた。
 
「こっちだ!」
 
相沢君が、走り出す。囮のつもりなのだろう。しかし、私には分かっていた。
多分、魔物は、私を狙ってくる。
ザシュウッ!
「くっ・・・」
左脇腹を掠めて、制服の一部が破れる。
「なんで、こっちに来ない!」
相沢君が叫ぶ。川澄先輩が、私を庇うように立つ。
「食い止める。・・・逃げて」
「どうして・・・私なんかのために?」
気づいているんでしょう?あの化け物に本当に狙われているのが私だって。
私に、助けてもらう価値なんて・・・無いことに。
「・・・私にも、夢があるから」
短くそう言うと、剣を正眼に構える。
「香里。・・・終わったら、おいしい牛丼の店に裕一が連れていってくれる。一緒に行こう」
笑顔。この人の笑顔を、初めて見た。
 
私は走った。走った。走った。
 
そして、いつのまにか、自分の教室に隠れるようにひざまずいていた。
 
窓側の壁に背を預けて、廊下の方を見る。
 
まるで、悪い夢を見ているようだった。
 
自分に向けられる、無意識の殺意。
その意味を考えて、たどり着いた答え。
そんな考えをする自分が嫌になった。
いい夢の見方を誰かに教えてもらいたい気分だった。
そう、私が考えた、この魔物の正体・・・。
 
・・・栞。
 
自分でも嫌だったが、他に思い浮かばなかった。
 
どうして許せるだろう、自分の存在を無視した相手を。
 
一番、側にいて欲しい時に逃げ出した私を。
 
そして、また姉として接しようとしている偽善者の・・・私を。
 
私は、見上げるように壁に頭を預けると、
 
そのまま、目を閉じた。
 
私に、生きる価値なんて無い。
 
・・・死んでしまった方が良いんだ。
 
ひどく、疲れていた。
 
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モノクロームの夢。
 
男の子がいる。泣いている女の子に、何かを話し掛けている。
 
どちらも、泣いていた。どうしていいのか、二人ともわからないようだった。
 
私は、その男の子の頭を、優しくなでてあげた。
 
そうすれば良いことを、誰に聞いたわけでもなく私は、知っていた。
 
男の子が私に耳打ちをする。ああ、あなたも私と一緒ね。
 
だけど、その人は、ただあなたの事を深く愛してしまっているだけなの。
 
ただそれだけなの。
 
そして、女の子の方にも、私は行こうとした。
 
いつもの、泣いている女の子だ。
 
でも。
 
やっぱり頭をなでてあげられる、半歩手前で、
 
・・・私の足は動かない。
 
『誰かお願い、・・・・・・夢の見方を教えて。幸せな夢の見方を』
 
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目を開けると、床の亀裂が、私に向かってくる所だった。
 
ひどくゆっくりに見えて、
 
私だけを狙ってくる、殺意。
 
「ああ、解った・・・」
 
独り言のようにつぶやくと、私はその魔物を避けようともしなかった。
 
もう、逃げようなんて、・・・思いもしなかった。
 
 
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(後編)
 
 
《幕間劇》
とうとう、少女はマッチを一本取り出しました。
 
壁にこすり付けると、暖かな火が、少女の手を温めてくれます。
 
そっと覗き込むと、そこには、真鍮性の大きなストーブが映っていました。
 
少女は、また一本マッチに火をつけます。
 
今度は、飾りのたくさんついた、大きなツリーが見えました。
 
暖かな灯火が、少女に夢を見せてくれます。
 
もう一本。
 
そこには、少女に、たった一人優しくしてくれたおばあさんが、
 
・・・穏やかに微笑んでいました。
 
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 
「・・・舞?」
マンションに帰ると、いつもお腹を空かせて待っている友人がいなかった。
 
殺風景な部屋。新調された家具が、何だか滑稽だった。
 
人が一人欠けただけで、風景は、こんなに変わるものだろうか。
 
山積みにされたぬいぐるみ達が、寂しげに主人を、待っていた。
 
私は、なぜか胸騒ぎを感じた。もし、舞が私に黙って行くとしたら・・・。
 
私の足は、学校へと向かっていた。
 
 
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 
「・・・どうして?」
 
こんな時でさえ、私の口からは感謝の言葉は、出なかった。
 
そこには、どこか怒りに燃えた目の、川澄先輩が、立っていた。
 
その視線は、・・・真っ直ぐ私に向けられていた。
 
魔物の気配を、文字どおり、剣で断つ。
 
ただ、薙ぎ払うだけのしぐさが、やはり、美しかった。
 
私は、その視線から目を逸らすと、気圧されるように自分の『罪』を・・・告白していた。
 
「私は、・・・実の妹に、栞に、・・・ひどいことをしたんです」
 
冷たく無慈悲な光。月明りが、私達を白く、浮かび上がらせてていた。
 
「だから、・・・もういいんです。私は、・・・あの子に必要ないから」
 
もう一度、視線を戻した時、川澄先輩は、どんな顔をしているだろう。
 
冷たく、蔑んでくれていればいい。
 
「魔物が、私を狙っているのは、その罰を受けるため・・・。だから・・・」
 
裁きの刃を受けるのは、あの魔物ではなく、私の方だ。
 
「・・・香里は、栞のことが、嫌い?」
 
純粋な、疑うことを知らない声。私は、知らずに、頭を横に振っていた。
 
この人は、あの夜の女王に似て、蒼く冷徹な眼差しをして・・・。
 
怒りに燃えて、それなのに、
 
・・・どこか、幼子のような瞳。
 
そこには、哀れみも、哀しみもなかった。
 
「栞は、・・・香里を待っている」
 
誰か、私のよく知っている人の瞳に似ていた。・・・栞?
 
いや、違う。誰だったろう?
 
「私には、分かる。・・・・同じだから」
 
同じだから。栞と、私は同じだから。
 
一つの言葉が届かない少女。
 
一つの嘘に囚われ続けた少女。
 
「悲しい話ばかりする、香里は、嫌い」
 
魔物が、川澄先輩に襲い掛かる。
 
剣でそれを受けながら、川澄先輩が言った。
 
「・・・でも。香里のことは、相当に、嫌いじゃない」
 
私は、振り返る事も出来無いまま、
 
また・・・逃げ出した。
 
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 
お姉ちゃんがいない。
 
何かあったのかな?
 
夕暮れ時は、大好きな時間。
 
私の大好きなお姉ちゃんが、料理を作ってくれて。
 
一人きりじゃない、大切な時間。
 
お姉ちゃんがこの時間に家に帰ってないなんて、最近はなかったのに。
 
相沢さんの家に電話をした。
 
「そう言えば、裕一も、学校へ行くって言ったきり戻ってこないんだよ・・・」
 
名雪さんの、心配そうな声が聞こえた。
 
北川さんの家に電話をした。
 
「あれ、まだ帰ってないのか?教室で、夕方に会ったきりだけど・・・どうかしたのか?」
 
私は、脇に抱えたスケッチブックもそのままに、家を飛び出していた。
 
 
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 
 
私と、香里は1年生の時に席が隣同士だった頃からの付き合いだ。
美坂と水瀬で出席順だったのも、何かの縁だと思う。
香里とは、よくお昼ご飯を一緒に食べた。
 
馬が合う。
 
学年1位の才女と、私との接点は、そんな所だった。
私は、彼女を、よく知らなかった。
優等生、と言うのがその当時の私を含めたみんなの共通認識だったと思う。
 
だから、実際は、屋上で起こったあの事件から、私は香里と親友になれたのだと思う。
 
 
「ったく、あいつが人に心配かけるなんてな・・・・」
俺は、学校に行く道を走りながら、昔のことを、思い出していた。
1年生の頃、俺は何だか宙ぶらりんの状態だった。
特に楽しいこともない。
 
強いて言えば、そんな状態だった。
 
不良になる度胸も無く、ガリ勉するほど秀才でもなく。
人当たりは良い方だったが、取りたててどうというものでもなかった。
退屈で、退屈でどうしようもなかったのかもしれない。
 
美坂 香里に会うまでは。
 
屋上。
昼休みになると、人気の多いこの場所も、夕方になると訪れる人もいない。
俺は、煙草を1本取り出すとマッチに火をつけようとしていた。
特に理由はない。ただ、面白そうだったからだ。
 
夕日に映える丘を見ながら、吸ってみた。
その時、なぜ背後の2人に気がつかなかったのか。
今でもときどき不思議に思う。
 
美坂は学年1位の秀才で有名人だったし、水瀬さんは陸上部のホープで学内新記録を出していた。
有名人二人と、出来損ないの不良が一人。
絵になる光景には、俺が邪魔だった。
 
「よお、先生にチクるかい、優等生?」
少し凄味を利かせて言った。
あいつは腕を組んだまま、黙ったまま側によると、
 
「一本頂戴」
と、唯それだけ言った。
もう一人の友達も唖然としている。
俺は、なんとなく気圧されて、煙草を一本渡した。
火をつける。
そのしぐさも、様になっていた。
唯、一口吸うと、咳き込みながら、
「何これ、全然おいしくも、気持ちよくも無いじゃない・・・」
 
俺は何だか可笑しくなって、ひとしきり笑った後、煙草の箱を握り潰していた。
 
「お前、優等生の筈だろ?」
「そんな事、誰が決めたの?人をどうこう言うためには、何事もまずやってみなくちゃね・・・」
相変わらず、腕を組んだまま。
「で、どうだった?」
「やっぱりこんなんじゃ、良い夢は見れないわね」
いい笑顔だった。
隣では、水瀬さんがマッチに火をつけていた。
「香里、いちごサンデー」
「ああっ、親友を脅迫する気、名雪?」
「・・・ううん、私のおごり」
 
もしかしたら、振り向いて、あいつの目を見た時それは起こっていたのかもしれない。
 
マッチの火に照らし出された美坂の顔を見たとき、
 
心臓が、高鳴っていたから。
 
「それ、俺がおごるよ。口止め料もかねてさ」
 
多分、煙草なんてもういらない。
 
「それと、自己紹介まだだったっけ。俺は、北川。北川 潤」
 
そして2年の春、俺はこの二人とクラスメートとなる。
 
 
 
・・・学校に着くと、小さな女の子と話している、佐祐里さんを見つけた。
 
ここからじゃ、何を話してるかまでは、聞こえなかった。
 
佐祐里さんの側までくると、女の子の姿は、ふっつりと消えていた。
 
「北川さん、こんばんわーっ」
 
元気な挨拶。でも、どうして、涙を浮かべているんだ?
 
「あの、俺、急いでますから・・」
 
香里の方が先決だ。長話をしている暇は、ない。
 
「香里さんでしょう?佐祐里も、多分同じ理由でここに来ています」
 
沈黙。
 
「急ぎましょう、北川さん!早くしないと、香里さんが、香里さんが・・・」
 
俺達は、常夜灯が点きはじめた校舎の中へと駆け出していた。
 
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 
学校に着くと、名雪さんを見つけた。
 
小さな男の子と話をしているようだった。
 
「あ、名雪さん・・・・」
 
「こんばんは、栞ちゃん」
 
「さっき、男の子がいませんでした?」
 
そう、小学生になったばかりくらいの・・・。
 
「うん、もう帰ったよ」
 
「あまり遅くなるといけないからね」
 
さっきの男の子、見失う筈ないんだけどな。
 
「・・・・屋上、だよ」
 
名雪さんが、学校を見上げる。
 
「香里を、探しに来たんでしょ?」
 
「はい・・・」
 
どうして、解るんですか?
 
そんな疑問浮かぶよりも、なぜかこの人の笑顔には、人を安心させる力がある。
 
「さっきの男の子が、教えてくれたんだ。裕一も、多分そこにいる」
 
私は、なぜかその男の子の名前を知っている気がした。
 
「栞ちゃん・・・」
 
「はい」
 
「お姉ちゃんのこと、好き?」
 
「・・・はい」
 
今度は、口に出して言えた。ゆっくりと、その言葉が胸に染み込んでいく。
 
「じゃあ、私と一緒に・・・待てるよね?」
 
「・・・はい!」
 
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 
夢。
 
哀しい夢。
 
女の子が、泣いている。
 
いつもの女の子とは、違っていた。
 
でも、私は、その子のことも・・・よく知っているのだ。
 
「どうして泣いているの?」
 
私は、出来る限り優しい声で聞く。
 
他人にこんなに優しくなれるなんて、知らなかった。
 
「嘘を・・・ついたの」
 
「・・・もう、その人は怒ってなんかいないよ」
 
「でも、やっぱり・・・・は来てくれなくて・・・。私が嘘つきだから・・・」
 
泣きじゃくる女の子。
 
「あなたは、その人のことが嫌いで、嘘をついたの?」
 
ううん。首を振る、幼子の瞳。
 
私は、その子のお気に入りの髪飾りを直してあげると、頭をなでてあげた。
 
「じゃあ、ちゃんと謝って、また仲直りできるわ。私は知っているもの・・・」
 
だって、私は・・・。
 
『でも、よい夢の見方はわからないまま』
 
その子が、帰り際、私に手を振って何かを叫んでいた。
 
その口の動きを見て、私も微笑む。ああ、あの子・・・
 
気がつくと、私の後ろにいつもの女の子が立っていた。
 
そして、私は、今度こそ、その子の顔をはっきりと・・・
 
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 
「おい、美坂、しっかりしろ!」
 
・・・北川君?
「・・・どうして、ここに?」
「大体の事情は、聞いた。正直、こんなとこで倒れているお前を見るまでは信じられなかったけどな」
「栞ちゃんも、水瀬さんも屋上にいる。相沢がついているから、心配ない」
栞・・・?栞が来ているの・・・?名雪まで・・・。
背中に当たる、冷たい床の感触。
「くっ・・・、佐祐里、あまり持たない、香里の側に・・・いてあげて」
すぐ側で、倉田先輩と川澄先輩が、私を庇うように立っていた。
「舞、佐祐里は、怒っています」
「今度佐祐里に黙って危険な所に出かけたら、お夕飯作ってあげませんからねーっ」
「・・・はちみつくまさん」
「はい!」少女の微笑み。
 
 
「・・・香里さん」
倉田先輩が、私に手を差し出す。
 
「私、栞ちゃんが大好きです。香里さんも大好きです。だから、私と同じ間違いを繰り返して欲しくないんです」
あれ、倉田先輩、何だか声のトーンが違うような。
・・・いや、何だろう、この違和感は?
でも。なぜかこの人とどこかであったことがある。
 
そんな概視感も確かにあった。
 
「私、間違っていますか?香里さん」どこかで会ったことのある瞳。
わたしは・・・。
私は・・・。
「何事も、やってみなくちゃ、わからないんじゃないのか」
・・・北川君。
「栞ちゃんが嫌いなんですか?」
嫌いなのは、私自身。
「栞に、会いたい」
最後に、口をついて出たのは、自分の本心だった。
忘れようとしても、忘れられなかった。
優しい、あの子の笑顔。
たとえ、奥底で否定されたとしても。
会いたい。
たった一人の妹。
会いたい。
自分の瞳に、力が戻ってくるのが解った。
会いたい。
ああ、私はなんて愚かなんだろう?
私がいなくなって一番哀しむのは誰か、分かっていた筈なのに。
会いたい。
 
栞に、会いたい。
 
立ち上がろうとすると、ふらついて、尻餅をついた。足を挫いたらしい。
 
北川君が、起こしてくれる。
 
「言っただろ、・・・肩でも背中でもいつでも貸すってさ」
 
左側を倉田先輩、右側を北川君に支えられながら、私は屋上に続く階段を登っていた。
 
あの鉄製のドアの向こうに、栞がいる。
 
そして、そのドアが、ゆっくりと開いた。
 
満月を背にして、栞が立っていた。
 
後ろには、相沢君と、名雪が見える。二人とも妹を守ってくれたんだね。
 
・・・ありがとう。
 
その時。
 
私と栞の前に立ちはだかるように、あの子が立っていた。
 
「香里、逃げて!」
 
川澄先輩の声が、ひどく遠くから響いていた。
 
その子が、床に亀裂を走らせながら、私に向かって・・・
 
真っ直ぐな瞳。
 
・・・その手が、私の胸から背中にかけて、貫かれていた。
 
***********************************
 
(完結編)
 
 
夢。
 
夢の終わり。
 
「お姉ちゃん」
 
ああ、いつもの子だ。
 
ここは、どこだろう。
 
一面に広がる麦畑。
 
はじめて来る、懐かしい場所。
 
私は、半歩前に出る。
 
そして、その子の髪を優しくなでながら、
 
抱きしめてあげる。
 
「どうしたの・・・もう、なかないの?・・・・そう・・・もう、いいのね?」
 
栞の小学生の時の制服。
 
私も、同じ制服を着て通ったっけ。
 
「私ね、お姉ちゃんのことが好きだよ」
 
私も。あなたが、大好きよ。
 
だから、抱き上げて、ぎゅっと抱きしめて。
 
「ごめんね、今まで一人ぼっちにして・・・・」
 
少しウエーヴのかかった黒髪をなでて。
 
・・・・・・そうか。
 
泣いていたのは・・・・・・。
 
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 
 
「・・・ちゃん」
 
私の頬に、冷たくて暖かい雫が跳ねた。
 
風景が、滲んで見える。
 
霞んで、どこか夢のような・・・・。
 
「・・・・・ね・・・ぇ・・ちゃ・・・・」
 
もう、泣かないで。
 
私がずっと、側にいるから。
 
私は、今度こそ、逃げ出さずに抱きしめてあげられたのだから。
 
だからもう、泣かなくてもいいのよ。
 
…ああ、約束ね。そうね、指切りしましょうか。
 
………指切った。
 
 
「・・・・・・お姉ちゃん・・・・・・お姉ちゃん・・・・・・お姉ちゃん・・・・・・」
 
「お姉ちゃん・・・」
 
栞が、泣きながら私のことを、繰り返し呼んでいる。
 
目に涙を一杯に溜めて。
 
「大丈夫。大丈夫よ、栞。お姉ちゃん、大丈夫だからね・・・・・・」
 
胸を貫かれた筈なのに、全く傷はなかった。でも私は、それを不思議だとも思わなかった。
 
・・・不思議に思う事さえ、なかった。
 
ふと、妹が落としたスケッチブックが目に映った。
 
その絵を見て。
 
私は、とめどなく、涙を流していた。
 
・・・ああ、涙はこんなに暖かいんだった。
 
そして、もう一度、妹を、
 
・・・栞を抱きしめた。
 
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 
 
 
 
 
 
<エピローグ>
「・・・裕一、お腹が空いた」
「というわけで、俺、例の警備員もりな」
「北川、何で俺がお前に、牛丼を奢らなくてはならないんだ!」
「細かいことを気にするな」
「佐祐里は、卵追加ですーっ」
「あ、私、デザートにアイスを・・・」
「よし○って、いちごのデザートあったっけ、裕一?」
「だーっ、お前ら、割り勘だ割り勘!」
「ケチー!」
「何だとー!」
「・・・言葉、通りよ」
 
その日、私の好物に牛丼が加わったことは、言うまでもない。
 
 
月が、夜の真ん中に来ていた。
 
「それでわーっ」
「舞と、佐祐里は、こっちだから・・・」
帰り道。
それぞれ違う道を行く。
 
「佐祐里、さっきのこと自分で・・・気がついている?」
「はぇ、何ですか、舞?」
「気がついてないなら・・・いい」
「佐祐里、気になりますー」
 
「それじゃ、・・・また」
「あははーっ、またあしたです!」
 
 
小さな約束。
 
 
「じゃあ、俺達、こっちだから」
「送りオオカミになったら駄目よ、相沢君」
「大丈夫。秋子さんの了承は取ってある」
「ぜんぜん大丈夫じゃないよー、裕一」
名雪がすねている。
いつも通りの風景。
結局名雪は、私に何も聞かなかった。ただ、優しい眼差しで、待っていてくれる。
 
我ながら、良い親友を持ったものだと思う。
 
・・・いつかその強さのわけを教えね。
私の弱さも、・・・名雪になら話せると思うから。
 
そして、私は、思い出す。
川澄先輩の目が、誰に似ていたかを。
 
・・・そっか。
 
「じゃあ、またな」
「また、あした」
 
 
繰り返される、たわいない約束。
 
 
「さてと、そろそろ北川君も退散するかな」
そう言って、肩越しに頼りなげな笑顔を浮かべて、彼が去っていく。
 
・・・背中、意外と大きかったんだね。
そして彼は、振り返りもせず手を上げて。
 
「また、あした」
 
 
・・・それが積み重なって、明日があるなら。
 
 
妹が、横で微笑みかける。
私も、振り返らずに手を振ろう。
 
「また、あした」
 
 
夢を見る方法なんて、必要なかった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
<end>
 
 
【ひとこと】
赤丸です。
この度、この作品を載せていただくことになり、大変うれしく思います。
さて、この「夢を見る方法」。インスピレーションを受けたのが、HID様の作品、S・Oでした。
ただ、この作品に答えられるものが自分の中に完成したかと言われると自信がありません。
それこそ、未だに探し続けています。見つからなくても、探し続けるでしょう。
蛇足になりますが、S・O以外も素晴らしい作品ばかりです。もし読んでいないなら、読みましょう。そこのあなた、損はしませんよ。
しかし、別館の方々が、そうそうたるメンバーで、私なんぞがいてよいものやら。まあ、枯れ木も山の賑わいということで(^^;
それでは、HID様のホームページが益々賑やかになるように祈って。
 
 
【感謝の言葉】
まず最初に赤丸さんに感謝の言葉を
「素晴らしい作品をありがとうございます。」
赤丸さんの作品からは、わたしとは違う視点(当然といえば当然なのですが)が感じられて、いつも、新鮮な気持ちで読ませていただいています。
わたしが赤丸さんの作品から感じるのは、「懐かしさ」です。
民話的な挿話を使っているからだけではないと思います。
どことなく、口伝えで伝えられるフォークロアのような、素朴な(いい意味で)味わい。
 
これからも、そういった作品を書き続けてくださることを願いつつ。
 
HID
(1999/8/10)


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