ベトナムからの現地レポート
2006.1.1更新 2006.1.1作成
本取材は正しい表現ではない部分もあるかもしれませんが、ご了承の上参考として下さい。
また、全ての画像ファィルについて、断り無く使用・転載することはできません。
写真・文;ハレ・ダイスケ
南北に細長いベトナムにおける口琴文化は、北部が熱い。南部のホーチミンにも口琴はあるが、ハノイ以北をできる範囲でレポートします。
真鍮口琴ダンモイの貴重な製作現場(ハノイ)とサパにおけるモン族の暮らしを一部からませながらご紹介しますので是非ご覧下さい。また、最後部には演奏方法、お取扱い時の注意事項を記載いたします。
さて、ベトナムでの口琴は一部の復興活動者を除き衰退傾向であり、ハノイでの知名度は低いが、サパという町に行商に来る黒モン族たちに口琴を知らぬ者はいない。
真鍮口琴は、サパやハノイの商店街で入手できる。
サパはちょっと遠い。首都ハノイから電車で10時間以上かけて中国との国境の町ラオカイに行く。
●ハノイB駅
電車
●ラオカイ駅前
中国国境(橋を渡ると中国)
さらにバスで2時間程度、美しいライステラス(山の斜面に開拓した水田)を眺めながら進むと急に拓けた町に到着し、そこがサパ。
フランス建築っぽいホテルがたくさん並ぶ町そのものは小さく、歩いて30分で回れてしまうほどだがポイントは市場に集まる黒モン族やザオ族などの山岳民族と口琴ンチャンだ。
●サパの町並
●ザオ族
●市場の一部 野菜コーナー
●市場の一部 フルーツコーナー
週末、サパを歩いていると、モン族たちに囲まれる。彼らは、週末に開催される市場で自分達が作ったバッグ等の手芸品や村の工芸品を売るために遠方から歩いてやってくるのだ。
彼らは器用で片言の英語も使うし日本人(ほとんど来ないが)を見ると「買ってよ」「びょんびょん」と言い寄ってくる。口琴はンチャンと呼び、価格は$2-3。値切ればもっと安くはなるが、私の所感ではあまり値切って欲しくない。言い値で買ってあげたい。その訳は『GERちゃん』のコーナーで書きます。
彼らの演奏方法は、親指を弁に向かって押す方向に弾く。演奏というよりも、デモしているだけだったが。彼らの村でも作っているが中国で作っているのもあるという。
●黒モン族〜若いお母さん
●市場〜みんなの休憩所
●市場〜休憩所で食べたファー(旨い)
サパの町で口琴をバスキングしていたらモン族達が興味深々と集まりとたんににぎやかになる。真鍮意外の口琴にも目を輝かせていた。
その中の一人、GERちゃんと仲良しになった。とても若く見えるが家には子供もボス(旦那)もいるという。家に来ないかと誘ってくれたので早速連れて行ってもらった。
・・・遠い。彼女は毎週末、暑い中、寒い中(ここは海抜1500mなので冬は雪がうっすら積もることもある)、商品を持ってテクテクやってくる。その距離 片道約20km、6時間 往復はもちろん12時間。
朝から始まる市場のためおそらく暗いうちに家を出、昼過ぎに戻り始めるのだろう。
彼女の村までは、道はあるが何ヶ所か滝や川で水没っぽくなっている。少々ワイルドだがライステラスのパノラマが非常に美しかった。
●GERちゃんとライステラスの風景
村の入り口には、小さな小さな商店があり彼女はそこで市場での売り上げでお菓子を少しだけ買った。 ここからは、基本的に外国人単独では入れないエリアらしい。
この村の入り口から家まで行く30分の道のりは相当の斜面ですっかり汗だくになったが、とても楽しい風景が続いた。 歩きながら、オコシのような小さなお菓子をひとつくれる。食べてしまうとまたくれたがポケットにしまっておいた。
●GERちゃんちまでの山道
家に着くと、子供たちはお母さんからお菓子をもらって大はしゃぎ。自分もさっきもらったお菓子と日本から持ってきたお菓子をあげた。
家は山の中だから電気水道はもちろん無い。床も土を固めただけだし、壁もスカスカ。でもここには温かい家族とはちきれそうな笑顔があった。彼女だけでなく、サパに行商に集まる黒モンの人たちはこのように何時間もかけて歩いてやってきていた、薄っぺらい靴で。それでも、売れる量は多くは無く日本円で2−300円程度だと思う。彼女たちの言い値は日本人には決して高くないからできるだけ値切らずフェアな取引をしたいと思った。
●マイホーム
GERちゃんの演奏は、完全に旋律になっていて、それを何回も繰り返してくれた。村の歌だという。ムックリにもチャレンジしてもらったがうまくいかなかった。
●ンチャン演奏とムックリ挑戦
サパからバスで約4時間、ラオカイを超えて山道を行くと花モン族の村 チョバクハがある。
彼らは華やかな民族衣装は普段から着ているが、週末の市場にはさらにお洒落して行商に集まる。
ここでは生活に必要なものが無数に売られ、たいへん混雑している。食材、鍋、ベルト、犬、カゴ、鍬、生地、糸など、ほんとうに色とりどりで、市場としての活気・人の力はサパを遥かに凌いでいる。
ここにも口琴ンチャンは売られているが、ケースは竹がむき出しで、布で装飾されていなかった。
●バクハの市場の様子
花モン族の村に行くと、あの衣装のまま家事や畑仕事をしている。ただ時間の都合で、私が行けた範囲は電気が施設されている多少文化的なエリアに終わってしまった。
●ガードレールの設置工事、花モン族の家など
オートマチックな口琴工場なんてなかった。弁の切り抜きはハノイ近郊の工房でもあくまで人力の手仕事だ。
●これがもともとの素材、真鍮の巻物。
●巻物をこの重機(写真右側)にかけてプレスする。
●作る口琴の型(下の写真の型は試験中のもの)を重機に取り付け、つぎつぎとプレスする。
●プレス後の真鍮の巻物はこういうふうになる
●くりぬかれただけでは口琴はまだ平面、ただの板だ
●別の機械で、立体的にするとともに、弁を削るためのガイドライン(浅い線)を打ち込む
●あとは、ただひたすら手でガイドラインに沿ってヤスリでなんどもなんども削り弁を貫通させる
●削り落ちた真鍮の粉
●口琴の種類は揃っていないが製作順序に従い並べてみた
さまざまな口琴職人の家を訪問したので様子を紹介します。強調しますが、口琴ひとつ作るまで(とくに弁の切り出しと仕上げ)には大変な重作業が必要です。
●弁が貫通する寸前までヤスリをかけたら、このように全体的にヤスリをかけなおす
●指先で刺激を与えるだけで弁がはずれるようになる。またはペンチで口琴の根元をはさみ左右にねじってはずす
●弁の先端が浮いてきたら最後にカミソリの刃で切り出すこともある
●道具拡大 1
●別の職人の家で
●ひたすら弁を切り続ける
●別の職人の家で
●ひたすら弁を切り続ける
●道具拡大 2
●作業机
●別の職人の家で
●ケース職人の家には素材がたくさん
●竹の切断
●竹ケースの装飾担当さん
●装飾の部品
●ほとんど完成
●竹は燃料にもなりますね
●別の職人の家で
●別の職人の家で
●作業机 2
●別の職人の家で
●別の職人の家で
●ラジャスタン口琴に挑戦
●村の商店
@三角の布の部分を引っ張るだけで糸がほどけます。 筒の中に入っている口琴を取り出してください。
A立体的な側を自分に向けます。
B口琴は水平に持ってください。右利きの方は左手の親指と人差し指でしっかりと挟みます。ゆるく持ってしまうといい音が出ません。
C通常は右手の人差し指のハラで先端を弾きます(先端以外の部分を弾くと破損の原因になります)。
適切な加減で弾くと弁が振動し、ブーンと音が聞こえます。人差し指は、最初慣れないうちは自分のほうから向こう側に(”押す”ように)弾くとやり易いです。
D慣れると下のような他の持ち方による”引く”弾き方をお勧めします。
A
B
EBの場合、右手の薬指と小指を左手の適切な場所に固定して自分の方へ弾きます(適切な場所に固定することで、人差し指がいつも同じ位置となり、安定した演奏が出来ます。
FAは人差し指の第一関節付近で弾く方法で私の通常の奏法です。 なお、指を往復ともに弁を弾くと往復打撃となり高速奏法が可能です(破損はしやすい)。
G(弾くと振動する三角形の部分)の先端が口の中央付近にくるように咥えます。唇で口琴を咥えますが軽くかぶせている程度でOK、唇を大きく開けすぎるといい音は出ません。歯はあてません。
H口腔内の空気の量や息の強さ、口腔内の筋肉運動、体内での共鳴方法によりさまざまに変化する音色をお楽しみください。
なお、強くあるいは高速で弾きすぎると破損の原因になります。非常に繊細な構造ですのでご注意下さい。
また、鋭角な部分がありますのでお取り扱いの際には怪我なさらぬようご注意ください(特にお子様)。
I演奏が終わったら・・・・唾液をきちんと拭いて写真のように筒の中にしまってください。
J口琴がケースの底につくまでヒモを出し切る→ヒモをピーンと張る。
K親指で押さえておく。
L押さえたままヒモをぐるぐる巻いてゆく。
M巻き終わる手前で人差し指をヒモの下に入れて輪をつくる。
N輪の糸の下に三角布を半分だけ差し込む。
O三角布は ↑ に回しながら、ケースは ↓ に回して輪を締めて、完成。
以上