「鹿児島にいずもや現る!」


12月6日(土) 熊本県牛深市〜鹿児島県川内市 晴れのち曇り

牛深市からフェリーで長島に渡る。
フェリーを降りで辺りを見回す。
むむっ。ただならぬ雰囲気。もしかして・・・・
と、地図を見ると、ここは鹿児島県。
はずかしながら、このときまで私はここが鹿児島県であることを知らなかった。
偶然かもしれないが、今までいた天草とは明らかに違う空気。
すぐ近くにある天草よりも、離れてはいるが同じ鹿児島県である与論島などのほうに近
い感じがする。
フェリーで30分来ただけなのに。
自転車をこぎ出して、この島独特の風景に驚かされた。
この島の風景を作り出しているのは、赤褐色の土と、石垣で作られた段々畑。
うーん、見事だ。
広々とした畑を見渡せる場所で、しばらくの間呆然とこの景色を眺めた。
今回の旅では、このように意外な場所で感動的な光景に出会うことが何度かあった。
こういうときに、自転車で来た幸せを感じる。
風景を空気ごと、まるごと感じる幸せだ。

長島の、とある酒屋でジュースを買ったのをきっかけに、そこで働く女性としばらく話
をした。
聞くところでは、あの段々畑にはさつまいもやじゃがいもが植えられているという。
この酒屋には焼酎の工場があって、地元でとれるいもを使って焼酎の原酒を作っている
とのこと。
その原酒から作ったという焼酎のワンカップをいただいた。
実は、私はいも焼酎というものを飲んだことがない。
20年ほど前に、父と鹿児島に来たときに、父がいも焼酎をお湯割りにして飲んだのだ
が、そのあまりに強烈な匂いが印象に強く残っていて、ずっと敬遠してきたのだ。
せっかくなので、このいも焼酎を今度飲んでみよう。
さて、はじめてのいも焼酎は口に合うだろうか・・・・・

道端の休憩所で、島原で買ったカステラを食べていると、小学生がよってきた。
「おにいちゃん、どっから来たの?」
「札幌から自転車こいで来たんやで。」
というと、「へえ、すごーい」とちょっとおおげさに驚いて見せた。
「昼ご飯食べた?」
「いや、まだやけど」
「ここから100mぐらいのところにおいしい店があるけど、行ってみない?」
「え、高いんちゃうの」
「そんなことないよ、鯛の塩焼きが500円だよ」
「ほう、それはいいなあ。いってみよかな。それにしても、えらい詳しいなあ」
というと、
「ぼくのうちだもん」。
おまえは「いずもや」か!!
と京都人にしかわからないつっこみをしながらその店に向かった。
店はとても繁盛していた。鯛の塩焼きは、身がほくほくしていてとてもおいしかった。
しかし、しかし。
ひとついいたいことがある。
この店に行くにはものすごい坂を下っていかなければならないのだ。
自転車に乗ったまま下るのがこわいぐらいの坂道だ。
その坂道を登るのは、とてもとてもつらかったぞ。
坂をくだる直前に、その子が、
「ちょっときつい坂があるけどね。筋力トレーニングになるでしょ」
って、このやろ、最初から言え。
せやけど、鯛がうまかったから許したる。

本日の走行距離 70.01km
宿泊地 鹿児島県川内市 唐浜キャンプ場にて野営