春色



「ヒイロ起きろ、綺麗、すっげー綺麗!!」

デュオに叩き起こされたのは、夜が明けたばかりの時間帯のことだった。
さすがに腹が立って睨み付ければ、気付いた様子もなく頬を紅潮させたデュオと 視線がぶつかる。

「……なんだ」

負けたような気持ちになりつつ、促すように言葉を紡げば刻まれていた笑みが 一層深くなった。
心の底から幸福そうな、そんな笑顔はついぞ見たことがなかった。

「なんだか眠れなくてさ、散歩してたんだ。そうしたら裏の山にすごい綺麗な花が あって……な、一緒に見に行こう」

ヒイロにも見せたいんだ。
にっこり微笑まれて、気付けば頷いていた。

「多分、サクラってやつだと思うんだけどな。ずっと見てたい感じなんだ」

言われるままに文句も言わず仕度をするヒイロに、興奮状態のデュオは気付かない。
まあ、気付かれても困るのだけど。


「ほら、ヒイロ早く早く、こっちだって!!」

……珍しい笑顔に、負けてしまった気がする。


なんだか悔しい1日の始まりだった。

                                          end.



2000.4.7.
なんかヒイロが情けないのは天使死神ネタ書いた直後だからだと思われます(笑)
ちなみに何が春色かと言うとヒイロさんの頭の中……(爆)
(というかうさぎの沸いた頭の中?)
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