皆で遊ぼう♪
楽しく遊ぼう♪
一緒に遊ぼう♪
さあ遊びの始まりだ♪

 

 

             

《それぞれの》上





事の発端は姫発の思い付きだった。
自分でも最近結構働いたと思っている姫発は、周公旦に提案した。
「なあ、旦。ちょっとしたゲームをしないか?」
その言葉に、周公旦の眉がピクリと動いた気がしないでもなかったが姫発は見なかったことにした。
「あのな、自分で言うのもなんだけど俺最近ちゃんと仕事しているだろ?だから、その、褒美にさあ?」
「ほお、どういうゲームですか?小兄様?」
そう言う周公旦の顔は少し引きつっている。ちょっと気圧されそうになった姫発だが、ここで負けては何もかもパアだと、気合を入れて周公旦に立ち向かった。
「あ、あのな、皆でかくれんぼをしてだなあ」
「ほお、かくれんぼですか。それはそれは。で?続きは?」
ずいずいと顔を近づけてくる周公旦に、後退りしながら姫発は続きを述べた。
「そ、それでな、最後まで見つからなかった奴には褒美として一日誰とでも遊べる券なんてのを・・・」
周公旦は近付くのをやめて、溜息混じりに却下した。
「・・・いけません。小兄様」
「えー―!!どうしてだよ―。いいじゃんかー」
子供のように駄々をこねる姫発に周公旦が少し困った顔になったのを見て周公旦が自分に甘いのを知っている姫発は、後少しと、縋るように訴えた。
「ねえねえ旦〜、頼むよ〜。これしたらちゃんとまた仕事するから〜」
姫発のこの顔に弱い周公旦は、気持ちがぐらついていた。
「なあなあ〜、ゲームしようよ〜、仕事ばかりだと俺逃げるぞ〜」
こう言うと姫発は本当に抜け出してしまうので周公旦は渋々頷いた。
「今回だけですよ?次回はないですからね、いいですね?」
周公旦がそう言うと姫発はパアッと顔を輝かせて周公旦に飛びついた。
「サンキュー旦。お前っていい奴だよな!」
心底嬉しそうに言う姫発を見て、周公旦は、自分は兄に甘いな、と思いながら苦笑した。
しかし、一人ずつ隠れられては全員捜し出すには日が暮れてしまうので、必ず二人組みで隠れると言う条件付きだ。
それでも姫発は嬉しそうに跳ねている。





――翌朝
食卓に全員が集まると、周公旦は昨日姫発と決めたゲームの内容を話し始めた。
「えー、小兄様の提案で、明日は一日ゲームをして頂きます。ルールは簡単です。
まず二人組みを決めて、日が沈むまで鬼に見つからないことです。そして最後まで見つからなかった人には一日誰とでも遊べる券を差し上げます。ただし、城内から出ないこと、必ず二人で行動すること、それが条件です。
鬼は兵士にやってもらいます。以上、何か質問は?」
周公旦がそう言い終わると、天化は質問した。
「二人組みはどうやって決めるさ?」
「今日の食事の何処かに小さい球を入れてあります。その球は色がついていて、自分の球と同じ色の人と組んでもらいます。誰が何色かは作ったシェフしか知りません」
周公旦がそう言うと、皆が探し始めた。一人そんな事に興味の無いナタクは、モクモクと食べていた。
初めに見つけたのは天祥だった。
「ぼくは赤だ〜」
そして次は武成王が。
「俺は緑だな」
そして天化。
「俺っちは黄色さ」
そして武吉。
「ぼくは水色ですね」
そして姫発。
「俺はオレンジ色だな」
そして蝉玉。
「私は白ね、ハニーは?」
その隣で土行孫が固まっていた。その手の中には白い球があった。
「まあ、ハニーも白なの!これも愛の力だわ!!」
そう言うと蝉玉は土行孫の首をしめた(蝉玉は抱きしめているつもり)。魂が何処かに行ってしまっている土行孫は怒らない。否、怒れない。
少し遅れて周公旦。
「私は緑ということは、武成王とですね」
「おお、周公旦殿か。こりゃイイや」
天祥の横で一生懸命探していた太公望はやっとのことで見つけた。
「ふむ、わしは赤だのぅ。天祥か、よろしく頼むぞ」
そう言いながら天祥の頭を撫でている太公望に天祥は頷いた。
「うん!任して。ぼく結構いろんな所知っているんだよ!」
はりきって言う天祥に太公望は微笑みかける。
「ほぅ、それは頼もしいのぅ」
そんなやり取りを見ていた天化は心の中でちょっと残念がった。
(なんだ、師叔は天祥とか)そう思いながら、自分の相手は誰だろうと見まわして目に止まったのは、土行孫と同じように固まっている楊ゼンだった。
どうしたのかと思ったが、この人とは絶対組みたくなかったので、すぐに目を逸らした。
太公望にやや遅れてビーナス。
「まあ、私はオレンジ色ですわ。姫発様とですわね」
ビーナスの言葉を聞いた姫発は固まった。ビーナスはどう誤解したのか固まった姫発を見て言った。
「姫発様、私は太公望様の妻ですので、くれぐれもおかしなことはお考えにならないで下さいね」
姫発は倒れた。


一人モクモクと口を動かしていたナタクは少し顔をしかめると、口から水色の球を取り出した。
それを見た武吉は喜んだ。
「わあ!!ナタクさんとですね。ナタクさん、がんばりましょう!!」
「フン」
ナタクは嫌なのかどうか分からない返事をしてまた食べ始めた。そんなやり取りを聞いていた天化は固まった。
残っているのは、絶対組みたくないと思っていたあの人だ。
なぜ楊ゼンが固まっていたのかやっと理解した天化であった。朝の食卓では、殆どの者が固まっていた。
そんな中、興味がないと辞退した者もいた。
クイーンとマドンナである。クイーンは、本当に興味がなく、マドンナは、やりたくても隠れることが出来そうな場所がないからだ。ちょうどこの二人の球は同じ色で、周公旦もそれを許可した。



――太公望&天祥――
食事を済ませた天祥と太公望は、どうやって逃げるか相談しているところだった。
「天祥、何処か見つからない場所を知っておるか?」
「う〜ん、色々あるけどどうしようか」
「そんなに知っておるのか?どんなところだ?」
「えっとね〜、まず、屋根裏でしょう?んで地下室に〜、食料庫に〜、物置の上とか〜、資料室の使われていない部屋とか〜、調理室の裏の隠し部屋とか〜う〜ん、とにかくいっぱいあるよ!!」
「そ、そうか最後に言った調理室の裏の隠し部屋ってなんだ?」
「え〜?なんか知らないけど調理室の裏の部屋で、ある壁を叩くと壁が回って隠し部屋には入れるようになっているんだよ〜。大公望知らないの?」
さも不思議そうに問う天祥に、少し動揺しながらも太公望は首を横に振る。
「な、何でそんなところがあるのだ?一体何に使うのだ?」
「そこには何があるのか僕も知らないけど。そこ暗いからちょっと怖かったんだよね。でも太公望も一緒なら怖くないね!」
笑顔で言われ、天祥はそこを探険したいのだと悟った太公望は、少し考えたがまあ良いだろうと頷いた。
「明日は火を持っていかねばならぬな。そこまでの道案内よろしく頼むぞ」
「うん!!」
太公望に飛びついて言う天祥を撫でてやりながらふと周公旦の言葉を思い出す。
《最後まで見つからなかった人には一日誰とでも遊べる券をさし上げます》
果たして天祥にはお目当ての相手はいるものかと思う太公望であった。ちょうど同じことを考えていたらしい天祥は太公望に聞いた。
「ねえねえ、太公望は誰と遊ぶの?」
「わしか?そうだのぅ・・・どうするかのぅ」
まだ決めていない太公望に、顔を輝かせて申し出た。
「じゃあ、もし見つからなかったら僕と遊んでよ!」
天祥の突然の申し出に聊かビックリはしたが、他に相手もいないので、頷いた。
「そうじゃのう。では天祥と遊ぶかのぅ」
微笑みながら言う太公望に天祥は大きく頷いた。
明日の予定も決まったので仕事に戻る太公望と、明日の下見に行く天祥であった。



――周公旦&武成王――
「さて、周公旦殿、明日はどうする?」
子供のようにわくわくしている武成王を見て苦笑して、自分の考えた明日のルートを話しだした。
「兵士ですから結構いろいろなところを知っていると思いますので、自室に何か細工をして隠れるのが宜しいかと思いますが。武成王はどうお考えですか?」
「そうだなあ、俺は地下室とかでもいいんじゃねえかと思うが?」
「地下室は他の人が隠れる可能性があるのであまり賛成は出来ませんね」
「そっか・・・じゃあ、周公旦殿の言う通りにした方が見つかる可能性が低いってもんだな」
「まあ、そう言う事ですね。どうしますか?」
「・・・?部屋に隠れるんだろ?」
「そうではなくて、どちらの部屋に隠れるかと言うことですよ。二人で行動しなければいけないのですから当然同じ部屋に隠れないといけませんし」
「ああ、そういやそうだな。う〜ん・・・」
「貴方の部屋にはどこか隠れるようなところはありますか?」
「いや〜、よく考えてみると無えなぁ」
ばつ悪そうに頬をかきながら言う武成王に、少し微笑んで言った。
「では、私の部屋にしましょう。幸い私の部屋には隠れるようなところがありますので」
「そ、そうか?悪りぃな」
「構いませんよ。ところで武成王、貴方は誰と遊ぶのですか?」
「へ?」
なんとも間抜けな声を出した武成王は一体なんのことだと周公旦を見る。
「貴方聞いていなかったのですか?最後まで見つからなかった人は一日誰とでも遊べる券を貰うことが出来るって言っていたではないですか」
「あ〜、そう言えば言っていたような気がすらぁ。」
「思い出して頂けましたか?で、誰と遊ぶのです?」
武成王は少し考えていたが、苦笑いしながら言った。
「俺はもう誰かと遊ぶような歳じゃねえし。その券は周公旦殿が使ってくれや」
そう言う武成王の言葉を理解するのにちょっと時間がかかった周公旦であった。
「武成王、貴方もたまには息抜きをしたほうが良いですよ。私こそもうそんな歳ではないですし、仕事もあるので貴方が使って下さいよ」
「その言葉、そっくりお前に返すぜ。周公旦殿こそたまには息抜きをしなきゃそのうち倒れるぜ?仕事のほうは他の奴にやらせればいいしよ」
「しかし・・・」
「しかしなんだ?」
暫く二人とも何も言わなかったが周公旦は良いことを閃いた。
「ではこうしましょう。その券で、遊ぶのではなく二人で息抜きをするのですよ。そうすれば御互いに良い休息になりますし」
「おお!そりゃあ名案だ。まあ、その前に最後まで見つからないように隠れないといけねぇがな」
笑いながら言う武成王に、周公旦は微笑んで頷いた。
「そうですね。休息の為にもがんばりましょう」
「おう!!」
周公旦が今晩、自室に細工をするということで話はまとまり、御互いの仕事に戻るのであった。



――姫発&ビーナス――
ビーナスは、食事中に倒れた姫発を部屋に連れて行き、目を覚ますのを待っていた。
ボーっと姫発の寝顔を見ながら考えるのは、愛しいあの人のことばかりだった。
(ああ、太公望様は何故私に振り向いてはくださらないのかしら。私が美しすぎる所為かしら?美しいのは時として罪にもなるものね。無理も無いわね、私も時々自分が美しすぎてこわいときがあるもの。はあ、太公望様・・・)
ビーナスは、長く重い溜息をつくと、姫発がこっちを見ているのに気がついた。
「あら、御目覚めですか?」
「あ、ああ。お前がここまで運んでくれたのか?」
「ええ、そうですけど?」
「そうか・・・」
そう言うと姫発は何も言わなくなってしまった。
ビーナスはどうしたのかと思ったが、今は明日のことを決めるのを優先することにした。
「姫発様、明日はどこに隠れますか?」
「え?」
突然の問いについていけなかった姫発だったが、何を言っているのか分かって、考え出した。
「そうだなあ・・・お前はどこが良いと思う?」
「そうですねえ・・・屋根裏、地下室、物置・・・どこもありきたりですわねぇ」
「他に何か・・・屋根の上なんてどうだ?」
「そのくらい兵士なら見つけますよ」
「うっ・・・そうか。う〜ん」
頭を抱えて悩む姫発が可愛いく見えて思わず笑みが零れるビーナスであった。
そんなビーナスに気付いた姫発は問う。
「なんだ?何が可笑しい?」
「いえ・・・ただ随分と幼く見えると思っただけですわ。気分を悪くされたのなら謝ります」
そう言いながらまだ少し笑っているビーナスに、少し顔を赤くしてそっぽを向く姫発であった。
「いいけどよ。別に・・・まあお前からしてみれば俺は随分と幼いだろうし」
その言葉を聞いて確かに、と思うビーナスであった。
「まあ、そんなことよりも明日をどうするかですわ」
「そうだったな。でも他にどこかあるか?」
「まあ、無いことはないのですが・・・」
「本当か?どこだ」
期待して言う姫発に、ビーナスはさらりと言った。
「天井の中ですわ」
「は?」
意味のわからない姫発は間抜けな声を上げた。
「ですから、天井の中ですよ。よく鼠とか住んでいる。あそこなら良いのではなくて?」
「鼠・・・」
少し考えて、ビーナスがどこのことを言っているのかやっと理解した姫発であった。
「あんなところ、どうやって入るんだよ?」
「あら、簡単ですわ。天井のどこかに外れる板があるはずです。それを外せば中に入れますわ」
簡単そうに言うビーナスを、少し感心した姫発であった。
「ヘぇ〜、お前よくそんなの知っているなぁ」
「あら、失礼ですわね。この私が無知に見えて?」
「はは、それもそうだな」
笑って言う姫発に、何がそうなのかという顔をしているビーナスであった。その顔で理解したのか姫発は理由を話しだした。
「いや、軍師の妻たるものがそういうこと知らないのもあれだし」
その言葉で気を良くしたのかビーナスはそうそうと頷いた。
その後、今日の内に外せそうな板をお互い探しておくということになった。
そして、思い出したように姫発はビーナスに聞いた。
「お前は誰と遊ぶ気だ?やはり大公望か?」
「そうですわね。それも良いかもしれませんが今回は姫発様に譲りますわ」
「え・・・?」
「あら、要らないのでしたら構いませんのよ?」
「い、いや、欲しいけど・・・良いのか?」
申し訳無さそうに言う姫発に、ビーナスは笑顔で答えた。
「構いませんわ。このゲームは貴方がお考えになったのでしょう?何かやりたいことがあってのことと思いましたの。違いますか?」
姫発はビックリした。何故この人は自分の考えが分かったのだろうと思っていた。そんな姫発を見て、また微笑んだ。
「図星ですわね」
「な・・・なんで分かった?」
「それは秘密ですわ」
そう言うビーナスに顔こそは似ても似つかないがあの人の面影を感じながら呟いた。
「やはりお前は似ているな」
「え?」
今度はビーナスが間抜けな声を上げた。そんなビーナスに少し微笑んで切出した。
「お前、ちょっと暇か?」
「え、ええ。急ぎの用事はありませんが?」
「少し話を聞いてくれないか?」
少し辛そうに言う姫発をみて、この人を独りにしてはいけない気がして、思わず頷いたビーナスであった。
「そうか・・・悪いな」
暫く何も言わなかった姫発だが、頭を抱える様にして俯いたまま話し出した。
「お前は・・・母親のことを覚えているか?」
「まあ、少しなら・・・でもマドンナを産んでから少しして亡くなったわ」
「そうか」
「姫発様は覚えていないのですか?」
「いや・・・そうじゃない」
微笑んだ姫発の顔は少し悲しそうだった。そんな顔をするから、ビーナスは言葉を飲み込んでしまった。いつも明るい姫発だったからこういう顔は始めて見る。
「おふくろは・・・鋭い人でな・・・何があったのかすぐ見抜く人だった」
その人のことを思い浮かべるように目を瞑る。
「そんなおふくろでも親父が何を考えているのかは分からないと言っていた。」
薄らと開いた目にはあの人達が見える。
「俺が何か隠し事をしていてもすぐに見破られたさ。そういうところがお前は似ていると思った。俺、このゲームで勝って、墓参りに行こうと思ってな・・・だから絶対見つかるわけにはいかない。協力・・・してくれるか?」
そこまで言うとビーナスのほうを向いた。向いた瞬間驚いた。泣いているのだ。
「な、なんだ?どうした」
ビーナスは一応女なので女には優しい姫発は困った。だが、どうして泣いているのか分からなくてただオロオロするばかりだった。
ビーナスは、流れる涙を拭うと、ガシッと姫発の手をとった。
「姫発様、絶対勝ちましょう。勝ってお母様のところへ行って下さい」
そう言うビーナスに、姫発はただ頷くしか出来なかった。
「お、おう」
握られている手は骨が折れそうなほど痛かったが、自分の為に涙を流しているので言えなかった。
暫くして落ち着くと、仕事をするために別れた。




――ナタク&武吉――

ナタクと武吉は、広い庭で明日のことを相談していた。
「ナタクさん、明日はどこに隠れますか?」
わくわくしながら聞く武吉に、何も考えていないナタクはどう言えば良いのか困った。
「・・・木・・・」
「はい?」
何が言いたいのか判らなかった武吉は聞きなおした。
「・・・木の上・・・」
「ああ、木の上ですか。そうですねえ。兵士さん達もまさか木の上に居るなんて思いませんよね」
武吉は頷きながら独り言のように言った。
「でもどこの木にしますか?」
「乗れ」
「え?」
武吉が何かを問うより早く、ひょいっと武吉を掴んで背中に乗せて城の上まで昇った。
「・・・どの木にするか決めろ・・・」
素っ気無く言うナタクの意図をやっと理解した武吉は、辺りを見回した。
「あ、あの木はどうです?」
武吉が指差している木は、城内で最も高い木だ。その木のところまで飛んで、隠れられるかどうか試した。
「どうですか?見えませんか?」
木の間に入った武吉は、ナタクに聞いた。
「・・・ああ・・・」
「そうですか」
そう言うと、木の間から顔を出してナタクに微笑んだ。
「じゃあ、ここにしましょう」
「・・・(コクリ)・・・」
「そうだ、ナタクさんはもし権を貰ったらどうするんですか?」
「・・・?」
少し首を傾げるナタクに、聞いていなかったのかと内心苦笑した。
「周公旦さんが言ってたじゃないですか。誰とでも遊べる券」
「・・・ああ」
「で?」
「・・・母上に会いに行く」
「え?」
「最近、母上に会っていないから」
「あ、お母さんですか。僕も一緒に行っても良いですか?」
「・・・別に」
「良いですか!?」
顔を輝かせながら問う武吉に、ナタクは頷いた。
「わーい。ナタクさん、ありがとうございます」
そして、武吉は太公望の所へ、ナタクは一人、どこかへと飛んでいった。



――天化&楊ゼン――
「・・・」
「・・・」
明日のことを決めるため、一応二人で廊下を歩いていたが、どうしても一緒に考える気になれない。
仕方ないのかもしれない。なんせ恋敵なのだから。太公望師叔という人も罪な男である。
「・・・どうするさ」
かなりなげやりになりながらも、一応天化が切出した。
「・・・」
しかし、楊ゼンは返事をせず、じっと何かを考えていた。
(なんなんだこの人は。せっかく俺っちが言ってるのに!人の話も聞かないで)
頭の中で愚痴をこぼしながら、楊ゼンが何かを言うのを待っていた。
―パチン
楊ゼンがいきなり指を交差させて音を出した。その顔は、まさしく閃いたという顔だった。
「天化君、良いことを思いついたよ」
「え?」
「フフフ、分からないかい?僕達はお互い恋敵ではあるが、ちょっと見方を変えれば、同じ目的を持つ仲間ではないか」
「・・・」
まだよく分かっていないふうな天化に、痺れを切らして楊ゼンが言った。
「つまり、一度協力しようと言うことだよ。そして、午前中が僕、午後が君の順番で、太公望師叔と一緒に過ごすんだ」
「ああ」
やっと理解できた天化は、あまり気の乗らない返事をした。
「そんなの、出来るさ?それに、師叔と過ごすにはまず見つからないという条件が」
天化が続きを言う前に、天化の前に腕を出して制し、楊ゼンが言った。
「君は僕を誰だと思っているんだい?」
「・・・?」
「天才道士と名高い僕に、不可能なことは無い!!」
かなりのこじつけではあったが、それなりに説得力があったようだ。
「ま、頑張るさ」
「おいおい、そんな弱気でどうするんだい」
「・・・俺っちは別に弱気になんかなってないさ」
「いいや、なってるね」
その言葉にカチンときた天化は、つい乗ってしまった。
「イイさ!!なんでもやってやる!!」
「そうそう、その活きだよ」
天化が燃えやすい性格だと知っている楊ゼンは、そこを利用し、まんまと手の内におさめた。
そして、楊ゼンが今日中に考えておくということで、話は終わり、お互いに一時休戦をすることにした。




――蝉玉&土行孫――
「ねえハニー、明日はどうする?」
「そうだな・・・」
蝉玉に抱かれながら、考えていた土行孫に、どきどきしながら蝉玉は聞いた。
「ねえ、ハニーは誰と過ごすの?」
「そりゃあ、もちろん、ポルシェとナ」
そこまできて、ふと上を見上げれば蝉玉の世にも恐ろしい顔があった。
「お、お前とポルシェでドライブだ」
その言葉に、パッと顔を輝かせ、土行孫をぎゅっと抱きしめた。
「嬉しい!!やっぱりハニーは私と運命の赤い糸(ワイヤー)で結ばれているんだわ!!」
「ぐえ」
抱きしめられている土行孫は、苦しいながらも少し得をした気分になった。蝉玉の形の良い胸が気持いいのだ。
「さあハニー、明日の隠れ場所を捜しに行くわよ!!」
添う行って、土行孫を抱えたまま、どこかへ走っていった。どこへ行ったのか、その日その後二人の姿を見たものはいなかった。

 

こうして、それぞれの組みが明日の対策を相談し終え、いよいよ戦いの火蓋が切って落とされよ

うとしていた。

 

 

 

 




―続―










 

作者の遠吠え
なんだこりゃ?一応続き物です。きっと続きは一年後(死)でしょう(嘘です)こんな長ったらしいものを送ったりして、ごめんなさい。そして、こんな長いものを呼んでくださいました皆様、ありがとうございました。
もし、続きも読んでも良いというお声があれば書かして頂こうかと思います。なければ・・・消して下さい。それでは、失礼します。





ビーナス&姫発、そして周公旦&飛虎の組み合わせがかなり好きです。意外なとりあわせが新鮮で楽しい!(草子)






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