気づかぬ想い






「ふう・・・」
窓の外で楽しげに遊ぶ弟子達を見てため息をつく美仙女。彼女の名は竜吉公主。
ここ鳳凰山の主で、仙界一と謳われる程の美貌をもつハイレベルな仙女である。
仙人と仙人を親に持つ彼女の身体は清浄すぎて、滅多に外にでられない。
そのため、退屈でいつも外で遊ぶ弟子達を見てはため息ばかりついているのだ。
―また、来てくれないかな・・・―
ふっとそう思い顔を赤らめた。蒼く美しい瞳を潤ませながら、公主は空を見上げた。
一月ほど前のことである。
公主は同じ崑崙派の仙人である玉鼎真人と出会った。
長身で体つきはがっちりしていて、見た目は少し怖い。
でもその目は優しく、すべてを包んでくれるようなそんな感じのする不思議な瞳だった。
出会ったその晩、公主は玉鼎と身体を重ねた。
「また・・・会いたい」
玉鼎の身体に寄り添って、公主は呟いた。
明日になれば、この人は帰ってしまう。もう二度と会えなくなってしまうかもしれない。
そう思うと寂しくて涙が溢れた。
「ん・・・」
何も言わず、玉鼎は公主の身体を引き寄せ口付けた。まるで別れを惜しむかのように、玉鼎は何度も何度も唇を重ねてきた。
翌日、玉鼎は帰っていった。
「また来る」
そう言い残して・・・。
玉鼎の残した言葉を信じて、公主はじっと待っていた。
一月もの間、身体を重ねたあの晩のことを想いながら、玉鼎が来るのをひたすら待ち続けたのである。
でも、もうそれも限界に近い。
やっぱり、あの人にとってあの晩のことはただの遊びに過ぎなかったんだ。
そんな思いが頭をよぎり、泣き出しそうになるのをこらえるのが辛かった。
諦めようともしてみた。憎みさえした。それでも忘れられない。
かえって愛おしさは募るばかり。
優しい瞳、落ち着いた低い声。もう一度会いたい。もう一度触れたい。
「玉鼎・・・」
赤い薔薇のように美しい唇を開いて、公主は愛しいその人の名を呼んだ。
「公主様・・・」
ふいに自分を呼ぶ声がして、公主は我にかえった。
振り向くと、弟子の一人赤雲が心配そうな顔でこちらを見ている。
「また、玉鼎真人様のことを考えていたのですか?」
寂しそうに窓を見つめては泣いている公主を見るのが耐えられなくて、赤雲はいつもこうして来ては、公主の気を紛らわそうとしている。
「少し・・・な。どうした、赤雲?そんなに悲しい顔をするでない。私なら大丈夫じゃ」
でもいつも自分のことばかりを気にして、公主は寂しそうに笑う。
それを見るのが辛かった。
忘れてしまえばいい、あんな男のことなど。
消えてしまえばいい。
公主様を苦しめるような・・・私から公主様を奪おうとする男など。
自分の中に渦巻く醜い感情が日に日に強くなっていく。押さえ切れない公主への想い。
ばたばたばたっ
廊下のほうから、あわただしい足音がした。
ばたんっ
乱暴にドアを開けて、もう一人の弟子、碧雲が入ってきた。
「玉鼎真人様が訪ねてまいりました!」
息を切らせながら、嬉しそうに報告する碧雲。
「玉鼎・・・が?」
「はい!」
驚いて呆然とする公主の耳に、懐かしい声が聞こえてきた。
「遅くなってすまなかった。元始天尊様に言われた用事に少々とまどってい・・・」
玉鼎が言い終わる前に、公主は抱きついてその唇を奪った。
「会いたかったぞ。玉鼎」
公主の言葉に、ふっと優しく笑う玉鼎。
「もう俺のことなど忘れているのかと思ってた」
「忘れるわけないじゃろう」
抱きしめたら壊れてしまいそうな程に細い華奢な公主の身体。その雪のように白く美しい首筋に口付けた。
「綺麗だ・・・」
玉鼎のキスに頬を赤らめている公主の髪を掻きあげて、美しいその顔を見つめた。



「良かったね、公主様」
公主の部屋から出て、碧雲は赤雲に話しかけた。
その顔は、喜びに満ちていた。
「・・・そうね」
反対に、赤雲は少し青い顔をしていた。
嬉しいはずなのに・・・。公主様が幸せそうに笑ってる。それが、私にとっての幸せのはずなのに。
胸の中の醜い感情が、また一段と強くなったのを赤雲は感じた。
それが嫉妬だということに、彼女はまだ気づいていない。
気づかないほうが幸せなのかもしれない。

公主への想いが、恋であることに・・・・。

 











あと書き

誰が主人公なんだろう?自分でもよくわかんないです。しかも赤雲ちゃん、かんぺき自分はいってるし。これ裏なんでしょうか?あんまりそーゆーのなかったけど。




私、玉竜は苦手なんで、赤雲を応援しました(笑) がんばれっ! 君ならば竜吉押し倒しも許すぞっ(何様だって)
裏・・・なんでしょうか(本気で悩む・・・)
飛鳥さんから他に裏モノを二つ頂いてるので、じゃあ表にアップだ!(笑)(草子)






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