これが、私の食虫植物道楽のきっかけとなった植物です。
Utricularia sandersonii(ウトリクラリア・サンダーソニー)、たまに花屋さんの店先に「ウサギゴケ」の名で並んでいる花です。
原産地は南アフリカ共和国の高原地帯のごく限られた地域、湿った岩壁にへばりつくようにして生えています。絹糸のような地下茎をはりめぐらし、米粒ほどの大きさの葉がペタペタと地面に寝そべったまるでコケのような草です。
この植物は、タヌキモ科のミミカキグサという植物の仲間です。
ミミカキグサの仲間がどこで、どうやって虫を食べるのか、ただ生えている様子を見ただけでは、絶対にわからないでしょう。
掘り起こしてみると、ケシ粒程の小さな粒が地下茎のあちこちについています。粒の一つ一つは、実は小さな袋になっていて、袋の口にミジンコなどの微生物が触ると水と一緒に素早く吸い込んでしまうのです。獲物となった微生物は袋の中で窒息し、植物の栄養になります。
話をウサギゴケに戻しましょう。
この植物はシャープペンの芯くらいの太さの茎をふらふらと伸ばし、ウサギの頭のような姿の白い花を次々に咲かせます。1個1個の花はせいぜい1cm弱ほどの大きさですが、次々に咲くので、そう寂しくはありません。
育て方ですが・・・まず、浅い鉢にミズゴケで植える。鉢の高さの半分くらいまで水に浸かるくらいにしておく。腐らないように、ときどき水を替える。少なくとも毎日何時間かは日光に当てる。最低気温は5度から10度。最高気温は25度から30度・・・・・・うまく育てるのに必要な条件を思いつく限り、わざと口うるさく並べ立てても、たったのこれだけなのです。空調の効いたリビングの南向きの窓辺に置けば、これらは楽にクリアでき、殆ど一年中咲きます。
繁殖力や再生力はすさまじく、1円玉ほどの直径の株の固まりが2、3ヶ月でコーヒーカップ位の鉢一杯に殖えますし、たった1枚の葉っぱから芽を吹き、再生します。ミズゴケが腐らないように気をつけさえすれば、スープ皿くらいの大きさの平鉢一面に咲かせることもできます。
あまりに殖えやすく、育てやすいため、食虫植物マニアがあまり大事にしなくなり、皮肉にもかえって最近はやや品薄気味です。