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 琵琶湖をめぐる思いつきモロモロ    
 大量絶滅の話


<大量絶滅のはなし(1)>

絶滅と進化は表裏一体とも言えますので、ざっとみておきましょう。
まず、第一回目は地球の地質年代の呼び名について。


【地球の誕生】 --46億年前--

地球ができたのはおおよそ46億年ほど前であろうか、といわれています。
この辺にも議論はあるんでしょうが、とりあえずこのころには生物はいない
のでほっときます。
「いきもののはなし」には関係ありません。


【冥王代】 --40億年前まで--

そして、46億年前から40億年前までは、「冥王代(Hadean)」と呼ばれ
ています。冥王代にはいったいどんな地球環境にあったものか、このころの
地殻は基本的に保存されていません。地層うんぬんではなく、「地殻」さえ
残っていないと言うのですから、スケールが違います。

この時期には生物どころか「大地」も存在しなかったからでしょうか(?)、
ギリシャ神話の黄泉の国の王にちなんだ名前です。
ユーモアだったら結構なセンスですよね。


【太古代<地殻の安定>】 --25億年前まで--

ようやく地球の構造が安定したのか、火山性の岩からなる地殻が残るように
なった40億年前からを「太古代(Archean)」とします。昔は(これは数十
年の単位です)「始生代」と訳していたこともあったようです。アーキアン、
と発音します。

この時代には細菌やバクテリアの仲間が出現しており、現在最古のものとし
て38.5億年前の地層から生物の活動の痕跡と思われる物質が発見されて
います。


【原生代<大陸の安定>】 --5億7千万年前まで--

地殻が安定し、その上の大陸が安定すると「原生代(Proterozoic)」に入りま
す。ただ、大陸の安定する時期には地域的な差もあり、時期の特定が難しい
ため、キリのよい数字と言うことで25億年前から、とされています。


【顕生代<多細胞生物の出現>】 --現在まで--

化石に残るような「生」物が「顕(あらわ)」れたから「顕生代」です。
単純に意味から考えると、最古の多細胞生物化石が発見されるたびに、その
ぶん時代区分が変動することになってしまい、その開始時期については何を
基準とするべきか議論が戦わされています。


顕生代に入ってからのより細かい年代区分は、示準化石によって定められま
す。示準化石には、広い範囲に分布していた生物で、化石に残りやすく、特
定の時代のみに生息していたものが選ばれます。

ところで、この示準化石は、見方を変えると重要な事実を示唆しています。
特定の時期に生息していた、ということは、それ以前にもそれ以降にもいな
かった、ということです。
区分の終わりにはいつも、新しい種が急激に繁栄し、あるいは従来の種が急
激に絶滅する様な環境の変化があったのです。

つまり、これ以降に紹介する区分ごとに、規模の差はあれ、「大量絶滅」が
起こっているのです。
スケールこそ違え、「世紀末」には古代の生物も不安を抱いていたのでしょ
うか。(^^

次回は、顕生代の中の区分について触れてみようと思います。

《カンブリア紀》
《オルドビス紀》
《シルル紀》
《デボン紀》
《石炭紀》
《ペルム紀》
《三畳紀》
《ジュラ紀》
《白亜紀》
《第三紀》
《第四紀》




<大量絶滅のはなし(2)>

恐竜と鳥類の関係を考える前に、なぜ恐竜は絶滅し、鳥類は生き延びたか、
と言うことを考えます。

で、そのために、もう少し絶滅の話を続けます(迂遠ですね(^^;。


さて、今回は顕生代の中のもう一段下位の区分です。
ただ、数が多いので名前の由来などは簡単に。

《カンブリア紀》
《オルドビス紀》 ……17%
《シルル紀》   ……22%
《デボン紀》   ……21%
《石炭紀》    ……10%
《ペルム紀》   ……47%
《三畳紀》    ……14%
《ジュラ紀》   …… 7%
《白亜紀》    ……13%
《第三紀》
《第四紀》

カタカナの名前が付いているのは、おおむねその地層が最初に特定された土
地の名前(やその土地にまつわる何か)に由来するものです。
たとえば、カンブリア紀という名は、イギリスのウェールズ地方、カンブリ
ア山地に由来しています。

石炭紀、白亜紀などは鉱物に注目した分類、*畳紀、あるいは第*紀、と言
う分類など、本来は別々な区分だったのですが、各時代ごとにもっとも合理
的な基準を定め、それぞれの定義や名前を残したために、このように一貫し
ない名前が付いているのですね。


さて、それぞれの区分の後に数字がつけてあります。
これは何かというと、その時代区分の末期に絶滅したとされる海生動物の科
の数をパーセンテージで表したものです。

周期的な絶滅の話はいろいろな場所で目にすると思いますが、おそらくその
場合の数字はそれぞれかなり異なっていると思います。

なぜかというと、たとえば先ほどの数値は「海生動物」の「科」の数を下に
簡単に計算したものですが、同じ「科」であっても、たくさんの「種」を含
む場合もあれば一種だけしかそこに属さない場合もあります。

また、「種」を単位にしたとしても、個体数は種ごとに全く違います。
個体数までカウントしたとしても、当然ながら種ごとに個体のサイズは全く
違いますから、同じ一個体でも生物量はそれぞれ異なります・・・

というように、基準をどこに持っていくかで数値が全く異なってくるからで
す。で、あえて数字を出したのは何かというと、とりあえず

▼時代区分は地球の生物が多数絶滅した時期と重なる

ということを示したかっただけです。

環境が変われば生物相も変わる(=大量絶滅+新たな種の台頭)ので、地質
学的な変動の時期と生物相の変動の時期はおおむね重なるのは当たり前と言
えば当たり前のことになります。

また、地上と海中では環境の変動のタイミングも当然異なってきます。ただ、
海生生物の方が基本的に化石が豊富なのと、古い時代には海生動物しかいな
いことから、海生生物を対象とすることが多くなります。


そしてもうひとつ。
環境が変動すると大量絶滅が起こる、という事実は、我々には案外イメージ
しにくいのですね。

例を挙げましょう。
私の住んでいる名古屋では、冬には最低気温がマイナス数度まで下がること
があります。年に何度かは数センチの雪が積もります。

夏には、三十度台の後半までいきます。
名古屋の気象台は比較的緑の豊かな区にあり、しかも高台に設置されている
ので、ニュース等の数値と市街地の地表付近では最大5度くらい違ってくる
と思われます。
よって、市街地では40度を超える場合も普通にあることになります。

これを比べてみると、夏と冬では40度以上の温度差があるわけです。
40度。

環境の変動、と言う意味では、ものすごい変動が起こっているわけです。
環境問題の3番バッター(4番は今のところ環境ホルモンでしょうか?)と
いえば地球温暖化ですが、この数字からすれば、気温が2度や3度あがった
からなんだ!なんていうことも思ってしまいそうです。

人間もペットたちも、立派に生きているではないか、などと思うと、大量絶
滅と言うからにはどれほどの天変地異が起こったのか、と考えてしまうわけ
です。


しかし、生物全体から見れば、人間と一緒に暮らせる動物の方が遙かに少な
いのです。
ヒトは、確かに牙も持っておらず、毛皮もありませんが、非常に強力な調整
機能をもった生物であると言うことは確かです。

ちょっと昔の記憶なので数字は定かではありませんが、米軍の実験によれば、
被験者(成人男性)は全裸、湿度0、無風の状態で、上は摂氏二百数十度、
下は摂氏マイナス四十度あまりまで耐えられた、と言います。
むろん、長時間となるとまた別な障害が起こってきますが。


長いこと熱帯魚などを飼っている方なら一度くらいは経験したことがあると
思いますが、水槽で飼うようなほとんどの冷血動物、特に水生の生き物は、
温度調節機構の故障などで環境が変動していくと、じりじりと死んでいくの
ではなく、許容範囲を超えた瞬間に一気に死にます。

小型の熱帯魚に限って言えば、この場合の個体差はほとんどありません。そ
の種の限界を超えると、全滅です。一方で、まだ許容範囲にある他の種は、
全く元気に泳ぎ回っています。

この、元気に泳いでいる状態と全滅してしまう温度の境界線は、わずか1〜
2度、時にはコンマ数度の中に収まってしまうのです。

つまり、種の絶滅の急激さは環境の変化の急激さとは比例せず、

▼臨界点を超えた瞬間に、どれほど栄えていた種であっても一気に絶滅する
ことがある

のです。




<大量絶滅のはなし(3)>


種の絶滅の急激さは環境の変化の急激さとは比例せず、

▼臨海点を超えた瞬間に、どれほど栄えていた種であっても一気に絶滅する
ことがある、

というところで前回は終わってましたね。


次に言いたいこととしては、

▼むしろ緩慢な環境の変化こそが、「種」を交代させる、

ということです。


先ほどの話とだいたいそのままつながると思いますが、もう少し肉付けをし
てみましょう。

大量絶滅というとき、どうしても私たちは「カタストロフィ<大災厄>」を
思い浮かべてしまいます。
それは、自分たちが柔軟かつ強力な調整機能を備えているために、「簡単な
環境の変化ではびくともしない」からです。

わずか数度の温度の変化、あるいはpHの変動が、多数の個体に致命的な影
響を及ぼす、ということに実感がないわけです。

だから、大量絶滅などということが起こるときには、非常に強烈で破壊的な
災厄が環境を襲ったのだろう、と考えてしまいがちです。


しかし、そのように直接的なダメージによって大量絶滅が起こるとしたら、
そのダメージは生態系全体に深刻な影響を与えるでしょう。
生態系全体がダメージを受ける場合、食物連鎖全体が破綻し、そこでは生存
競争の激烈化ということはありえても、「多様化」はあまり考えられません。

これに対し、緩慢な環境の変化の場合、臨海点を迎えた種のみが唐突に絶滅
します。他の生態系・食物連鎖は従来と変わっていないのに、ある階層(ニ
ッチ)だけがぽっかりと空くことになります。
このようなニッチこそが、新たな種の出現にとって必要なのでしょう。


さて、緩慢な環境の変化こそが新種を誘発するというだけでは、大量絶滅を
説明したことにはなりません。
多少の環境の変化はどんなときにもありますから、大量に種が消滅するよう
な環境の変化というのは、やはりそれなりに原因がなければおかしいわけで
す。

そして、大量絶滅の周期性、ということが報告されたのが1980年代のこ
とでした。
古生代から鮮新世の海洋生物の変動を調査・解析したところ、大量絶滅が起
こった時期には、2000万年から3000万年(約2600万年)の周期
性が見られた、というのです。

このような長い周期を持つ現象といえば、まず思いつくのは天文学的な運動
です。

我々の地球を含む太陽系全体も銀河系の中で公転しています。
それで、2600万年おきに太陽系が彗星雲の中に入り、その彗星の影響を
受けて生態系が乱されるのだ、などといった説明が試みられました。

しかし、その後の天文学の発展は、そのような仮説に適合するような証拠を
ほとんど発見できませんでした。
そして、大量絶滅の周期性について、意外なところから新たな仮説が提唱さ
れてくることになります。

それは、地球内部の構造が周期的な絶滅の原因である、というものでした。


地球の核は、内核と外核に分かれており、内核は半径1200mの鉄とニッ
ケルの合金からなり、外核は鉄ニッケル合金が溶融したものに、酸素あるい
は水素のような軽元素が溶け込んでいると考えられています。

この外核は、内核から熱を受け取り、上昇して外核と下部マントルの境界、
D"(ディーダブルプライム)層に熱を供給します。
冷えた液状の鉄は再び下降し、全体として対流が起こっています。

鉄ニッケル合金は電磁流体であるため、対流はそのまま渦動運動として地場
を生じることになります。これが、いわゆる地磁気となるわけです。


さて、D"層には熱が与えられたわけですが、D"層は不均質な構造であり、
どうも外核のようには簡単には対流しないようです。
その結果、D"層には大量の熱が蓄積され、膨張してやがて巨大なマグマの
泡を形成します。

このマグマの泡はマントルの中をゆっくりと上昇し、やがて地殻付近に到達
し、そこで地殻に大量の熱と圧力を与えるのです。
このプロセスは数十万年から数百万年かけて進行し、その間地表にはじわじ
わと、しかし確実に環境の変化が生じるでしょう。

地殻の変動は、地上よりも海中においてより大きな影響を及ぼすでしょうし、
このマグマの泡がたまたまプルームに乗ってそのまま海底近くまで上がって
くるようなことがあれば、さらに海域全体の環境を大きく変動させると考え
られます。


このような仮説の補強材料としては、地球の磁場の逆転のデータの解析があ
ります。
地磁気は、実はわかっているだけでもこの1億年に100回以上逆転してお
り、最近400万年でも10回以上あったとされています。

地磁気は外核という電磁流体の対流によって生じている、と先ほど説明しま
したが、D"層に熱が蓄積されると、内核と外核の温度差が少なくなり、対
流が弱まります。

対流が弱まるということは渦動運動が弱まるということでもあり、このよう
な状態では、ちょっとしたきっかけで対流の方向が変わってしまいます。
つまり、D"層に熱がたまっていると、地磁気が逆転しやすくなるのです。

そして、地磁気の逆転の分布を調べてみると、2000〜3000万年周期
で逆転現象が頻発する時期がある、ということが見えてきます。



いうなれば、二千数百万年周期の「バブル崩壊」が、地表では生物の大量絶
滅となって現れているわけですね。

あるいは、3000万年に一度地の底から地上に現れて、世界中の生きとし
生けるものを等しく死の淵へ誘う存在、なんて表現もできるかも・・・




<絶滅のはなし(結)>


以前の配信で、

▼地球上では周期的に環境が大きく変化する時期がある

こと、そしてそれによって

▼海水域の生物のうち、種によっては壊滅的な打撃を受ける

であろうこと、を書きました。


もともと陸上では季節や昼夜による気温の変動が大きく、またちょっとした
条件により環境が大きく変わるので、そのような変化に対応できる能力を備
えた生物でなければ生きていけません。

池や湖、川などの陸水系も、大雨や干ばつなど、海に比べればはるかに環境
の変動が早く、しかも大きいといえます。
従って、そこにすむ生物にもそれなりの対応能力が備わっていなければなり
ません。

よって、陸上や陸水系の生物相は、前述のような周期的な環境変動にも比較
的よく耐え、影響をあまり受けないものと推測できます。

このあたりはちょっと詭弁のように感じるかもしれませんが、絶えずおそっ
てくる災厄というのは、ひどく間をおいておそってくる災厄よりもかえって
備えやすいものです。
台風に備えるのは、地震に備えるよりも簡単で、
地震に備えるのは、世界の破滅に備えるよりも簡単なのです。

進化論的な言い方をすれば、環境の淘汰圧が常に高ければ、より効率的な個
体群が優勢になり、効率的でない系統は割合を減少させますが、淘汰圧が緩
和されると、多様化が進んでしまい、それがかえって死亡率を高めることに
なる、という感じでしょうか。

もうすこし理論的に説明するには、確率論とコストの問題に触れなければな
らないのでしょうが、そこまではちょっとご勘弁を。


陸上の生物相に致命的な影響を及ぼすものとしては、気候の変化に伴う植生
の変動、があります。
氷河期の到来や火山活動の活発化なども、最終的にはこれに類する影響を及
ぼすでしょう。

気候の変動そのものは、それほど動物に影響を及ぼしません。
過酷な熱波や酷寒の寒波が到来したとしても、それでその地方の動物が全滅
する、などということはまずないのです。

しかし、植物はそうはいきません。
毎年の稲の作況指数などを見ていると、我々にとっては「今年は雨が多い夏
だったな」、というくらいのことでも、20%も収穫が減少することがあり
ます。
樹木の年輪の生育幅で、その年の天候を推定できる、という話も聞いたこと
があるでしょう。

植物そのものの生育具合はもちろんのこと、花の数や葉のしげり具合、果実
の大きさなど、ちょっとした気候の変動で大きな影響を受けます。

そして、それらはいずれも動物の餌となるはずのものなのです。
このことから、白亜期末に恐竜が絶滅したのは、植生が変わり、恐竜の食べ
られる植物が減ったためだろう、という仮説を立てた学者もいます。

NHKスペシャルの「花に追われた恐竜」という特集もこの仮説を取り上げ
たものです。
しかし、このあたりの論争については世間にたくさん本が出ていますので、
ここまでの話で興味を持たれた方は、そのような本を当たってみてください。

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