4.考察

3.1の実験結果では、平均風速は95型と80型でほぼ等しいという結果がでたが、これは、風速が増大するときには95型の示す値の方が大きく、風速が減少するときには95型の方が小さくなるので平均するとほぼ等しくなるものだと考えられる。また、平均風速が小さいときに80型より95型の方が示す値が大きくなるのは、80型の起動風速が大きいために、プロペラが80型が静止しているのにも関わらず95型のプロペラは回り続けているのからであると考えられる。このため、風の弱い日の日平均風速は95型の方が大きくでると予想される。
次に最大瞬間風速については、95型の方が若干大きな値を示すことがわかるが、特に、平均風速が小さくなるほど95型の示す値が大きく80型に比べて大きくなるという傾向がみられた。これは、風速が小さくなると示す値が真の風速の63%に達するまでの時間が長くなるので、80型と95型の風速に対しての応答の差が顕著になるためであると考えられる。
突風率については、最大瞬間風速と同様に95型の方が若干大きな値を示すが、正規分布により近い形になる。これはそれぞれの測器について最大瞬間風速を自らが観測した平均風速で割ることにより、個体差をなくすることができたからであると考えられる。また、平均風速が大きくなると分散が小さくなるのは風速が大きいほど応答が早くなり、真の風速と指示値の差が小さくなるためであると考えられる。
3.2.1、3.2.2の実験から80型は95型に比べて慣性モーメントが10倍、同一風速に対しての発生トルクは2倍であることがわかった。従って回転加速度は、0.5倍ほどになる。また、ある風速に対する定常の回転速度は80型は95型の約0.8倍であるので、単純に考えれば0.63倍の応答になる。しかし、3.1の実験では、平均して80型は95型の0.93倍にもなった。そこで、3.2.1、3.2.2の実験から得られたデータを用い、3.3で数値計算により距離定数と真の風速に対する風速計の応答を求めてみることにした。
数値計算から求めた95型の距離定数は、実験で測定されたものと異なる値になったが、これは95型のプロペラの慣性モーメントが小さいため、プロペラカバーの慣性モーメントを求めたときの誤差が80型に比べて大きく影響したためだと考えられる。
変動する風を与えたときは、ほとんどの条件で80型の平均風速の観測値が95型に比べて大きくなった。しかし、自然風を観測したときのデータはどちらもほぼ等しかった。

これは、自然風の場合は風向の変動もあるので風向に対する応答の速い95型が80型に比べて風を正面で受けることができるため、80型よりも大きな風速を観測できるからだと考えられる。

正弦波を与えた場合、80型、95型ともに真の平均風速と最大瞬間風速の観測値との関係はほとんどないことがわかる。最小瞬間風速の観測値は平均風速が大きいほど実際に近い値になることがわかる。突風率を変えると突風率の小さな時は平均風速の観測値が実際よりも小さくなり、大きくなると実際よりも大きくなることがわかるが、これはこの数値計算で平均風速が3m/sとしたため、変動を大きくすると減速トルクが小さな領域に風速計の回転速度が入ってしまうからだと考えられる。従って平均風速をより大きな値にして最小風速が大きくなるようにすれば、このような差は小さくなっていくと考えられる。また、風速計の応答が加速時よりも減速時の方が速いように見えるが、これは加速するときは最初の方でトルクが弱く、真の風速と観測値の差が小さくなってもトルクが弱まってしまうが、減速時には最初の方でトルクが強く、真の風速と観測値の差とは無関係なのでこのようになってしまうと考えられる。
また、突風率が大きくなると95型と80型の最大瞬間風速の観測値の比が大きくなることがわかる。さらに、周期との関係であるが、これも周期が短いほど95型と80型の瞬間最大風速の観測値の比が大きくなっていることがわかる。すなわち、95型の方がより早い風速の変化に対しても応答がよいといえる。
次に方形波を与えた場合であるが風速0からの場合でも風が吹いている場合であっても95型は3s程度の突風に対しては充分に追従していることがわかる。

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