3.2 プロペラの物理的特性の比較

<目的>

この実験によって80型風向風速計と95型風向風速計の慣性モーメントと風の発生するトルクを知ることにより、プロペラの慣性モーメントが自然風の観測データに与える影響を物理的に考察できる。また、プロペラの回転速度が小さくなるときのトルクについて調べることにより、減速時のプロペラの挙動を考察できる。

3.2.1 プロペラの慣性モーメント

<原理>

プロペラの回転軸に一定のトルクを加えることによってプロペラの回転速度は上昇していく。回転速度の小さいときは空気の摩擦が小さいので、

T=I×dω/ dt+μ

T;トルク

I;慣性モーメント

ω;回転角速度

μ;動摩擦力によるトルク

すなわち、

dω/dt=(T-μ) / I

という式に従う。よっておもりの重さを変え、dω/ dtをTの一次関数として最小二乗法で係数を求めることで慣性モーメントIを求めることができる。この最小二乗法で求めた回帰直線の式を

Y=Ax+B

ただし、Y=dω/ dtx=T

とすれば、慣性モーメントIは、
I=1 / A また、同時に軸周りの動摩擦によるトルクμも求まり、

μ=-B / A

となる。


<方法>(図3.13参照)

(1) プロペラの軸を取り付けているねじを長いねじに取り替えて軸を延長する。これは おもりを取り付けるための糸にプロペラが当たらないようにするためである。ねじに 糸を取り付けその先端におもりをつける。また、プロペラの回転による空気抵抗と周 りの空気の流れを軽減とするためプロペラにカバーをつける。カバーの性能は図3.14 に示す。このカバーの慣性モーメントはあらかじめ材質の面積密度から計算する。
(2) あらかじめおもりをつけた糸を軸に巻き付けておき、おもりを放すとプロペラの軸 に一定のトルクがかかる。このとき軸にかかるトルクは、

T=rmg

r;ねじの半径

m;おもりの質量

g;重力加速度

となる。
回転速度は、風向風速計の風速出力に電源回路を接続し、電気信号を取り出し、記録器に記録する(図3.15参照)。
(3) おもりの重さを10種類変えて1種類あたり10回、この実験を繰り返す。

図3.13 慣性モーメント測定用実験装置

図3.14 プロペラカバーの効果

図3.15 風速出力取り込み回路
ただし、この図でいうケーブルとは風向風速計の入出力ケーブルであり、80型のケーブル2、3はそれぞれ出力、アース、95型のケーブル1、2はそれぞれ出力、アースである。また80型のケーブル1と95型のケーブル3には+15V電源に接続される。

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