一言書評 〜エスカフローネの感想〜


エスカフローネ(2000/07/15)

 薄かったこともあるのですが、読みやすくて一気に読み終えてしまった劇場版ノベライズ。これまた凄いエスカフローネの展開でしたよ、ええほんと^^;。

 まず最初に。TV版天空のエスカフローネが好きだった人に、この作品がどう捉えられるのか、非常に興味深い。何故なら、タイトルと登場人物名が同じであること、若干、最低限の世界観が似ていないこともないことを除けば、これは別作品であると言っても過言ではないほどの、リメイク、ですねいわば。登場人物は、神崎ひとみも、バァンも、アレンも、ドライデンも、ミラーナも、メルルも、フォルケンも、ディランドゥも、ジャジュカやゾンギまでがしっかりと出てはいるのですが、微妙に、或いは明らかに、キャラの性格や考え方、作品のテーマでもある“想い”の方向性までも違う、「天空の」の後日談や前日談、外伝などでも全然無くて、完全にアナザーワールドで展開されたパラレルストーリーです。ひょっとしたらこんな運命もあったのかも知れない。想いが形作る世界・ガイアでは、ひとみの想い一つで、こうもガラリと展開が変わってしまうのだ。そう言わんばかりの激しい変わり様。私は小説が最初でしたが、劇場で観てもさぞやびっくりすることでしょうなぁ^^;。

 もうひとつ言えるのは、TV版「天空の」が“光のエスカフローネ”であったとしたならば、こちらの作品は“闇のエスカフローネ”であると言えると思います。見終わった後爽快感すら与えてくれた明るい感じのTV版は、結局のところみんな幸せになれたと思うのですが、今回は凄惨極めるという感じで、ほとんど救いようの無い、どうしたらいいか想いも巡らせられないほどの…。ひとみは自棄的で自分を消そうとするし、バァンは怨念に生きてるし、ミラーナは男勝りで性格正反対だし、フォルケンやジャジュカに至っては、ラストは唖然絶句…。ディランドゥは生まれも育ちも設定を一から作り直されてるし、同じだったのはあの狂気だけってなもんだし。それとTV版では、作品の魅力のひとつでもあった“ガイメレフ”という存在の設定が、根こそぎ削除されてました。戦いはすべてガイメレフ戦ではなく、竜神人の血が呼び起こす<魔力>によって展開されていき、力を持たぬアレンなどは端役になって行かざるを得ないという…。ディランドゥの発掘された赤いガイメレフと、黒のエスカフローネのみが“ロボットアニメ”としての痕跡をわずかに残してたかな?

 「あたしなんか、消えちゃえ!」で始まる劇場版エスカ、「最低だ、俺って…」で始まる劇場版エヴァ、どこか通ずるものを感じてしまいますね。作品全体もひとみやシンジの望んだ世界そのものへと繋がって行くし…、救いの無いほどみんなが死んでいくトコも…。制作者の意図はまだまだ見えない。次は是非劇場版のアニメで観て、しっかりと捉えてみることとしよう。