一言書評 〜ブギーポップシリーズの感想〜


 電撃文庫から飛び出した不思議な不思議な“不気味な泡”の物語。テレビシリーズが難解なので、同時並行で読み進めてる原作小説版からの情報も加えて、様々な角度から読み解いて行きたいと思います。


 小説
  ブギーポップは笑わない “Boogiepop and Others”
  ブギーポップ・リターンズ VSイマジネーター Part1
   VS Imaginator PartI “SIGN”
  ブギーポップ・リターンズ VSイマジネーター Part2
   VS Imaginator PartII “PARADE”
  ブギーポップ・イン・ザ・ミラー 「パンドラ」
   “Does anybody really know what time it is?”
  ブギーポップ・オーバードライブ 歪曲王 “HeartbreakerII”
  夜明けのブギーポップ
   夜明けの口笛吹き“The Piper at the Gate of Dawn”
   ブギーポップの誕生“The End is the Beginning is the End”
   霧間凪のスタイル“Style”
   天より他に知る人もなく“God Only Knows”
   パブリック・エナミー・ナンバーワン
    VS Imaginator PartIII “Public Enemy No.1”
   虫“The Bug”
   夜明けの口笛吹きREPRIZE“The Piper at the Gate of Dawn "Reprize"”
  ブギーポップ・ミッシング ペパーミントの魔術師
   “Peppermint wizard, or Rize and fall of poor innocent puppet”
  ブギーポップ・カウントダウン エンブリオ浸触
   “The EMBRYO”1st half -erosion-
  ブギーポップ・ウィキッド エンブリオ炎生
   “The EMBRYO”2st half -erupsion-
  ブギーポップ・パラドックス ハートレス・レッド
   “HEARTLESS RED-THE UNUSUAL CONTACT OF VERMILION HURT & FIRE WITCH”
  ブギーポップ・アンバランス ホーリィ&ゴースト
   “Holy and Ghost are steeped in plastic crimes”

  ビートのディシプリン SIDE 1 [Exile]
   “<BEAT'S DISCIPLINE> SIDE 1 Exile”

 アニメ
  ブギーポップは笑わない Boogiepop Phantom
 映画
  ブギーポップは笑わない Boogiepop and Others
 コミック
  ブギーポップ・デュアル 負け犬たちのサーカス
   BOOGIEPOP DUAL Losers' Circus


ビートのディシプリン SIDE 1(2002/04/16)

 繰り返すようだが、このシリーズにおいて“ブギーポップ”は主人公ではない。今回がその最たるものであるが証拠に、結局出てこなかった^^;。まあ今回は大きな戦いの序章というイメージがあって、この何冊かあとには登場人物総登場で何某かの決着が着くような着かないような趣がある。そしてその総決戦のときに振り返ってわかりやすいように、またまたここにメモリーしてみたいと思う。

ピート・ビート
世良稔。本編の主人公。かなり悲惨な役回り。
ディシプリン=試練を与えられる。見事乗り越えられるか?
統和機構の合成人間。能力は<NSU>。
最後の奥の手には<超加速の鼓動=モルト・ヴィヴァーチェ>があり、
これは誰にも知られていない。
浅倉朝子
能力名<モーニング・グローリー>を発現させたMPLS。
ピート・ビートのクラスメイト。ビートが倒した男の娘の友達。
過去に自分の能力について、“VSイマジネーター”に登場した
『飛鳥井仁』に相談したことがある。
カーメン
全てが謎。これを追いかけることがビートのディシプリン。
いまのところ何のことかさっぱりわからず。
何人かがその正体を知ってるらしい。
フォルテッシモ
激闘編<エンブリオ>で大暴れしたご存じ“最強”。
ピート・ビートにカーメン探りの仕事を押しつけた人。
つまりはビートにディシプリンを与えた迷惑な奴。
甘々のクレープが大好物らしい。
リィ舞阪という名もあるがほとんど使われない。
モ・マーダー
佐々木政則。ピート・ビートが“叔父貴”と呼んで慕う殺し屋。
統和機構でビートの戦技指導担当だった。ビートの師匠。
来生真希子=フィア・グールと霧間凪の戦いに巻き込まれ
死んでいったのは既に語られたが、どうやらここにも
『カーメン』が絡んでいたらしい。てわけでビートが引き受けた。
ラウンダバウト
奈良崎克巳。能力名は<迂回>という意味。
実に回りくどいやり方で敵を窮地に導く。
催眠暗示で『油断』を誘発させることができる。
ビートと近い能力を持っていた。
レイン
ラウンダバウトに指示を出していた謎の女性。
その他一切不明。フォルテッシモとは面識あり。
飛鳥井仁
冒頭や幕間で登場。VSイマジネーターでも登場している。
今回はペパーミントの魔術師・軌川十助と雑談していた。
カーメンについても知っているらしい。
浅倉朝子をカウンセルした経緯あり。
リセット
雨宮世津子。能力名<白鯨=モービー・ディック>。
コードネームは全てを無かったことにする『Reset』の意味。
最強フォルテッシモと並ぶ統和機構で最も恐れられる殺し屋。
発射したもの何でもの、威力を自在に操れる。
拳銃が好きなので拳銃で豆鉄砲からロケット砲クラスまでの
威力を使い分けることが出来る危険な存在。
既に何度か登場していると記憶。今回はビートの抹殺に来た。
パール
変身能力を持つ統和機構の合成人間。
現在は統和機構を裏切り、逃げ延びている数少ない存在。
統和機構に敵対する組織『ダイアモンズ』の中核メンバー。
その能力から<百面相=パールズ>とも呼ばれる。
ビートや朝子の通う学校の生徒と入れ替わり諜報活動をしていた。
ピート・ビートを救い出し、ダイアモンズに導く。
イナズマ
激闘編<エンブリオ>で最強フォルテッシモと互角に渡り合った
過去を持つ、今では隻眼のサムライ・高代亨。
剣の極意とも言うべき線を見切る能力も健在。
現在は謎の存在『提案者』として活動しているらしい。
浅倉朝子を救い出し、提案者の下へ導く。

 というわけで懐かしい名前も続々登場する中、いつものメインキャストは全く関わらないところで物語は進行している、という状態である。おそらくSIDE2にてさらにたくさんの人物が登場し、徐々に関係が明るみに出てくると共に、ブギーポップの再登場もあるかも知れない、そんなところである。

 今回もちょっとだけエピソード紹介。絶体絶命の危機から助かった、というのは自慢にならない、というお話。要するに決定的な失策を犯した結果として絶体絶命の危機に陥ったわけで、自分が危ない目に遭うことがわからない、というのは想像力の欠如である、というのである。自分が今、どういう環境にいるかを考えれば危険予知(KY)は出来るし、まったく自分が知らぬ方向からの不意打ちの攻撃であったとしても、覚悟が出来ていればそれは危機ではなく、攻撃してきた相手に近づくための、自分が知らないことを知っていくための段階に過ぎなくなる。その積み重ねの繰り返しを、生きることと言うのではないか、そういうわけである。それでもやっぱり絶体絶命の危機は訪れるのだから、生き続けることの出来ない人も出てきてしまうというのである。うむ納得。難しくとも真実であり、人は常に危険予知して無意識の警戒を続けて行かねばならないのである。ここで危険予知する警戒心を無くさせ、油断させるのがラウンダバウトであり、想像力が飛躍的に高まったのがモーニング・グローリーであり、絶体絶命の危機を迎えたのがピート・ビートであった、そういうお話なのである、これは。

 だいぶわけがわからなくなってきているのだが、統和機構、統和機構の裏切り者(個人)、統和機構の敵対勢力(組織)、提案者(??)、霧間凪と仲間達、ブギーポップという構図がわかってくると、読み進めやすくなると思うのだが、やはり纏めてみないとわからんもんだねぇ^^;。以前の作品も復習しつつ、SIDE2も楽しみにしよう!


ホーリィ&ゴースト(2001/10/20)

 『しかし現実ってゆーヤツは誤解とすれ違いでできているものなのさ!ほら!』
 『君は自分が周囲に対して何の影響力のない人間だって自分で決めつけ過ぎてやしないかい?』

 こんな語りかけがいつもながらに全編に流れ往くブギーポップシリーズ。今回は登場人物にスポットを当てて紹介してみよう。

 「スリム・シェイプ」江守譲。世紀の大悪党。どこか憎めない包帯イタチ。
 「ホーリィ」濱田聖子。“聖”の字からホーリィ。
 「ゴースト」結城玲治。“ゆう”き“れい”じ=ゆうれい=幽霊でゴースト。
 「タル&ジェス」スリムの仲間。傭兵上がりの凸凹コンビ。
 「ロック・ボトム」今回の“世界の敵”?謎の存在。
 「寺月恭一郎」故人。元“世界の敵”歪曲王。今回のやっかいごとを持ち込んだ人。
 「宮下藤花」いつもぼーっとしてる女の子。スポルディングのバッグをいつも持ってる。ホーリィ&タルに誘拐されてしまう。
 「霧間凪」本編の主人公。正義の味方。スリムの親友。
 「ブギーポップ」物語全編の歴史の立会人。主人公ではない。“世界の敵”の敵。敵と見なせば容赦なく斬り捨てる。

 まあ、こんなひとたちが活躍する物語だ。他にも何人か、統和機構の暗殺者っぽいのとか、ロック・ボトム渡されて右往左往してしまう小者とか、いっぱい出てくるのだが、とりあえず今回は「ホーリィ&ゴースト」、この二人の活躍を追っかけて見ようというのが話の全てだ。凪もブギーポップも脇からちょっとだけサポートしてくれてたりする。

 “明日”っていつ?翌日になったとき?そのときはまた“今日”になってるだけ。ではさらに翌日?それは昨日から見たらただの“明後日”だ。もし人が“きっといいことがある”という“明日”に出会えるときがあるとしたら、それはいったいどんなときなんだろうね?

 この答えを見つけたとき、ホーリィはどんな苦難にも立ち向かうことが出来た。それこそが“ロック・ボトム”が、“スリム・シェイプ”が教えてくれた、真の勇気なのかも知れない。頑張っていこう!明日に向かって。ホーリィ&ゴースト!!


ハートレス・レッド(2001/04/14)

 今回もまた、いろんな過去の作品が微妙に密接に絡んでくる。時間軸的にはかなり前の話。“炎の魔女”を初めて名乗った凪が“電撃”で活躍してくれますね^^。新登場の九連内朱巳というのが、炎の魔女と競い合う“傷物の赤”であったり、『パンドラ』の少年少女の一人・辻希美と友達だったり、実は『エンブリオ』の“最強”の知り合いだったり、敵で出てきた合成人間も、『エンブリオ』の端役だった人物に傅いたり、さらにその向こうに見え隠れしてくる謎の人物=真の“世界の敵”は『VSイマジネーター』に出てくるし。これはもう、過去の作品をもう一度引っぱり出すしかない!って勢いですね^^;。本当に整理するのが大変になりますブギーポップ。さて、いずれは整理できるかな?^^;

 あとがきでも本編でも、またしても語ってくれてる上遠野氏ですが、今回の主題は“ハートレス”のタイトル通り、“気持ち”“心”。難しい主題でもあり、現に良く直面するテーマでもありますね。今回はほんとー印象に残る炎の魔女=霧間凪のセリフを紹介してみましょう。

 「いい加減にしろ!なにが“星の下に生まれついた”だ!
  つらいことなんか誰にだってある!自分だけが不幸だなんて−自惚れんじゃない!
  “自分なりに真剣にやっていた”なんて恥ずかしげもなくよく言えたもんだな!

  そんなことは当たり前だ!何をやってもうまく行かないなんて、なんでもかんでも
  うまく行く方がおかしいんだ!ほとんどのことは失敗の繰り返しで、それでもみんな、
  それを承知でやらなきゃならないことをやっているんだ!

  心についた傷は消えないとか言うくらいなら、そんな“心”なんかいらない!
  一回ぐらいなくしただけで取り返しがつかなくなるものが人間の中心にあるなんて、
  そんな考え方をオレは絶対に認めない!」

 まだまだ延々と続く凪の珍しい演説ではありますが、ほんとにそうなんですよね! こんな“思い”が山ほど包含されているブギーポップ。やはり観るべきでしょう読むべきでしょう。是非ともご覧下さい!絶賛します!!


エンブリオ浸触・炎生(2001/01/27)

 魔術師が“最弱”であったとすると、このエンブリオに出てきた“フォルテッシモ”が文字通り“最強”。自他共にそう呼んでいるのだからしょーがない。彼ともう一人の“最強”がこの作品を紡いでいく。穏やかに過ぎ去った静かなアイスクリームを通じた戦いと対局するように、ひたすらに苛烈に戦い抜く最強VS最強。名前だけが登場した“ユージン”天色優を追い求め、中枢をも適当に利用しながら強き敵を捜すリィ舞阪=フォルテッシモの前に立ちはだかったのは、“エンブリオ”によって能力を開花させた“サムライ”高代亨=トール=雷の神=“イナズマ”!

 エンブリオと会話した者に、どんな未来が待ち受けているのか。夜明けの中でモ・マーダーが創り出した小さな小さな“虫”は、ここへきて過去最大級の“ブギーポップ激闘篇”を創り上げた。白熱する戦闘シーンは小気味良い感じでいいっす^^。暫く新作出てない処を観ると、これにて一度終焉なのだろうか?シリーズも他社でどんどん発表してるし。それでも私は上遠野氏に、ブギーポップの続刊を期待したい。


ペパーミントの魔術師(2001/01/27)

 <tender><seeker><hopper>三人の視点で描かれる“最弱”の合成人間、アイスクリームを作り続ける魔術師、軌川十助の物語。イマジネーター、歪曲王やスプーキーE、スクイーズなどの名前も飛び出す。でも、いつどこに出てくるかは直前までわからない。凪や藤花、正樹も綺もアイスクリームを通して少しだけ関わってくる。でも何が強くて何が弱いのかもわからない物語。人にとって“痛み”というのは、何なのだろう?それは絶対に必要なもの。無くなったらどうなるのだろう?それは果たして世界の危機なのだろうか?アイスのおいしさと痛み、読み解いていくとなかなかにおもしろいカップリングだと思いますよ^^。最弱こそが最強、そういう?お話です。

 いつものあとがき、“失敗を恐れずに…?”も面白い。是非ご覧あれ。


夜明けの口笛吹きREPRIZE(2000/06/24)

 こうして長い短いエコーズとの対話は終わったわけだけど、ブギーポップの不思議な戦いは続いていく。実はこの話、ゾーラギの壊した世界とのことなので“歪曲王”との対決の途中だったらしい。話はパラレルに進んでいき、結局ひとつに集約することはできないと思わせつつ、やはり元へと戻っていく。エコーズは何処にいても、しっかりと見守ってくれているようだ。これからも、実はそれ以前からも。それでも尚、ブギーポップは超然としてるらしいけど。

 今回のあとがきは、ブギーポップとの出逢いと、その一目惚れの話。一目惚れにはそうなるための素養が元々自分の中にあるわけで、いきなりということはひとつも無いという。その通りだなぁと思う。自分の興味の無いものには、一目惚れするわけが絶対に無いからだ。自分が今まで築き上げてきたものの延長に、それの集大成的なものに、人は本能的に惹かれて、それをすなわち一目惚れというのだ。世の中良くできているものだ。そんな毎日に振り回される人は、やはり幸せなのだろう。黒い影=ブギーポップに付きまとわれるのが果たして幸せなのかはわからないが。また次巻、アイスクリームの魔術師に期待しよう。


虫(2000/06/24)

 考えてもしょうがないものとして、無理矢理忘れようすること。それがいずれ災いとなっていく。恐怖喰らい=フィア・グールとなった来生真希子は手に入れてしまった大きすぎる力=災いを利用しようとして、結局は振り回され、ブギーポップに、そして霧間凪に破れていく。その中に飛び込んだ虫、合成人間モ・マーダーも、自分の不幸を虫に例えて、不思議な、自分でも理解できないような運命を辿っていく。最後には理解できたわけだが。いやそもそも自分で理解できるような運命など元々存在しないのだろう。ただそれを受け入れて毎日を過ごして行くしかない。来生真希子も、その哀れな虫の一匹だったわけだ。案山子と鳩の話から始まったこの奇妙な物語も、結局は凪の成長物語として受け取ることも出来る。ブギーポップもいつもながら容赦なく、相手にトドメを刺してくれた。バラバラに進んできた“夜明け”の話が、最後にひとつになってくれて、すっきりとした仕上がりになっている。

 「世界はひとつの方向を向いているわけじゃない。それこそ無数の虫の群のようにてんでばらばらな方に進んでいる。それがひとつの大きな動きになることもあれば、今回のように、すべてが噛み合わぬまま、ただ状況が潰れてしまうこともある・・・それだけさ。」それを無くすために、凪は奔走するし、ブギーポップはただ様子を見てる。それだけなんだけど、そこにこそ事態の核心があると思う。そう思わさずにはいられない、ブギーポップの語り調に翻弄されて、やっぱり核心が見えない自分がいる。まずは事なきを得た霧間凪は、父とモ・マーダーの関係を知ってか知らずか、今日も戦い続けている。


パブリック・エナミー・ナンバーワン(2000/05/07)

 英語版副題でわかるように、小説2作目“VSイマジネーター”の第3部・前日譚である。霧間誠一は、やはりこの作品の中心人物のようだ。“イマジネーター”となる水乃星透子ともここで出逢っているし、書面のみながら、どうやら後に語られる“エンブリオ”フォルティシモとも交信があったらしい。社会の敵たる彼が影響を与えたのか、それともきっかけに過ぎなかったのか、或いは彼に関係なく事件は起きるべくして起きたのか、それはわからない。わからないけど凪を初めとする彼の周囲の人たちに多大な影響を残して去っていったわけだ。

 あまりに断片的なインターミッションゆえ、ここまでしか今はわからない。先を読み進めることとしよう。


天より他に知る人もなく(2000/05/07)

 どうでもいいことなんだが、昨日慌ててビデオ撮ったら“Phantom”を消して重ね撮りしてしまったよ…。ショック…。前回振り返って凪の過去のシーン見返して、そのままにしてたんだよね。慌ててたにしても、頭出しくらいするよなぁ普通。まあいいけど…。おかげで消え去った9話〜12話はいずれ購入することになりそうだ。

 久々に懐かしの若々しいブギーポップがひたすら語るシナリオ。相手は“ブギーポップの誕生”でちょっとだけ登場した来生真希子女医。黒田が凪のために持ってきた薬が招いた悲喜劇。世界の敵は至る所に存在する。普通すぎることは、何か特別なことが起きたときに流されるだけになるから、結果的に“暴走”してしまう。常に自分というものを持っていれば、それを冷静に受け止めることが出来る。普通すぎる人が考えるほど、世の中は普通ではない。危険と、普通すぎる人を暴走させる芽は、常にどこにでも潜んでいる。だから普通の人間は世界の敵になる可能性を常に秘めている。

 わかりやすくわかりにくいブギーポップの独白は、やはり真実を秘めていると思う。自分をしっかり持つことで、ブギーポップを敵に回さないようにしようと思う。


霧間凪のスタイル(2000/04/23)

 それほどの大事件でもなく、かといってただ事ではない事態。でもそれが日常を表すのに一番似つかわしい、そんな存在が本作のもう一人の主人公、炎の魔女・霧間凪。彼女の生い立ちは、ある程度前編のブギーポップ誕生秘話でわかったが、それを読んだ後であるから尚更、その“生き方”というのが理解できる。一種の病気と言うけれど、これも黒田慎平の残した遺産なんだと思う。そう、霧間凪の存在自体が。彼女は今も、黒田の事務所跡で彼の面影を見つめながら生きている。

 この話は、“VSイマジネーター”の後日談に当たる。凪と共に暮らす織機綺のその後の姿が描かれているからだ。表情の無かった彼女にも明るい性格が着実に育っている。やはり凪の存在が大きいのだろう。“歪曲王”との戦いを終えた羽原健太郎も、いつも通り凪とともに居る。彼女にとっての黒田のような存在にはなれないだろうけど、炎の魔女が心許せる存在であることに違いないらしい。これが霧間凪の生活の、人生のスタイル。今まで読んできた作品でも、今後の作品でも、凪を見ていくときに忘れてはならないエピソードだったなぁと思う。


ブギーポップの誕生(2000/04/23)

 この作品、本当に思いもよらないところに“統和機構の合成人間”が潜んでいる。本編では、物語の根幹たる“ブギーポップの誕生”の他にも“統和機構”“中枢(アクシズ)”“MPLS”“霧間誠一の最後”“炎の魔女の誕生”等も描かれている。実は最重要情報てんこ盛りの欲張りな短編だ。これから読む人も心して読んでほしい。また、既に読んでいる人には、読み進むにあたって何度か読み返すであろう部分であるように思う。

 黒田慎平の存在は、アニメ版“Phantom”で見ている。というよりも、作品が発表されているのはこちらが先だから、しっかりと読んでいた人にはあのシーンが何を意味していたかわかっていたわけだ。まあそれは良いとして、せっかくだからこのログを頼りに、アニメ版8,9話を観直してみる。8話はまさにこのときのことを、黒田にそっくりな岸田に対して語っている。9話冒頭は、凪に対して黒田が最後にしてあげたこと、まさに命を賭して。来生先生までがしっかり登場している。その後を変えることになる進化薬と共に。この直後、初めて浮かび上がり、そして黒田自信が命名した“不気味な泡”と遭遇することになるわけだ。

 密接に絡んでる小説とアニメ。同時進行だからこそ面白いメディアミックスの醍醐味。やはり面白い。続きを観ていくこととしよう。


夜明けの口笛吹き(2000/04/20)

 ファーストストーリー“ and Others”の後日譚。ひょっとしたら別次元での話かも。エコーズはその名の通りただの反響として、ブギーポップも何やら訳わからん、ひょっとするとファントムじゃないかと思わせるような、それでいてやっぱりいつものアイツみたいな感じ。何となく、いつもの“あとがき”のような印象を持たせつつ、これより始まる話を昔話として語ろうとする“まえがき”。昔語りで様々なことが見え隠れし、わかってくる作品“夜明けのブギーポップ”。面白い作品です。一編ずつ読んで行ってみましょう。


ブギーポップ・デュアル 負け犬たちのサーカス(1)(2000/04/09)

 数カ所で連載されてるらしいコミック版の第1弾が登場♪早速読んでみました^^。

 世代交代を行い、次なる者へと受け継がれていく自動的な存在・ブギーポップ。生徒が先生となり、そのときにはまたその生徒に。ブギーポップを身の内に内在させた経緯は記憶には残らず、それでも新しいブギーポップとの出逢いに違和感は覚えぬ自分がいる。

 崩壊のビートを刻む世界の敵。倒すべきその敵が身近に現れたときに浮かび上がる不気味な泡。藤花の場合とはだいぶ違うようだけど、それだけたくさんのブギーポップがこの世には浮かび上がっているということか。謎のままに展開するのはいつもながら。続刊に期待するとしよう。

 キャラの方はといいますと、ふたりのブギー、五十嵐ブギーと秋月ブギーがいます^^。五十嵐ブギーは藤花ブギーのようにワイヤーで戦ってましたが、秋月はひと味違う!かっこいい^^。指弾のような形で気を撃ち出しているのか、格闘シーンも見応え抜群!!小説ブギーファンも必見の出来だと思います^^。是非ご覧あれ〜♪


ブギーポップは笑わない(12)(2000/03/25)

 宮下藤花と末真和子、普通の風景・日常会話。過ぎ去りし不思議な事件は、既に過去の話なのか。自動改札は深陽で慣れてるはず何だけどなぁ^^;。受験生としての二人、彼氏はまた現れることはあるんだろうか?お茶の水やアキバ、私が普段よく見る風景。こんなトコにも、あの自動的な存在は現れるんだろうか。うん、たぶんきっとそうなんだろう。口笛のマイスタージンガーが聞こえるしね^^。

 マンティコアを狩ること。結局やはり、小説版Boogiepop and Othersの後日譚になっていたようだ。岸田、黒田、凪の進化、そしてブギーポップの誕生秘話。様々な内容が一気に語られ、ファントムの存在意義も見つかる…。宮下藤花に始まる不思議な不気味な物語は、こうして終わっていく…。予備校生として木村と再会した、あの時の藤花へと変わっていく。街の記憶が奏でる曲・ブギーポップのマイスタージンガー〜第1幕への前奏曲〜。

 始まりは突然に、そして終わりも突然に。本当に終わってしまった^^;。でも上手いことまとまってたように思います。今度は本編のアニメ化もやってほしいなぁ^^。またしばらくは、小説版の原作を読み進めることにします♪


ブギーポップは笑わない(11)(2000/03/19)

 生きることへの疑問符。そして出逢う死神・ブギーポップ。どうせ死ぬのに、どうして生きるているのだろう?他人にない能力を生まれ持ってしまったために、苦しみ抜いた5年間。Phantomに何度も繰り返し登場する光の蝶。オープニングにすら登場するこの蝶は、物語の中核を担うのか。マンティコアを封滅したときに現れたもう一つの光・ファントム。蝶は、徐々に物語を紡ぎだした。世界を、時をも知る存在。エコーズとの邂逅は、何かしら蝶に与えたのだろうか。プームプーム、ペイズリーパーク、全ての根元。そんな存在にこそ、死神は死を与える。

 ファントム対真のブギーポップ。この構図の戦いは、今後どれだけ展開されるのか。そこにタイトルであるBoogiepop Phantomの秘密が隠されている。宇宙意識、蝶の群、そしてファントムの語る真実。何で生きているのか、それを教えてくれる存在はたくさんいる。生まれてきた幸せを知ったとき、能力を持つ存在は真の姿となり消えていった。虹は或いは、その存在・真名花の魂の輝きそのものなのかも知れない。


ブギーポップ・オーバードライブ 歪曲王(2000/03/14)

 「ニュルンベルクのマイスタージンガー」VS「レッド・ツェッペリンのカスタード・パイ」。世界に確実に正しいことはないといい、すべては歪んで、どこかしらねじ曲がっているという、新たに“自動的”に現れた存在「歪曲王」。それは人々の“心残り”という心の歪みが結晶化し、実体化したものなのかも知れない。その“心残り”を人が克服したときには、消えて無くなる存在なのかも知れない。分刻みの戦いと葛藤の中、それはいつの間にか始まり、やはり唐突に終わった。いつものブギーポップならではの展開である。

 “自動的”な存在は今回で3人目。ブギーポップ、イマジネーター、歪曲王。「パンドラ」では少し趣の異なる存在がクローズアップされた。どの存在も人の心の投影。この存在を通して、登場人物達、そして読者は、ブギーポップと、そして上遠野氏にいろいろと思い知らされる。「なんだかなあ」とかいいつつ目まぐるしく展開し、書き綴られていくこの作品は、やっぱりすごいなぁと、いつも思ってしまう自分がいる。ほんと、なんだかなあ(笑)。

 今回のお話は、いつも時間軸バラバラな本作にしてはめずらしく(?)、時間的にも展開的にも、第一作「ブギーポップは笑わない Boogiepop and Others」のすぐ後の「続編」になると思う。もちろんイマジネーターや6人の話も若干絡むんだけど、登場人物からして続編だ。竹田君や凪の活躍はほとんど無いんだけど、あのマンティコアと戦った新刻敬がいて、田中志郎がいて、何故か早乙女正美までがいる。そして「パンドラ」で凪の友達としてちょっとだけ名前の出てきた健太郎が、今度は主人公として登場している。この、「誰もが明日は主人公」みたいな展開が好きだ。ブギーポップの物語では、例えば1作目でちょい役だった人物が、4作目では主人公になってたりする。ほんと、そうなんだよね。人生何がどう転ぶかわかったもんじゃない。気を付けなきゃね。

 1作目の続編という意味合いはもう一つあり、つまり1作目の“心残り”をこの歪曲王で消化した、という感じになっているのだ。詳しくは書けないが。新刻と志郎が、竹田君と紙木城への想いを、良い意味で吹っ切った、そんな感じかな? 1作目ではどことなく燻っていたものが、ほんとすっきりしたって感じがして、読み終わって晴れやかになった、そういう印象。やはりシリーズは通して読むべきである。そう思わせる作品構成でしたな。

 今回のもう一つの今までと違う点。ブギーポップが全編に渡って登場し、しかもこれでもかってくらいに語ってくれる。饒舌な死神は、歪曲王に対して、或いは敬に対して、ゾーラギを生んだ少年に対して、その名の通り突然ポップアップしては語り、そして去っていく。このシーンになると、もうほんとに目が離せなくなる。引き込まれてますね、ほんと。

 さらに、今回はちょっとだけだがブギーポップに変化が見え始めてる。いつも笑ってるんだかとぼけているんだかわからない、左右非対称の奇妙な表情を浮かべるのがせいぜいの彼氏が、今回は珍しく“笑顔”を浮かべているシーンがある。「笑うのは僕の仕事じゃない」と言い切り、そのままタイトルになった第一作「ブギーポップは笑わない」なのに、笑うブギーポップになってしまった。これはおかしいのではなく、人は、それはブギーポップでさえも変わっていくものなのだ、と伝えているような気がする。また、表情が豊かになり、笑顔が浮かべられるようになるというのは、それだけ心境の変化があったということだろう(彼氏にそんなものがあればの話だが…)。

 思うに、笑うことをはじめとする感情の変化は、双方向のものなのだろう。他人から笑顔を向けられ、良い感情を受けていれば、自ずと自分も笑顔になっていくものだと、そう思うのである。もちろん逆も有るわけで、いつも睨まれたり、恨まれたりしていたら、笑顔など出ようはずもない。プラスの感情を他人に与えることは、きっと死神でさえも微笑みを浮かべるだけのパワーを持っているんだと、そう信じたい。悪意は撒き散らさないようにしよう!ってことさ。

 さて、今回もまた“あとがき”のようなものにしてやられた。「世界の終わり」世界とは確かに自分の生活空間そのもののこと。生活習慣が変わることは、イコールそれまでの“世界”が終わってしまうこと。新しい世界に移っていくだけなんだけどね。その度合いが大きい小さいはあるかもだけど、とにかく日々進歩しつつ変えていかなければならないことなんだと、そう考えてしまったよ。そこまで考えたとき、「それをするのは君たちの仕事だ」と言い放って、何処へともなく去っていく彼氏が見える気がする。なんだかなあ。まあ何度めげそうになっても、私も頑張っていきたいと思うよ。これから先も、ずっとね。


ブギーポップは笑わない(2000/03/12)

 ・自動改札式校門じゃなかった深陽学園・ショートカットの霧間凪・のっぽの新刻敬・コスチュームの出来映え・ブギーポップの声・・・・。数々の違和感・相違点はあれど、劇場版Boogiepop and Others、面白かったです^^。自分なりに振り返ってみたいと思います。

深陽学園
ものすごく印象的だった例の駅の自動改札みたいな校門。
これがあるからこその話もいろいろあったはずなのに…。
まあ、あれをセットとして作るのもやっぱ大変だったんでしょうね^^;。
マンティコアが現れた部屋、エコーズが匿われた部屋など、
ちと雰囲気無かったかな?^^; 屋上での語らいのシーンは良かった!
宮下藤花
/吉野紗香
イメージぴったり!^^ ブギーポップとのギャップも
考えてってのもあるけど、藤花らしさが出てました^^。
ほんと普通の女子高生ってカンジで^^。
ブギーポップ
/吉野紗香
コスチュームについてなんですが、これはやっぱり
この前の冬コミのがよかったなぁ(笑)。出来映え今一。
マンティコアに使ったワイヤーはもう少し細い印象がある。
声の方は、最初はちょっとイメージ違うな、迫力に欠けるな
と思ってたのですが、クライマックスに近づくに連れて、
だいぶしっくりしてきたカンジがした^^。
最後に凪と握手する藤花の「どうも」が良かった。
このシーンは2回あったけど、1回目はそれほどでも
なかったのに2回目はやったら良かった!!
見てくと印象ってどんどん変わっていくものですね。
霧間 凪
/黒須麻耶
ショートカットの凪が、原作派にはちと…。
でも考えてみると、早乙女が切り付けるシーンと
末真が絆創膏貼るシーンはショートのがやりやすいかも?
キャラ的にはイメージも演技もバッチリ!
しっかりと凪の味を出してましたよ^^。
百合原美奈子
マンティコア
/酒井彩名
イメージはぴったりでした。早乙女もね。
咀嚼のシーンは…まあ、あんなもんかな?
演技はどうだろ?もうちょっと雰囲気出してほしかったな。
末真和子
/清水真実
だいぶぽっちゃりしてふくよかな末真だった^^。
原作とのイメージは違うけど、個人的にはおっけー♪^^
パンフの写真ではキャスト中一番のお気に入りです^^
演技の方も凪に食ってかかるトコとか、頑張ってたと思うよ^^。
紙木城直子
/三輪明日美
紙木城はね、やっぱほんと良かったですよ、自然で。
第一作のみの登場人物だけど、彼女がいないと話が
まとまらない訳だし。その辺もしっかり演じてくれました。
イメージもぴったり一致ってカンジですね。
新刻 敬
/広橋佳以
今回一番イメージ合わなかった人(爆)。
「チビで小学生に見間違われる」どころか、
スラッとした美人てカンジ?実年齢も一番上だし、
ちょっと違うんじゃないかなぁって思ったよ^^;。
委員長ってこんなイメージじゃないんだよねぇ^^;。
なんとかしてほしかったっす、ホント^^;。
演技的に…別キャラとしてならいいんじゃないかな?
エコーズ
/寺脇康文
これはやっぱさすがっ!ってとこですな^^。
もうばっちりエコーズしてましたよ^^。
ほとんどセリフが無い中で、しっかりと演じきって
下さいました♪ 申し分なし!
竹田啓司
木村明雄
田中志郎
まとめてっ!(笑)
まあ無難ドコです。特に意識するほどでも無いし^^;。
田中君がちとイメージ違ったかな?もーちょい大人しくて
子供っぽいような印象あったから。それだけ♪
早乙女正美
原作やアニメでも頻繁に登場するマンティコアの下僕、
かつ思い人の早乙女正美。キャラ的にも演技的にも
ばっちりだったと思います。もう少し不敵さを全面に
押し出してくれてたら良かったなぁ。

 結局の所、原作自体がつかみ所のない作品だったりするので、原作のイメージも何もあったもんじゃない。あれもブギーポップ、これもブギーポップ、といった感じでどれもイメージ化されちゃうんですよね^^。アニメ版Boogiepop Phantomも、原作とは全然違った雰囲気に仕上がってるし、小説も一作毎に違う。これもブギーポップのひとつの形なのかな?と映画版を無条件で受け入れている私がいます。まあそんなとこですな^^。

 その他では、パンフレットが斬新だった! この形のパンフは今まで見たこと無いぞ^^;。必要最小限、多くを語らず、あとは見るがいい、と言わんばかりの構成。上遠野氏のコメントが、いつものあとがきの感覚で読めて良かったなぁと思います^^。劇場ではあのCDもGet出来たし!今後もしばらくブギーポップ漬けですな^^。


ブギーポップは笑わない(10)(2000/03/11)

 プーム・プームを焼いてしまったことから物語は始まった。過去を運ぶ虫とペイズリー・パーク。常に舞台として登場する作りかけの遊園地。今までの話の中での登場人物も一堂に会する。プーム・プームの友達は、今に生きられず過去に生きる人々。深陽学園にその現象が現れたとき、藤花は何を思うのか。そして、ブギーポップは…。

 本当に生きるとはどういうこと?今の人生をやめ、プーム・プームと共に夢の中を生きること?現実を生き抜く霧間凪は、どのように事態を回避するのか。現実を直視して生き抜くには、夢を裏切る必要のあるときもある。大切なものを取り戻すよりも、過去は取り戻すよりも、それを大切に思いながら、強く生きていかねばならないのに。

 現れたのはファントムではなく本当のブギーポップ。久々ながら、いつもながらに辛辣な真実を並べ立てるブギーポップ。幻惑を生む異形なる者。波及なる者は消え去り、長かったひとつの物語が終わる。人を一番美しいときに殺しに来る死神。その噂通りに事を収めたブギーポップ。二人の語ったどれほどの言葉が心に残ったか。それが今後の人生を左右する。過去とは何かを考えていく上で。


ブギーポップは笑わない(9)(2000/03/04)

 大人にならなくていい素質のあった少女。そしてそれを止めた黒田の薬。相変わらずスタートはわからない。ブギーポップの噂から始まる不思議な物語。記録を燃やすことで記憶を消す人。ケータイの謎のメッセージに導かれ、今を忘れようとする少女。過去に生きることで幸せを見つけだした少女は、これ以上の成長を自らの手で止めた。そして藤花の友達は自分の行き方を模索している。言い聞かせる行き方。それが正しいのかを訝しみながら。

 手に入れた風船はやはりペイズリー・パーク。魔が集う場所、昔の心が残る場所。藤花に見えないその風船は、魅入られた者のみが見えるのだと、ブギーポップは語っているのだろうか。夢を捨てて現実を選ぶか、現実を捨て夢に生きるか。それはあるいは統和機構の思うつぼ?そしてブギーポップ・ファントムはどんな目的で動いているのか。心の読める少年の悩みは深く、心は自然ファントムを求めプーム・プームと出逢う。子供の楽園に干渉するブギーポップ・ファントム。電磁波がその存在を左右する? まだまだファントムの謎は深く、わからないことばかりだ。


ブギーポップは笑わない(8)(2000/02/27)

 今回は主人公の一人「霧間凪」の物語。霧間誠一の真実が見え隠れするこの話は、ブギーポップが密接に関わる。ひとり戦い続ける彼女は、如何にして今のように強き存在へとなったのか。彼女の登場は本当に心強い。しかし今度の敵は強すぎる。マンティコアとブギーポップの戦いの最中、生み出された最悪の存在・ブギーポップ・ファントム。タイトルの意味はそういうことだったのか。ブギーポップシリーズのひとつであり、一作目の同名タイトル作「ブギーポップは笑わない」とも違うというわけだ。ファントムとの戦いも始まったばかり。自動的に現れるファントムはどんな存在なのか。果たして倒すべき敵なのか。倒すべきは、やはり人間の方なのか。霧間誠一の語る言葉の意味が理解できたとき、それはわかってくるのかも知れない。

 進化しすぎる存在。凪はそんな存在なのか。黒田慎平という男は、凪に何を求め、何を託したのか。正義の味方を続ける孤独な少女にとって、不思議な事象は特別ではなく当たり前のこと。それに付き合った岸田という男は、今後も現れてくれればストーリーテラーとして活躍してくれるだろう。殺されたマンティコアから発生した早乙女マンティコア。あの瞬間生まれた二体のファントム。ブギーポップ・ファントムは、分離したオリジナルと同じ存在なのか。少なくとも宮下藤花の意思は感じられない。ファントムとオリジナル、二人のブギーポップの邂逅にも期待してみたい。そのとき、何が起こるのだろうか。


ブギーポップ・イン・ザ・ミラー「パンドラ」(2000/02/23)

 運命なのかなんなのか、とにかく出会ってしまった6人の少年少女たち。普段の生活では何の接点もなく、出会うことすらない彼らは、誰からともなく呼び出し合って、いつもの場所・カラオケボックスで合流する。その空間の中では意気投合し合う、本当の意味での「仲間」である。最近では良く見られる光景である。ネット上で趣味などを通じて知り合って集まる「オフ会」がかなりそれに近い。唯一、そして絶対的に異なるのは、彼らが巡り会ったのはネットではなく、お互いの「予知」によるものだということだ。そんな不可思議な“能力”を持つ6人が、世界の中心に集い、自らの運命をも予知していくことになる。ブギーポップの登場を予知したために…。

 皆それぞれに自分の立場があり、それゆえそれぞれの視点から他の仲間を見ていく展開。性格も普段の生活も全然違う中で唯一共通すること、それはこの仲間たちが本当に好きだっていうこと。お互いが大切で、守り抜きたいと思う心が奇蹟を生んだ。「パンドラ」の匣に最後に残っていたものは、未来が「予知」出来てしまうという「不幸」。その「不幸」閉じこめてしまうことで、人は暗い未来が見えなくて済む「希望」を手に入れるという。匣から飛び出してしまった「予知」という「不幸」は、しかし互いに助け合いながら世界を救う。その思いに応え、気まぐれな死神“ブギーポップ”が自動的に現れる程に、ただひたすら純真に真っ直ぐに。きっと未来は明るく照らされるだろう。そのときブギーポップは「好きにするがいい。君の勝手だ」と言い捨てて、何処へともなく泡の如く去っていくだろうが。

 6人それぞれに個性的で魅力的だが、私個人としては、やはり“天色優”と“海影香純”が甲乙付け難い。冷徹な戦闘マシーンの素顔の下に、或いはぶっきらぼうで投げやりな素振りの影に、本当の優しさが見えてくる。物語の最後は語られないけど、いつか再び活躍してほしい。そう思ってしまう登場人物たちだ。

 毎回思うのだが、今回もあの“あとがき”のようなものにやられた。ケンカ別れ状態になってる人と、どうして歩み寄れないのか。「どうにかなんない?」と訊いてみれないのか。気まずいキモチをそうやって吹っ切ることで、ほんの些細な幸福感=生まれてきた“理由”が見えるはずだ。ごくごく小さな同意とか、笑ってうなずきあうことのできたあんときとか、そーゆーものを感じることのできる一瞬のために人は生きてるんじゃないか。今は気まずくなった人とも、そんな一瞬って思い返せばいくつも思い浮かぶんですよね〜。仲直りできなくとも黒帽子は助けてくれない。それは彼の仕事ではない「僕らの仕事」だから。さてあなたは果たして仲直りすることができるでしょうか?^^


ブギーポップは笑わない(7)(2000/02/19)

 スプーキーEはC9級の小者である。そんなことがわかるのはまだ先の話。統和機構とMPLS。世界征服をも企む巨大秘密組織の抗争は、徐々にそこまで迫ってきている。電影で語られる物語は、どこまでそこに近づくのだろうか。

 いらないものは作り直してしまうべき。安能慎二郎も少しずつ絡んできて、物語は繋がっていくのだろうか。いや、それはまた別の次元で語られるのだろう。スプーキーEはまともな体型だった。もうちょい不格好なのでは? そして兄妹の前に現れた凪のとる行動は? 少女の思い出の中の兄は、戻ってくるのだろうか。

 ペイズリーパークは完成しない。そこはスプーキーEとイマジネーターの死に場所となる。マイスタージンガーが奏でられるのも先の話。忌まわしき力を得た少女は、いらないものを消し去る。そして今、いらなくなったものは何もない。ブギーポップが現れ、ペイズリーパークは次なる戦いの舞台へと移る。


ブギーポップは笑わない(6)(2000/02/12)

 こちらにも凪の父・霧間誠一の一節が現れるようになった。これがやはりブギーポップのスタイルだろう。今現在はそういう風に思ってる私です。浮かんでは消えていくマンティコアのような存在。猟奇殺人の真相を解き明かすのは炎の魔女か、やはりいつも一歩先を行くブギーポップか。過去が黄泉返る街。さてどんなファントムが待ち受けるやら。

 日記が綴る過去の歳月は、やはり少女の思念を回帰させる。過去の精神の傷みが、病んだ心を回帰させるのか。精神的外傷。無理に治さずに、弱いままでいる方が女は幸せ?そんな考え方もあるのだろうか。精神病院の心的療法はわからぬが、そんな心の病・心の透き魔が狙われている。ブギーポップの物語にはいつもそのような魔が潜んでいる。自分で解決すべきことなら、自動的な泡はポップしてこない。まずは自力で。それが叶わぬ時、炎の魔女が力を貸し、人外の魔をも呼び込んでしまったとき、ブギーポップがそれを退治する。それでもやはり最後に解決すべきは自分の努力。そんな一見投げやりに見える不思議な存在は、正義の味方ではない。それでもやっぱり人間的な感情もあるから、友達は見捨てられないのだろう。

 女の顔と母の顔。少女には見るべき姿が見えたのだろうか。でも、だからこそ心的外傷は取り除かれる。自分の努力無くして未来は見えてこない。深い深いメッセージだと思う。ごめんねとありがとう。ここから第二の人生は始まっていく。それを解決すべきはブギーポップではなく人間個々人の努力。ブギーポップは現れない方が幸せ。不思議な不思議な作風だ。


ブギーポップ・リターンズ VSイマジネーター(2000/02/12)

 ブギーポップとも統和機構とも違う存在、イマジネーター。霧間誠一が生み出したわけでもなく、やはり自動的に今の世の中に生まれるべくして生まれてきた存在なのか。別に飛鳥井が望んだわけでもなく、水乃星が望んだわけでもないんだろう。それでも、ブギーポップが現れるということは、排除すべき存在なのだ。それに比べればとるに足らない存在という人造人間・スプーキーE。こんな非現実の存在達に翻弄されながら、炎の魔女の弟はブギーポップを演じ続ける。誰のために?それはおそらく自分のためなのだろう。カミール=織機綺は、運命に翻弄されながらも微笑んでいる。そして炎の魔女の親友たる末真和子が無茶をしでかす前に、再び何もなかったかのように、事前に事をおさめてしまうのは、その友達である藤花≒ブギーポップが彼女を思いやるから…? 

 ブギーポップの優しさは、そしてその恐るべき強さは、まだまだ計り知れない。魅力の尽きぬこの作品は、是非ともあとがきを含めて読んでもらいたい。そこに上遠野氏の本当の姿が見え隠れしてるから。次作「パンドラ」でまたお目に掛かることとしよう。


ブギーポップは笑わない(5)(2000/02/06)

 君が口ずさむ聞き覚えのないメロディー。それはニュルンベルクのマイスタージンガー。ブギーポップはいつも口笛でこれを奏でながら現れる。さて、今回は現れるだろうか?  遂に“統和機構”の存在が現れてきた。マンティコアやスプーキーEを生み出した謎の組織だ。そして珍しく主人公・宮下藤花の日常生活が。親に“病気”と呼ばれるブギーポップを抱えて。竹田の名前も出てきてることだし、だいぶ原作の面影が出てきてますな。末真の耳に届くブギーポップの噂話。ネットの噂。統和機構の噂。それは繰り返され、マンティコアら、合成人間の話へと展開する。凪と末真の話で、ようやく本編の本筋に話が入ってきた感じがする。

 警官が何度も話す“県立総合病院”を訪れる末真が見たものは、過去の出来事?藤花との初めての出逢いは、末真の運命を変えたと思う。変わるべくして変わるのが運命の本質だとは思うが、別れ際ブギーポップが囁いた言葉は、確実に末真を強くしただろう。合成人間スネークアイが動き出す。マンティコアを探し求めて。同じ話を何度もする人間が居たら、疑った方がいいだろう。


ブギーポップは笑わない(4)(2000/01/29)

 ブギーポップを読んでいると、必ず前の章を見直すことになる。これがブギーポップの魅力でもある。同じシーン、同じセリフ。それが自分の目から、隣にいる人の目から、そして影からこっそり見てる人の目から、それぞれ描写されるのだ。その誰かが宮下藤花、その親友・末真和子、或いは霧間凪と絡んでいき、ブギーポップの登場となる。棘の付いた己の意思のままに動くワイヤーを操り、全てを切り裂く黒帽子。主人公は、毎回変わる登場人物一人一人。ブギーポップは、正義の味方ではない。自動的に現れ、魔を払い、去って行くだけだ。さて、今回はどんな話が待ち受けてるやら。

 精神的に追いつめられた存在。垣間見えたのはマンティコアと早乙女正美か? 子供の頃から追いつめられ、受験という魔に追い落とされた存在。そんな魔に引き寄せられ、マンティコアは現れる。デジタルな存在にしか語りかけられない、そんな現代の魔に取り込まれたような男を、延々と写し続けることで、果たして何が言いたいのか…? その意図は、なかなかにして読みづらい。藤花の姿は、ほんの一瞬彼の視界に映ったのみだ。

 現実逃避の行き過ぎた存在は、やはりマンティコアと早乙女の餌食だった。マンティコアの望むままに現実逃避を続ければ、最期には陶酔の果ての死が訪れる。親の傲慢にも困ったものだが、魔は思わぬところに潜んでいるのだ。破綻した男の姿を、前回のパヌルゥを語る少女が眺めて去っていく…。ブギーポップの活躍は、藤花が店に立ち寄ったのみ。マンティコア=百合原美奈子の企てを阻むのは、何時のことになるのだろう…?次回にも期待したい。


ブギーポップは笑わない(3)(2000/01/22)

 いつも格好良さに魅入ってしまう電撃文庫のCM。やはりブギーポップはこうあって欲しい。そう思いますね^^。末真の言う“あの事件”は、やはり原作を読んでないとわかりませんな^^;。女子生徒の間だけの伝説、殺し屋ブギーポップ。少女達の語らいは、常に異世界へと繋がっている。世界を受け入れること。それは一体…。そして自動的に現れた存在、パヌルゥは“魔”の存在なのか。全てを受け入れるとはどんなことなのだろう。そこには早乙女正美の存在が見え隠れする。やはりその後ろにはマンティコアの存在が?

 霧間凪の存在は、常に世界を現実に立ち戻らせる。追い求めるのはパヌルゥか、やはりマンティコアなのか。世界愛を広げる魔の存在。かつて自分を殺した相手、早乙女正美の名は、凪にとって絶好の餌。しかしそれをも餌にする存在、死に神の名で呼ばれる者“ブギーポップ”。やはり彼の力により、浄化は完了する。早乙女は何度復活するのか?ブギーポップの世界の不思議のひとつである。

 辛辣に真実を語り尽くすブギーポップの一言一言が、パヌルゥの幻想を追い求めた少女を真の解放へと導く。しかし、最後まで救済しないところがブギーポップらしきところか。凪が発見したのは、既にパヌルゥの後を追い、同じ殺され方をした少女の残留思念のみ。それはまた新しき魔へと成長する…。そして、ブギーポップはまた現れることになるのだ。


ブギーポップは笑わない(2)(2000/01/15)

 そう。それは自動的に現れる存在。笑うという行為は彼の役割ではなく、今を生きる者たちの役目。原作本第一巻はかなりの速さで一気に読み終わりました! やはり原作読んでこそ、このアニメも面白くなってくるな。そう実感した次第です^^。まずは主人公と目される宮下藤花と霧間凪、この二人に注目しながら読み進めてみたい。

 ヒーローへのあこがれ。少年の心。蝕む病魔。周りの視線。挫折。そういった過去があってこそ今があり、魔に魅入られる現実がある。身に付いてしまった超現実の能力は、少年を非現実へと誘う。甘美な味はヒーローを徐々に堕落させていく…。

 この作品の面白いところは、同じシーンを別の角度・もう一つの視点から、何度も何度も見つめ直すところがあるというところ。1話にちょっとだけ出てきた人物が、次の話では主人公になったりしながら、身近にいる人間の姿をもう一度見つめ直すわけだ。そうすることで、ひとつの物語の裏側が見えてくる。

 そこに展開される話を、外側から見つめ、或いは高見から見下ろす存在、それが宮下藤花に自動的に現れる“ブギーポップ”であり、人間の代表たる霧間凪なわけだ。マンティコアを追い求める凪と、その全てから超然とした存在・ブギーポップ。次なるストーリーでこのシーンはどれだけ含まれるかな?^^楽しみにしよう^^。


ブギーポップは笑わない(1)(2000/01/08)

 本作はちょうど原作を同時に読み始めたトコ。ずっと昔から、書店でみるに気になってた作品。思った通り大ブレイクし、このアニメ化と、映画化が決まっている。今年の有明も素敵なブギーさんがいっぱいでした^^。 オープニングから幻想的。“不気味な泡”というのがわかる気がしますね。良くできています^^。プロジェクト・ブギーポップ。今後の展開が楽しみです。

 何やら英雄譚っぽい光の柱(笑)。それに導かれてやってきたのか、不思議な不思議な物語。様々なことがある世の中、しかし自分が見えること以外は自分には見えない。一人一人が物語の主人公に。それを語り継ぎ、どこからともなく見つめているのがブギーポップ。でもやっぱり原作を読み進めておかないと、ですな^^;。

 どうしてみんな生きてるんだろう?どうせみんな…死ぬのに…。頭に刻まれた深いメッセージ。何かに導かれ、誘われ、何かを見つけるために…?思いは錯綜し、そして消え去る泡のように…。藤花の幻影…ブギーポップ。真実を辛辣に見つめ、決して思いやりを見せることなく、ただ去っていく不思議な泡。この物語の面白さがわかったとき、ブギーポップの心も見えてくるのかも知れない。続けてみることとしよう。