Pierian Spring −ピエリアの泉ー


VOL.1
いつも目に入る風景。新宿副都心のビル群。ひっきりなしに排気ガスを吐きながら往来する自動車。点滅する様々な色のライト。時と共に表情を変える空。まるで巨大な遊園地の中で暮らしているかのような錯覚さえ起こさせるこの街で、ぼくらは暮らしている。
そして、何かを探している? 誰かを待っている?
ふと通り過ぎる永遠のメロディーを追い掛けながら、どこに向かって歩いていこう。メリーゴーランドはどこかな?あの馬に乗って、ぐるぐる回って、何か見つかるかな? 何か変わるかな? <宙也>

VOL.2
ミサイルが飛んで来たらしい。毒入り缶ジュースが出回っているらしい。街では、アイスキャンディーをくわえた制服女子高生が、カメラの前でポーズをとっている。
マスメディアがかき立てるニュース。ブラウン管のむこうで、危機感と安らぎが入り乱れている。
ぼくらが暮らしている、この巨大な遊園地は、ちょっと角度を変えてみると、無数の罠が仕掛けられている。
今度台風が上陸する前に、メリーゴーランドを探さなきゃ・・・・・。新しいサイクルが待っている。 <宙也>

VOL.3
日曜日の午後、公園の木陰で、大の字に仰向けになって寝てみた。暮れかかった青空と、そよ風に揺れる生い茂った木の葉。まるで海の中で藻が泳いでいる様を眺めているような、何とも幻想的な気分になった。「今、視界にあるのは自然(!)だけ」と気づくと、大きく呼吸をしたくなった。
帰り道、大都会を歩いているぼくの視界には、人工的なものばかりだ。公園での数時間は、ぼくにとって映画を一本見るより価値のあるものだったような気がする。
帰宅後、テレビを点けると、和歌山H夫妻の顔ばかり・・・・・。 <宙也>

VOL.4
眠れない夜、薄闇で考える事、・・・小さい頃は、天井の木目を眺めながら、「自分は何故、この地球上に生まれ、呼吸をしてるんだろう?宇宙って一体・・・」などと考えつつ、いつの間にか眠りにつき、翌朝にはランドセルをしょって歩いていた。近頃、特に寒い夜などは、郷愁にかられ、そんな子供の頃を思い出しながら眠りにつく。目が覚めると、そこには21世紀が広がっている。こんなチャンスを逃す手はない。世紀の変わり目に立ち会えるなんて!週末、年末どころの騒ぎじゃない!みんな、世紀末を楽しもう!!20世紀を踊り明かそう!! <宙也>

※ピエリアの泉−詩的霊感の源泉 Pieriaは、ミューズ神の生誕地。

これは、ディスクガレージの情報誌「DI:GA」のVol.35(September1998)〜Vol.38(December1998)に掲載された宙也の連載を転記しました。